聖櫃に抱かれた子どもたち   作:佐伯寿和2

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始まりの魔女 その四

私にはクレアお(ばあ)さんのことがなかなか理解できなかった。

必要はないのかもしれない。だけど…、理解してみたかった。

「…ゴーゲンさんとは、どういう関係なんですか?」

「おやおや、。これはまた、随分(ずいぶん)唐突(とうとつ)な話だね。」

()()かりは何でもいいの。ただ、この魔女(ひと)為人(ひととなり)を知れば何か見えてくる気がしたの。

 

ゴーゲンさんは言ってた。「直接(ちょくせつ)面識(めんしき)はない」って。でも「因縁(いんねん)(なか)」とも言ってた。

そこには、私じゃ想像もできないような永い時間を生きた二人だからこそ生まれた切っても切れない何かがあるんじゃないかしら。

 

クレアお婆さんは口を開く前に、その(しわ)だらけの手でソッとリンゴの「赤」を(おお)(かく)した。

まるで、連想(れんそう)する何かから目を()らすように。

「そうだね…、あの人は、私から大切な人を(うば)った人。(にく)んでも憎み切れない人なんだよ。」

薄々(うすうす)、そんな予感(よかん)はしてた。

(ばあ)さんは洞窟(どうくつ)の入り口でゴーゲンさんを(こば)んでたから…。

それに、あの人はずっと「戦争」の中で生きてきたんだもの。(うら)まれてる人の一人や二人いてもオカシクない。

「でも、彼は私が愛した人から愛されてた人でもあるんだ。」

「……」

(くわ)しい事情(じじょう)は分からない。

でも、それはどこか彼と彼の『恋人(あくむ)』を彷彿(ほうふつ)とさせるような内容に思えた。

「わかるかい?私があの人を憎んじゃいけないのさ。この”愛”が本物だって自分に言い聞かせるためにはね。」

そう、私も『あの人』を恨めない。

だって、彼が()()()()()()()()()()()あの人なんだから。

 

「こらこら、こんなことで泣かないでおくれよ。私まで悲しくなってしまうだろ?」

そんなつもりはなかった。

でも、(あふ)れて止まらないの。目頭(めがしら)も、頭の中も熱くて、熱くて…。

(すく)われないわ。私も、クレアさんも。」

ゴーゲンさんは『魔女』なんて人種はいないって言ってたけれど、ここまでくるとどうしても私たちのような『()()()()()()』が世界から迫害(はくがい)されてる気がしてならない。

そうしていつの日か私も、このお婆さんのように暗い穴の中で臆病(おくびょう)に生きていくしかなくなるんだ。

…彼から隠れて。

そう思うと、涙が止まらなかった。

 

「そうでもないさ。」

だけど、お婆さんはそんな私の安っぽい被害者(ひがいしゃ)意識(いしき)を打ち消した。

「私は自分のことを罪人(ざいにん)だとは思うけれど、今までの(すべ)てを(つみ)だと思ったことはないよ。」

それは、私のことを気遣(きづか)って言ってるようには聞こえない。

本気でそう思ってるの?…どうして?

だって、片想(かたおも)いの(かたき)を受け入れなきゃいけないんでしょ?

それに、今まさにロマリア国で貴女の『悪夢』が貴女を苦しめようとしてるのに。

こんな「呪われた人生」が他にある?

どうしてそんなことが言えるの?

「私はアナタと違って林檎(りんご)を口にしてしまったよ。そのせいでこの『呪い』は何重(なんじゅう)にも私を苦しめてきた。でもね、いつの()にか、私を護ってくれてる子たちが私の憎しみを(いや)してくれていたんだよ。」

 

…私の涙は否定されたけれど、それでも私とお婆さんは()てる。

人じゃなく、化け物に(なぐさ)められてきたところ。想いを()せる人が自分じゃなくて別の誰かを大切に想ってるところ。

そして、

「そのお(かげ)で今の私は憎むべき人を無事(ぶじ)に”友”と呼ぶことができたし、間接的(かんせつてき)ではあるけれどアナタに林檎の『悪』を教えることもできたわ。これもアナタの言う『悪夢』なのかしら?」

