艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第5海 最初の提督業

<佐世保鎮守府 執務室>

 

翔「おはよう、大淀、電」

 

「「おはようございます」なのです」

 

佐世保鎮守府に着いた翌日。

俺達はこの新しい家で一晩して、朝起きて、ご飯食べて、あの鎮守府のようにいつも通りに始まったのだった。

 

翔「さてと……清志のように上手くいくか分からないが、二人共俺の補佐を頼む」

 

電「勿論なのです、翔司令官」

 

大淀「はい、お任せ下さい。提督」

 

不意に呼ばれた司令官と提督。それに、ちょっと頬を染めてこめかみを指で掻く。

 

翔「司令官に提督、か……照れ臭いな」

 

大淀「貴方はこの新佐世保鎮守府の提督なのですからね」

 

電「しっかりやらなきゃ、駄目なのですよ!」

 

二人に押されてちょっと自由が利かなくなることに、不満を持つが仕方ない。これが提督というものだろう。

 

翔「……ああ、了解したよ二人共。だけど、提督服は脱いでいいか?」

 

大淀「駄目です。ちゃんと着てください」

 

翔「ちぇっ、動きにくいのにな……」

 

いつもは半袖半ズボンのガキみたいな格好である。提督服は長袖長ズボン、しかも帽子もあるし規定の靴もあるというものだ。キツいよ……

 

大淀「……分かりました。此処は独立したも同然なので、執務以外の時は私服で結構です」

 

翔「まあ、それでもいいっちゃあいいか」

 

緊急時にはどうにもならんが、まあいいっちゃあいいな。

 

翔「んじゃ、執務も初めてだ。だから、簡単なやつからやろうか」

 

そう言って、机に置いてある資料に目を通す。最初は……やはり、建造だな。

 

翔「それじゃ、建造でもしようか」

 

大淀「ですね。ここには戦艦の大和さんやら空母の赤城さんやらいますもんね。手始めに、駆逐艦や巡洋艦を建造致しましょう」

 

翔「最初からその気だ。艦隊を動かす上で高速の駆逐艦や巡洋艦が良いな」

 

電「なら駆逐艦は最低値30/30/30/30、巡洋艦等は250/30/200/30がいいのです」

 

資料の建造項目にあるレシピを電が指をさした。十分に足りるものだし……これでいこうか。

 

翔「じゃあ最低値を2、巡洋艦等レシピを2で建造を頼む。あっ、妖精さんにはキャラメルあげておいて」

 

机を引いて、俺特製の四角キャラメルを電に渡す。

 

電「了解なのです!」

 

大淀「それでは、電さん建造をよろしくお願い致します。

それじゃあ提督、執務の基礎と艦隊の運用の仕方を教えましょうか」

 

翔「ウエーン……」

 

淀さんパネェッすわ……

 

(五分後…)

 

コンコン

 

翔「ん~、誰だ~?」

 

電「電なので~す。新しい艦娘を連れてきたなのです」

 

翔「What`s!?」

 

は、早っ!!早すぎだろ!!?

 

翔「早すぎないか!?」

 

電「バーナーこと高速建造材を使ったのです~」

 

翔「えぇ~……まあ、いいけどさ。んじゃ、入っていいぜ~」

 

デスクワークの本を閉じ、置いてある帽子を深く被り、白い手袋も付けておく。仕上げに頬を叩いて、提督らしさを漂わせる。

 

電「それでは、電は暁ちゃんの所へ行くのです」

 

ギイィィ…

 

「「し、失礼します……」」

「失礼致します」

「失礼しま~す♪」

 

扉から、建造された艦娘が礼儀正しく入ってきた。目を伏せているため、彼女達の姿は見えない。けど四人のうち二人が怯え混じりで、一人は礼儀正しく、そして一人がノッている感じで言っている。

 

翔「コホン……君達が、建造された新しい艦娘か。

私はこの佐世保鎮守府の提督である雄崎翔だ」

 

声も目の色も歴然の騎士の如く鋭くして、ゆっくりと顔を上げて彼女達を見る。

そして、四人の少女の姿が見えた。右側二人はそれに怯えたかのように震えたが、右の二人はあまり動じはしなかった。

 

翔「それでは、右から自己紹介を頼む」

 

暑い……頭も手も体も暑いよぅ……熱中症になりそうだぜ……

 

潮「わ、私は綾波型駆逐艦10番艦『潮(うしお)』です。こ、これで、よろしいですか……?」

 

翔「うむ、そんな感じでいいぞ」

 

藍色に近いロングヘアーとアホ毛が立っているのが潮……駆逐艦ってこんなに体つきいいのか??

