――――”白い家”コントロールルーム
悪魔はモニターに
「どうよ、この光景。子どもは親の目の届かんところで大きくなっているとは言うが、この光景こそまさにそれを
悪魔の言葉に異議申し立てるかのように、キーボードをパチパチと叩く音が画面の向こうにいる子どもたちの目に見えない吹き出しを
「子どもながらに愛し合い、愛し合いながらも殺し合わねばならん。これだけはどんな
悪魔の
「こんな胸の
悪魔は死に神に問い掛けた。しかし、悪魔は彼が言い当てることを
それを理解している死に神はただ、自分の出番だけを根気強く待ち続けていた。
「ああ、これぞ”人生”よ。」
これ見よがしに悪魔は詠う。
「”人生”か。くだらん。命短し人間の考えそうなことよ。」
「ククク、キサマならそう言うと思っておったわ。」
死に神にとって、命あるモノの一生はどれもこれも
そんな、
「最後まで見ていくといい。人間というオモチャの本当の味がどんなものか。キサマにも理解できるだろうよ。」
悪魔の
そこには”M”と呼ばれる『化け物』の全てがあった。
彼らの打ち出す数字が、”M”の心も身体も
――――”白い家”地下水路
二匹の子どもたちはすれ違う感情を
「ミリル……」
一匹は、ありもしない救いを求めて。
「……」
一匹は、自分を
悪魔が二匹に
だがしかし、それは生まれながらに決まっていたこと。二匹が
それは
悪魔はそこに少し手を加えたに過ぎない。生肉に
二匹がもがけばもがくほど歯車はただただ
「ミリル…俺はどうすればいい?」
上半身を起こし、壁に背中を
「何も考えることないじゃない。アナタはアナタの目的を
俺のことも。自分のことも。
「違うんだ。
「……嘘、じゃない?…エルク、私も初めはアナタの言葉ならなんだって信じるつもりでいたわ。でも、私は今までに
彼女の視線は俺を
「エルクは私を選ばない。」
その
「アナタは私が邪魔になったのよ。分かってたことだわ。そんなこと。……ずっと前から。」
ゆっくり、ゆっくりと彼女は立ち上がる。
「私はただ夢を見ていただけなんだわ。永い永い、悪い悪い夢を――――。」
流れるような彼女の金髪が、空へ羽ばたくかのようにゆっくり、ゆっくりと広がっていく。
「……やめろよ………」
「エルク。私はね、寒いの。寝ても
「やめろよ……」
「だからね、来てくれるのをずっと待ってた。それを……、裏切ってくれてありがとう。」
彼女の青い青い瞳が
「お
「頼むよ……」
「私には分かるよ。エルクももう、『
すると、周囲の空気が前触れもなく「パキパキ」と鳴り始める。
「だから、殺し合いましょう?」
凍った瞳の内側から込み上げる憎しみの光に合わせて、空気が白く、白く
「ッ!?」
だからこれは
「私ね、
腕が焼けるように冷たい。
「その
先生、
………そうだ
それがオカシイと一番初めに気付いたのはジーンだった。毎日
「ジーンだって、私には勝てなかったのよ?」
……やっと…、やっと思い出したってのに。やっとみんなが俺の大切な人だって分かったのに。
「…ジーンはこんなになった私を殺してはくれなかった。私はそのつもりで、彼をたくさん傷付けたのに。」
それってのは、ジーンのあの腕も目も、ミリルがやったってことか?
落ち
それ以外にも、再会したアイツは全身傷だらけだった。
あんなに笑い合った俺たちなのに…。ミリルはアイツの目と右腕を奪い、俺はアイツの命を奪ったんだ……。
「エルク、分かる?分かるよね?私はね、もう
「お願いだ。もう一回だけ、信じてくれよ!今度こそ、ミリルを助けてみせる。だから――――!」
「ウルサイッ!」
また、『白い風』が俺を撫で斬りにしたかと思うと背後の水路を
「痛いのも、嘘吐きも、もうたくさんっ!」
怒りで
「キャァァ!」
「ミリルっ!」
「近寄らないで!」
「グッ!」
………ヤラレル。
それは俺の
……エルク…………どうして、帰ってきたの?
――――時間が止まっていた。
俺のかいた脂汗が、白い剣の上を走っていた。
「……ミリル?」
彼女の生み出した氷の剣は
そこからピクリとも動かない。
何で?
白い剣は大男の腕のように太く、鉄よりも固く見えた。それは「殺意」の
彼女はそれに抗ったんだ。
何で?
『
何でなんだ?
