「…ここ、のようじゃな。」
おじいさんが足を止めたのは、周りと何一つ変わらない
「確かにこの壁の向こうから『声』が…。でも、どうやって中に入れば…。」
「そうじゃな、おそらくこの辺に…ホレ、あったぞい。」
まるで初めから知っていたかのように―――鼻の
「…スゴイ。どうして?」
「ホッホッホ。悪たれ
そして、おじいさんの
――――
「…うぅ……」
入り口が開くと同時に『声』が、
押し潰されるほどの「苦痛」、「悲鳴」、「呪いの言葉」。
「大丈夫か?」
「…はい、平気です。」
ウソ。本当は頭が痛いし、
だけど、
…もし、ここにエルクと彼女がいたら、耐えられなかったかもしれない……。
……ダメ!こんなことを考えるからいけないんだわ!
私は私で、彼の支えになれる人間にならなきゃいけないの。
じゃなきゃ、彼と一緒に『
『悪夢』の向こうにあるものを、彼と一緒に見るんだから!
少女は
チラリ、と盗み見た老夫はそのいじらしい少女の姿にソッと唇を
――――雪山に
巣穴の中を進むと数分後には足元も
ギシギシと、「
「…こんなにすんなり入ってしまって大丈夫なんですか?」
まるで自分の家のような気軽さでズンズンと進んでいくおじいさんに違和感を覚えた。
エルクだったら、入り口やその周りを見回って
それなのに、このおじいさんは…、
「心配無用じゃよ。
おじいさんの言葉を
――――オカエリ…オカエリ……
やがて、電気の
…この『声』、
だけど、前にここに入れられた時と何か違う。
耳に
体の中に入り込んだソレは私の心臓の上から上へとベットリへばり付き、少しずつ太らせていく。
それはもう、ほとんど
今すぐにでも切り落としてしまいたいくらい
だけど『癌』は、『
『
「こういった
それはきっと魔法の一つなんだと思う。
おじいさんは背中でも周囲に目を走らせている気がする。
「あまり
「…イイ顔。」
「確かに、『アレら』は望んでここに
「……」
そう言うおじいさんの背中はどうしてだか、急に小さく見えた。
「
私が流す涙も、
『魔女の力』を宿す私は「血を流す者」だから。
「これからも何十体と殺すことになる。ワシらはそういう戦場を歩かねばならん。…鬼に、なりきることじゃ。」
私たちは止まれない。新しく産まれようとしてる『女』を殺すまで…。
「私たち、正しいんですか?」
「正しさを他の誰かと
「…オカシイですよ。」
「そう、
矛盾を知っているのに、私たちは誰かを殺さなきゃならない。
「どんなに
”愛”なんて言葉を
…こんなにも苦しいものだって知ってるのに。
「もしも、お前さんが別の”生き方”を見つけ、この
おじいさんは振り返り、そのヨボヨボでボロボロな
「その時は、お前さんの手でワシを殺しておくれ。」
納得がいかない。何もかもに。
誰かを殺さなきゃ、『世界』は回らないの?
誰かを殺さなきゃ、私は幸せになれないの?
…生きていたくない。こんな『世界』でなんて。
それでも私は……
…続いてしまえばいいと少女は思った。
しかし、少年少女の願いはいつの世も
「……」
そして、
「…フム、
知人の家を
扉にはIDを求めるパネルも、
かといって、岩壁の時のような
「開きそうですか?」
「そうじゃのう。ちと
「え、どうしてです?」
「どうやらこの先にワシの個人的な待ち人がおるようでな。お前さんにはあまり聞かれたくない話をするかもしれん。」
「…おじいさん一人で大丈夫なんですか?」
老夫を
ただ、誰かを「独り」にすることへの
「…フム、そうじゃな。それでは、ケラックを
「はい!」
少女もそれが差し出がましいことだということは気付いていた。だからこそ、こんな小娘の
「お願いしてもいい?」
『キキィ!』
老夫が
小人たちは細い老夫の体をよじ登り、
「お気を付けて。」
「お前さんも、くれぐれも迷子にならんようにな。」
老いた『運命』は未来ある『運命』を想い、愛らしい教え子の手を
「まあ、可愛い子には旅をさせよとも言うしのう。」
『キキィ』
「そうじゃな。あの子であれば問題なかろう。」
「キッキ」
「ホイホイ、ならばワシもさっさと自分の用事を
老いた『運命』は扉に手をかざし、扉は風に道を開ける煙のように「鍵」という
――――リーザ一行
老夫と
「どうやったらこんなことができるのかしら。」
施設は山を
「……」
少女の見下ろす先には
少女の耳はそこから電気の流れる音ではないものが聞こえていた。
「ウォンッ」
「え?」
『声』から耳を背けることに集中していると、狼が彼女の注意を前方へと向けさせた。
「……」