 

羽黒「み、妙高型重巡洋艦4番艦『羽黒(はぐろ)』ですっ。その……ごめんなさい……!」

 

翔「……何故謝るのか?」

 

羽黒「あっ、ごめんなさい!」

 

四人の中で身長が高くて、弱気なのか羽黒は。こりゃ、怯えるも同然だな。

 

如月「私は睦月型の2番艦『如月(きさらぎ)』です♪宜しくお願いしますね?」

 

翔「うむ、宜しく頼むぞ」

 

如月「ふふっ、目付きや声はゴツくても若そうわね♪」

 

翔「元からそうだ」

 

如月は男を遊ぶようなタイプに見えるな。……咲姫にお仕置きされそうだな……まあ、胸はちっちゃいけどネ……

 

村雨「は~い、それじゃあ私ね。私は白露型駆逐艦の3番艦『村雨(むらさめ)』よ。宜しくね♪」

 

翔「村雨……、宜しく頼むぞ」

 

村雨「……?どうしたの、提督」

 

翔「いや、何でもない……」

 

村雨の容姿が髪の色や性格はともかく、義理の娘に見えた。それに、ちょっと黙りこんでしまうが、どうにか受け流せた。

 

翔「潮、羽黒、如月、そして村雨か。

ようこそ、我が鎮守府へ。代表して、歓迎する」

 

……とその後も流したいのだが、体と頭と手が限界である。

もうっ……我慢出来ん!!

 

翔「……暑~、ったく清志の野郎!何でこんな厚い提督服にしたし!!」

 

愚痴を溢しながら、手袋と帽子を脱ぎ襟元を広げて帽子で扇ぐ。さっきのゴツい目付きと声も元に戻す。

それに、四人は口をぽかんと開けて唖然としていた。

 

翔「ったく、大淀からも提督服着ろって……提督は提督服着てからこそ提督かっつの!!」

 

潮「え、ええっと……」

 

翔「ん?」

 

潮「ヒッ!」

 

潮が縮こまってしまう。それに、俺は我に返る。

 

翔「……すまない、四人共。アレはただのフリ、今の俺が翔なんだ」

 

そう言った後、席を立って近くにある小さな冷凍庫から俺の特製アイスの入った袋を四つ出す。

 

翔「お近づきのしるし兼騙したお詫びだ。特製アイスだ。次いでにチョコミント味だ」

 

皆に手渡すと、執務室にある応接用のソファに座らせる。

 

翔「まあ、改めて提督の翔だ。宜しく頼むぜ」

 

いつもの笑顔を浮かべて、四人に挨拶をした。

 

村雨「ふぅ~ん。笑顔だと格好よさが沸き立つわねぇ」ペロペロ

 

翔「そりゃどうも、お世辞言っても何も出ねえぜ?」

 

如月「あらぁ、それは残念わね♪」レロレロ

 

翔「そして舐めるな村雨、如月。かじれ」

 

超卑猥に見える二人に注意をすると、如月と村雨は何か残念そうにアイスをかじった。潮と羽黒は大人しくかじっているが、美味しそうに食べていて何よりだ。

 

翔「美味いか?それ、俺が作ったものなんだよね」

 

潮「!?……こ、このアイス提督さんが作ったものなのですか……!?」

 

皆が目を丸くしているのにちょっと可笑しくて少し吹きかけるが、どうにか堪えた。

 

翔「ああ、勿論。というか、お菓子作りは料理では超得意だからな」

 

つい間宮と伊良湖の心を折ったのは、真新しいことだ。そして、教えられる形になったのだが……

 

翔「パフェ、餡蜜、マドレーヌ、みたらし団子、饅頭、ケーキ……ともかく全般のお菓子は作れるぞ」

 

特にパフェには思い入れがある。

ある純喫茶店のマスターが作るチョコパフェはとても美味しかった。裏メニューの巨大パフェも余裕で食らってたのも良い思い出だ。

そして会えないことに、別れの挨拶をした時にパフェの作り方のレシピを貰ったのだ。

そうして、あらゆるお菓子作りに励んで今に至るわけだ……

 