どんなに(しいた)げられても、誰かの(ささ)えを(たよ)りに『呪われた血』を受け入れようとしているところ。

 

リンゴの「赤」を隠していた手は仔猫(こねこ)の頭を()(かご)のように揺らし、(つら)い過去と向き合っていたはずの彼女の顔は(おだ)やかな微笑(ほほえ)みで()たされていた。

「アナタたちに(くら)べればひどく遅い足取りかもしれない。それでも私だって前に進んでいると思わない?アナタたちのように、希望(きぼう)に近付いてると言えないかしら?」

…貴女がそれで良いと言うのなら。私に何か口を(はさ)む理由もない。

こんな()(とど)かない穴倉(あなぐら)(こも)ってることはあまり健康的(けんこうてき)だとは思えないし、自分の子を誰かに殺してもらおうとするのは理解に苦しむ。

だけど、かの『伝説』を(つむ)いで、その後何百年、何千年を生きたことを思えば、私の涙も彼女への理解も「(あさ)はか」としか言いようがない。

私にはまだ、彼女をとやかく言える資格(しかく)なんかないんだ。

 

「ごめんね、期待(きたい)はずれだっただろう?アナタの大切な用事(ようじ)の一つにも真面(まとも)に答えてあげられなくて。」

「それは、もう、いいんです。ただ…、」

私に()があるわけじゃない。だけど、それを彼女に向かって口にすることはひどく勇気が()った。

「私、貴女の子を殺すと思います。」

できるだけ()()ぐに彼女を見詰(みつ)め、ハッキリと言った。

「そうかい。すまないね。」

(あやま)る魔女に私は(かぶり)を振って続ける。

「貴女のお願いだからじゃありません。私のために殺すんです。」

「ああ、わかったよ。」

「……」

「こっちに来てくれないかい?」

唯一(ゆいいつ)、私たちを(へだ)てていた(つくえ)()え、私はお婆さんの(となり)に立った。

「…本当に、ごめんよ。」

足が不自由なのか。お婆さんは椅子(いす)(こし)かけたまま私を抱き寄せた。

か細い腕で、必死に。

私はそれに(こた)えるように彼女をソッと抱き返す。

「私こそ、ごめんなさい。」

 

子ども(わたし)たちは、大人を頼りにしちゃいけないんだ。

彼女たちはもう、彼女たちの道を歩き終わって、それでも生きてるんだ。その上、道に(まよ)った私たちを抱きしめ、なけなしの体温で(あたた)めてくれる。

それだけで、「まだ生きていよう」って意欲(いよく)が息を()(かえ)す。

私は、それでいいような気がした。十分な気がした。

本当に戦場に立つべきなのは、大人(かのじょ)たちじゃない…。

 

「また、機会(きかい)があればここを(たず)ねておくれ。今度会う時はもっと、違う話をしよう。」

「…はい。」

また、次の機会…。その時、私はお婆さんの子を殺してる。

「ああ、そうだ。」

お婆さんは私を解放(かいほう)すると、名残惜(なごりお)しむように私の(ほお)に手を()えた。

「ヨーゼフがアナタに持たせたあの水晶(すいしょう)、あれには化け物たちの心を落ち着かせる力もあるから。できるだけ大切に持っておきなさい。」

「…はい。クレアお婆さんも、身体(からだ)には気を付けて。」

それが、私とお婆さんの最後の会話になった。

 

 

――――霊峰(れいほう)カルミオの洞窟入口

 

待つことに()れた老人よろしく、ゴーゲンさんは(くつろ)いだ様子でタバコを()かしていた。

「おお、戻ったか。どうじゃった、あの婆さんとの話は役に立ったかのう?」

「…よく、わかりません。」

(あず)かってもらっていた首飾(くびかざ)りを受け取りながら、私はリンゴを見詰めるお婆さんの顔を思い浮かべた。

「そうか。」

正直(しょうじき)なことを言えば、残念ではあった。

クレアお婆さんは私に「彼の傍にいても大丈夫」だと保証(ほしょう)してくれなかった。

それだけが私の望みだったのに。

 