混乱して動くことができなかった。
――――彼女の瞳が
「……エルク、許して……」
彼女は泣いていた。涙は、凍らせていた彼女の「憎しみ」そのものであるかのように、そこに
「私のことは…、も…う、忘れて……」
彼女の
「…どういう、ことなんだ?」
「もう、戻れないの…。あの頃…には…。」
一言ひとことを割れ物を
「ミリル…。もしかして、お前を
「もう……ミリルは…、い、ない、の。」
言いながら、白い剣がボロボロと彼女の細い腕から
そこには、飼い犬を
解放と同時に、
「”白い…家”は…、一匹の怪…物、」
さらに、彼女は
「ミ…リルは、いな……いの。」
あの森で、「助けを呼んできて」と言って俺の背中を押したあの女の子のように。
「なんでそんなこと言うんだよ。ここまで来たんだぜ?ミリルはここにいるじゃねえかよ!」
言い終わるよりも早く、彼女は気を
「……」
その場に
「そのまま連れて帰って何になる。」
「……ガルアーノッ」
「憎しみ」とも違う。「恐怖」でもない。今までに覚えたことのない感情が体中の息を押し出した。
苦しくて、それ以上の言葉が続かなかった。
「フハハハハ、そうだ。ワシはお前のそういう顔が見たいのだ。」
「……」
「どうした。怒りで言葉も忘れたか?」
スピーカーから響く男の声は今までになく
「返事を聞くことができんのは残念だが、ここでワシからキサマに感謝の言葉を
男が笑いを
「キサマのお
男が俺たちを心から
「ミリルを…、放せ……。」
男の考えていること、感じていることが手に取るように分かった。
「…悪いな。聞こえなんだ。もう一度、
まるで、俺が「悪魔」そのものにでもなってしまったかのように。
だからこそ――――、
これからミリルに何をさせようとしているのかも――――
だからこそ――――、
「ミリルを、放せ!!」
それが俺にできる精一杯の
この時すでに、俺は認めてたんだ。
この後に悪魔が言う真実を。
「一度
俺の中で何かが爆発した。
視界に映る、ミリルを
水も
……息が、苦しい。
けれどそれ以上に胸が、チリチリ、チリチリと痛い。
心臓が、今にもはち切れてしまいそうな体を必死に
「……ククク、フハハハッ!そうよ、エルク。もっと怒れ!憎め!キサマの
その声は、ずっと向こうにある生き残ったスピーカーから聞こえてきた。
辛うじて聞こえているはずなのに、
「だが、それもそろそろ
そして、我を忘れている俺の中にも悪魔の吐き出す
「受け取れ。これはワシからキサマらに贈る最高の、そして
不穏な言葉は俺の『
「!?アアアァァァァアアアァッ!!」
「ミリル?!」
突然、腕の中の彼女が激しく
デタラメに『力』を
これは、
直前まで自分がそうであっただけに、今の彼女がどれだけ危険な状態なのかハッキリと理解できた。
「おい、ミリル!落ち着け、落ち着けよ!!」
このままじゃ…、ミリルが
「頼むから、落ち着いてくれよ!!」
強く抱き
『冷気』に全身を
助けてくれ!!
すると――――、
俺の願いは聞き届けられたんだと思った。
そうしてその薄い瞼が持ち上がると、彼女はボソリと俺の名前を
「エルク……」
……その瞬間、その一言で俺は理解した。
神様を信じた俺は、なんてバカなんだって。
本当に……、本当に、ミリルはいなくなっちまったんだ
――――私を殺して
俺にはそう言っているようにしか聞こえなかった。
※寄る辺ない(よるべない)
自分の身を預けられる人や場所のこと。頼みにできる場所やもののこと。もしくは、配偶者。
※白い風、白い剣
氷は、中に空気を含むほどに光を乱反射させて白く濁ります(そう見えます)。
だから敢えて「白」という表現をしています。
※「!?」と「?!」
最近、某バラエティー番組でも取り扱った話題ですが、「!」と「?」、それぞれを
「!」→アマダレ(感嘆符)
「?」→ミミダレ(疑問符)
と言います。そして、二つを合わせた記号を
「!?」「?!」→ダレダレ(もしくはダブルダレ)ダレノ○レノ○美さんではありません。
ちなみに、「!?」を「感嘆符疑問符」、「?!」を「疑問符感嘆符」とも呼ぶそうです。
そこで今回の本題、この二つの使い分けですが、非常に感覚的な問題のようです。
対象の「驚き」を優先させるなら「!?」を。「疑問」を優先させるなら「?!」を使うそうです。
単純ですが、これを知っているだけで読む方も書く方も内容が伝わりやすいかと思って今回、紹介しましたm(__)m