結局、俺たちはリーザに関しての問題をうやむやにさせたまま歩き出した。
俺も彼にハッキリと言えなかったし、彼もそれを聞こうとはしなかった。
けれども……、予感はあった。
先延ばしにしてしまったこの問題が、
『
この5年間で何かしらの
その成長と変化が、彼に何をさせるか分からない。
何かの
……いいや、そうならないことの方が難しいと思う。
俺の不安を
その一枚、一枚に肉食の牙を連想させる不気味な青さがある。砂に追われ、逃げ込む
……間違いない。
そこは『
この世界をブッ壊すために、俺はわざわざこの
引き返すことのできない『
あの時と同じように。
森の中では、目も当てられない『
……だって、悪いのは俺なんだから。
気付けば、奥歯が俺に
「
「血が出るまで
「それでも決して『人』を殺したりはしない」
「いつだって森の向こうを見ては届かない想いを送っているという」
「なぜだか分かるか?」
――――知るかよ
「なぜなら、」
「彼女もまた、
俺は、
鳴り続ける奥歯たちを否定することもできず、ただただ食い縛り、張りぼての「勇気」で森を
もしも今、
砂漠で死にかけた俺を拾い、
それだけ
答えを探すフリをして無駄な時間を
ウサギの形にし、耳を2、3回振る。
「
森の手前に何かを見つけたらしい。
……ダメだ。集中しなきゃ。
彼を
境目には見張りの休憩小屋らしきものがポツンと建っていた。そこから小さな道が
息を
「どうやら人の気配はないみたいだな。」
そうして
「どうする、
小屋があって、
それに、もしもこれが見張りのための小屋なんだとしたら、「無人」と「小道」はあの悪魔のサインだとしか考えられない。
「お待ちしておりました」「どうぞこちらからお入りください」なんて具合の
あのマリュ族と出くわした時点である
つまり、すでに「
それでもシュウはそんなことお
「いいや、おそらくこの森は例の
「なんか分かったのかよ?」
「
土を吐き出し、
”帰らずの実”、見た目は「ロフォフォラ」のように
そのサイズは
ロフォフォラと違って
そうやって獲物の感覚を
それが奴らのお決まりの手口だ。
だが、たとえそれが分かっていたとしても実際に
時には賞金稼ぎが十数人いても
戦闘力こそ
そのプロ連中の間でも、この化け物の「群れ」を相手にするとなると
「……行けそうか?」
「そうだな。入り口を見る分には火薬系統の罠はないようだ。ただ……、」
元々細い彼の目がさらに細くなり、
「ただ?」
「奥が見えん。」
「奥?」
望遠鏡をしまう彼の顔は
「ああ。今、視界に映っている景色が
それは俺も感じていた。一個の景色を描いたパネルを何枚も
”帰らずの実”によくある
「通常、この量であればまだ症状は出ない。」
俺たちはまだ森の中にさえ入ってない。その上、今は
つまり、それすらも無効化させてしまうくらい“帰らずの実”以外の『何か』が俺たちを侵しているんだ。
もしくは――――
「これがマリュ族の言っていた、”悪魔の
俺たちの知っている化け物たちが、
“白い家”がそういう施設で、奴らが本物の悪魔なら、それ位の強化がされていても不思議じゃない。
俺たちは知らない内に、”帰らずの森”に足を踏み入れていたんだ。
その手の罠を専門にする彼すら
「……焼くか?」
どこまで通用するか分からないが、これだけの森が燃えればそれなりに注意を引き付けられるかもしれない。
「相手はお前が来ると分かってるんだ。お前の『炎』にも何らかの対処がしてあるはずだ。」
「だよな。」
とりあえず
まったく使えないって訳じゃない。ただ、俺の呼びかけに返ってくる『声』が、
そうなってくると、こと化け物戦において俺はほとんど戦力外と言ってもいい。
そもそもの『火力』に加え、俺自身の筋力も『炎』に左右されるところが大きい。
『
けれど、それがない今は「アマチュアの
一国を
さらに、『制限』は何も『力』に限ったことじゃないらしい。
「ヂーク、俺たちの現在位置が分かるか?」
『……』
彼が無線機でポンコツに位置情報を聞こうと