けれど、収穫(しゅうかく)もあった。

私は自分ととても近しい境遇(きょうぐう)の人と話をして、「私の未来」のようなものを垣間(かいま)見た気がした。

私の、大人の姿を。

こんなことを考えてる時点で私はもう、以前の私とは違ってる。

ゴーゲンさんの「愛」も受け入れられるようになった。

クレアお婆さんと話して、お婆さんの代わりに「私も戦争に(おもむ)かなきゃならない」と思えるようになった。

少し積極的(せっきょくてき)に、混沌(こんとん)とした世界に目を向けられるようになったと思う。

 

そうして変わっていく私を、彼はどんな目で見るんだろう…。

それを思うと、少しだけ(こわ)かった。

「ゆっくり考えるといい。(わし)もできる限り、お前さんの助けになるよ。」

「…はい。」

私の(かみ)を、ゴツゴツと乾いた手がソッと()く。

…私はまだ頑張(がんば)れる。

自分のために。彼のために。

 

……、

 

「…ゴーゲンさんは?」

「ん?」

「ゴーゲンさんはクレアさんに会って何か解決したんですか?」

二人の(くわ)しい事情は知らない。

だけど、どうしてゴーゲンさんはわざわざ命を差し出すような真似(まね)をしたの?

彼女に会おうと思ったの?

会えば解決するようなこと?

「愛する人の命を(うば)う」ってそんなに軽い罪なの?

「そうさのう…。まあ、」

私は、どうするだろう。

彼女に会いたいと思うかしら。

彼女を目の前にした私は、彼女を許せるかしら。

……例え憎まなくても、私は、はずみで殺してしまうかもしれない。

彼女はそれだけのことをしたんだもの。

彼の命を危険に(さら)したことは私にとってそれだけのことなんだもの。

それなのに…、

半々(はんはん)といったところかのう。」

思った通りというか。

()()らない答えを口にするゴーゲンさんの『声』は、いやに晴れ晴れとしていた。

 

 

――――ラムールの町、中心部

 

そこに、フォーレス国を守護する霊峰らを()す巨大な「力の象徴(しょうちょう)」が、(おろ)かしくも(いと)おしい羊たちのための絶対不滅(ふめつ)(つるぎ)として、天上を差す建造物(けんぞうぶつ)の形でそこに屹立(きつりつ)していた。

 

ギーア寺院(じいん)、フォーレス国全土に根付く神「ギーア」を(まつ)る、この国で(もっと)も力の(つど)う場所。

世界でも(るい)を見ないその巨大な寺院はフォーレス国全土から(のぞ)むことができ、数百年前に着工(ちゃっこう)したにも(かか)わらず、(いま)だに完成に(いた)っていないという。

しかし、未完成ゆえか。

日々、着実(ちゃくじつ)に姿を現す神の御姿(みすがた)は、世の情勢(じょうせい)(うれ)うフォーレス国民の大きな(ささ)えになっていた。

全国民の目を預かる寺院の完成はもはや、国の繁栄(はんえい)を約束するとさえ言われている。

ソレは、この国そのものといえた。

 

そして今、寺院前の広場には悪の氾濫(はんらん)(おび)える子羊たちが(むら)がり、国の「(きぼう)」にすがっていた。

敬虔(けいけん)なるギーアの羊たちよ。知っての通り、昨今(さっこん)(あら)れる悪はより(けが)れた力で我々の生活を(むしば)もうとしている。」

純白(じゅんぱく)祭服(さいふく)に背の高い司教冠(ミトラ)(かぶ)り、紺碧(こんぺき)肩掛け(ストール)を下げた恰幅(かっぷく)のいい壮年(そうねん)の男が広場の高台に立ち、哀願(あいがん)眼差(まなざ)しを一身(いっしん)に受けていた。