目を細めてようやく見えるそこには
「……」
少女は狼の助言を
「!?」
やや遅れてドラゴンの守る扉が開くと、
…その
「おやおや、まさか本当にやって来るとはね。」
「…そこを
「ん?…フフフ、アッハハハ!」
少女は武器を抜かなかった。
経験の
「最近の小娘はオモシロイことを言うじゃないか。お望み通り通してやるよ。ただし、ここで色々なものを捨ててもらうけれどね。」
「どうして……」
戦場に砂をかけ続ける少女の様子に
「今のアンタのザマがその答えさ。」
「え?」
今の自分の姿、老夫はそこに”愛”の答えがあると言った。
この骸の魔術師はそんな老夫の言葉を
「アタシらはアンタの『
「…私は、皆を助けたいだけ。ホルンの皆も、アナタたちも。」
少女は夢を見ていた。一方の矛盾が許されるなら、もう一方の矛盾だって許されてもいいじゃない。
子どもじみた
あの老夫を殺さずとも許される『世界』を。
しかし、人は目の前にある『世界』を肯定する。
「老い先短いババアに今さら夢物語を見せて何が面白いのさ。おちょくっているのかい?」
誰かが思い
「違う。夢なんかじゃない。皆が望めば見つかる世界だもの。」
少女は望む世界を『声』に乗せた。
『声』は確かに魔術師に
しかし――――、
「…ック、ククク、アハハハッ!」
魔術師はまた、笑った。
しかし、今度の笑みは一度目のそれとはまるで違う。
「アンタ、自分と他の化け物たちと見比べたことがあるのかい?そんな
言いながら、魔術師は少女の見せる『世界』を
噛み締めるほどに
「バカにするのも
魔術師が、手にした
「止めて…」
「今すぐに、あの悪魔を黙らせな!」
『命令』と同時に、ドラゴンは翼ではなくそのワニのような短くも太い両足で飛んだ。
そのゾウのような
「…イヤだ。」
少女は
全ての
けれども彼女の意に反し、彼女を
――――ヤメテッ!!
「え?」
主人の
「……なに?」
すぐに、決定的な
「!?」
ところが、
ガアァァ!!
「パンディット!」
「!?」
――――カアサン…ココダヨ……カアサン、アイタカッタヨ……
よりハッキリと、『声』は少女の体へと流れ込んでいく。
『声』は『魔女の心臓』を太らせ、少女の体を内側から
耳を。
…苦しい……
「…パン、ディット?」
「ここは『魔女』の聖地。お前みたいな本物の怪物に対して何の
気付けば大男も甲虫も倒れていた。
「アンタも見ただろう?足元に
「ウ、ウウゥッ……」
息ができない。
「アタシらはコイツら全員の母親なのさ。」
鼻や口から入ってくる酸素を
頭の中が『声』でパンクする。
――――カアサン…イタイヨ、カアサン……ヤメテ……、カアサン…カアサン……
「ヤメテ!!」
抵抗するほどに、『声』は少女の血に溶けていく。
「コイツらは
少女が『声』に
パンディットっ!!
巨大な
…リ、リリー……
「あぁ……、」
『女』の瞳が
「……ぁぁぁぁぁぁああああっ!!」
『女』は
「さあ、お前がどれだけ『
骸の魔術師が、揺れる籠の中で
※ドラゴン=原作の「グレートドラゴン」のことです。
※骸のような魔術師=原作の「ウィッチクラフト」のことです。
※そのゾウのような巨躯からは想像もできない跳躍力
ウィッチクラフトの魔法「ジャンピングハイ」の効果です。
※狙い定めた狼の跳躍は~獲物に一歩届かない
ウィッチクラフトの魔法「ジャンピングロー」の効果です。
……と言いたいところなんですが、ウィッチクラフトにそんな特殊能力はありませんでした(^_^;)
まあ、同じ「ジャンプ系」だし?追加能力に「パワーロス」があったので、複合魔法ってことで許してくださいm(__)m
※不可思議な風がドラゴンの体を護り
グレートドラゴンの魔法「ウィンドシールド」の効果です。
※ケラックの声
今さらですが、ケラックのセリフを表記する際、「」ではなく『』を使っているのはケラックが一匹ではなく、三匹で一つの
(三匹が声を合わせている感じを表現しているつもりでした)
通常通り「」を使っている時は、三匹の内の誰かが返事をしている時だと思ってください。
(面倒な表記ですみませんm(__)m)
公式設定がどうなっているのか分かりませんが、三匹で一つの個体。三つ首の番犬、ケルベロスが別々の体を手に入れた感じなのかもしれませんね。
三匹それぞれが一つの手足であり頭。三匹の間では思考も共有されているんだと思います。
※フジツボ
ちなみに富士山状の石灰質の殻をもつことから「富士壺(または藤壺)」とも書くそうですよ。
※狒々(ヒヒ)
猿の一種。オナガザル科のヒヒ類の総称。