――――カルミオの丘
「オエッ……」
何かに
無意識に
私は
「…ありがとう。」
大きな体を使って背中を
「すまん。
「我が儘はお
「…まあ、のう。」
「だったらむしろ、私はその我が儘に
ここで”愛”って言葉がすんなり口にできない
でも、それを”気持ち”として受け入れられるようにはなった。
この人と、あの小さな友人のお陰で。
「…ありがとう。」
何が切っ掛けかわからないけれど、ゴーゲンさんは私を
「ゴーゲンさん、一つ聞いてもいいですか?」
「なんじゃ?」
左手にはフォーレスを
「どうしてあんなことを言ったんですか?」
「あんなこと、とは?」
「…大きくなって、ゴーゲンさんの言いつけを守って自分の
「……」
そして、私の目を確かめるとまた前を向き、歩き始めた。
「リーザ、
ヨタヨタと。けれど
「じゃが、かつてこんなことを本に
多分、それはあの
あの時のゴーゲンさんは”夢想家は悪だ”って言ってた。
だけど…、その続きがあったんだ。
「
大人たちの抱える不安、それは、こんな風に話を
「良く言えば”優しい
それが、この人の言う「世界は”愛”で動いてる」っていうこと?
「それを”悪”と言うのなら、儂は
「……」
理解できることと、理解できないことがある。
受け入れられることと、受け入れたくないものがある。
それは頭じゃなくて心の問題。
”子ども”には
……”大人”?”子ども”?
”私”はいったいどっちなんだろう。
「ホレ、コレをやろう。」
そう言って差し出された手には
「……」
「ホッホッホ、そう
「…ありがとうございます。」
……とても、おいしかった。
――――
そこには
「……ここ、なんですか?」
私はこの国に生まれて一度だって「伝説の魔女が生きている」なんて話を聞いたことがない。
ましてや、こんなに簡単にその隠れ家が見つかるなんて、すぐには信じられなかった。
ううん、ゴーゲンさんと
「おそらく、この水晶がなければここまで
それもまた
確かに、洞窟は霊峰カルミオでできた谷の奥深くにあった。
地面には地形的な
近くに村はないし、川もない。化け物たちだって少なくなかった。
だけど、だからといって、こんなにも山の向かいは視界が開けているのに誰も気付かないものなの?
「『
だったら、この世に魔法使いがいる
そこにどんな危ないものが
そういう『力』があるから、悪はなくならない。
遠目から見ると、洞窟は真っ黒な
…これも、『結界』の一つなのかな。
「…え?ここまでなの?」
それが『
こんなにも
そう思って私なりに
けれど、
「ここまで
「え?」
ゴーゲンさんは何の
「この先に道があるんですか?」
「まあ、そうなんじゃろうが。まずは
そう言うと、おじいちゃんから受け取った
すると、
「クレアよ。
当然のように、ゴーゲンさんはそれに話しかけ、コウモリもまた、当然のように人の口を
『ウルトゥス
それが、コウモリの言葉じゃなく、コウモリを『
コウモリの口を
だけど、その向こうにいるのが「伝説の魔女」なのだとしたらそれは、想像していたよりもずっと
それに…、「ウルトゥス」?ゴーゲンさんの
すると、私の予想が正しかったのか、ゴーゲンさんがそれに応えた。
「なに、お前さんも気付いとるじゃろう。ここに迷える子羊がおるのでな。この子に
『…わかりました、どうぞ中へ。ですがどうか、中へはその子とその
言い終わるや、ゴーゲンさんが目星を付けていた
彼女の『力』を思えば、人との
だけど、どこか、
「あいわかった。たっぷりと
『ウルトゥス導師ほど
「でも、ゴーゲンさん…、」
私は、彼の目的を確かめるように
「なに、大丈夫じゃよ。会話ぐらいなら
それ以上、口を
「
ゴーゲンさんはヘモジーたちを
「別に
「フム、そうか。わかった。
そして、この人も……。
――――霊峰カルミオの洞窟内
「…何にも見えないわね。」
ゴーゲンさんから
そこに、
だけどそれよりも今は、ゴロゴロと
ううん、それだけじゃない。
「これ、トロッコ?それに…やっぱり……。」
杖で足元を
そこに、
多分、以前ここは
フォーレス国では
足元に気を
おそらく魔女クレアに命令されて監視していたんだろうと思う化け物たちが、
『…
『
『……外の…人間…』
『
『……
『
『声』のする方へ杖をかざしても、そこに生き物の姿はない。
ただ、かざした『明かり』から怯えるように
ネズミや虫のように
「大丈夫、落ち着いて。私が話してみるから。」
「敵じゃないわ。アナタたちの”マザー”と少しお話がしたいだけ。私、アナタたちと戦いたくない。」
そんな夢物語のような言葉、これまでにだって何度も投げかけてきた。
だけど、それに応えてくれた化け物たちは今までに一人もいなかった。
皆、それぞれの主人から刻まれた「命令」に
だからこれは、すでに「”マザー”との
ここでこの子たちの取る行動が、”マザー”の私たちへの本心。
…お願い……
『……』
