オーバーロード 粘体の軍師   作:戯画

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第17話 暗躍

「邪魔するよ」

「これは、守護者デミウルゴス。ようこそ」

 

 丸眼鏡にスタイリッシュなスーツを着こなした第七階層守護者デミウルゴス。迎えるのは鮮やかな紫の衣装に包まれた骸骨魔法師(スケルトン・メイジ)の司書長ティトゥス・アンナエウス・セクンドゥスである。

 辺りは薄暗く、無数の本棚や製図などに使うような器具が所狭しと並んでいる。司書長は作業台と思われる場所で広げた羊皮紙に加工を施しているようであった。

 

 ナザリック地下大墳墓第十階層、大図書館(アッシュールバニパル)の奥地にて二人だけの会議は行われていた。ナザリック非常事態宣言を受けてからこっち、デミウルゴスが奔走していたのは差し当たって巻物(スクロール)の安定供給であった。ナザリック自体のシステムは全体でやり繰りができるようになっているのだが、倉庫のアイテム、特に消耗品はその限りではない。

 元はと言えば至高の御方々が自ら収集した財産なのだから、巻物(スクロール)一つ取っても無駄にしてはいけない。しかしどうしても使用せざるを得ない場面は出てくる。そのため、デミウルゴスが着手したのは巻物(スクロール)作成のための羊皮紙確保だ。手に入れたものが実用に耐え得るものなのかはデミウルゴスには判断できないため、こうして司書長の所へ持ってくるのだ。

 

 工程の最終段階に入ったあたりで巻物(スクロール)が突如発火する。たちまち灰になった羊皮紙がボロボロと崩れ去った。

 

「折角持ってきてくれたが、この羊皮紙も駄目のようだ」

「何、気にやむことは無いよ。それならまた別のものを試してみるまでさ」

 

 第二位階程度までの低位巻物(スクロール)作成には問題無いが、それ以上を作ろうとする試みはことごとく失敗していた。司書である五体の死の支配者(オーバーロード)たちの会釈を受けつつ大図書館(アッシュールバニパル)を後にするデミウルゴスは、その明晰な頭脳を回転させる。

 アウラたちの協力を受け、トブの大森林周辺にいる獣の皮はほぼ試した。有力な候補が1つ残ってはいるが、量産ができなければ価値は薄い。

 アインズが現地の人間から入手した地図を先日目にしたのだが、そこに載っていた地理を頭に浮かべながら次の手を考える。表の情報収集はセバスが行うと聞いた。ならば裏は自分の受け持ちだ。そしてこれはどうしてもナザリックにいたままでは難しい。

 巻物(スクロール)の件の報告も合わせて行うため、玉座の間へと足を向けた。アインズは現在ルプスレギナを伴って外出しているので、もう一人の至高の御方が留守を護られている。

 

 

 

 

 

 

 あらゆる生物の生存には、熱が必要だ、科学的な考え方からいけば、熱量が存在しない絶対零度において、全ての物質は生命活動を含めた一切を止める。かと言って、過度な熱量は多くの生物にとって好ましい環境ではない。

 辺りに陽炎が立ち上るナザリック地下大墳墓第七階層は、高熱環境に耐えられぬ者を嘲笑(あざわら)うかの如き、苛烈なフィールドだった。剥き出た岩肌には苔すらも生えず、地面のあちらこちらから高温の蒸気が不規則に吹き出ている。まともに浴びれば全身火傷は免れないだろう。

 階層を大きく寸断する形で流れる溶岩の川は、耐性の無い者は接近するだけで炎のダメージを受ける上、渡る時には全く視界が利かなくなる。

 

 最も恐ろしいのは、中に潜む超巨大奈落(アビサル)スライムである。紅蓮の名を冠する領域守護者であり、まさにゲートキーパーと呼ぶに相応しい強さを持っている。例えば≪フライ/飛行≫などで川を飛び越そうとすると、凄まじい速さで噴出し、たちまち相手を自分の領域である溶岩の中へ引き込んでしまう。

