聖櫃に抱かれた子どもたち   作:佐伯寿和2

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ルビ振り間に合いませんでしたm(__)m
来週までに振っておきます。


浮彫りの影 その八

(たと)えばだ。カードをしていてたまたまバカツキの手札が(そろ)いやがった。()り上げればまだまだ(しぼ)()れる。そんな時にフラッと横切ったジジイが俺の手元を見て(みょう)な顔でもしてみろ。連中は一気に下りるだろうぜ。」

その日の内にダウンタウンへと戻った俺たちを、不機嫌な何でも屋が出迎(でむか)えた。

「あの老夫(ろうふ)は何と言っていた。」

「ノーギャラでご奉仕(ほうし)してさしあげろだとよ。こんなバカな話があるか?俺はアンタらの召使(めしつか)いじゃねえんだ。相応(そうおう)の見返りを求めて何が悪い?」

おおよそ、こうなることは予想していた。(あらかじ)め用意しておいた酒がなかったなら、もっと()れていたことだろう。

「……まぁ、いいさ。アンタならまた俺を使ってくれるだろ?」

ペペは酒瓶(さかびん)をテーブルに置くやいなやグラスに(そそ)ぎ、目にも()まらない速さで(から)にしてみせた。そして、息継(いきつ)()もなく次の仕事にツバを付けるのだ。

「そうだな。」

「その時にでも今回のツケを(はら)ってもらうさ。」

「…考えておく。」

賞金稼ぎとして、世界の主要国の一つであるスメリアを(おとず)れる機会(きかい)は少なくない。この仕事をしていて10年も()(ころ)には、この国にも行きつけの店と顔馴染(かおなじ)みの仕事仲間もできた。

それらのお(かげ)多少(たしょう)融通(ゆうずう)()く行動もとれるようになったが、当然(とうぜん)、全てが自由という訳にはいかない。それなりにリスクを(ともな)う仕事には必ずその時々に(てき)した誰かの助けが必要になる。

どんなに腕っぷしが強かろうが、こういう「裏方」のいない奴に高額(こうがく)の仕事は回ってこない。

そういう意味でペペは決して悪くない仕事仲間と言えた。

 

「まぁ、このツケを払うってなると馬車馬(ばしゃうま)みてえに働いてもらわにゃならんがな。」

――――黒い竜の討伐(とうばつ)

今回のような史実(しじつ)にさえ残りかねないヤマは本来、賞金稼ぎや何でも屋なんかに回ってくるものじゃない。

この男の言う通り、一生に一度あるかないかの話だったのだ。

それを、たった一人の老人の気紛(きまぐ)れで―――もともとその老人が持ち掛けた話でもあるのだが―――(つぶ)されてしまったのだから気が立ってしまうのはしようのないことだった。

むしろ、さっそく次のビジネスへと(つな)げようと俺にツバをつける()()えの早さに感心すべきなのだろう。

 

 

「さあ、一銭(いっせん)にもならねえ仕事だ。ちゃっちゃとやってサッサと忘れちまおうじゃねえか。」

(ざつ)な切り出しで語り始めた何でも屋の作戦だが、それはとても一日の内に(ととの)えたとは思えない出来栄(できば)えだった。

「スメリアとロマリアそれぞれに買収(ばいしゅう)した運び屋がいる。荷物の送り主は俺が偽装(ぎそう)した貴族名義(めいぎ)だ。余程(よほど)のことがない限り中身を(あらた)められることはない。」

要は定期的にスメリアに(おとず)れるロマリア軍艦(ぐんかん)貨物(かもつ)として密航(みっこう)するという、(いた)ってシンプルなもの。だが、その根回しは単純(たんじゅん)かつ効率的(こうりつてき)なものだった。

偽装したというスメリアの貴族は実在(じつざい)し、しかもかなり(くらい)が高い。その上、ロマリアへも度々(たびたび)物資(ぶっし)を送って貢献(こうけん)しているため信用もある。

