「…リンゴ?」
それは
けれど、もしかすると、そう見えているのは私だけで、他の人の目には別の物に
それくらい、その
「
「…本物の、リンゴ?」
それが「雲」と「
その「赤い果物」の、隠しきれていない
その「
香水よりも強い、不自然に甘い
けれど、それ以外はいたって普通のリンゴ…。
「今の子たちでも耳にしたことくらいはあるんじゃないかい?この世に生まれた最初の人間は、林檎を食べて”
知ってる。小さい
「これがその林檎さ。…というのも少し
お
「これを、食べるんですか?」
「それはアナタが決めることだよ。」
そしてリンゴは私に
…どこか私のよく知る『悪夢』と
空に黒い魚が
そして、
その
それだけ、「赤」は
「食べると、どうなるんですか?」
魔女の
「赤い
お婆さんの
「赤い
そこで
「……本心、夢、現実?」
かと思いきや、うっかり私が
「アナタが欲しいものは何?強さ?弱さ?それとも優しさ?…それとも、
リンゴに呪われた魔女の言葉には
「林檎はアナタをアナタの思うように変えてくれるわ。
「…うそ。」
そんなに…、簡単に?
本当にそんなことができるの?
「はたまた、私すら呪い殺す『恐ろしい魔女』にだってなれる。」
「え?」
…何を言っているの?どうして私がそんなことを考なきゃいけないの?
「今のアナタのように、誰かを特別に想う心も
お婆さんの
「クレアお婆さん、私……」
それこそ、
それでも魔女の唇は私の目を見て動き続けた。
「
臆病?
私が、皆に隠し事をしてるって言いたいの?
本当は、「私を
「私、そんなこと…、」
でも、もしも、本当にそれで全てが終わるなら。「戦争」も「悪夢」も終わるのなら…、私は……、
……ううん、私、バカなことを考えてる!?
私、ついさっき『良い魔女』になるって
リッツみたいに、私の
それが今はもう、「全部から逃げられる」なんて甘い言葉に
…信じられない。こんないい
気味が悪いっ!
…でも……、それでも、できることなら私は、ただただ彼に護られるだけの女になりたい。
だって、もう、これ以上
暴力と血を見るのはもうたくさんなんだものっ!
…でも…でも…でも……、
「どうしたんだい?これを食べたところで世界が終る
恐ろしいような、優しいような。不気味な瞳で私の返事を待ってる。
…でも……、
「……クレアお婆さん、ごめんなさい。私、これは食べられません。」
「どういうことだい?」
ようやく、お婆さんは「細く静かな目」を見開いて私を見た。
「言っておくけれど、この林檎を
私は、そんなお婆さんの目を見てさらに意志を
ヴィルマーさんから薬を受け取った時よりもハッキリと、私自身の『声』を耳にした。
「今でも、普通の女の子には
……そう。
「その人は両親を殺されて、親友や恋人をその手で殺してしまったんです。」
今の私にとって、彼は私の大切な生きる目的。
「これ以上、彼を悲しませるような世界を放ってはおけないんです。」
彼がいつだって笑ってられる世界、それが私の夢。
「だったら
「そうかもしれません。でも、少し違う気がするんです。」
だって私はまだ、たかだか14歳の小娘なんだもの。クレアお婆さんやゴーゲンさんを
だけど今の私なら、これだけは胸を
「私、『良い魔女』になるって決めたんです。」
「『良い魔女』?」
あの『伝説の魔女』が、ポカンとしてる。その気持ち、よくわかる。
そもそも『魔女』が何なのか分かってない私にだって、それがどんなものか分かってないんだもの。
でも、それが今の私が考えられる
「どうしてそれがこのリンゴを食べない理由になるのかまでは分かりません。ううん、食べても何も変わらないのかもしれない。」
彼と…、
「でも、何か違う気がするんです。なぜかとても
「すみません、こんな
「フフフ、
クレアさんは、すっかり「お婆さんの顔」に戻っていた。
「そうだね。この林檎がどんなにアナタに必要なものだったとしても、
ふと、思った―――
お婆さんはどうしてこの、
「…そして、私はアナタに
そんな私の
お婆さんは林檎を運んできた細身の大男の
「…えっ!?」
細身の大男はみるみる
大きさだけじゃない。
それに『声色』も…、ソレはもう”別人”としか……。
「これが、過去に私が
「……」
「林檎は
―――お婆さんは「
だから表情がなくなってたんだ。
「
私の心を不安定にして、「
「
だけどオカシなことに、お婆さんの
「愛」や「真実」なんて、それこそ
お婆さんは私を
「でもね、だからこそ、アナタに
「な、何の話ですか?」
話が二転三転して、とうとう私の頭は追い付かなくなってしまった。
結局、クレアお婆さんは何が言いたいの?
「私にはね、子どもがいるんだよ。」
子ども…。
不思議と、「子ども」というだけであらゆる『悪』を
それが例え、フォーレス国に多くの人を不幸にした『
「あの子はずっと昔に私の手を離れ、自分の意思で世界に大きな
…見ていて胸が
もしも、私が「戦争」で
「それでも私は、あの子を
そんな臆病なところも、ついさっき
「罪は自分で
『伝説の魔女』も、私と同じようにソレを「自分の『力』そのもの」だと感じているんだと思う。
そして、彼女はソレを「罪の
「それでも殺せないんだよ。自分の子は、どうしても。」
それでも私は
だって、そうでしょ?
