――――我が家へようこそ、黒い
”白い家”という研究
室内に
背後からは扉のロックされる電子音が聞こえてくる。
暗闇を利用した
これらに
「ハハハ、さすがだな。その無駄のない動きと装備。かつてロマリア軍に
これも
確かに俺には、ロマリア軍に所属していた
だが、この動きも装備も
そうだ。
……今さら『影』であることに何の価値もないが。
要はなぜ奴がそんな
「単刀直入に言おう。キサマがここで倒れてもワシはエルクをこの先へと通すつもりだ。だが――――、」
「!?」
それは、物音一つ立てずに
直前までそんな
……
部屋の明かりを
その数、4、5、6……、全部で8体か。
「……正直なところ、キサマのその超感覚には
俺が?エルクの邪魔を?
……いいや、乗せられるな。これも単純な
それを裏付けるように、男が
だからといって俺に実体のないものを相手にする『
この状況下で、出口の前に谷のように深く
全長は20mといったところか。その巨大な
俺の罪を
”気配”たちを
……クソッ
理解し、
この調子なら5分と
……迷ってはいられない。
使い捨ての
カチッ
「!?」
バララララララッ
荒れ狂う嵐のように火を吹く
合計9つの”弾”に追われながら、俺はバックパックから
目標との距離、約20m。おそらく
その
だが、それ自体を
さらに、過去の戦闘で腕が残した
だが、それが”巨影”にまで
”巨影”の一部がエメラルドグリーンに発光したかと思うと、手榴弾は俺の投げたそのままの勢いで
反射的に180度
直後――――、
ズガンッ
俺は運良く
回避対象が減らず、先読みも難しくなってくる。
実体のある”巨影”だけでも
「驚いてくれるか?名を”ガルムヘッド”という。本来ならば
機神……、ヂークベックのことか。
見た目は
今のところアレに害になるような点は無いように思えたが。
あるいはそうやって注意を
シャンテの忠告にあったように、”巨影”もまた何らかの魔法を
そして俺にはまだ、こういう敵にありがちな
それを試すために再度、”巨影”に向かって
射線に追われ、飛び回る”気配”を
手榴弾を
ズガンッ
バリンッ、バチバチバチッ
反対側の壁までは約5m。
壁に
俺は
そして、着地と同時に巨影を
『
「……なんということだ。キサマは本当に人間か?」
大陸の全てのマフィアを
ガルムヘッドの
ところが、この
その異常ともいえる身体能力は
黒装束は悪魔の言葉を無視し、襲いくる”気配”を避けつつ巨影への追撃の手を
発光部分に射撃を集中させ、反応を見る。
『壁』は発生するものの、その効力は
黒装束は『壁』そのものの弱点にも
さらに、彼は『壁』が剥がれるのに合わせて“気配”の動きが鈍っていることにも気付いていた。
”巨影”の反撃は単調で、もはや黒装束がこれらの回避にしくじることはない。
十分と判断した黒装束は全ての攻撃を避け、巨影に張り付くと、手製の爆薬を
そうして彼が押した起爆ボタンによって、”冥府の番犬”はその役目を果たすこともなく
“気配”も、番犬に
「……どうやら、俺の勝ちのようだな。」
それが、悪魔との対話の第一声になった。
その
その
しかし、それらを併せ持つとなると
その評価は、
ゲームを好む悪魔にとって、それは手の付けられない「ワイルドカード」にしか見えなくなっていた。
スピーカーから男の返事がないまま、入口と出口のロックが
「……
全てが
「5年という
「……」
「
「……」
そもそも、俺はまだ“愛”などというものを理解していない。
エルクを拾い、育てる中でその経験は何度かあったかもしれない。あるいは、あの王女を助けた
だが俺は未だにそれを理解し、
護るべき者の傍にいながら、俺はまだあの戦場を、あのスラムの中を走り回っているんだ。
「もしもそれが“愛”というなら、俺は人間として、エルクともども貴様の墓に埋めてやるだけだ。」
それでも答えだけは出していかなければならない。「時」が俺の人生を回し続ける悪魔である限り。
「……ククク、ようやくキサマのことが好きになれそうだよ。」
悪魔の言葉を置き去りにし、黒装束は『炎の少年』を迎えに行く。
たとえ自分が彼にとっての「死に神」になろうとも、その足は止まらない。
彼が
※気配=原作のエクトプラズムのことです。
※エクトプラズム
ギリシア語のecto(外の)とplasm(物質)を用いた、霊能者たちによる造語です。
エクトプラズムは人体に潜在的にある”霊”を引き寄せる物質のこと。”霊”はこれに
ただし、エクトプラズムを出し入れするのは霊能力に秀でたものにしかできないらしく、また、出している時に強い光りを当てたり、刺激を与えたりすると、術者に致命傷を与えてしまうらしいです。
今回はガルムヘッドの体内に配置された『能力者』たち(緑に発光する部分)によって発生しているという設定です。
※暗視ゴーグル
物質から発せられる熱赤外線をキャッチして可視化する装置です。
温度差を見るため、光源は必要なく、兵士や砲台など温度に特徴のあるものに関しては煙越しにでも判別することができます。
また、可視光線の中間で人間が最も知覚しやすい色が「緑」であるため、装着時の視界は「緑」がベースになっているそうです。
※覚醒剤と麻薬の違い
覚醒剤は中枢神経を興奮させ、疲労や眠気の軽減と思考力や活動力の増進の効果が現れます。
対して麻薬は中枢神経を麻痺させ、麻酔や鎮痛作用の効果が現れます。
ですが、どちらにも高い依存性があり、幻覚や妄想などの副作用があります。
戦時下、日本では「ヒロポン」と呼ばれ、作戦前の能力増強のために兵士たちに服用させていたそうです。
※巨影(きょえい)
巨大な影。
普通に辞書にある言葉かと思いきや、ないみたいです(@_@;)
※エメラルドグリーンに発光した
シュウは暗視ゴーグルをかけているので、実際の視界はもともと全体的に緑色です。ガルムヘッドを描写するための止むおえない補足ですm(__)m
※立体思考
「物事を立体的に見ましょう」や「別の視点から見つめてみる」などと言われるように、物事の捉え方は一つ(または一方向)ではありません。という意味の言葉です。
与えられた情報をそのまま使うのが「垂直思考」。その情報を別のもので置き換えるのが「水平思考」。そして置き換えたもので解決法を見出そうとするのが「立体思考」……だそうです。
ですが、ザッと調べたところ、日本語としてはそのような言葉は無いみたいですね。よく耳にする言葉ですが。
※あの王女を助けた気紛れ
「王女」はまだ本編では登場していません。伏線です。