真っ赤な
一言、
私の中の「強い父親」
……だけど、
家族を
アタシがガルアーノの
彼も
「…グルガ……あのさ…」
「
「え?」
「何故こんな勝手なことをするんだ!!」
彼の熊のような
「キャア!」
彼の
すると、
「おねーさんをイジメたらダメなのーーー!!」
「…?」
心の整理のついていない彼は
「
もしかしたら殺されるかもしれない!
私は
「……!?」
4、5m先で赤毛が
直後、見えない
100キロ以上はあろうかという
受け身こそとったものの、大会の
彼はそのままガクリと
「ちょこ、やめな!ソイツは悪人じゃないんだ!」
「え?そーなの?」
赤毛の
「…ちょこ、悪いことしちゃったの?」
「アタシを助けに来たんだろ?悪いことはないさ。」
アタシの
「ちょこ」はあくまで道具。
それだけは忘れちゃダメだ。
「グルガ、よく聞いておくれよ。」
「……」
ちょこに
とにかくこれ以上、
だから、息を
「…エレナは生きてるよ。」
「……本当、か?」
これ以上、
アタシの言葉にピクリと反応するけれど、アタシの目は見ず、
「ああ。上の階に閉じ込められてるだけさ。」
ガルアーノに作戦の失敗を
それに気付いたらしいエレナは恐る恐る脱出を
「…
「……」
ゆっくりと立ち上がると、彼はようやくアタシの目を見てくれた。
「
「そうかい。おめでとう。」
「あとはあの子を医者のところまで連れて行く。それで、終わりだ。」
「…本当に、それでいいのかい?」
「……当然だ。私は、本当の父親じゃない。私はあの子の……
大会に
その姿は私にいらない記憶を
「…こっちさ。ついて来な。」
すると、すでに自分の失敗を忘れ、一面に
「ちょこは?」
「アンタは少しそこで待ってな。すぐに戻るから。」
「はーい。」
返事をするとちょこはまた、死体に向き直り、意味の分からない言葉で
……私は
私に、あの子のためにできることはもうない。
これ以上エレナに会う必要が本当にあるのか?
むしろ、あの子の未来に暗い影を呼び込むだけなんじゃないのか?
屋敷は無駄に広く、誰もいない
それに、足が重い。
私の前を歩く青髪の彼女の足がやけに速く思えるほどに。
――――ガタンッ
「……この上か?」
「ああ。」
この上にあの子がいる。
……生きている。
そのことだけは心から神に感謝できた。
……生きている。
それだけで私の足は不思議と軽くなった。
…だが……、
「……お父…さん?」
私が、どれだけその言葉を待ち望んでいたか。
体の内側から満たされていく感覚がエレナへの想いの強さを
「!?来るんじゃない!」
「………お、父…さん……?」
あの子はビタリと足を止め、見えない目で私を見詰めている。
その表情に私は
満たされる想いと同じくらい。
これ以上続けれは…私は……、
手を
……だがもう、終わりなんだ。
何もかも終わらせる準備が、やっと整ったというのに。
これ以上、この
それはもう、私の
「エレナ、よく聞きなさい。」
「……」
「お前はもう気付いていたかもしれないが…。私は、
…それでも、愛する人に長く
「人を
遠回しにしか
やはり私は悪い人間だ。
悪い…、父親だ。
「お父さん、エレナはそれでも――、」
「エレナ!…きちんと、聞きなさい。」
違うんだ。違うんだ、エレナ。
私はお前の…父親では……
「私は、悪い男たちの
「いやだ!!」
「……やめてよ。聞きたくないよ。」
「……」
「エレナの知ってるお父さんは、悪くないもの。」
エレナが、杖に
「すごく優しい人だもん。エレナだけじゃない。みんな、知ってるもん。お父さんは、お父さんは…、おと…、おとう…さん……」
声を
こんな娘を誰が
「…エレナ……!!」
私の迷いが、想いがこの子を受け入れてしまった。
小さな腕は私の体の半分も
だが、その腕は今まで会ってきた誰よりも熱い力で私の胸を
私もまた、この子と一つになる気持ちで抱きしめた。
抱きしめることしか許されていないような気がした。
「
「…エレナ。」
娘の涙は、どこまでも、どこまでも
「ずっと、ずっと……。」
――――カジキ
ちょこの空気を読まない
「悪いが、エレナちゃんはここに置けねえよ。」
