<演習場>
キュイィィィン……!!
目と髪に違和感が、そして背中から何かが出ていてとっても熱い。でも、これなら相手を殺せる……!!
アイツらが駆逐艦を罵る舌も、汚いもので見るような目も、その為に考える脳も……全て潰せる。
潮「……特型駆逐艦綾波型10番艦『潮』」
羽黒「妙高型重巡洋艦4番艦『羽黒』……」
如月「睦月型駆逐艦2番艦……『如月』」
村雨「白露型駆逐艦3番艦『村雨』」
『敵を駆逐する』
ビュンッ!!!!
三人に先取るように、マルチアクセラレータとDB背面フィンをフル出力で突撃する。
無論、そのスピードは数十mあった敵との距離を一瞬で詰めた。そして、その勢いで右手のブラストソードで
ザグゥッ!!!!
摩耶「ッ!?!?!?」
今朝罵ったこの重巡の腹に突き刺した。そのままの勢いで反転しながらその顔と腹にパンチを喰らわせて投げつけた。
ドゴォッ!!!
利根「ッ!?な、敵を投げたじゃと!?」
大井「ッ!何て非人道敵な!!」
羽黒「お前らが言うな」
ザンッ!!!
今度は眼帯をした軽巡を捕まえて空中で潰しているが、地上では三人が残った奴らを一人一人潰しては次の獲物へと動いている。
木曾「ヒッ……!!は、離せテメェッ!!」
潮「……消えろ」
ドゴォッ!!!
その軽巡は島の岩だらけの陸に押し付けて艤装もろとも粗削りにした。無論、血肉と鉄が混じった姿で動かなかった。まあ、程度考えてるしいいや。
潮「(……次は誰?)」
全てのブースターをフル出力で分断されて残った奴らに突撃するのだった……
~~~~
<埠頭>
長門「……」
私は、今戦慄している。深海棲艦を相手にした時よりもっと戦慄していた。周りにいる妹や大和と武蔵すらも目を見開いて震えていた。
陸奥「あれが……潮達なの……?」
大和「躊躇すら、手加減すら見えていない……」
武蔵「本気で……殺す気だ……!!」
私達も、駆逐艦を罵ったアイツらの顔面を殴りつけたかった。でも、演習でカタをつけるということであの四人に任せたのだ。
しかし……ルミナスシューターという使用禁止武器のビームを受けてしまい、その反動で暴走を起こしたとも言える。
大和「長門、止めさせましょう!」
長門「ああ、しかし……アイツらの耳には入らないだろう。あの時、見てて誰よりも怒っていたのはあの四人だ。戦艦という罵る側に立っている我々では止められるものではない……」
大和は、私の言葉に納得しながらも何もやれない自分に嫌気を差していた。私も同じだ、大和。ビッグセブンである私と陸奥も、最終兵器ともいえるお前達もこんな意味の無い戦いにその肩書きは意味を成さないのだ……
長門「ッ……だが、止めなければ四人の力が何もかもを殺し尽くすものになってしまう。
可能性はゼロに等しいが、呼び掛けてみる」
武蔵「!!……ああ、頼んだ」
握ったままのメガホンを構えて、大声で呼び掛けた。
長門「もう、やめろ!もう雌雄は決した!!」
「「「「……」」」」ピクッ
長門「このような戦いに、私という存在は不要に等しい。無論、駆逐艦を罵る奴らに復讐をすることはお前達の勝手だ。
しかしな……やり方には限度というものがあることをお前達がまともならば分かるはずだろ。此処で生活を共にする者同士が意思をぶつけて共喰いするのは負の連鎖しか生まれない!!
だから、もうやめろ!!!そいつらには、私達がきっちりとその考えと根性を叩き直してやる!!」
……だが、その意を聞いてくれることはなかった。手を止めていた四人はまるで作業をするかのように相手を攻撃し始めたのだ。
長門「(ッ……クソォッ!!)」バキィッ!!
どうすれば、四人を正気に戻して今殺されかかっている者を助けられるのだ?
分かってるように、私達では敵う相手などではない。それで、立ち向かうなんぞドンキホーテが風車に立ち向かうくらい無謀で愚かな事なのだ。
どうすればいい、長門……!!
