聖櫃に抱かれた子どもたち   作:佐伯寿和2

147 / 236
魂の帰郷 その二

――――戦艦(せんかん)シルバーノア、作戦会議室

 

「なんじゃ、こんな所におったんかい。…少しは眠れたんか?」

チョンガラは会議室の中央に(かか)げられた世界地図をボンヤリと(なが)める金髪の少女に声を掛けた。

「…どうしたんじゃ、もう到着(とうちゃく)するぞい。出発の準備をした方がいいんじゃないか?」

リーザは彼の声に耳を(かたむ)けず、世界地図に()められた(いく)つものピンを目で追っている。

「こんなに、戦ったんですか?」

「…そうじゃのう。全部が全部、勝利とはいかなんだが、それでもワシらはできるだけのことはしてきたな。」

「どうしてですか?」

「…さあのう、ワシらしか、戦う者がおらんかったからかのう。それに、ワシらが止めなんだら、今頃はとっくに”世界”は”ロマリア”っちゅう言葉で事足(ことた)りとったかもしれん。」

「…誰か、()くなりました?」

(さいわ)い、味方は全員無事じゃ。じゃが、巻き込まれた民間人はたくさん死んだよ。」

今、この船が()りようとしている国に留められたピンを、少女はジッと見詰(みつ)めた。

足元に()()う狼の頭をソッと()で、灰色の表情を浮かべていた。

「助けられなかったんですか?」

撫でていた柔らかな手はゆっくりと閉じ、(にぎ)りしめられた(こぶし)(かすか)かに(ふる)えていた。

「……」

「…ごめんなさい。私、少し頭がオカシクなってるんです。」

男に振り返り、少女は陰気(いんき)な自分の表情に(うす)っぺらな()みを張り付けた。

「あの(ころ)、やって来る人たちは皆、私よりも強くて。私ではどうしようもなくて。誰かに助けて欲しかったんです。みんなを。」

「……」

 

「でも、それは我がままですよね?自分たちの問題を他人に解決してもらおうなんて、私、卑怯者(ひきょうもの)ですよね。」

(じょう)ちゃん……」

チョンガラは金髪の少女を振り向かせ、その武骨(ぶこつ)(てのひら)を小さな頭にソッと置いた。

「最強のワシらにだってできんことはある。それと同じように、嬢ちゃんにもどうしようもないことの一つや二つは必ずある。」

長い年月、砂漠の風に(さら)してきた男の手は重く、(かわ)いていた。

撫でるでもなく、ただただ置かれた掌から、男がその目に焼き付けてきた死者たちの阿鼻叫喚(あびきょうかん)が少女の中に流れ込んでいく。

けれども、語るその瞳は落ち着いていて、それでいて騎士を彷彿(ほうふつ)とさせるような清廉(せいれん)さと力強さがあった。

「戦っている内に、戦うことに必死になって、ワシの心を()()くしていたはずの死んでいった者への感傷(かんしょう)(うす)れていく。」

死者への想いはなく、復讐心(ふくしゅうしん)を武器にすることもなく、それでも彼らは護る戦いを止めない。

「ならば、ワシらは一体()()()()()戦っているんだと思う?」

「……」

「『聞こえとるんじゃろう』?それがワシの答えじゃ。そして、お前さんをここまで送ろうと決めた理由でもある。」

「…ありがとうございます。チョンガラさん。」

少女はソッと男から離れ、()()もった雪を()かすような温かく(やわ)らかい笑みをチョンガラに向けた。

「な、なに。可愛(かわ)()ちゃんを護るのはワシにとって天命(てんめい)のようなものじゃからな。」

それはいつもの冗談(じょうだん)ではなく、男が素直(すなお)に感じた彼女の異性としての魅力(みりょく)が引き出した言葉だった。

「フフフ。」

「…嬢ちゃん、その笑顔はあんまり無暗(むやみ)矢鱈(やたら)に男に見せん方がいいぞい。お前さんの身の安全のためにもな。」

男はその表情の裏で下品な感情を必死に追い払うことに(つと)めていた。

それを『知っていながら』、少女は彼を揶揄(からか)うように笑みを向け続けた。

「大丈夫ですよ。私はアナタが良い人だって『知ってますから』。」

「…その『耳』は少し反則(はんそく)が過ぎやせんか?」

「ごめんなさい。なんだか、久しぶりに(はげ)まされたような気がしてつい調子に乗っちゃったみたいなんです。チョンガラさんの忠告(ちゅうこく)は守ります。本当に、ありがとうございます。」