 爆発的に加速する継続ダメージと、呼吸もできず視界もゼロ。一方紅蓮は呼吸をする必要が無いため、一切姿を見せずに捕らえた獲物を逃さないだけで決着する。ただでさえ物理耐性の高いスライム種が、90という高レベルでかつ防御に重点を置いた立ち回りをしてくるとなると、生半可なことではこの鬼門を越えることはできない。

 

 溶岩の川を抜けた先には、一見廃墟と化した古代ギリシャ風の神殿がぽつんと取り残されたように建っている。周囲には憤怒の魔将(イビルロード・ラース)嫉妬の魔将(イビルロード・エンヴィー)強欲の魔将(イビルロード・グリード)といったレベル80台の強力なモンスターが徘徊しており、紅蓮を突破してきた者に容赦無い苦難を与える構成になっている。

 

 その建物の名称は赤熱神殿。居住地と言うには生活感とかけ離れた雰囲気の場所ではあるが、その最奥たる部屋に第7階層守護者デミウルゴスはいた。いつもの真紅のスーツに身を包んでいるが、暑がる様子は無い。渦巻く熱風を涼やかな表情で受け流していた。

 決して座り心地は良くないであろう石造りの椅子に足を組んで腰を落ち着け、簡素なテーブルの上に置いた大きな鏡を前に指を振っている。

 

 ぶくぶく茶釜への報告に加えて相談したところ無尽蔵と言うくらいストックがあるから自由に使っていいと言われたが、畏れ多くも至高の御方々が成した財の一部であることには変わり無く、軽々に消費していい物ではない。丁重にその申し出を固辞し、遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を一個だけ下調べのために拝領してきた。

 

 視点を引いて広い視野を映したままナザリックを中心とした周辺域を見ていたデミウルゴスだったが、やがてある地域を再び映すと顎に手をやり考えを整理する。

 目に留まったのは丘陵地帯だ。探していたのは人間の往来が少ないと思われる場所。それでいて人間の集まる都市などから離れ過ぎていないこと。北方にはまず人がいないであろう山脈を発見したが、第二の条件を満たしておらず、かつ高低差の激しい地形は何かと余計な手間が掛かりそうだったため候補から外した。

 その点この丘陵地帯はまさにうってつけだった。アインズが人間社会潜入の拠点にしているエ・ランテルにも比較的近く、少し東には人間のものと思われる都市がある。あいだに挟まる位置で豚鬼(オーク)の集落が見える。壁の役目を果たすと共に、今後想定している羊皮紙の増産についての実験サンプルにも事欠かないだろう。成果を上げるための道筋が、より具体的に形を成していく。何事も初めは手が掛かるものだが、仕組みを完成させればほぼ永続的にその恩恵を得られることを考えれば安いものだ。その最たる例が、他でもないこの第7階層を含めたナザリック地下大墳墓だ。

 

 かつてアインズ・ウール・ゴウンが三十人規模の分割チームで攻略したダンジョンを拠点に改造し、第六階層までだったものを開拓の末現在の形にしたのだ。管理するエリアが広がればそれだけ配置するべき人員の数も増え、内部構造は複雑化する。自分の知識が及ぶ所ではないが、拠点化するにあたって絶対に無視できないルールがあったらしい。至高の四十一人の行動を縛るなど許しがたい愚行だが、寛大な御心によって彼らはそのルールの中で見事にナザリック地下大墳墓を完成させた。文字通り完全に成っているのだ。各所への人員配置は言わずもがな、継続的に生み出されるアンデッドは無限の戦力を提供し、それでいて破綻しない。アーコロジーを超えたひとつの永久機関なのだ。

 

 至高の四十一人の偉大さには足元にも及ばないが、そこから学び、模倣する事はできる。たとえ拙い出来であっても、ナザリックのためになるのならばなんの気恥ずかしさがあろうか。

 

 目的地が決まり、神殿の主は立ち上がる。ある程度シモベも引き連れていく必要があるだろう。それと用意しておくべき物がもう一つ。

 

 最奥に位置する祭壇の裏に回り込み、石棺を開ける。そこから取り出したのは簡素な仮面。緑色を基調として、耳まで裂けた口が狂喜の表情を作っている。それをくるりと回して鑑賞すると、懐へ仕舞い込んだ。