「……じゃあ、俺がアイツらを引き付けるからお前らが助けろ。それくらいいけるだろ」
長門「!?お、お前は……!!」
陸奥「翔……!?」
そう口にしたのは、背中にメイスが二本マウントされており、腰に刀とガンホルダーを差して、両足に銃が付けられ、腕にも300mm砲が装着した実質上フル装備の翔だった。
アイツの目には過ちと焦りが混じっており、それを示すかのように拳が震えていた。
武蔵「だとしたら、お前もただではすまないぞ!せめて、咲姫達も一緒n」
翔「駄目だ。これは直属艦の提督である俺の責任だ。その責任を周りに背負わせるなんて無理だ。
……アイツらはあの艦娘達への怒りと秘められた力、そして俺の作った艤装のせいで暴走したとも言える。それの原因は俺も入ってるんだ。あの艦娘達には止められるわけがない。だから、俺が止めなければ絶対に暴走は止まらない。
……頼むぜ、お前ら。まあ、そいつらに対する罰もお前らがやれ」
そう笑いながら言うと、翔は埠頭を下りて四人へと突撃した。それに四人は翔という一人の獲物に注目して、翔はそれに確実に演習場から離してくれた。
長門「よし、埠頭にいる全艦!我々の団長が四人を上手く引き付けている。その内に負傷艦の救助を行え!!」
その言葉と共に、私は埠頭から下りて主機を一杯にして負傷艦を助けに向かうのだった。
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<鎮守府付近海域>
ガキイイィィンッ!!!カアアァァァンッ!!!
翔「チッ……!!」
一人を相手にすると、必ず残りが死角を狙ってきている……俺達の特訓の際に四人がやる戦法だが、この暴走状態においても理性と体が覚えてるなんてな……
とりあえず、死角に来た三人を左手に持ったブレイドメイスと右足の銃で距離を離す。と同時に狙っていた羽黒に追撃を仕掛けた。
翔「ハァッ!!」
羽黒「!!」
しかし、レンチメイスは簡単にヘルサイスで受け止められた。爛々と紫色の輝きを放つ羽黒の表情は無く、何処か嫌そうに見えた。
それに、躊躇なく右腕の300mm砲を連射する。無論、照準できる関節部にだ。
ダダダァンッ!!!
羽黒「グッゥ……!!!」
ザンッ!!!
抵抗するかのようにレンチメイスを振り払い、俺の右脇腹にヘルサイスを抉った。相変わらず痛いが、どうにか戦えそうだ。
とりあえず、関節部を半分やられて動けない羽黒のうなじに手刀で叩き意識を失わせた。同時に髪の色も目も戻った。
翔「(まずは一人……!!)」
如月「フッ!!」ブウゥンッ!!
リストレイターのビーム刃を展開したツインパイルランスを横一文字で薙ぎ払うが、寸前に右脇腹に刺したままのヘルサイスで無理矢理受け流して、その隙に足に取り付けた銃で追撃する。
如月「グァッ……!!!」
翔「!!」
怯む如月に近づき、ツインパイルランスの片方のパイルを無理矢理へし折り、それを如月の利き腕に刺した。そして、頭突きもかます。
如月「アァッ……!!!」
潮「ハアァアッ!!!」
ザンッ!!!
だが潮に隙を与えてしまい、俺の右腕は使えなくなるくらい深く斬られてしまった。まあ、武器になるからいいけど。
翔「チッ!!!」ブウゥゥンッ!!
ガギイイィィィンッ!!!
左手のブレイドメイスを逆手持ちにして、腰も利かせたフルスイングで潮のブラストソードを砕き、そのままの勢いで潮を吹き飛ばした。
それに、隙を与えさせることもなく赤く目が輝く村雨がミネルバストライククローを振るってきた。
村雨「チッ!!」
翔「フンッ!!」
ドゴォッ!!!
それを体を反らして回避し、村雨の腹を殴りつけた。それに怯んだのか、村雨は勢いで後退させられ、苦しそうな顔で腹を押さえつける。
如月「……!!」
ザグッ!!!