少女は礼を言うと、やや軽い足取りで客室へと戻っていった。

 

 

彼女の足に合わせて()れる(ゆた)かな金髪を見送ると、数万の人の顔を見てきた元商人は(あらた)めて思い知らされるのだった。

結局(けっきょく)のところ、リーザに限らず女っちゅう生き(もん)はどいつもこいつも(つら)の下に凶悪(きょうあく)な魔女を()っとるんだ」

胸の内で天敵への()しみない称賛(しょうさん)の言葉を(なら)べたて、肩を上下させるほどに大きな大きな()(いき)()いた。

「チョンガラさん、聞こえてますよ。」

(ひと)(ごと)が決して聞こえないような距離で彼女は振り返り、イタズラに微笑(ほほえ)んだ。

それを前にすると元商人は()(かえ)し溜め息を吐くことしかできないのだった。

「…(かま)わんわい。むしろ、隠し事がバレた時のお前さんらの(おそ)ろしさもよく知っとるからの。」

「フフフ。」

この時見せた少女の笑みはこの騒動(そうどう)に巻き込まれて初めて見せた「少女らしい笑み」だったかもしれない。

 

もしかすると、こんな気持ちになったのは村を出てから初めてのことかもしれない。

エルクのことは好きだけど、この気持ちはその言葉じゃ届かないところにあるんだって初めて知った。

それくらい、あの人は「いい人」だと思えた。

 

会議室を後にすると、リーザは一歩後ろを歩く狼を静かに抱きしめた。

「……ごめんね。お前のことも大事だって思ってる。だけど、あの人が言ったみたいに、皆それぞれできることとできないことがあるんだと思うの。だから、許して。」

狼は甘えるようにピスピスと鼻を鳴らし、その鼻先を少女の(ほお)()()せた。

「もちろん、皆のことも(たよ)りにしてるから。」

二人を(かこ)む借り物の化け物たちは、「当然(とうぜん)だ」という風な『声』で答えた。

 

 

――――フォーレス南部、パルパスト平原(へいげん)

 

とても静かに、天使が雪の上に足跡(あしあと)を残さず降り立つように白鯨(はくげい)はその大きな船体(せんたい)平原(へいげん)只中(ただなか)に寝かせた。

四方八方を見渡(みわた)しても、町の気配(けはい)はどこにもない。

けれど、ここに降りる直前、遠く遠くに薄っすらと、町明かりのようなものがあったのを目にした。

フォーレスは風習的に夜遅くまで起きている人は少ない。

だからあれだけ弱々しい光しか見えなくても、ここから大体10㎞くらいしか離れていないんだと思う。

 

「私どもが送れるのはここまでです。どうか貴女(あなた)に精霊の加護(かご)があらんことを。」

「無茶をするんじゃないぞい。」

二人は握手(あくしゅ)()わすと、逃げるように飛び去っていった。

やっぱり、本拠地(トウヴィル)の外はどこもあの人たちにとって危険な場所なんだ。

それでもなるべく私の負担(ふたん)を減らすために、こんなにも町の近くまで送ってくれたんだ。

多くを語ってくれるような人たちじゃなかったけれど、化け物のような私にも優しさを(そそ)いでくれる良い人たちだった。

そんな人たちの乗る白銀の船体も、みるみる間に暗闇の中に溶けていく。

 

見送っているとなんだか取り残されたような孤独感(こどくかん)が私の肺を満たしていく気がした。

「キキィ」

「…そうだね、行こうか。」

…多分、こんな風に立ち止まりがちな私の背中を(つつ)くのも、あの艦長さんから頼まれているんだろうな。

一見(いっけん)野盗(やとう)みたいな容姿(ようし)をしてるのに、こんなにも私のことを考えてくれてたんだ。

人間って不思議だな。

 

 

――――愛する心を()くしたら、人は幸せになれんのよ

 

私が彼を問い詰めた時、彼はそう『答えた』。

 

あの人たちは自分たちが「人間」であることを(ほこ)りに思ってた。

心の底から感謝してた。

初めこそ、精霊や周囲(しゅうい)の人の言われるがままに動くだけだった。

それが使命(しめい)で、自分たちが生きている理由なんだと思い込まされてた。

だけど、戦うにつれ、戦場を目にするにつれ、彼らも変わっていったんだ。

 

