―――運命
それは希望や夫婦よりも固い
―――未来
それはドレッサーに
「
それは命の数だけ
呪われた
少女たちを大人にするために。
少女たちの悲願を
――――まばゆい朝日さし込むトココ村の
運命に羽を
二人は
いずれ
「あ、テントウムシさん見つけなの♪」
こんにちは。久しぶりね。
少女たちは言葉ではない言葉で通じ合っていた。
自然に。
「ねえねえ、テントウムシさん、ちょこと一緒に遊ばない?」
私と?私よりも先に会ってあげるべき子がいるのじゃないかしら?
「……あれ?そーいえば、ちょこ、何か忘れてるような気がするの。」
ダメじゃない。ずっとアナタの
「誰かを探してたような……」
大切なお友だちを忘れるなんて、イケないことだわ。
「そうだ!ちょこ、シルバを探してたの!」
そう、シルバ。アナタの大切なお友だちよね?
「そうなの!ちょこはシルバが大好きなの!」
シルバもアナタが大好きだったわ。
愛らしい少女は立ち上がり、一歩を
そして立ち止まり、首を
「…でも、どこにいるんだろ?」
大丈夫、アナタなら見つけられるでしょ?
カクレンボでアナタが負けたことがあったかしら?
「そうなの!ちょこ、シルバの
そうね。じゃあ、見つけてあげなきゃ。
「でもね、シルバもすぐにちょこを見つけるからシルバも負けたことがないんだよ?」
そうね。
アナタたちはいつだってお
一人ぼっちは嫌だから。
「一人ぼっちはツマんないの。でもね、シルバと遊んでるとすぐにお日様が
そうよ。シルバも
だからほら、早く見つけてあげてあげなきゃ。
「わかったの!」
愛らしい少女は村に残った
楽しかった記憶を頭に浮かべ、他のものには目もくれず。
そして、少女は家の裏庭にひっそりと
風に
「…これなあに?」
お
「……シルバの、おは…か?なにそれ。ちょこ、知らないよ。」
でもそれは、アナタの字でしょう?
「………ちょこ、遊びに行くの。」
シルバは?一緒に遊ぶのじゃないの?
「シルバ?なあに、それ?」
アナタの、大切なお友だちの名前よ。
「お友だちならたくさんいるの。村の人みーんなちょこのお友だちなんだから。」
シルバを、置いていくの?
「それより遊ぼうよ。たくさん…、たく、さん……遊ぶ…の。」
墓標の前で、愛らしい少女は
羽を毟られた少女は
「…シ…ルバ……」
…フフフ、いいわ。
私が遊んであげる。
だって、この時をずっと待っていたんだもの。
安心なさい。
あの子もそこでお前を待っているわ。
二人は
深い深い眠りの底へ。
そこで二人は永い永い時を
運命に
――――
「…さて、ではお話ししましょう。ちょこと、彼女のためにあるこの村のことを。」
ちょこを見送ると、ラルゴは時間が
「アナタもすでにお気付きの通り、ちょこは人ではありません。さる怪物の
ラルゴは隠さなかった。
けれどその声色からは、時間的
アタシは大人しく男との話に付き合った。
コイツらに同情してるからじゃない。
アタシの力じゃあ、この森を抜けられそうにない。
だから
「それで?アンタはそれをアタシに教えて何を
だけどアタシはまずは話の着地点を
するとラルゴはアタシの次の問いが分かっているかのような
「もしも聞き届けて頂けるのなら、あの子をこの村から出してあげて欲しいのです。」
「…それは、”白い家”から逃がすって意味かい?」
ちょこの『力』はおそらくガルアーノに
もしも、ガルアーノ自身が”白い家”で
あの子の不自然に
「怪物の群れ」ってのはアイツらのことなのかもしれない。
クレニアの武闘大会に
可能性は高くない。
でも、アタシはその
そして、アタシの
「”白い家”?私にはその意味がわかりかねますが。少なくとも今、アナタが想像しているような連中とあの子は無関係です。」
「だったらアタシとも無関係ってことだね。アタシはただ、アンタらの
心配事が一つ
別に深い意味はない。期待もしていない。
だけど、あわよくば、アイツらに
そして、アタシの予想通り、ラルゴはこの話に乗ってこなかった。
「…残念ですが、私がアナタにできることと言えば、あの子を
「だったら、あの子を外に出した時のアタシへのリスクはどうなるんだい?ちょこ、もしくはアイツの仲間だっていう怪物たちはアタシを殺そうとするんじゃないのかい?」
「今、あの子の
「…よく分からなくなってきたね。ちょこを
そうして返ってきた男の答えは、話の
「それは…、あの子自身です。」
――――赤毛の少女は無数の根が
「あれ?お日様、もう沈んじゃったの?」
見たこともない
けれども、進めど進めど
「ここ、どこなんだろ?」
赤毛の少女は
「お家、どこかな?」
それでも、少女に
恐怖を知らなかった。
少女は
今までと同じように。
そして少女は、
「どうしたの?どこか痛いの?」