翔「(!?し、しまっ!!)」
潮「……!!」
だが仰向けに倒れて利き手をやられた如月が無理矢理ツインパイルランスを俺の両足のアキレス腱に刺し、しかも潮はDBの背面フィンの一本を斬られた脇腹に抉りこませた。
翔「ぐっ……ガフッ!!」
潮「!!」
吐血して、フィンを無理矢理抜くとそこからまたフィンを二刀流にして襲いかかる潮がいた。
とりあえず、戦力を減らそうとまともに動けなさそうな足で倒れている如月の腹を踏みつけて気絶させる。
ブウゥンッ!!
ドゴォッ!!
翔「ぐァッ!!!」
しかし、気づかれない間に村雨が後頭部を殴打する。それを踏みとどまり、迫ってくる潮に斬れかかった右腕をひき千切って、顔にそれを投げた。
潮「!?!?……」
翔「(ん、反応が鈍った?いや、今が!!)」
その隙をすかさず、右足の蹴りと左手のブレイドメイスの二段攻撃で殴り飛ばした。それに吹き飛ばされて、かつそこにいた村雨とも激突して二人して倒れた。
翔「……!!」
潮「……」
だが、直接やったはずの潮が立っている。ぶつかった村雨は当たりどころが悪かったのか、赤く輝いた目と染まった髪は元通りになっていた。
潮「……!!」ガキィンッ!
翔「(フィンはあれだけか。武器があるとしたら足のブラストマグナムのみ……だが油断はできない)」
何せコイツは四人の中でも高い機動力と的確に相手の関節や弱った場所を狙う奴だからだ。流石は、あのソロモンの鬼神の末妹といったとこだな。まあ、村雨こそソロモンの悪夢の姉ちゃんだけど。
此方は脇腹と右腕、そして両足をやられている。機動力が低くなり、下手して動けば傷が開く。
潮「!!」ビュンッ!
翔「ッ!!」
ブウゥンッ!!
ふ、フェイント!?し、しまった!背後に……!!
グサッ!!
翔「ッ、グゥッ……!!」
フィンを背後から、しかも心臓ではなく肝臓に刺して大量出血してしまう。それに、左手のブレイドメイスを叩き落とされる。
翔「ッ……!!」ジャキッ!
ダダァンッ!!
潮「ッ!?ウァ……」
と、とりあえず勝てたな……ガンホルダーの銃に麻酔弾装填させといて良かったわ……まあ止める為のだけど、どうも四人の覚醒の力を見たかったせいで余計やられたわ……しかも腕一本取られるという……
翔「とりあえず全員陸に上げねえと……」
「大丈夫っぽ~い!?」
翔「あっ、大丈夫だ~!」
そう呼び掛けた先にはコイツらの姉妹達がいた。といっても、改白露型の艦娘はいないけど。
那智「おい!羽黒は大丈夫なんだろうな!?」
翔「ああ、大丈夫だ。だが、アイツらの銃で誰もが重傷を負っている。すまないが、そいつらを先に頼む」
時雨「……そういう君は大丈夫なのかい?見たところ、腕もやられて相当酷いけど」
翔「へっ、ルミナスシューター受けた四人よりマシだよ。だが、不覚だった……まさか、奴らがルミナスシューターを奪うとは……」
敷波「あの人達は元々そうだったから……」
そうかい、と笑って刺さったフィンを引き抜き取れた腕を回収する。そして、姉妹達は気絶した潮達の介抱に向かっている。背中のバックパックを外したり、海に落とした武器なんかも回収している。
睦月「!?あの盾が無くてもこの重さ!?」
皐月「す、すごい……流石お姉ちゃん……」
翔「ああ、そいつらは俺との特訓で強くなった奴らでもあって、前任提督から命を預かったのとドロップがほとんどの中で、この四人だけが俺の手で建造した艦娘だからな」
曙「でも、そのせいで潮がこんな目に遭ったのよ!?そのツケは払ってもらうわよ、このクソ提督!!!」
翔「お前らにとっちゃ『提督』は敵なんだろ。それにまともに軍学校での勉強してねえから、そう呼ばれる資格なんてねえよ。翔って呼んでくれ」
そう笑いながら埠頭への足をゆっくりと動かした。まあ、他は主機付けてるから速そうだしな。
妙高「……あの、翔さん。後でお話よろしいですか?」
翔「……ああ、いいぜ。罵倒してもいいし殴ってもいい」
それに、羽黒の姉ちゃんと思われる艦娘は何も言わずにスピードを上げた。
俺置いてけぼりかよ……(´;ω;`)