艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第29海 演奏後の相変わらずな1日

(翌日…)

 

<執務室>

 

舞鶴鎮守府奇襲は成功して、手加減してくれたのか成人のアルマゲドンで鎮守府だけをかき消してくれた。

そうしてその翌日、相変わらずの日常へと戻った。

 

翔「大淀、昨日はご苦労だった。アイツらはどうだった?」

 

大淀「お疲れ様でした、翔さん。

助け出した艦娘は皆さん無事でした。身体的は傷は入渠でゆっくりと癒させています。しかし、精神的な傷は……」

 

翔「ああ、分かってる。こっちもそれに配慮して生活するから、お前達はアフターケアを頼む」

 

了解です、と笑みを浮かべて返事をして、纏められた資料に目を戻した。

俺も大淀から渡された舞鶴鎮守府所属の艦娘の名簿を眺める。見たところ、建造可能な艦娘はほとんどいるようだ。ただ潜水艦はいないか……まあ、いたとしてもオリョクルには行かせんが。

 

翔「……見たところ、ウチとの被りはいないようだな」

 

大淀「ええ。いたとしたら此方が暮らしづらいので、被ることが無くて良かったです」

 

翔「遠回しに『あっちの私達が死んでよかった』てか。まあ、自分を見るのは気味悪いもんな」

 

大淀「そういうことです。鏡で見る自分は虚像ですし、自分を見ることができるのは死ぬときくらいでしょうね」

 

じゃあ、永遠に自分の顔を見れない俺の顔はどんなのだろうな。虚像は自分の顔を左右逆にしたもんだから偽りみたいなものだし、どんな顔してるんだろう……

 

翔「なあ、大淀。俺っていつもどんな顔してんの?」

 

大淀「いつも笑ったり怒ったりと表情豊かです。でも、貴方が悲しんだ顔は見たことありませんね」

 

翔「……まあ元といえば偽りの顔で暮らしていた時期があったし、どうかは想像できん」

 

大淀「偽りの顔、ですか……。舞鶴の子達はどうでしょうね」

 

翔「きっと、丸出しだよ。目の前に怒りの対象がいる。きっと、殺しにかかったりするだろうな」

 

まあ、赤城達はそういうのじゃなくてちょっかいや遊び感覚で爆撃してくるから反撃しやすいけど……アイツら相手には反撃は出来ない、いやしないだろうな。

 

大淀「あっ、翔さん。成人さんは今日1日ハザマで作業をするらしいです。その時に、彼から貴方に頼みの伝言が」

 

翔「ん、頼む」

 

大淀「ええと……

『昨日は突然アルマゲドンを発動してしまい、本当に申し訳ありません。

あんなことをしでかした身で理由を言うのも何ですが、鎮守府の地下に艦娘の惨殺された遺体が山のようにありました。その怒りに堪えきれなく、アルマゲドンを発動したのです。

僕はその遺体の修復や洗浄、納棺等を行うが故、今日1日はハザマに籠らせてもらいます。

それで、明日の午前5時にて水葬を行いたいのです。艦娘の皆さんには話しておきましたので問題ありません。

それで、貴方にはあの不死鳥戦艦をハザマにある孤島の世界に移動お願いします。

こんな長ったらしい伝言をさせて、すみません』

……だ、そうです」

 

翔「……なるほどな、アイツがキレるのも分かる」

 

そりゃ、俺達が信頼し合う艦娘の死屍累々を見ればアイツの堪忍袋の緒が切れて当然だ。

 

翔「……その水葬時に、舞鶴の艦娘も同席させるべきと思うか?」

 

大淀「……まあ忽然といなくなった姉妹がこんな酷い姿で死んでしまったのですから、同席させるべきですね」

 

分かった、と取り出しておいたCCMのメモ欄にそれらの事柄を打ち込んでおいた。

 

翔「起床時間の事はどうしてる?」

 