天真爛漫な少女は涙に
すると、メソメソと泣く少女はボソボソと、しかし少女の耳にハッキリと届く声で答えた。
「皆、いなくなっちゃったの。」
天真爛漫な少女は、初めて会う
しかし、あまり考えることが得意でない天真爛漫な少女は、一人きりの少女を見てすぐに分かったと
「迷子なのね?」
「…死んじゃったの。」
「え?」
少女はまた、首を傾げた。
今度はその首が明るく縦に振られることはない。
「ねえ、お願い。」
そこへ、手を
「アナタにしかできないの。お願い、ここから出して。」
「…迷子なの?」
「みんなに会いたい。だから、お願い。」
「わかったの。よくわからないけど、一緒に出口を探してあげるの!」
「本当に?」
それは神に
「本当よ。ちょこはウソをつかない良い子なんだから!」
ただただ明るい未来だけを見詰めて語った言葉だった。
「……ありがとう。これでようやく…フフフ。」
涙に目を
「あれれ?消えちゃったの。……あれれ?」
消えた少女を探して天真爛漫な少女は闇の中を歩き回る。
しかし、その明るい赤毛もやがては、包み込む闇に飲まれ、姿を消していった――――
――――同時刻、ラルゴ宅
数百年昔、ラルゴ・カル・トレアは小さな村の、
妻と娘に愛され、家庭を
「ある日、私を
「ですが、そこに私たちの村はありませんでした。」
村は怪物の
その
「私は、逃げました。剣の一本も手にしていない現実と、人間でない
しかし、日に日に
「ひょんなことから私は一つの石を手に入れました。その石が、私に呼びかけたのです。」
――闇を
光を
たった一本の
「石はまさに
いかなる化け物も、『石の力』の前には無力だった。
「私は殺し続けました。村を襲った化け物たちを求め、隣の国、その隣の国へと渡りながら奴らを
そうして彼は砂の国で
人の手の
「もちろん私はそこへ向かいました。奴らの血肉を
地底が
彼は石に護られ、石の導きに
そしてとうとう、小さな村の戦士は彼の
「私はただ…、ただ、私の村を、妻と娘の命を奪った化け物どもが憎くて、憎くて仕方がなかったのです。」
しかし、そこで彼が耳にしたのは勇者への
「
弱々しい
「それは、私が討ち取った悪魔の、たった一人の娘でした。」
そして、父にすがる少女の姿は狂戦士に、大きな
石は、彼に語りかけてなどいなかった。
憎しみに駆られた彼が、
石のもたらす『無限の力』は「
「私は弱い人間でした。死んでいった妻子、村の仲間のために墓すら立てず、ただただ彼らに
父の名を何度も口にする子どもの
「あの子の涙は私という悪夢がもたらしたもの。化け物たちが私に流させたそれとまったく同じでした。だとしたら、私が自分のしてきた
そしてまた、狂戦士は『石の力』に
「それだけは…、それだけは許せませんでした。」
そしてまた、狂戦士は新たな過ちを
――――日が、
ラルゴの語りが老夫の昔物語のように
赤毛の少女の眠りが長かった訳でもない。
それでも日は、時を待たず急速に
「一日」ではなく、「何か」の終わりを
――――赤毛の少女は見慣れた石畳の上で目を覚ました。
「あれれ?目が覚めたのにまだお日様が
少女は村の中心で目を覚まし、辺りを見回した。
「…みんな、どうしちゃったんだろ?」
村の中に人の気配は一つもなく、どの家も
村は完全に
「……?」
そしていつものように、少女はすぐにその
「そうだ、早く帰らないとまた父さまを心配させちゃうの!」
少女は、「少女」でいられる場所を求めて立ち上がる。
だが、暗い地の底からようやく
「あっ!」
少女の目の
「待ってなの!」
少女は
「一緒にお家を探そうよ!」
いくら呼び掛けても少女は止まらない。少女を
数百年、夢に願い続けた希望の地へと。
「あいたー!」
そうしている間にも、もう一人の少女の背中はどんどん
「待ってなの!」
少女はすぐに立ち上がろうとするけれど、
「何なの?」
空には
それでも、
「……シジリー…さん?」
それは
「シジリーさん、なの?」
エメラルドグリーンのゼリーは
「ち…、ちょ…こぉぉ」
浮かべた唇から、少女への晴れない
「い、いやっ!!」
少女はあらん限りの力でゼリーに
ゼリーは
一瞬、少女は気を
そうして起き上がる頃には、無数のゼリーが少女を
ゼリーはそれぞれが少女の記憶の中にある誰かの顔を浮かべていた。
それぞれが少女への怨みの歌を歌い、
「……いや…、いや…、イヤァッ!!」
少女の叫びを聞きつけた風は
そしてまた、少女は気を失う――――
――――同時刻、ラルゴ宅
故郷の復讐を誓ったはずの男は、石の『力』を使って仇の娘を地上へと連れ去った。
化け物である少女を、
「私はちょこの記憶を奪いました。あの子に、私と同じ過ちを
石は少女の「復讐」を奪い続けた。
