そうこうしている内に車は目的地に到着した。
ビビガのバカ話のお
オッサンも知っていて付き合ってくれる。まあ、あくまで仕事の成功報酬が前提なのだろうが。
いくつかの建物の陰に隠れた
「エルクか。どうせお前が来るのだと思ってはいたが、優秀な
緊急の依頼のために待ち構えていたギルドの役員は俺を見るとあからさまな態度をとりながら契約書を突き出してきた。
ビビガもビビガで別段反論するでもなく書類を受け取り、その内容を確認している。
「全く、10代のガキが人殺しや国際犯を相手に仕事をする時代とは、嘆かわしい世の中とは思わねえか?なあ、エルクよ。」
「知ったことかよ。それよりボーゲルチェンの鍵は?」
正直、何回繰り返したか分からない、似たようなやり取りが
それに、この程度の
ここの職員らは、返してくる俺たちの反応を見て賞金稼ぎとして適正か
今回も契約書を渡されたということは、俺はどうやらまだギリギリ合格
「ビビガからバカを呼んでくるって聞いてたからな。すでに吹かしてある。点検も終わってる。いつでも飛べるさ。それよりもよエルクよお――――」
ぞんざいに置かれた鍵を受け取ると、職員は孫を
「汚ねえ仕事が溜まってるんだ。たまにはこっちにも手え着けて欲しいもんだな。」
「どっかの10歳児にでもやらせとけよ。」
「10も15も変わらねえよ。」
実際に犯人と
ギルド所有の
「最終確認だ。タイムリミットは6時間。犯人の手元にいる人質は1人。現在、犯人は8番ターミナルの最上階で警官と
単独の能力者相手に交渉も何もないだろう。手に負えなきゃ
「はは、その前に音で気づかれるだろうよ。」
ボーゲルチェンはグライダーと言ってもプロペラが
「あんまり油断すんなよ。お前の専門分野だろうが、空港をジャックするような奴だ。相手も相当の
今回のは無意識に言ったのだろう。だから俺もビビガに忠告した。
「『能力者』なんて伏せ字めいた言い方すんなよ。結局は人の皮を
「お前らにだよ。」
「ああ?」
その
「それがな、聞いた話じゃあ、
「何が言いてえんだよ。」
「いや、
「そうやって
「ハハハッ、言うようになったじゃねえか。その通りだ。だがな、『
いざ、飛び立とうという段階になってビビガは俺を困惑させるようなことを言い始めた。いいや、オヤジの名誉のために可能性を
「何だよ、その言い方。裏があんのか?話次第じゃ配当にも異議が出るぜ?」
正直なところ、油断していた。犯人の行動がお
「現場で状況が一変したから手に負えませんでした。」なんて話にでもなったなら、この業界のプロとして致命的だ。
状況判断は可、情報分析は不可。以前、シュウにそう言われたのを思い出した。
「いいや、今んところは確証はない。だがよ、ただのバカが
「……ないことはないな。」
本当の話だ。最近のバカは下水道でクローンの研究に失敗してスライムを大量発生させるし、天才は片手間に手配書の
「第一、作戦自体が一人でやるような内容じゃねえ。仲間がいると思って間違いないと俺は思うんだがな。」
回りくどいことをしているのは確かだ。犯人の要求は離陸ではなく、着陸拒否なのだ。燃料が尽きるという明確な制限時間がある分、交渉はしやすいだろうが、いざとなれば飛行船はどこにでも逃げられるし、別の空港で着陸もできる。ダミーを飛ばしている間に
わざわざ空港内で犯行に
しかしそうなると、空港の犯人は
依頼を受けた賞金稼ぎは例え、依頼内容の
だからこそ、今回のような単独の依頼は滅多にないのだ。
「外交の相手と目的は?」
もしも
「相手がどこの誰かは分からねえ。依頼人はギルドにも伏せているらしい。だが、わざわざレベリオンなんて最新機に乗って来るとなると、ロマリア辺りじゃねえかと俺は
ロマリア。世界最大の軍事国家だ。なるほど、もしもそれが本当だとなると、
「時間はほとんどないが、俺の方でも、もう少し洗ってみる。何か分かり次第、手は回しておく。」
「分かったよ。とりあえずは用心しておく。」
「頼むぜ。お前は俺の大事な
「そりゃお互い様だぜ。頼むから受け取りの
OKサインを出して俺は真夜中の寒空へと飛び出した。深夜の曇り空。まさに一寸先は闇。悪魔が大口を開けて待ち構えているかのような大空の中へ――――。