<執務室>
翔「……」コポコポ…
さてと……演習が終了後、潮達は入渠風呂場でも完治できる可能性は不明というわけで成人に頼んだ。そしてあの艦娘達は、鋼翼団の一部の艦娘によって現在進行形でシゴかれている。主に電とか長門に……
そうして、俺なのだが腕やら肝臓やらの自己再生でどうにかなった。と、言うわけでケーキやらコーヒーやら紅茶やらをキッチンで準備している。とりあえず、出すのとは別のお詫びのケーキは姉妹の人数分作っておこ。
コンコン…
妙高「妙高です。翔さん、演習後に話した件なのですが」
翔「ああ、入って少し待っとけ。
あっ、聞くけど今何人?それと、アイツら以外で今いる姉妹の人数は何人か教えてくれないか?」
妙高「??ええと……妙高型、白露型は3人、綾波型は5人、そして睦月型が8人です」
了解、と答えて計19人分のショートケーキをそれぞれの数に包装して、出すチョコレートケーキと飲み物も用意して執務室に戻った。
妙高「……あら、それは?」
翔「お前達の大切な妹達を傷つけてしまった詫びだ。潮達の分はないが、お前達を含め全員分あるから部屋で食べてくれ」
そう、申し訳なさそうに包装されたケーキをそれぞれの服の特徴や雰囲気で誰の姉妹なのか判断して渡した。
白露「……何も入れてない?」
翔「入れてない。ウチはそういうもん全部取っ払ってるから、安全だ。それでも駄目だったら捨てても構わない。
……っと、それと話をするからケーキと飲み物が必要だな。コーヒーと紅茶、後はジュースあるけど、どれがいい?」
妙高「コーヒーで」
綾波「紅茶でお願いします」
白露「ジュース」
睦月「睦月も」
そう頼まれたのでチョコレートケーキを皿に乗せて、そして棚からカップやコップも出してそれぞれの飲み物を淹れた。
そして、テーブルに要望された飲み物とケーキを置いた。
翔「んじゃ、それでも食べながら話をしようじゃないか。っと、すまない、シロップとミルクを忘れた。あっ、お二人さんはストローいる?」
白露「いらないです」
睦月「いらない」
そうしてシロップとミルクも持ってきて、執務椅子に座った。
翔「んじゃあ、話をしていいぞ。納得いかなかったら撃て」
妙高「それは、あの子が悲しみます……それは貴女があの子の想いを踏みにじったら、ということで」
翔「ああ、俺も口滑らないように善処する」
と、言うわけで四人はケーキを食べたりコーヒーとか紅茶を飲んだり……と沈黙が続く。
妙高「……あの子の事ですが」
翔「……ああ、アイツらは俺が最初にして最後の建造の指示で此処に来た唯一の純粋な直属艦だ」
綾波「それは知ってます。潮ちゃんからの口からそう言ったので……」
そうか、と呟きふと振り向いて沈みかけている夕陽を一瞬だけ眺める。ゆっくりとだが、落ちていく太陽の姿を潮達と何回見たか……
翔「……俺は、アイツらを殺しかけたことが一回ある」
睦月「……どういうこと?解体とか?」
翔「いや、鎮守府付近海域の一番簡単な所に出撃を指示したんだ、四人に。知ってるだろうが、情報によると遭遇する深海棲艦は駆逐艦か軽巡で数は1~2隻。だったんだ……」
顔をふと伏せて、目を瞑ってアイツらが沢山の奴らに一方的な砲撃に遭った場面を想像し、そして目を開けて四人に打ち明けた。
翔「だが、そこには沢山の深海棲艦が群れを成していた。そこにはいない重巡や空母、戦艦すら沢山いた。そして、何よりレ級や姫級という恐ろしい奴らもいた。
そんな奴らが来るとも知らずに出撃を指示した俺はあの四人に『死ね』と言ったも同然だ……」
白露「……」
翔「……確かにあれは不慮の事故かもしれんが、一瞬の油断で息子と義理の娘を死なせた俺にとっては二人の二の舞に等しかったんだ」
それを告げたのか、覚悟を決めてこう言い放った。
翔「もし、そんな事をした俺を許せないなら撃て。今すぐ。周りには死ぬかもしれんと言ってある」
睦月「……ねえ、なら続けて?如月ちゃんが助けられて、あんな力を手に入れたのも……」
翔「……それで俺の死刑は免れるか、か……」