 

 準備が出来次第出立する旨は先程報告済みである。必要なシモベ達を集め、第七階層守護者デミウルゴスはナザリックを出立した。

 

 

 

 

 

 

 理性を持った人間にとって、火は大いなる発見であり、多大な恩恵をもたらし続けている。≪コンティニュアル・ライト/永続光≫の魔法を使った魔法道具もあるとは言え、庶民が軽々しく手に入れられる物ではなく、暖を取ったり料理をしたり日常での使用は多岐にわたる。

 しかしそれと同時に扱いには注意をしなければ、たちまち脅威となって自分たちを襲う。火はあらゆる物を灰に変え、焼かれて死ぬのは筆舌に尽くし難い苦しみであると言う。

 

 赤々とした炎が燃え盛る森の中で、逃げ惑う豚鬼(オーク)たちにとってもそれは同じことだった。彼らに火を巧みに使う文化は無いが、山火事が自然発生することは数年単位でしばしばあり、その危険性は理解している。が、問題はそこではなかった。

 

 木の根に足を取られて転んだ豚鬼(オーク)は顔面を大地に強くぶつける。上げた顔には鼻血を垂らしていたが、そんな痛みを気にしている暇は無い。逃げなければ。あれから逃げなければ。武器を拾うことも忘れ、立ち上がろうと土を掻き上体を起こそうとした。背に受けた衝撃で彼は再び地面に顔面のスタンプを押すことになる。

 

「おや、どちらへ行かれるのですか」

 

 豚鬼(オーク)の背中を片足で押さえ付けた仮面の男は、場違いにさえ感じる優しげな声音と慇懃な言葉で尋ねる。簡単な質問であり、答えはこうだ。お前のいないところ。

 だが恐怖に震える心と裏腹に、豚鬼(オーク)は言葉を絞り出すことができない。自分はいま、ヒトの形をした死そのものに踏みつけられているのだから。

 これがやって来たときのことが、走馬灯のように脳裏をよぎる。

 

 

 

 それはいつも通りの一日だった。狩りに出て、獲物を持ち帰ったあとは血の気の多い連中のケンカ騒ぎの野次馬に紛れ、いいぞそこだ、やれ右だ、やれ左だと無責任な煽りを投げ付ける。地の果ての陽が姿を隠し切る頃、小高い山が連なる方角からその男は来た。

 ついさっきまでの空よりも赤い、皮を剥ぎたての獣肉のような色の変な服に全身を包んで、顔には緑色の仮面を着けていたので素顔は分からない。自分の知る物より随分と小さく、それでいて飾り気の無い物だった。いきなり現れた謎の人物に、当然ながら他の者も訝しい目を向けている。

 

 耳目を十分に集めたと判断したのか、両手を広げたと思うと仮面の男は大仰な動作で頭を下げた。まるで何かの儀式を見ているみたいだと思った。顔を上げた仮面の男は、決して大きくないのによく通る声でこれまた妙なことを言い出した。

 

「あなたたちをまとめる者と話をしたい。連れてきてはくれないかね」

「あ〜? オメー、なぁ〜に言ってんだあああ」

 

 早速喧嘩っ早い若者の1人が突っ掛かっていった。状況を見守ってはいるものの、この場にいる大多数の者の意見を代表して言った点は褒めてやってもいい。

 他の者は距離を取っており、話すつもりのある奴が目の前の一人だけらしいと認めると、首を左右に振ってから実に面倒臭そうな様子で口を開いた。

 

「聞こえなかったかね、長を呼んできていただきたい。それとも君が長なのかな? なら失礼をした。人は見掛けによらないものですね」

「バカかてめーは。長が出てきたら何だってんだぁ! オレが根性入れてやらぁ!」

「やれやれ、どうやらあなたたちの長は随分な臆病者と見える」

 

 ピキッ、と場の空気が一瞬固まる。この侮辱発言は流石に様子を見ていた連中も聞き逃せない。誰かが罵倒の言葉を投げ掛け、そこからは堰を切ったように喧々囂々(けんけんごうごう)、いつ私刑(リンチ)になってもおかしくない勢いだ。