沢山(たくさん)の命を護るため。()くした幸せを取り戻すため。

それは、「生まれてきた意味」を探す生き方とは少し違う。

皆、その先にある「光」を(つか)もうとしてる。

「世界平和」はその道すがらに横たわっているだけで、それがゴールじゃない。

大人になるために、この人たちは藻掻(もが)いてるんだ。

 

……だから私は、彼らが望んで私の村を見捨てたんじゃないってこともキチンと理解しなきゃいけない。

仕方ないことだったんだ。

いくら無類(むるい)の強さを誇る勇者だったって、彼らは人なんだ。

(まばた)きをする間に地球の裏側に飛んでいくことなんかできやしない。

それと同じこと。

 

そして、護れなかった彼らが悪いんじゃない。

自分の身を護ることができなかった私たちが悪い訳でもない。

全部、傷つけることでしか会話ができない化け物たちと、分かり合えない世界なろうとする「この時勢(じせい)」が悪いんだ。

 

…だったら、

畑の麦を実らせるために虫を殺すように、私も勇者のための(つるぎ)になるべきなんだろうか。

 

…ううん、違う。

ならなきゃいけないんだ。

 

彼の命を護るために。

私が「幸せ」と呼べる居場所(いばしょ)を見つけるために。

私たちが大人になるために。

 

今の『私』にならできる。

それを胸に(きざ)みつけるために『魔女(わたし)』はここに来たんだ。

 

 

2、3時間は歩いたかもしれない。

(あた)りの空気が少しずつ、朝を(むか)えるために緑を(つゆ)で洗い始めていた。

真夜中よりも少し緊張感(きんちょうかん)のある冷気(ただよ)うこの時間が、私は好きだった。

「キキィ」

悪戯(いたずら)()きだからこそ周囲の変化に敏感(びんかん)な小人たちが、私の足の向いている方角(ほうがく)にズレがあることにいち早く気付いた。

「…ごめんね。どうしても、気になっちゃって。」

チョンガラさんには先に(ラムール)で体を休めるように言われたけれど、故郷(ふるさと)の風が近付くにつれ、私はどうしても村の様子(ようす)が気になってしまっていた。

 

「ダメかな?」

「キキィ」

心の何処(どこ)かで、私に(したが)う化け物たちはみんな無条件で肯定(こうてい)する人形か何かのように思い込んでいる(ふし)(いま)だにあるらしかった。

この子たちはそれを隠すことなく否定した。

()()()()()()()()()()

私の『力』に()れているはずなのに。

 

ケラックとモフリーは私の『お願い』よりも、チョンガラさんの経験(けいけん)豊富(ほうふ)助言(じょげん)尊重(そんちょう)するように言ってきた。

「…そうだね。そうする。ごめんね、我がまま言って。」

少し(わずら)わしさも感じた。

だけどそのお(かげ)で、この「考えのなさ」が私を子どもでいさせ続ける悪いところなんだと気付くこともできた。

それに―――これも心の何処かで―――、ほんの少し「喜び」のようなものも感じていた。

私の『声』に反発する存在が増えてくれることに対して。

 

…そう、少しずつでいい。

変わらなきゃ。

周りの人たちの言葉を頼りに。

何か少しでも私が変われば、もしかしたら、この『力』も良い方向に働くかもしれない。

怖がってたって『悪夢』は消えてくれない。

立ち向かっていかなきゃ、永遠に私は夢の中を徘徊(はいかい)する化け物でしかない。

 

本当に幸せを(つか)みたいのなら、私も皆を――――

 

 

 

1、2回の短い休憩(きゅうけい)をはさみ、私たちはようやく町の全貌(ぜんぼう)が見えるところまでやって来た。

ここに来るまでに妨害(ぼうがい)らしい妨害はなく、野生の怪物に数匹遭遇(そうぐう)したくらいだった。

だから多分、シルバーノアのことはバレていないし、私が帰郷(ききょう)していることも彼らには気付かれていないと思う。

 