やがて、怯え、波打っていた「影」は
「……ありがとう。」
私は、初めてその『言葉』がもたらした光景にどこか、感動を覚えていた。
――――一方、迷える子羊が洞窟の奥へと進んだ後、残された老魔導師は
コウモリは
「…あの子は、どうでしょうか?」
これまで多くの人間に「
『そんなに気を張らなくても
「…それでも、私を
それが、
『貴方は、
彼女の口から出た「共通の知人」を指す言葉に、
「罪を
『…ですが、私は貴方が
「……」
彼女の言葉が耳に痛かった。
私は、多くの人間を巻き込み、戦争を長引かせた。
私が巻き込んだせいで死んでいった者は少なくない。
本来なら
まるで、あの人のように。
『それとも貴方は、恩人の想いさえ
もしかすると、この水晶を目にした時から、この人に会えると分かった時から、彼女ならこう言ってくれると読んで私はここを
私は、そんな
『もしくは、
…あの人も、そういう人だった。
私だけじゃない。この人も、あの人のお陰で『力』に飲まれず、今を生きていられる。
あの人は、そういう人なんだ。
だから私は、
「私は、あの人の生きた
自分の正体を隠し、精霊に
あの人がするはずだった「敵を
「私たちのような人種にとって、生きることは
そうではなく、もっと「命」として
「それでも、この空気を
私はその「
そう思えて
『その答えも、貴方はとっくに出しているのでしょう?ただ、
「……」
『ウルトゥス、忘れないでください。貴方はあの人が愛した、たった一人の人。
コウモリの
それでも彼女は、今の彼女は、私が
「そう、ですね。本当に……。」
少しの
「一つ
『なんでしょう?』
「どうして私をここへ
彼女は私の
だというのに私は彼女を
彼女も
『私はただ、
それでも彼女に「
「私は貴女の
彼女は痛いほど身に
「貴方は私を憎んでいた。あの人への愛が本物であったように。」
『
『……そうなのかもしれませんね。心の奥底ではあの人を
「不毛、とまでは言いませんよ。私は、貴女の気持ちを知りたいのですから。」
『それが、貴方の人生に良い
「同じ男を想う者同士、私には持ちえないあの人への感情を知ることで、私はよりあの人を想うことができる。それは、この戦場で生き残るための”
『そうですか。やはり、貴方も
それでも彼女は私の会話の
「それは貴女もあまり変わらないようですよ。」
私はその
『というと?』
「話は戻りますが、貴女はどうして奴らと接触したのですか?」
『…それは……』
私は、この
「知りたかったんじゃないですか?自分の子どもの住む世界がどんなものなのか。」
『…ズルい人だわ。
彼女は私の意図に気付いた。だが、まだまだ付け入る隙はある。
「すみません。それが、今の私の生きる目的なのです。」
『そうですね。理解できます。ですが、ごめんなさい。いくら貴方の
私は3000年前の彼女がどんな人物だったのか知らない。
けれども今、目の前にいるコウモリは
そう、思った。
『確かにあの子を産んだのは私です。
「それがどんなに
『戦争に大きいも小さいもありません。命に大小がないように。あの子が
「私たちはアレを殺すつもりです。」
そこまで口にしたところで、私は
どうしてこんな
『あの子を
私は、彼女が「母親」であることを
「そうですか。分かりました。」
「男」と「女」の違いをまざまざと見せつけられた気分だった。
『悪夢』に悩む
けれども彼女は『
そして、『
純情であることに違いはないのかもしれない。
しかし、彼女はもう他人の言葉に心動かすような「乙女」ではない。その
『今になって思えば、あの人も貴方のように私に
それでも彼女からあの人は消えない。
「
私は、それを
「あの人は私とは違います。それに、貴女の言葉を借りるのなら、貴女は恩人の想いを無下にするような人なのですか?」
『……』
言葉はない。
それでも彼女の
『本当に、貴方たち賢者は口が
「
私たちは笑い合った。
これが私の生き方で、これが彼女の生き方なのだ。
3000年の時を
『さて、彼女がそろそろ私の所へやって来るようなので。思い出話はこの辺りにしておきましょうか。』
「そうですね。」
…そんなに時間が経っていたのか。
胸を
「時間」……。
彼女は気を
おおよそ100万日の一分一秒……。
彼女はその時間を使って、
もしも私がその立場に立たされたとして、彼女と同じことができただろうか。
人は時を経て心を変化させる。
そこで終わりではないんだ。ただ、人間がそれよりも
だからこそ私は彼女に興味を持ったのかもしれない。
人間が3000年を生きて、悪魔にならずにいられる「
『また、こうしてお話ができるといいですね。』
「え?」
それは本当に意外な申し出だった。
確かに、今回は友好的な会話ができたかもしれない。
だが、彼女にとって私は想い人を
この「姿」を目に映しながら「
『あら、
……感動と、
私は、大変な思い違いをしていた!