 

「静かにしろバカ共がぁ!」

 

 空気ごと揺れたかと思う大音声(だいおんじょう)に、その場の誰もが身を竦めて黙る。ズシン、ズシンと近付いてくる足音に男を囲うようにしていた人垣が割れ、出てきたのは豚鬼(オーク)たちを束ねる集落の長であった。頭に付けた羽根飾り付きの豪華な兜は、代々英雄に引き継がれて来た名誉ある装身具。そして豚鬼(オーク)最強の戦士の証でもある。

 逞ましい身体のあちこちには無数の傷痕が残っており、彼が歴戦の勇士であることを物語っている。

 仮面の男の許へ長が近付いてくるのを見て、若者は焦った様子で人垣に紛れた。

 

「ワシがここの長だ。話をしたいと言ったな。一応聞くだけは聞いてやる。言え」

「ふむ、長ともなると流石に……他の者より頭が回る」

 

 言葉を切って仮面の男は周囲の豚鬼(オーク)たちを一瞥する。言葉の裏には嘲笑とも取れるニュアンスを含んでいたが、その機微を読み取れる者はこの場にいなかった。

 

「まずその前に二つ尋ねたいのですが、種族の意思決定は長がするのでしょうか」

「いし……けってい? よく分からんが長がいちばん偉い。長の言うことは絶対だ」

「なるほど? ではどうすれば長とその他の者の区切りが無くなると思いますか」

「そんなことにはならない。長が死ねばその次に強い奴が新しい長になる」

 

 なるほど、なるほどと顎に手を当てて頷く。一体何が目的なのか、未だに不透明な状況にいよいよ周りの者の鼻息が荒くなる。強さにおいて絶対の信頼を置く長の(そば)にいることが、気を大きくしている要因の一つだった。

 

「それで、お前は何をしに来た」

「結論から言うとあなたたち豚鬼(オーク)を支配下に置くために来ました」

「ぶ」

 

 ぶあっはっはっは、決して品の良くない豪快な笑い声が夕闇の中にこだました。大笑いする長に釣られて、男を除く全員が大爆笑する。

 

「ふざけてんのかぁっ!!」

 

 ドズゥン、と怒りと共に地に叩き付けた足と怒声が空気をビリビリと揺らす。歪んだ顔はみるみるうちに紅潮し、強く歯を食い縛った口元からは悪臭を伴った唾液がポタポタと溢れた。

 この時点で敵対は決定的となった。あとは嬲り殺しだ。それを理解した豚鬼(オーク)たちは腰に下げていた棍棒や手斧を引き抜き、長の一声で一斉に襲い掛かれるように準備を整えている。

 

 騒ぎの中心にいる仮面の男には全く慌てた様子が無い。さっきの一喝を真正面から受けてもそよ風に吹かれた程にも感じていないと言わんばかりに自然体で立っていた。警戒している素振りさえ見せない。

 隙だらけとは言え、長が号令を掛ける前に勇み足で仕掛ける訳にはいかない。全員が今か今かと合図を待った。

 

「そうでしょうとも、そうでなくては。ではあなたたちは抵抗するようですので、力ずくで言うことを聞いていただくとしましょう。長、よろしいか?」

「つくづく人をナメた奴だ。できるものならやってみろ!」

「遺言は確かに」

 

 次の瞬間、強烈な熱波が仮面の男から放たれた。

 

 砂埃を含んだ熱風に堪らず閉じた目を開いた先にあった光景は、炎の壁とあちこちに転がる同胞の死体。中心に近かった者程高熱を受けたらしく、全身の皮膚を爛れさせて絶命していた。少し離れた者でこれだ。最も近くにいた者はどうなっているのか。

 

「お、長ぁ!」

「お探しの方はこちらですよ」

 

 炎の壁が掻き消えた先には、さっきまでと何ら変わらない様子で右手に炎を弄んでいる仮面の男と、大きな黒い炭の塊があった。それは十秒前まで長と呼ばれていたものの燃え滓だ。仮面の男がそこに軽く手をあてがうと、長だったものが赤熱し、内部からの圧力に耐え切れず粉々に爆裂した。