しかもペペが買収したのは運び屋だけじゃない。スメリア空港の運輸(うんゆ)情報を統括(とうかつ)する現場で下働(したばたら)きをしている男にも手を着けていた。

その男から過去の貴族の証書(しょうしょ)を一枚拝借(はいしゃく)し、複製(ふくせい)しているため余程(よほど)検閲官(けんえつかん)でも見抜(みぬ)けない。

そして、保管(ほかん)されるはずの今回の証書はその男が破棄(はき)する手筈(てはず)になっているため記録(きろく)にも残らず、送り手の貴族に連絡がいくこともない。

ロマリア到着後も仕込んだ運び屋が()()()()()まで送ってくれる。

あくで穏便(おんびん)に、密航者(みっこうしゃ)(うたが)いを残さないように。

「アンタらはただ時間まで息を(ひそ)めてりゃあいい。楽な仕事だろ?」

「ロマリアでの呼び名が”魚女(フィッシュレディ)”になる屈辱(くつじょく)(のぞ)けばね。」

……ペペがその貴族を採用(さいよう)した理由の一つに、頻繁(ひんぱん)に生魚を送るという傾向(けいこう)があった。

 

保存食に(もち)いられる臭いのキツイ青魚のため、検閲官らは基本的に開封(かいふう)を嫌がる。その上、荷の送り主が信頼のある人物であるなら、まずまず開けられることはない。

「ハハハッ、あのジジイどもと手を組むんだろ?そんくらいのインパクトがねえと何したって教科書にアンタらの名前なんか()らねえぜ?」

「アタシらはヒーローになりたくてバカやってるんじゃないんだよ。」

搬送(はんそう)時、箱の中には当然、冷蔵用の氷が()()められる。断熱材(だんねつざい)で保護されることになってはいるが、それでも半日()えられるかどうか(あや)しい。

ただでさえ空の上での貨物室は気圧が下がる。

目下(もっか)、箱の中にいる間の俺たちに優先される仕事は体温を(たも)つことだった。

「そうなのか?俺ぁてっきりロマリアの奴らをぶっ潰した見返りで老後を悠々自適(ゆうゆうじてき)()ごすんだとばかり思ってたがな。」

ペペがナンセンスなジョークを披露(ひろう)し、酒を存分(ぞんぶん)に楽しもうとしする一方(いっぽう)、彼女は彼のジョークが気に入らないのか。彼の(さそ)いを鼻で笑い飛ばした。

「ハッ、もしもこの作戦が失敗しちまったらアンタだってタダじゃ済まないんだ。そうならないようにせいぜい神様にでも祈っておくんだね。」

「ワハハッ、バカ言うなよ。何の心配してんのか知らねえけどよ、俺の作戦が失敗するわけねえだろ。それに、”神様”なんてもの自体が”ミス”を呼ぶ合言葉なんだよ。そんなもんに祈ってる(ひま)があったら一歩でも目的に近付くよう頭を働かせた方が100倍マシってもんだぜ。」

 

彼は少しも俺たちのミスを懸念(けねん)していなかった。

ただただ悪臭に(なや)まされる俺たちの()()(さかな)に、グラスを気持ちよく(かたむ)ける。(から)にしてテーブルに置くと、浮力(ふりょく)()くした氷がグラスを叩き、小気味(こきみ)良い音を立てた。

「だけど安心しな。貨物室は比較的(ひかくてき)監視(かんし)の目が(ゆる)いらしいからよ。中から開け閉めできるように細工(さいく)もしてあるし、荷揚(にあ)荷下(にお)ろしの時さえ気を付ければ、あとは犬みてえに気の済むまで機内(きない)を走り回ってもらってもかまわねえよ。」

言い終わるが早いか。ペペはもう次の一杯を(そそ)ぎ終え、口元まで運んでいた。

 

もとより箱の中でジッとしているつもりはない。

おそらくだが、標的(ひょうてき)の”(あか)い悪魔”はロマリアの深部(しんぶ)で俺たちを待ち(かま)えている。ならば今のロマリアの事情を少しでも把握(はあく)しておくことに()したことはない。