()(せま)った危険がないと分かったからかもしれない。

町の向こう(がわ)にある天を突くような峰々(みねみね)の間から(のぞ)く真っ白な朝日に(なつ)かしさを覚える余裕(よゆう)があった。

同時に、それは私の胸を()()けるような記憶を的確(てきかく)()した。

黒い船が空を(おお)う直前に見た最後の朝日。

力も勇気もなく「運命」に押し流されてしまったあの日。

 

 

――――フォーレス国、ラムール町

 

「お早うございます、旅の方。旅の疲れを(いや)すラムールの美しい花はいかがですか?」

朝日が町の川底を泳ぐ魚の目に届く頃、少女たちは町に辿りついた。

 

資源に(とぼ)しいからか。

フォーレスには領土(りょうど)(ねら)う敵国に(めぐ)まれず、戦争の経験が少ない。

さらに、国を取り囲む白い(かんむり)の山々が天然の要塞(ようさい)(きず)き、越境(えっきょう)侵攻(しんこう)困難(こんなん)にしていることも手伝って、外敵への警戒心(けいかいしん)も低い。

そのため、東アルディアやロマリアのような(きび)しい取り調べを行うような関所(せきしょ)(もう)けられていない。

形骸化(けいがいか)したものが空港に設置(せっち)されているだけで、不法入国者への警備(けいび)体制(たいせい)はないに(ひと)しい。

つまり、(なか)に入ってしまえば、誰でもフォーレス国民と同じ行動がとれてしまう。

他国はこれを注意するものの、未だ目立った問題を(かか)えていないフォーレスはやはり形式的にこれを了解するだけだった。

 

「お早うございます。あの…、私、ちょっと歩き疲れてて。この近くに宿(やど)はありますか?」

不法入国を隠す少女は不自然に声を震わせながら(たず)ねていた。

「あら、そうなの?もちろん知ってるわ。」

けれども花売りの少女にそれを気にする様子はなく、少し大き過ぎる大型犬を連れた少女の問いに(こころよ)く答えた。

「ところで、アナタ、どこから来たの?」

「…え?」

迂闊(うかつ)にも、少女は目標を()げることに集中しすぎて、そこに(いた)るまでの「(じゅんび)」がスッカリ抜けてしまっていた。

「その…、アルディアの方から……」

「アルディア?確かに身形(みなり)はそれっぽいけど、アナタ自身、あんまり都会っ子って感じがしないわね。私はてっきりオルトアかフェルアムールから来た出稼(でかせ)ぎの子だと思ったわ。(なま)りだって私たちに近いじゃない。」

花売りの娘は、少し大きめのモップを片手にやって来た少女に初めて(うたが)いの眼差(まなざ)しを向けた。

 

フォーレスは首都(しゅと)ラムールを中心におおよそ10の村々が点在(てんざい)するだけの(きわ)めて規模(きぼ)の小さい国である。

オルトアもフェルアムールもその村々の内の一つ。

そもそもフォーレスの国民はその半数以上がラムールに(きょ)を構えている。

さらに、箱庭のように国の中枢(ちゅうすう)を大山脈が取り囲んでいるため、他に「町」を形成(けいせい)する余裕を持てていないのがフォーレスという国の現状である。

 

ここ数日、苛烈(かれつ)な物語に触れてばかりいたリーザは、この「一般人」との他愛(たあい)もない()()りに合わせることができなかった。

あまつさえ、「私は(あや)しい人間です」と名乗るような、あからさまな動揺(どうよう)を見せてしまう。

ところが―――、

「…まあ、別にいいんだけどね。」

「え?」

「それよりさ、お花、買ってくれない?私たちの出会いの記念にと思ってさ。」

「あ、うん。じゃあ、この花を。」

リーザは彼女もよく知る朱色(しゅいろ)の花を()した。

「この花を選ぶなんて、アナタやっぱりフォーレスの人間よね。」

彼女が選んだのはフォーレスの国花(こっか)にも指定されている「フォーリア」という名の花だった。

花言葉は「祈りを(ささ)げます」。

宗教国家として有名なフォーレスは何よりも国に根ざす「神」への祈りを重んじる。

そんな彼らにとって「祈り」は普遍的(ふへんてき)な「愛」を意味し、この花は、どんな場面においても好意的な(おく)(もの)として受け入れられる。

 