羽黒「ほわぁ……料理得意なのですねっ……」

 

翔「うんにゃ、俺の嫁も友人も料理は得意ぜ。お菓子というジャンルを省いたら、俺は最下位さ」

 

咲姫は洋風料理、成人は和風料理を得意としている。何かと希と望も料理は得意で、中華料理が得意なのである。

俺は主菜副菜といったのはまあ主婦レベル。差は大きいが、デザートという部門でどうにかその差を埋め合わせている。

 

村雨「お菓子作れるくらい立派じゃないの」

 

翔「そうか……。でも、デザートは余計な糖分や炭水化物があるからな……ちょっと見劣りしているよ」

 

如月「というより貴方奥さんいるのね……残念ね、私提督を狙ってたのに……」

 

翔「生憎、俺は嫁以外の奴と仲間家族以上の存在にはしないと決めているのでね」

 

何かと、村雨も残念そうな顔をしているな。潮と羽黒は頬を染めて顔を伏せている。……まさか、お前達もか。

 

翔「さてと……こんな話は置いておいて、真面目に話をしよう」

 

崩していた提督服を整えて、ゆるゆるの気と目つきを引き締める。四人に対峙するように応接用のソファに座る。そして、俺は皆に目を向けた。

 

翔「じゃ、俺達がどういう位置付けであることと、この経緯を話すとしよう。……一回きりだ。ちゃんと聞いておくれよ」

 

四人は頷いた。そして俺は俺達の立場、そしてこの鎮守府に滞在した経緯を話したのだった……

 

 

提督説明中…

 

 

翔「……という、わけだ」

 

話を進めるごとに、皆はその顔を強ばらせる。でも、わかってくれたようだ。

 

羽黒「つ、つまり……この鎮守府は前任の提督から奪い取ったもので、貴方達は海軍の敵ですか……?」

 

翔「ああ。海軍は黒、勝つためには艦娘を何人も沈めることをいとわない非人道的な組織だ。その魔の手が襲いかかる前に、俺の先輩かつ君達以外の艦娘の指揮にあたった提督さんは俺達をこの鎮守府に逃してくれたんだ」

 

村雨「この鎮守府以外は全てブラック鎮守府……何か、私がこの鎮守府に建造されて良かったわ……」

 

話が重々しいのか、村雨はため息をつく。三人も村雨に同意するように二回首を縦に振った。

 

如月「相当キビシイ位置にいるのね、私達……深海棲艦と海軍を敵に回しているし、前任提督が佐世保鎮守府に私達がいることも気づかれてもおかしくない……完全な背水の陣ね」

 

翔「ああ。この2つを相手にしなくちゃならない。金剛達は既にそういう位置にあったから大丈夫だが、お前達は非常に厳しいものになる。

というわけで、質問をする」

 

深呼吸を一つ、そして真剣な目で四人に問う。

 

翔「この大本営側に立つ佐世保鎮守府の一員になってはくれないか?厳しいものになるが……俺も出来るだけフォローする。頼むっ!」

 

俺はテーブルに額が付くくらい、頭を深々と下げた。アイツも、このように勧誘してきた。なら、提督である俺もそうしなければならないのだ!

 

潮「!?え、ええと、提督さん。それは、貴方が決めることじゃ……?」

 

翔「それを決めるのは、お前達だ。俺ではない」

 

潮の躊躇を押し返し、頭を下げたまま動かない。

 

「「「「…………」」」」

 

翔「……」

 

沈黙。四人の様子は分からない。

 

「……私は、一員になります……!」

 

この短くも長く感じた沈黙を、誰かが破った。まだ声は覚えていないから、ゆっくりと顔を上げる。

 

羽黒「私はこの鎮守府に建造された艦娘なのですから、この鎮守府の一人として戦いたいです……!!」

 

翔「は、羽黒……!!」

 

怯えた感じの羽黒がまっすぐな眼差しで俺を見て、自分の思うことを全て口に出した。

 

村雨「……なら、私も同意するわ。こんな素晴らしい提督、今逃がしたらもう二度と会えないもの」

 

如月「なら、私も。私達を大切に思ってくれる提督なら、私頑張っちゃうわ♪」

 

潮「わ、私も……こんな私ですが、宜しくお願いします……」

 

翔「……ありがとう」

 

四人に、また深々と頭を下げるのだった。


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