昨日(さくじつ)もまた、魔女の拿捕(だほ)という(ほま)れある功績(こうせき)を残したラムール(しょ)(おさ)が化け物に(おそ)われ命を落とした。」

男の口にした呪いの代名詞に羊たちの不安は高まり、嗚咽(おえつ)()じりのどよめきが呪いの腐臭(ふしゅう)色濃(いろこ)くする。

「さらには、フォーレスの(せい)なる城壁(じょうへき)、アルネル山脈が奴らに(けが)されたとの報告(ほうこく)もある。」

高台に立つギーア教、最高位のフォーラ教皇(きょうこう)は、さながら大舞台の主人公のごとく朗々(ろうろう)と、しかし鬼気(きき)(せま)った声色で動揺(アンコール)(もと)めた。

 

「人の姿を()りたホルンの悪魔が息を吹き返そうとしているのだ!」

フォーレス国には3000年に(わた)()えない傷がある。

「奴らは今、我々の空を(ふたた)(しゅ)()めんと穢れた祭壇(さいだん)(しつら)えている。」

「伝説」と名を変え、月と星々に()わって羊たちの血と肉が空に()かれた悪夢のような情景(じょうけい)が。

 

「しかし、恐れることはない!」

羊たちを熟知(じゅくち)する教皇は、闇を()(はら)聖剣(せいけん)のごとき(するど)い声で呼びかけた。

「我々の神、ギーア様の救済(きゅうさい)は必ず起こる。」

3000年もの昔、心を(むしば)まれ立ち上がる気力すら()れていた彼らの目の前に()りた(ひかり)のように、

「お前たちは(しゅ)御庭(みにわ)に悪の蔓延(はびこ)る姿を想像できるか?」

彼らの迷いを()(はら)う。

 

『悪夢』を()ぎつけ、『悪夢』を(はぐく)(ひかり)でもって―――、

 

「いいや、できない。なぜなら、我々はこの()に命宿(やど)以前(いぜん)から知っているからだ。主の光は庭を(あまね)()らし、一片(いっぺん)(かげ)りも許すことはない。我々の(いの)りを宿した花々を愛すためにその恩恵(おんけい)で満たし、いつの日か我々を()()へと(みちび)いて下さる。」

『光』は聖杯(せいはい)(かたむ)け落ちる(しずく)で羊たちを()わせ、小麦(かお)るパンで彼らを誘惑(ゆうわく)する。

「ゆえに親愛(しんあい)なる信徒(しんと)よ、今こそ主にさらなる”喜捨(フォーリア)”を(ささ)げるのだ。」

――愛想笑(あいそわら)いの(たく)みな羊飼(ひつじか)いを使い、

魑魅魍魎(ちみもうりょう)(あざけ)り満ちるこの時代に産まれ落ちた我々がすべきこと。それは、(みずか)らが剣を取り、悪を斬る勇気を持つことではない。」

――耳障(みみざわ)りの良い希望(きぼう)見詰(みつ)めさせ、

「奴らは狡猾(こうかつ)だ。どれだけ強い力を手に(いど)もうとも、純朴(じゅんぼく)な我々を家畜(かちく)のように()める(すべ)心得(こころえ)ている。」

――彼らの目を(つぶ)し続けた。

 

「我々の(すく)いはここにしかない。」

彼らは信じている。

「ギーアの羊たちよ。主は我々の(おこな)いを(つね)に見ておられる。なればこそ、(ラムール)を、いや、(フォーレス)を”祈り(フォーリア)”で満たすのだ!さすれば主は必ずやそれに(こた)えて下さる!」

この世に”(かみ)”が存在(そんざい)することを。

自分たちを(おびや)かす『悪夢』を、必ずや、何者かが追い払ってくれることを。

 

(おごそ)かな祭服(さいふく)に身を(つつ)んだ男の雄叫(おたけ)びに民衆(みんしゅう)歓声(かんせい)を上げる。

そこに求める「答え」があると信じて(うたが)わない。

 