大淀「成人さんが4時には起きろ、と念押しされてるので皆さんきっちり起きますよ」

 

翔「ハハハ、やっぱり清志の艦娘も海外艦も潮達も優秀だな。こんな優秀じゃ、俺とか足引っ張るんじゃない?」

 

大淀「貴方や成人さん、咲姫さん達がいてこその『鋼翼団』です。貴方達の常識に囚われない考えこそが『鋼翼団』の力の源ですから、いなかったら海軍にちゃっちゃと捕まってますよ」

 

それに俺はそうか、と呟いて無意識に微笑み資料に目を戻した。

 

ギイィィ……

 

「ええと、失礼してもよろしいですか?」

 

大淀「あら、鳳翔さん。もうお怪我は?」

 

現れた鳳翔は、あの時会った時よりも肌は綺麗に髪もしなやかになり、弓道着も新品のものに繕えられていた。見たところ顔色も体も良くなったことに俺は心の中で安堵していた。

 

鳳翔「はい、大丈夫です。ご迷惑をおかけしてすみません……」

 

大淀「いえいえ、私達はそういう人達ですから。それよりも、どのようなご用件で?」

 

鳳翔「提督に、お話がありまして」

 

翔「提督はいい、翔と呼んでくれ。それよりも、ソファに座ってくれ。ちょいと待ってくれ」

 

執務席を立って吹き抜けになった元寝室のキッチンに入り、三人分の緑茶を淹れて間宮の羊羮を切って皿に盛る。

そして、お盆にそれを乗せて応接用のテーブルに置いた。

 

大淀「ありがとうございます」

 

鳳翔「い、いえ、羊羮やお茶なんて」

 

翔「いいんだよ。ウチじゃ此処に来る奴はこうやってお茶とお菓子を出すから。構わず召し上がってくれ」

 

鳳翔「あ、はい……それじゃ、いただきます」

 

俺と大淀にお辞儀をする鳳翔に、止めようとするが大淀はいいと首を横に振ったので羊羮を食べて目を輝かせている鳳翔を微笑ましく見ていた。

 

翔「それで、用件とは?」

 

鳳翔「私達の艦娘の事です……」

 

すると、すっと立ち上がった鳳翔がソファに座る俺に、正座をして床に手を添え、頭を深々と下げた。

 

鳳翔「私達の艦娘達を助けて下さり、ありがとうございます」

 

翔「……聞きたいことがある。面を上げてくれ。

……その行動は、誰に指摘されたものだ?」

 

鳳翔「ッ、それは……」

 

鳳翔の顔でもう察した。この行為はあのクズが命令したものだと。とりあえず、大淀に頼んで席に戻させた。

 

翔「鳳翔、あのゴミが言ったことは全て忘れろ。土下座も無しだ。引いたような言葉で喋るな」

 

鳳翔「えっ……でも、貴方はt「『提督』……か。俺はある人にコイツらの命を預かるように頼まれただけさ。だから、俺は『提督』なんかじゃねえよ」……しかし」

 

大淀「提督と見る艦娘なんて、翔さんが建造を指示した潮さん、羽黒さん、村雨さん、如月さんのみです。私達は翔さんとも喧嘩したり遊んだりと『仲間』として、『家族』として接してます。この人だって、それを望んでます」

 

大淀が補足的なフォローで俺の言葉をより強調してくれた。……というより、最初らへんのことは確かに口ではそんな感じだけど、中身は完璧に恋沙汰なんだよね。スキンシップが多くなったし。

 

鳳翔「……そう言われてお咎めは?」

 

大淀「あるとしたら悪戯とか爆撃ぐらいで、仕返ししてくるくらいです。後は人の道を外れた行為をした時に叱るくらいですね」

 

翔「大丈夫、そんな奴は大体決まってるから」

 

そう安心を促す言葉を言ったら、どうやら鳳翔は少しずつ安心してきたようだ。

 