コクッ、と頷く四人に、俺はため息をついて、その後の事も話した。
翔「その時、俺は天龍からの連絡にいても立ってもいられなくて、後ろの窓ガラス突き破って誰よりも速く向かった……その時、トドメを刺そうとしたレ級を一撃で沈めた後に長門達も駆けつけて来て形勢逆転、潮達には大切な艤装を壊したことや危険に晒したことを謝ったよ……んで、許してくれた」
白露「やっぱり、戦えるんだ。あの時一人であの四人を引き付けてたし、倒してたから」
どうも、と笑って控えめにケラケラ笑う。まあ、
翔「んで、艤装を失ったから、その詫びに俺が設計した艤装を渡した。無論、戦えると喜んでたよ。
それから、MI作戦も成功させて俺に対して本格的な特訓を頼まれた。無論、傷ついたお前達を守りたいってな……」
『……』
四人は、ただ黙ってた。きっと、色々な思いが心を駆け巡ってるのだろう。だがどんな感じなのかは、成人の能力で俺がさとり妖怪にならなければ分からないものだ。
翔「その結果が……演習のアレだ。実際に、アイツらに艦娘という概念を越える可能性をひしひしと感じてた。
しかし、あれは日向達の下らない偏見のせいで覚醒という名の『暴走』を起こしたんだ。正直、四人のコーチとも言える俺でも現段階の状態で戦うのは危険で、もし瀕死状態じゃなかったら確実に負けてたと思う」
妙高「……じゃあ、貴方はあの子達をどうするんですか?」
翔「それは……アイツらに決めさせる。
秘められた力を解放するか、それともお前達と同じ存在でありたいか……それは、四人の意思次第ってわけだ」
そう言い終わると、喉がちょっと乾いたのでキッチンの冷蔵庫からフ○ンタグレープを出してイッキ飲みする。
翔「ぷふぅ……さて、俺のジャッジは何だ?Dead or life?」
『……』
翔「……」
とりあえず、死んだふりの準備しよっと……
妙高「……これらは、羽黒や皆さんに聞いてみます。真実なのか偽りなのか……それで決めます」
翔「それまで、待てってか。まあ、いいぞ。三人もそれでいいんだろ?」
それに、三人は首を縦に振った。
すると、外から誰かの声が聞こえてくる。
アイオワ「カケルゥ~!ちょっとExercise nullnullに付き合ってくれないかしら~?」
ガラッ
翔「いいぞ~……ということで、戦艦からのご指名を受けた」
んじゃ、と窓を開けてそのまま地上に下りた。そして、アイオワ達と演習をしに向かうのだった。
※次いでに四人が貰ったケーキは、姉妹達共々美味しく頂いたそうな……
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<ハザマ>
成人「(ルミナスシューターによる直撃時に内臓を損傷、更にほぼ全身に艤装の破片が刺さって、演習の反動で四肢の骨や筋肉も酷い状態ですね……)」
この後遺症も出かねない状態で戦ってたと思うと、完璧に翔と姿が重なってしまう。
というか、翔に好意を寄せてる人って何処かヤバい力得たり翔と同じくらいの根性を持つからなぁ……
成人「(さて、そのまま治す……ということは、不可能。後遺症が出たりまたあれを発動すると今度は自爆しかねない……)」
翔も一度だがオーバーロードの反動で酷使した四肢が粉砕した事もある。しかし、持ち前の耐久力や再生能力でどうにかなった。
……しかし今回は例え艦娘といえども、ただ治してまたあれを反動すれば今度こそ死ぬ可能性は大きい。
成人「(……そう考えれば、もうやむを得ない)」
四人は自分に力があるということをあの演習で知った。しかし、怒りに振り回されて100%出しきれてなかった。故に、こうなったのだ……
潮達にとって、ようやく見つけた自分の潜在能力。傷つけられた姉妹を守る為にも、翔という共に戦える人の為にも、その力は使いこなしたいと願っているはずだ。
それに……彼らには分かっているはずだ。その力は全てを葬るものではなく、皆を守るものだと……
成人「(さてと……彼に殺される覚悟しますか)」
そう、一人ずつ手に握っていた注射器を腕に刺し、雌雄家の血と細胞を流し込んだのだった……