神は全てを見届(みとど)ける。

全ては彼らの(のぞ)む『奇跡(きせき)』のために。




今回もまた、一段と長い「あとがき」になっています。ごめんなさいm(__)m


※ヨーゼフがリーザに持たせた首飾り(水晶)
原作のキーアイテム「ノルの水晶」と、装備品「エメラルド」を合わせたものです。

○原作での「ノルの水晶」のアイテム解説は、
ホルンの村に伝わる秘宝。使う者に愛情があれば、モンスターに気持ちをつたえることができる。
(マザークレアの洞窟に入るために必要なアイテム、許可証のようなもの。)

○原作での「エメラルド」の解説と効果は、
リーザが装備する事により、このエメラルドのあたたかい光が、戦いに疲れたモンスター達の心と体に安らぎをもたらす。
(リーザの専用装備。毎ターン、仲間のHPを回復させる。)

原作での「エメラルド」のグラフィックは青い宝石ですが、今回は「ノルの水晶」に合わせて緑の宝石ということにします。

※屹立(きつりつ)
山、もしくは山のような巨大な物が威風堂々とそびえ立っていること。

※ギーア寺院
多分ですが、スペインのバルセロナにあるカトリック教会(キリスト教の宗派の一つ)、サグラダ・ファミリアをモチーフにしていると思われます。

「余談」
サグラダファミリアは1882年に着工し、色々と問題が起きながら今も建設作業が進められているそうです。
「サグラダファミリア」はスペイン東部のカタルーニャ州の言語らしく、日本語に訳すと「聖家族贖罪(しょくざい)教会」という意味らしいです。
贖罪教会とは、信者たちのお布施(寄付金)で建てられる教会のこと。
サグラダ・ファミリアは初代設計担当のフランシスコ・ビリャールから2代目アントニ・ガウディが引き継いだもので、完工には約300年かかると言われていた。
(現代では技術が進み、おおよそ2020年代で完工の見込みがあるとか)


※祭服(さいふく)、司教冠(ミトラ)肩掛け(ストール)
聖職者が礼拝などの行事の際に着る衣装の総称です。
ミトラは司教や主教(偉い人)が祭事の時に被る帽子(冠)のことです。
ストールは聖職者が首からかける長い帯のことです。

※フォーラ教皇
「フォーラ」は名前ではありません。
キリスト教の宗派の一つ、ローマカトリック教会の最高位の聖職者、「ローマ教皇(またはローマ法王)」のような役職名です。
なので「フォーラ教皇」は「ロマリア教」の宗派の一つ、「フォーレス・ギーア教会」の最高位という意味で…よろしくお願いしますm(__)m

※羊と羊飼い
前回も書きましたが、この作品における大きな宗教は「キリスト教」をモチーフとした「ロマリア教」があり、このフォーレス編における「ギーア教」は「ローマ・カトリック」のような宗派の一つです。

なので、ここで出てくる「ギーアの羊」は「ギーア教の信徒全て」を指します。
また、「羊飼い」は「イエス・キリスト(もしくは12使徒)」のような神に遣われし導き手のような意味です。

……知識が浅いために、間違った解釈をしていたら申し訳ありません。

※聖杯(せいはい)
キリスト教における儀式(聖餐(せいさん))に用いられる(さかずき)
キリストと12使徒が「最後の晩餐」で用いたとされる杯。
ゴルゴタの丘で(はりつけ)にされたキリストの死を確認するためにローマ帝国の兵が槍(ロンギヌスの槍)で刺した。そのキリストの脇腹から滴った血を受けた聖なる器。

※喜捨(フォーリア)
「喜捨」は「きしゃ」と読みます。
意味は、「進んで信仰する何かに金品を寄付すること」「進んで貧しいものに(ほどこ)しをすること」です。
また、「フォーリア」は原作で登場する花の名前で、花言葉は「祈りを捧げます」。