マラソンとまではいかなくとも全力で(いど)む体力検査程度(ていど)には運動しなきゃならなくなるだろう。

無事、見つからなければの話だが……。

「どうだ?景気(けいき)づけ、もしくは生涯(しょうがい)最後の一杯を俺と()わすだけの余裕(よゆう)はあるかい?」

「……それはキサマの(おご)りなんだろうな?」

男は初めて気付いたとでも言わんばかりの目付きでテーブルの上にあるものを見た。

今の時点ですでにボトルが2本、空になっている。仕事の話こそまともにできていたが、初対面の時よりも明らかに情緒(じょうちょ)が安定していない。

だからこそ、()()ましのつもりで嫌味を言ったつもりだったが……、

「あ?…ワッハハハ、いいぜ!俺が他人に奢るなんざそれこそ一生に一度あるかないこのことだ。心して飲むんだな!」

どうやら手遅れだったらしい。

 

飲みながら、ぺぺは過去の仕事における笑い話を大声で語った。

初めは自分を売り込む戦略かとも(うたが)ったが、どうやらこれが彼なりの酒を()む時の楽しみ方らしい。

「笑いたいときに笑って、ムカついた時に(いか)る。それが人間としての最低条件。そんでもって、美味(うま)い酒を知らねえ奴は長生きも成功もしねえで死んでいくのよ。」

持論(じろん)(なら)べ立てるとペペは俺の飲み掛けのグラスに酒を()()し、俺の素性(すじょう)(たず)ね始めた。

「俺の過去にお前の酒に合う(さかな)は一つもないぞ。」

「別に、無理に聞き出そうなんて思っちゃいねえよ。ただ気になっただけさ。アンタみたいな完璧(かんぺき)な殺し屋がどうしてこんな無謀(むぼう)な戦争に参加しようとしてるのかよ。」

つい先日知り合ったばかりで、(たい)して分かり合ってもいないコイツに打ち明ける(ほど)、俺の過去は軽くない。

だが、あの老夫の口添(くちぞ)えがあったからとはいえ、これだけの働きが「無償(むしょう)」という事実に同情(どうじょう)できないこともない。

俺はあくまで「肴」であることを意識しつつ、言葉を選びながらあの男のことを語った。

 

「そんで?その少佐ってやつはどうなったんだ?殺せたのか?」

「いいや。ヤツはアジャール侵攻(しんこう)中に()きずりの浮浪者(ふろうしゃ)()されて死んだ。」

思いがけず、俺の口から出た何の抑揚(よくよう)もない「死んだ」という言葉がペペの機嫌(きげん)を良くさせたらしい。

込み上げてきた笑いを(こら)えられず、持っていた酒を(こぼ)していた。

「シュウ、まさかそんな与太話(よたばなし)を信じちゃいないだろうな?」

ぺぺはあの男のことを何も知らない。そんなヤツでもこれが何かの「冗談(じょうだん)」なのだと思わずにはいられないようだった。

「だがそれ以来(いらい)、俺の前にヤツが現れることはなくなった。これは事実だ。そして、あの時の俺にはそれだけで十分だった。」

 

奢られる酒を口にし、ほとんど素性を知らない男に自分の過去を打ち明けた時、俺は初めて「もしも」を頭に(よぎ)らせた。

 

――――もしもあの男が、あの死臭(ししゅう)(ただ)わせるパイプを(くわ)え、(ふたた)び俺の前に現れたなら……

 

「だけどよ、待ち望んでた”自由”…って訳でもねえんだろ?」

奴は俺の”自由”をどうするだろうか。

その時、俺はヤツを殺すだろうか。

その時こそ、俺はヤツを殺せるだろうか。

「そうだな。しばらくは何も考えない日が続いた。ヤツがいた頃は”自分の生き方”なんてものを考える必要がなかった。ただ殺すことだけを頭に入れていればよかった。俺にできることはそれしかなかった。」

遠い記憶の中にいるあの男は、今も俺の上を歩いているような気がしてならない。常に俺の一歩先に立ち、俺を見下(みくだ)し、俺に新しい任務(にんむ)と新しい殺しを言い渡す。

 

――――シュウ、()()()()()()()()

 

するとペペはまた俺のグラスに並々(なみなみ)と酒を注ぎ足した。

「それが良かったかどうかなんて俺の知ったことじゃねえ。だけど、そのお(かげ)でアンタは殺すこと以外の目的を見つけられた。一歩、”人間”に近付けたんだ。だから一応『おめでとう』と言わせてもらうぜ。」