「…なぜだ。お前たちに
あんな
大会の
「わざとらしい言い訳はやめろ。」
ガーレッジは頭痛を振り払うように
「連中がまた、エレナちゃんに手を出さない
ガーレッジの言い分に対し、私が言い返せることはなかった。
私は今、手に
「お前は、そんな
対して私は、自分のことしか考えていなかった。
あの子への贖罪という我が儘しか頭になく、彼女の
それでも私は――――、
「いい
そうに違いない。
あの館で私は確信した。
だが、それはあの子の目が見えていないことが絶対の条件なのだということも確信した。
「それともお前は、あの子の心に傷を増やすつもりなのか?」
「それは違う。ガーレッジ、俺はあの子がこれ以上化け物どもに
「物は言いようだな。あの子の
「違う。私はあの子の幸せのために戦うんだ。」
「…もう一度よく考えろ。エレナの父親でいることがそんなに悪い嘘か?」
お前たちは知らないんだ。
お前たちの言う”
あの子の目に光が戻った時、私が
それだけは……
「私の意思は変わらない。あの子はここに置いていく。
それだけは、許されないことなんだ。
「……エレナを、よろしく
ガーレッジは
「お前も
「…すまない。」
「もう話すことはない。早いところ
「…ああ。」
表に出てきた彼の表情は重く、一方で、館で見せた
「それで、アンタはこれからどうするのさ。」
「…聞こえていたのだろう?」
そういう受け答えを
一つひとつの感情が
「男ってのはどうしてそういう
「……」
彼は黙ったまま、暗い
「だったらアタシに付いてきな。最短でアンタを地獄に送ってやるよ。」
彼は返事をしなかった。
返事をしない彼の目は、アタシでないものを見ていた。
「一つ確認しておきたいことがある。」
「…なにさ。」
その視線の先にはウトウトとしている場違いな小人がいる。
「その子は?」
「…別に。ただの迷子よ。」
「……そうか。」
別に隠したいわけじゃない。
ただ、この子のことを他人にベラベラ話すのはなんか違うと思っただけ。それだけ。
死体で
アタシが注意しなきゃ、そのまま町に入ろうとするくらい、この子の感覚は「人間」とズレてる。
誰かがコイツの傍にいなきゃ、すぐにでも
すぐにでも
そう思ったから……。
…いいや、そうじゃないだろ。アタシはなんだか
アタシはコイツを
正体がバレて、コイツを傍に置けなくなったらアタシが
「
それなのに、
「ほら、行くよ。」
あの村での悲劇も忘れて、この化け物は
その姿がどこか憎らしい。
「はーい。」
アタシが呼ぶとアタシの手に飛びついて、仔犬みたいに
どいつもこいつも「力」のあるヤツの生き方ってのはどうしてこんなに
本当に、心の底から愛してるくせに、心の底に置いたままにして逃げ回ってやがる。
それが、その人たちをどれだけ傷つけてるのかも知らないで。
……憎らしい。
アタシにない「力」を持ってるくせに一番大切なことに使おうとしないコイツらが。
…だからってコイツらが殺したいほど憎いかと言えば、そうでもない。
それが余計にアタシの
「…どうでもいい。」
「なにが?」
「いいや、こっちの話さ。」
そうさ。だったらアタシも忘れてしまえばいいんだ。
アタシはアタシのすべきことだけを考えればいいんだ。
他の誰がどうなろうと、アタシの知ったことじゃない。
「おねーさん、今度はどこ行くの?」
「でっかい町さ。アンタが見たこともないような。」
「へえー。」
「そこで約束のアイスクリームも食わせてやるよ。アンタが食べたこともないようなとびっきり甘いやつをね。」
……そうだろ、アル?
「やったのー!!おじさんも一緒にアイスクリーム食べるの?」
「…いいや、私はいい。」
「ダーメ、ちょこが決めたの。みんなで一緒においしいアイスクリーム食べるの!」
…そうだって言っておくれよ……。
ようやく動き始めた空港に向かいながら、アタシたちは戦場で食べるアイスクリームの味を想像した。
※萎らしい(しおらしい)
控えめでいじらしいさま。大人しいさま。
本来、「しおらしく」に漢字表記はありません。
「萎れる(しおれる)」の形容詞であるという説があるみたいなので、この漢字を使いました。