今回は、フォーレス国で使われる「喜捨」の隠語として用いました。

※…なんか、見つけた(笑)
「聖杯」の注釈を付けるために色々と検索していたら、フォーレス編と関係あるのかないのか悩まされる単語をいくつか見つけてしまいました。

まず、見つけてしまった(w)経緯は、「聖杯の行方」の項目を読んでいた時、ニコラ・プッサンという画家の「アルカディアの牧人たち」という作品が「聖杯の行方」に関連していると書かれてあったところから始まります。

「『アルカディア』の牧人たち」に描かれている墓石には「私(死神)はアルカディアにおいてでさえも、存在している」というラテン語の名言が記されいるらしく、ヨーロッパの格言『メメント・モリ』(「死を忘れるな」「死を記憶せよ」「死を見詰めなさい」というような警告の言葉)を意味しているらしいです。
また、このような「死」を想起させる表現、作品などは14世紀、ヨーロッパの人口を3分の1を死に追いやった伝染病『ペスト(黒死病)』が原因の一つであり、このペストの流行った時期に『魔女狩り』も行われていたとか。
(魔女狩りの最盛期は15世紀から17世紀だそうですが)

●アルカディア
古代ギリシアより、ギリシア南部の特定地域を指す地名。
のほほんとした田園風景と、そこで幸せに暮らす牧人たちの様子がイメージになって「理想郷」という意味でもあるらしいです。
また、色々な戦乱に見舞われたためか。ヘレニズム時代(紀元前323年~紀元前30年)には傭兵の供給地ともなっていたそうです。

ここまでを見ると、何となくアーク世界の「アルディア」に関係しているようにも思えました。
私の中では「アルディア」は「アメリカ(自由と夢の国)」イメージで、マフィアこそいるものの、他の殺伐とした国々よりもよっぽど「理想郷」と言えるような。
また、「傭兵の供給地」は「ハンター発祥の地」と符合してる気がします。

●メメント・モリ
戦時中、絶好調の将軍が戦場に向かう際に掛けられた言葉で、「明日もアナタが絶好調とは限りませんよ(死んじゃうかもしれませんよ)」という警告らしいです。
僕の中では「ガルアーノ」は、魔女クレアの産み落とした「生と死の象徴」的な立ち位置で書いているので、「私(死神)はアルカディアにおいてでさえも、存在している」という格言、さらには「アルカディア」という地名は彼を指しているような気がしてなりません。
しかもそれが「将軍に向けた言葉」ともなれば、ねえ。

●ペスト
これに関しては単なるこじ付けなのかもしれませんが、
一説にはペストの原因はノミが病原菌の媒介になっていて、ネズミなどの動物がこれを広めたのだとか。
はたまた、そのネズミが大量に発生したのはネズミを狩る猫が減ったためであり、その猫が減ったのは「魔女の使い」として大量に処分されたからだ……という話もあるのとか、ないとか(笑)
ただ、この恐ろしい流行病の様子は「伝説の魔女(クレア)」の誕生のシーンを見ているような気分にさせます。


これらを踏まえると、「ガルアーノ(将軍)」と「エルク(傭兵)」、「リーザ(魔女)」そして「女神像の式典に現れる聖櫃(アーク)(聖杯の行方)」が繋がっているように見えて、
…待て待て。じゃあ、魔女クレアを「聖母マリア」に例えるとガルアーノは「キリスト?」で、そうなるとエルクの初期装備が”槍”なのは、ガルアーノ(キリスト?)の「死」を暗示している(ロンギヌスの槍的な)。ガルアーノの研究によって生まれたキメラは「キリストの信者、使徒たち」……
…とまあ、私の暴走する妄想のお話でした(笑)


※忘れてました、ごめんなさいm(__)m
今回の最後に書いた教皇様のありがたいお話の部分なんですが、
原作では、リーザがラムール町に入る時に挿入されるシーンでした。
今回、フォーレス編の最後に回したのは、意図的にそうしたのではなく訳ではなく……m(__)m

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