「どうだかな。そのせいで面倒事(めんどうごと)を増やしている気もする。(たと)えば、勝ちを(のが)した何でも屋のご機嫌取りとかな。」

「カカッ、そう言うなよ。今回は俺なりに手を()くしたんだ。それをたかが10万程度の酒とアンタの思い出だけで勘弁(かんべん)してやろうってんだから少しくらい(ねぎら)わねえとバチが当たるってもんだぜ?」

言いつつも、一気にグラスを空け、カラッと笑うその表情にはまだまだ(あきら)めきれていない若い野心(やしん)が見え隠れしていた。

 

「アンタみたいな元気だけでその場その場を乗り切ろうとするヤツはどっかで足を()(はず)すのがオチさ。」

ロックをチビチビと味わって飲む彼女はペペの性格を鼻で笑いながら、その(じつ)、遠回しに彼の将来を気遣(きづか)っていた。

ペペもそれに気付き、彼女の忠告(ちゅうこく)に笑って答えた。

「”俺だけは大丈夫”なんて三流めいたセリフは()かねえよ。だけどよ、今の時代、勝負を仕掛けてナンボの人生さ。何もできずに影でビクビクしてる奴よりよっぽど命を大事にしてると思うぜ?」

 

ガタンッ

 

彼女は(いきお)いよく椅子(いす)()り飛ばし立ち上がったが、酒の臭いの()み着いた椅子は倒れ()れているとでも言うかのように静かに床を鳴らした。

常連の客も、一瞥(いちべつ)するだけで大した関心も寄せてもこない。

「酒」というこの場で最も権力を持つツールが、広い部屋の中に俺たちだけの世界をつくっていた。

「……今、アタシの手で殺してやろうか?そうすればその軽口も二度と叩けなくなる。…そうして欲しいんだろ?」

眉間(みけん)(しわ)を寄せる彼女はペペを(ひる)ませようと(すご)んでいる。

だが目の前の若い男はやはり彼女のありもしない殺意を笑って受け止めた。

「アンタにゃ殺せねえよ。」

「…ナメてんのかい?アタシが今までどんだけ殺してきたか――――」

「キレイな顔しやがって。説得力の欠片(かけら)もねえよ。」

その通りなのだ。

エルクを「殺す」と言っていた時と(くら)べたなら、今の彼女の顔を「笑っている」と言ったとしても間違いじゃない。

「この女ははシュウよりよっぽどヤバい目をしてやがる。最初はそう思ったさ。けど、違ったね。やっぱりアンタも相当(そうとう)にキレイな目をしてるよ。」

彼女は今、大切なものと向き合っていた。

それは、彼女が()くしてしまったもの。二度と彼女の(もと)に帰ってこないもの。

 

彼女は生意気ともとれるペペの発言に対し歯を食い(しば)り、しかしそれ以上言い返すことができないでいた。

それでも、その年下の男を(にら)みつけずにはいられない。

「その目は大事にした方がいいと思うぜ?」

やはり、ペペは彼女の事情を知らない。

それでも今、彼女が自分に対し必死に何かを伝えようとしているのだということには気付いているらしかった。

「まあ、俺みたいな何の事情も知らねえ若造(わかぞう)に言われても気分良くねえだけだろうけどよ。」

返す彼の笑顔はとても(おだ)やかで、彼女をソッと突き放していた。

 

 

ペペの(おご)りだという酒瓶(さかびん)は一時間と持たなかった。

「なんだかんだで湿(しめ)っぽくなっちまったな。だけどよ、不思議と悪くねえ酒だったよ。」

そう言うと、ペペはサッサと帰り支度(じたく)をし始めた。そして、

「お(たが)い景気の良い太陽を(おが)めるといいな。」

捨てゼリフと酒代(さかだい)を残して俺たちの前から姿を消した。

 

「……」

俺は黙ってマスターにグラスを二つ注文し、その一つを彼女の前に置いた。

「……なあ、アンタは昨日、死ぬのが怖いって言ってたよね。」

彼女はグラスに(うつ)る青い髪の女の顔を見詰(みつ)めながらボソリと溢した。

「…ああ。」

「殺したヤツらが自分に復讐(ふくしゅう)しにくるのが怖いって言ってたよね。」

「…ああ。」

「それってのは…、エルクを拾った後も何も変わらないのかい?」

彼女の顔は眉間に皺を寄せたまま固まっていた。彼女の本音(ほんね)が、その皺の一つ一つに隠れていた。

「……何も変わらない訳じゃない。…いいや、変わり過ぎて分からなくなってしまったと言った方がいいのかもしれない。そして、それを言葉に置き換えられるほど俺は自分と自分を取り巻くものの全てを理解していない。」