彼女がそれに呑まれずに生きることを、狂戦士は
「ですが、私はまたしてもやり方を間違えていました。殺すことが当たり前になってしまっていた私にはそのことに気付くことができなかったのです。」
心の一部を奪われ続けた少女は不安定な
そうすれば何ものも自分を苦しめないのだと気付いてしまったから。
「あの子が苦しんでいることにも気付けず、そんな状態のあの子をヒトの村に置く危険性も見抜けず、私はただただ自分の罪を
王を失った地底の住人たちは王の娘の
「私は手に入れた
そうして、運命は少女の臭いを
彼らは「娘」の名を叫びながら村を
すると村人たちは、
「
村人に悪魔と戦う
「あの子は私の娘だ。そういう感情が私の中に根付いてしまっていたのです。」
話し合いは何も解決することができず、村人たちは
――――少女はどうして自分が涙を流しているのか分からなかった。
「…シルバ……」
少女は立ち上がり、
「……シルバ、ごめんね。シルバ、ごめんね。」
どうして自分がそう口にしているかも分からない。
それでも少女は、その小さな唇で
知らぬ間に、少女のエナメルの赤い
「……ごめんね、みんな。」
分からない。どうして自分が謝らなければならないのか。
自分はただただ良い子でいただけだったのに。
「……ごめんなさい、父さま。」
そうして、少女は教会の扉を開ける。
数百年を待ち続けた花嫁と
「ようやく…、ようやくこの時が来たわ。…この喜び、アナタにわかるかしら?」
そこに夢の中の少女の姿はなく、
少女に妖精との
「アナタは、誰?」
けれども、数百年、心を
「…そう。そうやってお前は都合の悪いことを全部私に押し付けてきた。憎いことも、苦しいことも。全部。私が受け止めた。私がどんなに泣き叫んでたってお前は見向きもしてこなかった。」
「……」
「でも、もう少しで、もう少しでこの
聖書台に立ち、
「今、ここでお前の嘘を
少女を見詰める瞳は紅くギラギラと
その恐ろしい瞳が、私の中の記憶の一部をこじ開けた。
……
私は森でシルバと遊んでて、村に戻るとたくさんの人が倒れてた。
「ちょこ、逃げなさい!」
突然、父さまから言われた一言がとても恐ろしかった。
「シルバ、行こう!」
父さまを置いて、私は逃げ出した。
みんなの目が怖かった。
「
「よくも、よくもっ!」
…怖かった。
何も、わからない。
「父さんを返してよ!」
「この…、化け物が!」
そんな目を、しないで。
…怖い、怖い、怖い……、
追い詰められて、
自分が何者で、どうしてこんなことになっているのか。
「……?」
だけど、すぐに逃げた。
私のせいだって思いたくないから。誰のせいにもしたくなかったから。
思い出したくない。
思い出せば、全部捨てなきゃいけない。
父さまの
そんなの…、イヤだ!
だから、今まで、ずっと忘れてきた。
父さまの言いつけを守って……。
だけど……
「…シルバ……」
真っ赤に
「……やめて、お願い。ちょこを悪い子にしないで……。」
記憶の中の私が、私の瞳を奪う。
私の唇を使って、悪い歌を呼び寄せる。
――――全ての光を呑み込む
※佳き日(よきひ)
「喜ばしい日」の意味で、現代ではおおむね「結婚式」に使われているようですね。
余談ですが、
「佳い」は「良い」と違って、「姿形が整っていること」「物事の均整がとれて美しいさま」を意味します。
なので、美人を指して「佳人(かじん)」というような使い方もあるそうです。
※ラルゴ・カル・トレア
恒例の「勝手に名前付けました」です。m(__)m
(ラルゴの部分だけは原作の通りです)
私的には「スメリア出身」のようなニュアンスで付けてみました。「アーク・エダ・リコルヌ」の音になるべく寄せてみました。
※塗り変える
本来なら「塗り替える」の表記が正しいのですが、今回は雰囲気重視ということで「変える」を使いましたm(__)m
※万雷(ばんらい)
たくさんの雷の音。転じて、非常に大きな物音のこと。
※謡う(うたう)
伴奏なしで歌うこと。
※石
原作の中では「記憶石」という名称でちょこの記憶を保存していました。
原作をプレイされた方なら何となく察しはついたかもしれませんが、今回、私は原作で全く別の名前のついたアイテムを「記憶石」として使っています。
ラルゴに『無限の力』を与える下りが、そのアイテムの要素ですね。
※エナメルの赤い靴
ちょこ編のタイトルにもしている「赤い靴」は原作での彼女の専用武器です。
今回、お話しの中で不謹慎な表現をしていますが、私が初めてこのアイテムを手に入れた時、こういう印象を受けました。
アイテムBoxの設置場所が「教会の裏手」というところが意味深すよね。
※聖書台
神父様が教会で聖書を読む場所。聖書を置く台のことです。