こうなると作戦の
こうなった場合、「コントロールルームの破壊」を優先
「仕方ない。
「このままって…、このままかよ?」
「そうだ。」
彼はひどく無感動に答えた。
「どのみち、俺たちは今、毒に侵されている。さすがにこの状態の俺たちを無事に帰すほど連中も優しくはないだろう。だからと言って立ち
そうして、圧倒的不利な立場も無視して彼は躊躇いなく「用意された小道」を歩き始めた。
彼にとって、
彼の顔を見てもそんな「自信」や「確信」は読み取れない。
それでも彼の足には迷いがない。俺はそんな彼を信じて続くしかない。
森に入って一分と
完全に「
踏む入るほどに日の光を
まるで俺たちの侵入を喜んでいるかのようだ。
「森」という獣の胃袋の中にいる感じさえする。
落ち葉という胃液が、「不安」を押し隠す心の壁をジワリ、ジワリと
言わずもがな、この感覚にはおぼえがあった。
迷い込んだ人間を
「『
口を突いて出た言葉は誰に聞かせる訳でもなく、ただただ
そんな
その数は少しずつ増えている。
こんなあからさまな視線に彼が気付いていないはずがない。
それなのに、彼はやはり何もかもを無視してただ真っ直ぐ歩き続けていた。まるでこの目に映る彼が
「……アレ、放っとくのかよ。」
不安になり、つい彼に声を掛けてみる。
ところが彼は、その表情の通り
「さっきも言っただろう。通常、あの量の花粉でこの幻覚症状は
彼の行動を見るに、今は前者を優先しているらしかった。
「だからって、ただ真っ直ぐ進んでるだけで抜けられるもんかよ。」
彼は
「ここではあまり俺を頼るな。
……もしかして、彼はこの「視線」を頼りに進んでいるのかもしれない。
そう思って歩いてみると、真っ直ぐ進んでいると感じていたのは狂った俺の五感で、実際は
彼の
すると彼は皮の
「無理に息は止めるな。視線もできるだけ動かすな。基本はリラックスだ。だが無心は逆効果だ。真っ直ぐ前を見て、できるだけ自然体でいることを心がけろ。そうすれば症状が
俺が分かりやすいように
それなのに彼と同じ動きをするなんて
結局、俺は彼に付いて行くことだけで精一杯だった。
けれど、そうやって森を歩いている内に
「……マジかよ。」
五感を狂わせる相手に五感で押し切ってしまう彼の「超感覚」が―――今さらながらに―――一種の化け物であるように思えた。
その驚異的能力を、
そして、考え
俺への対処ではなく、彼を殺す方法を。
※”帰らずの実”=原作の”妖樹”のことです。”帰らずの森”では”廃棄物(植物)”という表記になっていました。
※”帰らずの実”に対する皮肉
体色の「緑色(グリーン)」とロフォフォラのような柔らかな「
「グリーン」と「ベリー」をもじって「グリーンベレー」ですf(^_^;)
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、完全に「英語」と「アメリカ」を土台にした皮肉なんです。「英語」はアークの世界でいう「ロマリア語」、「”アルディア”は”アメリカ”なんだ」ということで手を打ってください。m(__)m
※グリーンベレー(Green Berets)
アメリカ陸軍における特別部隊の通称。その主な目的は友軍への特殊作戦、対ゲリラ戦のための
「Special Force」を省略してSFと呼ぶこともあるそうです。
今回は友軍を賞金稼ぎ、グリーンベレー(教官)を”帰らずの実”に置き換えています。
賞金稼ぎたちは”帰らずの実”を駆除しているのではなく、”帰らずの実”から「賞金稼ぎ」という「特殊な仕事の教育を受けている」という皮肉なのです。
ちなみに、グリーンベレーのベレー帽に付いている
「毒に侵された状態」→「現実からの隔離」→「現実という抑圧からの解放」これも一つの皮肉のつもりです。
※雑木林(ぞうきばやし)
色んな木が生えている林。
ちなみに「森」と「林」の違いは人の手が加えられているかいないかです。「森」が自然にできたもの、「林」が人の手が入れられたものです。