鳳翔「罰は?」

 

翔「特にない。寧ろ、『生きて帰る』がウチのモットーだ。それ破って沈んだら地獄の底まで追いかけてやる」

 

鳳翔「もし、反抗的な行為をしでかしたら」

 

大淀「ちょっとの仕返しで大丈夫です。大体厳しいのは私達ぐらいなので、何度反抗してもよろしいですよ?」

 

鳳翔「そう、ですか……。人間、ああいう事言う人だらけと思ったら、貴方は違うのですね」

 

一緒にすんな、と口を尖らせて言うと鳳翔が少し微笑んだ。大淀は勿論だが。

 

翔「まあ、海軍相手にしようとするバカな連中だからな。違って当たり前だよ」

 

大淀「その、バカになったんですよ。私達は」

 

鳳翔「……バカ、ですか。確かに、あんな人の下で道具扱いされるより、海軍を相手にしたバカだけど優しい人達の下にいた方が安心しますね」

 

翔「そりゃ、どうも」

 

笑って、そう返答すると鳳翔が初めて笑ってくれた。その笑顔は、偽りのない本当の笑顔だった。

とすると、軽かったんだろうな……だが、あくまで鳳翔はそれでも狂ってる気がする。

 

翔「すまない、鳳翔。ちょっとテストさせてくれ」

 

鳳翔「えっ、私にですか?」

 

翔「ああ、ちょっとしたテストだ。俺の質問に答えてくれればいい」

 

そうして、鳳翔にサイコパステストを行わせたところ……

 

大淀「……半分半分ですね」

 

翔「鳳翔、お前は半分は正常だが半分は異常だ。恐らく、その心には俺に従うか殺すかと葛藤しているだろう」

 

鳳翔「えっ……?」

 

きょとん、とした鳳翔に俺はオートマチックガンを渡した。これで、アイツの心を晴らせればいいが……

 

翔「……選べ、鳳翔。仲間達の為でもなく、今後の為でもなく、今を生きる自分の為に選べ。

……俺を殺すか、殺さないか」

 

鳳翔「……」チャキッ

 

大淀は耳を塞ぎ、鳳翔は無表情のまま俺に銃を向ける。俺も死ぬ覚悟はあるとそっと目を瞑った。

 

ダァンッ!!

 

大淀「ッ!!……あれ?」

 

翔「……!?ほ、鳳翔……お前!」

 

銃声が響いた。しかし、痛みが無い為に目をふと開いてみた。そこには、銃を上に向けて撃っていた。その証拠として、天井には弾痕が入っていた。

 

鳳翔「……すみません、私の為にこんな……。しかし、幸いにも私は軽かった方でした。建造されたのもつい最近でしたし、まだ分からない子もおりましたから。でも、その短い間の苦痛は忘れられないものだったのです」

 

翔「そうか……。それで、他の奴らが重いと……」

 

鳳翔「はい、恐らく貴方に砲を向けるでしょう」

 

と、いうことは鳳翔はまともだったわけか。それでも、アイツらを思いやる気持ちは凄かった。まさに『全ての空母の母』と言えよう。

 

翔「そうか。分かったよ……俺も、アイツらに認められるような存在になるから」

 

鳳翔「私も、あの子達のアフターケアに微力ながらも貢献させてもらいます」

 

ああ、と同時に差し出された手を握った。大淀も鳳翔の事に少し安堵しており、俺も良かったと思った。

 

翔「んじゃ、アイツらより一足先に言っておくな。

……ようこそ、『鋼翼団』へ。お前達が見たこともない空に飛んで、そして一本も抜け落ちることもなくお前達の望む海へ辿り着いてやる」

 

鳳翔「改めて、軽空母『鳳翔』です。翔さん、私達を誰一人沈めることもなく、辿り着かせて下さいね」

 

了解、と笑って答えたのだった。




軽空母『鳳翔』、正式入団

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