「私が殺したら、貴女は私を許せるんですか?」
「少なくとも
そんなことを望んでるなんて……、
「
「そうだね。母親
それでもこの人は蛇でもなく、魔女でもない目で私に
「どうか、あの子を殺してやってはくれないかい?」
お婆さんは自分が利用されるのが怖くて
自分の子に「怨みごと」を言われるかもしれないと思うと、
私は思った。
「私には自分の手で”答え”を見つけるように
「…殺せないんだよ。」
人は皆、自分で自分の問題を解決できないくせに、
それこそが「愛」だと
「どうしても?」
「自分の首を落とした方が楽なくらいにね。」
「…なんでそうしないんですか?」
「それが、この”林檎の毒”なのさ。」
お婆さんは決して悪い人じゃない。
その言葉は経験の一つとして
だけど、それはお婆さんが人生の中で見つけた”答え”であって、必ずしも私の人生でも
だって、私は私。お婆さんはお婆さんなんだもの。
皆、同じ世界にいるけれど、皆が皆、「赤の他人」なんだもの…。
私はお婆さんの話をそう
すると、ノックもなく別の化け物が部屋に
その化け物は入り口で立ち止まって私を
「マザー、橋の
「ご苦労様。傷の
力強い筋肉を
とても、
「
「そうですか、それは良かった。では、休んだらまた村の
「岩はどうします?」
「もう、必要ないでしょう。」
…私はこの化け物を知ってる。
「はい、わかりました。では…。」
そんな2、3mはあろうかという
悪魔は机の上のリンゴと私に目を
「やめておくれ。悪いのは私なのだから。」
それでも悪魔は
「…申し訳ありません、マザー。」
悪魔は心からお婆さんを
だから、知ったような憎まれ口でこの人を
…知らなきゃいけないのかしら?それは私に必要なことなのかな?
「あの…、」
悪魔が部屋を出ていって、『声』が聞えなくなったのを確認してから私はオズオズとお婆さんに
「うん、どうしたんだい?」
「もしかして、ホルンの前の橋を
「ああ、私がしたことだよ。岩を
「…どうしてですか?」
あの事件がなかったら、リッツに
町の人にあんな想いもさせなくて
それなのに…、
「あれは…、」
「私なりの、あの子への精一杯の
「でも、あの人たちは空から来るんですよ?あんなもの、何の意味もないわ。」
「だから”主張”なのさ。」
…ねえ、おじいちゃん。おじいちゃんもこんなだったの?
気付かれもしない小さな声でしか
「少なくともああすることであの子は私の存在に気付いたはずさ。あとは…あの子の反応
…
町の人に
あれはそういう小さな、小さな”勇気”の形。
でも、あんな「小さな勇気」一つで貴女がすべきことは全てやったって言うの?
私に押し付ける理由になるの?
それでどうやってこの人を理解すればいいの?
…わからないわ。
※細身の大男→原作の「野生ヘモジー」のことです。(ヘモジー系統の最下位種です)
※ヘモジーよりも一回り以上大きな、屈強な大男(黄褐色の肌)→原作の「キングヘモジー」のことです。(ヘモジー系統の最上位種)
※2、3mはあろうかという黄褐色の悪魔→原作の「ナイトストーカー」のことです。
153話「魂の帰郷その七」に登場したモンスターのことですね。
※本物の林檎
原作の「りんご」系アイテム全般を指しています。
「りんご」系統のアイテムには、
使用するとレベルアップする「みなぎる果実」や、MPを回復する「魔法のりんご」、HPを回復する「回復果物」などがあります。
私の作中ではそれぞれが個別のアイテムとして存在しているのではなく、使用者の意図(心の声)に応じて効果が変わることにします。
ちょっとした本編のネタバレになりますが、この「本物の林檎」は、
ミルマーナ国のトヨーケの森、恵みの精霊が育てる大樹でしか得られないことにします。
また、クレアお婆さん(スープは作りませんwww)が言う「本物の林檎」の話は、旧約聖書で語られる「失楽園」の重要なアイテム(禁断の果実)をモチーフにしています。
一応、「失楽園」の
●「失楽園」ってな~に?
世界に「最初の人間」として生まれたアダム(男)とイブ(女)はエデンの園(楽園)で暮らしていました。
神様からは「この園にあるものは何でも食べていいよ。でもこの”善悪の知識の木”になる果物だけは食べちゃダメだからね。」と言われ、二人もそれに従って生活していました。
ところが、悪い蛇がイブをそそのかし、二人は果実を食べてしまいます。
すると、善悪(知恵、道徳など)を知った二人は裸であることを恥ずかしく思うようになり、局部を葉っぱで隠すようになります。
禁断の果実を口にしたことに気付いた神様は二人に様々な罰を与え、楽園から追放するのでした。
罰の内容は「永遠の命の喪失」、「労働の義務」、「出産時の苦痛」、「逃れられない男女間の恋愛」などなど。
ちなみに、男性の喉仏は、アダムが果実を喉に詰まらせたからできたそうです(笑)
――おわり――
さらにちなみに、この「禁断の果実」は宗教や地域によってはイチジクだったり、ブドウやトマトだったりします。
リンゴであると言われる説の一つに、”善悪の知識の木”をラテン語で表記する時、”悪”の部分が”リンゴ”と同じ表記だから。だそうです。
さらにさらにちなみに、一応、この「アークの世界」では「ロマリア教」という「キリスト教」モチーフの宗教が広く布教されていることにしています。
キリスト教にもカトリックやプロテスタントなど宗派があるように、
アークの世界でもロマリア教から分裂したものや、ロマリア教の起源と言われるものがあることにします。
多分、本編では原作に登場する「ギーア教(詳しくはまた別の機会に)」だけを扱うことになると思います。