その後は無難な対応で花屋と別れることのできたリーザは真っ直ぐに宿屋へと向かった。

「…さっきはありがとね。助かったわ。」

彼女は数歩後ろを歩く奇妙(きみょう)な大男に向かって言った。

「ヘモォ~?」

「そうよ。お陰で変に言い合わなくてすんだわ。」

ピンク色の大男が無意識にもたらした『混乱』は、意図(いと)せずして主人のピンチを(すく)っていた。

主人のピンチだけでなく、彼女に()()って歩く―――もはや盲導犬(もうどうけん)(てい)さえ捨てた―――狼の入国も自然に乗り切ってしまっていた。

 

リーザはただ、彼らの元主人の言葉を信じ、言われるままにしただけだった。

だからこそ彼らが期待(きたい)以上の働きをしたことに素直(すなお)に驚いていた。

だが―――、

「でも、どこかでアナタの『力』を(おさ)える方法を見つけないといけないわね。」

リーザやチョンガラはその化け物と『力』で繋がっているからこそ、その効力(こうりょく)は弱いが、そうでない身内(みうち)に対しては花屋のように容赦(ようしゃ)のない「混乱」を(まね)いてしまうかもしれない。

 

リーザのように「連れ」を隠せない魔女にとって、その『力』は都合が良い一方で、今後、協力し合えるかもしれない相手との関係を悪化させるという短所(たんしょ)も持ち合せていた。

「…でも、チョンガラさんといた時はどうしてたの?」

「ヘンモォ~」

ピンクの大男(いわ)く、

彼らの『力』は呪いに近く、もちろんその対処法も存在していた。

この世には、彼らの呪いを(くる)わせる特別な鉱石(こうせき)があるのだという。

「もしかしてなんだけど、その石、チョンガラさんは持っていたりしないの?」

「…ヘモォ~」

「……そう。」

彼と出会って初めて、リーザは彼の類稀(たぐいまれ)なおっちょこちょいを呪った。

 

 

 

―――ラムール町、宿屋「喜劇(きげき)の裏側」

 

「……不思議。」

窓の外に広がる街並(まちな)みに馴染(なじ)みなんかないはずなのに、故郷(こきょう)と同じ風が吹いてるだけでとても(なつ)かしく感じる。

この町は私たちを「魔女」呼ばわりしてきた人たちの町なのに。

どうしてだか、(にく)くない。

おじいちゃんが嫌ってた人たちのはずなのに……。

「なんでだろうね。」

私は窓の木枠(きわく)一所懸命(いっしょけんめい)落書(らくが)きをする一匹のケラックに(ひと)()ちた。

 

明日こそ、私は村に帰る。

でもそれは本当の意味の帰郷じゃない。

エルクの助けになるために。私が強くなるために。私は「魔女(じぶん)」を知りに行くんだ。

 

 

その日は、今までの危険な日々が嘘のように(おだ)やかに過ぎていった。

 




※パルパスト平原
原作にはありません。勝手につくりました(笑)

※形骸化
その事柄、物質がそもそも持っているはずの機能、性質がほとんど失われている状態。
上辺だけを見繕っている状態。

※オルトアかフェルアムール
フォーレスに存在する村の名前です。
原作にはありません。勝手につくりましたパート2(笑)

※国花(こっか)
国の象徴となる花。
一例を挙げるなら、日本では桜、イギリスならバラ。

※フォーリア(花)
原作にはありま……す!勝手につくってません♪
「祈りを捧げます」という花言葉も原作のままです。

※ヘモジーの『混乱』対策
原作では「アンチヘモジー」というアクセサリーで「ヘモジー化」という状態異常を回避することができます。
(もしくは「やる気ゼリー」という消費アイテムで回復)
このアクセサリーをアイテム鑑定すると、「ヘモタイト」という宝石(つまり鉱石ですよね?)をアミュレットの材料にしたものという説明があったので流用させていただきました。

「アミュレット」→ラテン語で「保護」や「加護」を意味する。要するにお守りですね。

※宿「喜劇の裏側」
ほんの少しネタバレになってしまうかもしれませんが、
原作中、ハンターの仕事の中に「ベリンガル笑劇場」という施設が登場します。
フランスのパリで歌劇場を指す「オペラ座」付近のホテルはこれをもじった名前のホテルが多くあるみたいで、今回はそれに倣ってみました。

ちなみに私の感覚でフォーレスは、アルプス山脈を抱えるフランスからオーストリア辺りのヨーロッパのイメージで書いています。


※あとがき
チョンガラの喋り方がわからない(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。