 そこからは一方的な蹂躙劇が幕を開けた。やけくそで立ち向かう者はことごとくが黒焦げのオブジェと化し、住居を始めとしたあらゆるものが焼き尽くされた。残ったのは抵抗を諦めた者たちだけだった。

 

 そして運良くと言うか、騒ぎの輪から離れていた自分は火傷を負うことも無かったのだが、いま、自分はどういう訳か炎の死神に背中を踏み押さえられている。

 

「ところで、あなたは抵抗しますか、服従しますか」

「ふ、服従したら助けてくれるのか……?」

「もちろん。私はそのために来たのですから」

 

 生き残った豚鬼(オーク)たちには何も無い。抵抗する気力も一切合切があの炎に焼き尽くされてしまった。逃げたはずの者たちは集落を囲う炎に道を塞がれ、広場へと追い立てられていた。

 炎の壁に四方を封鎖され、じりじりと体力を奪われる中で彼らは恐ろしいものを目にすることになった。

 

 近付くだけで命が危ぶまれる炎の壁の向こう側から、何事も無いかのように仮面の男が姿を現したのだ。一部の者は恐慌状態に陥り、パニック寸前である。だがギリギリのところで耐えているのは、逃げ場の無い炎の壁に囲まれていることと、仮面の男が口元に指を立てて、『静かに』のジェスチャーをしていたからだ。誰もが必死に恐怖の悲鳴を喉に押し込めた。

 

「さあ今一度問いましょう。支配下に入ることに異存のある方はいらっしゃいますか?」

 

 いる訳がない。真正面から有無を言わさぬ力で叩き潰された。何をしても無駄なのは子供でも分かる程に明白になっている。無言を肯定の返事と捉えた仮面の男は、よろしい、の一言と同時に指を鳴らした。噴き上がっていた炎の壁が消滅し、冷え込みを予感させる夜の空気が戻ってきた。

 代わりに姿を現したのは、異形の者たちであった。ある者は平面と立体の狭間に立ち、ある者は扇情的な恰好に肉感的な身体と黒い翼を持っている。またある者は烏を模したような仮面を被り、白いローブに身を包んでいる。異様にして禍々しく、見る者に底知れない恐怖を与える集団だ。その場にいる者たちは発狂しないのが不思議なくらい、恐怖に顔を引き攣らせていた。

 その様子を見た仮面の男は悦びに体を打ち震わせる。

 

「おお……呪言での支配は真の支配ではないとは、(まさ)にこのことだったのですね。心を折った絶望こそ甘露。流石は至高の御方、まだまだ私などは足元にも……。ああ、失礼、こちらの話なのでお気になさらず。豚鬼(オーク)諸君の出番はもうしばらく後だ。人手も減ってしまったことだし、私のシモベを置いていくので食料確保などは協力させよう。彼らにはある施設の建設を指示しているので、手伝ってやってくれたまえ。ギブアンドテイクだ」

 

 一方的に蹂躙したのは支配下に置くための手段であって、そのあとのことはまた別の話と言うことか。普通に考えたら滅茶苦茶な論法であるが、蹂躙された側の豚鬼(オーク)たちが何か異議申し立てができるはずもない。ここで口を出すような奴はついさっき黒焦げになってどこかその辺に転がっているだろうから。

 

 数体の影の悪魔(シャドー・デーモン)を引き連れた仮面の男は、言い遅れていましたが、と前置きをしてから名を名乗り、人間の街があると聞く方角へ去っていった。

 

 

 

 決して忘れることができない、忘れることが許されないその名は。仮面の男はヤルダバオトと名乗った。




 オークの言語能力とか文化レベルとかは捏造です。デミウルゴス牧場で使われている内容から、知能はゴブリン以上人間以下で考えてます。なら会話くらいは出来るかなと。

 デミウルゴスも能力あんまり多くないらしいけどよく分からないんですよねー。

8/12 誤字修正システムでご指摘いただいた箇所を適用しました。このシステムすごく便利ですね(甘え
10/26 司書長の口調を修正しました。
2018/11/3 行間を調整しました。

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