彼女は3000年を経ても
そんな私との再会を期待し、さらには「友」としてまた「お喋り」をしようと……。
知識では彼女を
私は
そう、思い知らされた。
『もちろん無理にとは言いませんし、私もここを動くことができません。ですが、できることならまた、訪ねてきて
「…いいえ。
『そうですか。良かった。』
……私は
だがそれは同時に、この闘いに勝つための
「…リーザを、よろしくお願いします。」
※コウモリ→原作の「メイジバット」のことです。
※怯えるように逃げ惑う「影」→原作の「ブラックレイス」のことです。
※カルミオの丘
原作のマップにも登場する地名です。
キメラ研究所から徒歩で向かうとなると、フォーレスの国際空港を越えなきゃならなくなるので、テレポートでないと検問などの警備に引っ掛かってしまうかもしれませんね。
※霊峰カルミオ
原作にはない設定です。
原作で位置説明をするのなら、「マザークレアの洞窟」に設定された場所の山のことです。
※精確な場所まで『飛ぶ』ことのできなかった私たちは目的地まで歩いて向かっていた。
『飛ぶ』とはゴーゲンの魔法「テレポート」のことです。
※アルネル山脈
ハルシオン大陸(フォーレス国、グレイシーヌ国、ミルマーナ国などのある大陸)を南北に横断する大山脈。
フォーレス南部、首都ラムールやフォーレス国際空港を取り囲んでいる。
「アルネル」という名前は創作です。
※夢想家
原作に登場する装備アイテム「クラヴィスの本」の作者のことです。
詳しくは160話の注釈を参考にしていただけると助かります。
※キャンディ(飴)
「飴」と「キャンディ」の違いが気になって何となく調べて、何となく載せています(笑)
結果的に大きな違いはなかったんですけど(笑)
もち米などのでんぷん(糖類)を麦芽や酸によって甘みのある状態に変化させて作ったお菓子。
砂糖やその他糖類を加熱して溶かしたあと、水分を飛ばすなりして冷まし、固形状にしたもの(キャンディも含まれます)。
固形状のものを固飴、粘り気の強い液状のものを水飴と呼びます。
ちなみに、キャンディにも2種類あり、
高温で煮詰め、色素や香料などの調味料を加えて固めたものをハードキャンディ(塩飴、黒糖飴)。
低温で煮詰め、練乳やバターなどを練り込んだものをソフトキャンディ(キャラメル、マシュマロ)と呼ぶそうです。
※膨れる(むくれる)
単純に当て字です。漢字を当てないと読みにくそうだったので無理やり当てました。
※認知(にんち)
法律の上で、婚姻関係の有無にかかわらず、生まれた子を自分の子だと認めること。
※神母(マザー)
キリスト教(カトリック)において、”神父”のことを「ファーザー」といいますが、「マザー」は”女性の修道院長”のようにそれ自体を指す日本語がないみたいです。
なので、仮に「神母」と表現しました。
※「マザークレアの洞窟」の設定
原作では「マザークレアの洞窟」攻略の際、主要メンバー(ヘモジーなどの召喚獣を含め)が使用禁止。リーザの
ですが、奥のマザークレアの部屋手前まで来るとキャラクターがモンスターからリーザに切り替わります。
ってことは主要キャラクターも洞窟を通過してるんですよね?
なので、ヘモジーたちも連れて行こうかなとも思ったんですが、今回はリーザとパンディットのみで進んでもらいました。