何となくだが、俺には彼女の気持ちが分かった。

「だが、一つだけ確かなことはある。」

その一つ一つをあの若者に伝えるのが(おそ)ろしくて仕方がなかったんだ。

狙撃(そげき)躊躇(ためら)い、アイツを『化け物』と恐れてしまったあの時の俺のように。

「今は、殺すことよりも、殺されることの方が恐ろしい。」

かつての俺は、罪に(おそ)われ(おとず)れる「死」が残された唯一(ゆいいつ)(つぐな)いのように思っていた。

だが今は、護れずに(くび)られる「死」が何よりも受け入れがたい唯一の罰のように思えた。

 

彼女はグラスを手に取り、そこに映る臆病者(おくびょうもの)を追い払うかのように一度に飲み干した。

「…そうでなきゃいけなかったんだ。初めっから。そうすれば……。」

「……」

今の彼女に俺がかけられる言葉は一つとしてない。(うしな)った彼女に、俺がかけてやれる言葉など。

(みょう)な同情はいらないよ。」

彼女は俺の手からグラスをひったくり、やはり乱暴に飲み干すとペペに向けたそれてとは違う目で俺を睨み、俺を置いて一人酒場を後にした。

 

 

次の日、俺たちは万事(ばんじ)順調(じゅんちょう)生臭(なまぐさ)さを全身に巻き付けてスメリアを飛び立った。

 

 

 

――――ロマリアの人間に協力は求めん方がいい。あれらの多くは戦う意欲をとうに無くしておる。

 

生臭い箱の中、ロマリアへと向かう陰気(いんき)なエンジン音が老夫の言葉を思い出させる。

「それにロマリアでは今、密告(みっこく)奨励(すいしょう)されておる。じゃからそういう顔をして近付いてくる(やから)も少なくない。」

最後に、老夫は一つのキーワードを残す。

「無事、ロマリアに辿(たど)り着くことができたなら、”赤い髪の男”を探すといい。」

「……名前は?」

「今はそれ以上聞く必要がない。教えるわけにもいかん。それだけを(たよ)りに動けば必ず会える。…と言うてもお前さんらなら(さっ)しは付いておろうがのう。」

薄い(まく)のように竜を(つつ)んで燃えていた炎は勢いを増すこともなく、それでも(なお)、みるみる間に竜を灰に変え、今まさに消えようとしているところだった。

「くれぐれも此奴(こやつ)のようになってくれるなよ。」

そう言い残し、老夫は灰と共に姿を消した。




※気圧
私たちの世界での旅客機の貨物室は基本的に客室と同じような設備があり、飛行中でも気圧が落ちたり、気温が下がらないように調節されています。
というのも、貨物室にはペットや気圧変化によって弊害を引き起こす物(ポテチの袋とかww→気圧が低くなると中の空気が膨らんで最終的は破裂します)が積まれることがあるからです。
ですが、これらに該当しない貨物を乗せる場合、設備がオフにされることもあります。(冷蔵の部屋もあります)
そうなると、飛行中の気温は0度前後まで下がることもあるそうです。

※警察犬
初め、魚に紛れて密入国すると思い付いた時、「警察犬の鼻をごまかすため」とか考えていました。
ですが、そんな私の浅はかな考えよりも実際の警察犬の方が遥かに優秀でした。
個体差はあるようですが、彼らは強烈な臭いのニシンの缶詰めや香水、コーヒー豆、防臭スーツ、防臭マスクなどを利用しても犯人や麻薬を捜し出してしまうそうです。
(1週間も熟成した、使用済みの赤ちゃん用オムツでくるんでも効果なしww)
たかが密閉された魚の箱の中にいたぐらいでは、ほぼほぼ見つかってしまうでしょう。
ということで、アークの世界では「警察犬」はいないことにしました。

※縊る(くびる)
首を絞めて殺すこと。犯罪者を縛り首にすること。

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