さてと……アイツの討伐後どうにか鎮守府へ戻ったわけだが、嫁や子供から大目玉を喰らい、艦娘達には迷惑をかけちった。
一晩寝ればこの傷はスッと治るが、それでも傷ついたことに変わりはないか……昔の親友もそうだったな。
っと、今はその翌日に至るわけだ。そして、その夜……
翔「おっしゃァ!!!宴じゃあああぁぁぁ!!!!」
『Yeahhhhhhhhhhh!!!』
撤退時にも超距離砲撃で敵を沈め続けた不死鳥の船を埠頭に停泊させ、その甲板上でMI島の本拠地破壊、そして周辺の殲滅を祝いの宴を上げている。
空母達(特に一航戦)はその焼かれたBBQを無我夢中に食い尽くし、戦艦や巡洋艦は月見酒をして、駆逐艦や他の艦娘は楽しそうに談話していた。
咲姫「お疲れ、翔」
翔「お疲れ……まあ、大目玉喰らったがな」
それに咲姫はごめんと手を合わせてきたが、仕方のない事だと忘れたかのように許した。
咲姫「にしても、まさか奴がいるなんてね……」
翔「ああ……第四勢力とも言うべきかな。アイツらの特性からすると、敵味方もクソもなく辺りの生物を殺しにかかる。厄介になったな……」
咲姫「でも、この船にはライディングアーマーや数々の武装がある。それで、どうにかなる……という問題でもないね」
咲姫が、欠けていた手足を目に入れた。感覚も何もかも戻ったが、嫁にとっちゃあそれが俺を殺めることに値するのだろう。
翔「まあ、先の事なんて後だ。とりあえず、楽しもうぜ」
咲姫「うん」
俺達に向けて手を振る雷に、俺は振り返してアイツらの元へ行くのだった。
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長門「わらひはびっくせぶんだ~。うひひ……」
大和「えへへ~、むしゃしぃ~♪」
武蔵「おぉぅ、大和大丈夫か?」
大和「らいじょうぶらいじょうぶ~♪」
ポーラ「Zzzzz……」
そうして、このザマである。駆逐艦や特殊艦等は早く撤収したが、残った連中は酒を飲んでこれである。つーか甲板上にも散乱してやがる。コイツら、女か?
翔「あー……俺が片付けるから、酔った奴らを頼む」
陸奥「ごめんなさいね、翔。ほら、行くわよ」
長門「にゃがとがたそうこうはだてではな~い。うぇっへへへへへへ……」
武蔵「すまない。私達は先に鎮守府へ戻る」
ザラ「お休みなさい、翔さん」
ポーラ「Zzzz……」
その姉妹艦や親しい艦娘が酔った奴を抱えて、甲板を下りていく。さてと……とりあえず、ちゃっちゃと片付けるか。
提督(?)片付け中…
翔「っと、これでよし」
とりあえず、テーブルやBBQコンロ等デカい物は物置に入れて、モップで甲板上を掃除。これを半時間で済ませた。
翔「……いるんだろ、お前ら」
無意識にも、誰かは分からないがいることを呟いた。
「ばれちゃいましたか……」
「流石、提督です」
翔「うぉっ!?びっくしたぁ!!」
艦橋入り口から四人の人影が現れて、思わず飛び退く。が、その声と俺に対する呼び名で誰かはすぐに分かった。
「びっくりしたって、私達の事分かってたのよね?」
翔「ウソ、勘だよ勘。そしたら、当たった」
村雨「何か、ガッカリしたわ……」
不機嫌そうになる村雨と如月の機嫌を戻そうとするが、フリだったのようにその表情を変えた。
翔「ったく、お前らもある意味迷惑かけるバカだな」
如月「一番のバカに言われたくないわ。良い意味にも、悪い意味にもね」
翔「何じゃそれ」
村雨「仲間守る為に一人で無茶して立ち向かうことと、私達を一人の友として見てくれることの意味よ」
そうか、と俺は掃除した甲板上に座りこみ、太陽の光で輝く月が浮かんでいる夜空を仰ぐ。でも、あまり見えない。
羽黒「提督は、星を見ることが好きなのですか?」
翔「いや、俺ってLBXプレイヤーの時の異名が『フリーダムバード』だったからな。それに空を飛ぶことも好きだから、よく空を仰ぐんだよ」
潮「流石LBXを操る能力を持つだけありますね。……あれ?そういえば、提督のLBXは見たことないです」
あぁ~……と、アイツの事を思い出す。ウィ○グガ○ダム○ロカスタムのような翼に、K・アーサーの風格を思わせる機体だ。この機体によって、兄弟機や親子機が多く生まれた。
翔「あ~……アイツは、俺の本気をもって作ったら、アルテミスで合計10秒以内で無双したから、封印した」
『10秒!?』
羽黒「せ、世界大会でそのスピードでブレイクオーバーを!?秒殺の皇帝の海道ジンよりもスゴいじゃないですか!!」
翔「いや、だからこそだ。咲姫や希、望とバトルする時に使う。あのLBXは……本当に世界の常識を覆し、あれ一機で戦争が勃発したくらいの価値がある」
潮「……そうですね。
提督がお使いになられたら、純粋な玩具として沢山の人に笑顔や希望を与えますが、テロリストが扱えば何よりも恐ろしい兵器に……」
潮がCCMを操作してペルセウスを手の平に乗せた。その操作は、まさにプロ顔負けのものだと一目で分かる。
……そういや、今年もアルテミスの出場権もらったな。咲姫もだし、いつかは俺ら五人と咲姫とで2チームで参加するとしようか。
翔「……だからこそ、俺は本当に信頼した奴にしかLBXを渡さない。昔には、弱き者の反逆の張本人がいたからな。そいつだけには、渡さなかった」
潮「なら、何故金剛さん達には?」
翔「……何っつうか、最初はお前達に渡したかったんだ。初めての俺直属艦であるお前らにな。俺にとっちゃ、お前らはアイツらより親しい仲だからな。
……ああ大丈夫、金剛達にはもう用意してある。数日したらすぐにやるさ」
何か特別な事を言ったのか、四人共頬を染めている。何に対するものなのかは知らんが、きっと恥ずかしくなったのかな?
そうすると、潮が何かを思い出したかのような顔をして俺に詰め寄った。
潮「そうだった……提督、頼みがあります!!」
翔「ん、いきなりどうした?」
潮「私達に……いえ駆逐艦『村雨』『如月』『潮』、重巡洋艦『羽黒』に提督の特訓をお願いします!!」
翔「……?だが、もうMI作戦は……」
すると、四人が嫌と首を振った。
潮「そうですが、あの戦いで私の未熟さを改めて知りました。ですので、艦娘という一つの壁を越えたいのです」
羽黒「それに……姉さん達を守りたいんです。その為には、艤装の改造も勿論ですが、私自身も強くならなければなりません!」
如月「海軍に苦しめられている私の姉妹を助けたいの。その為には、髪が傷んでもいいわ」
村雨「だから、お願い。私達に特訓を続行させて!いや、させて下さい!!」
すると座った四人が俺が初めて会った時に頭を下げたかのように、手を床に添えて頭を深々と下げた。
翔「そ、それくらいならそんなに__」
潮「提督が答えるまで、私達は頭を上げません」
翔「……ハァ(どいつに似たんだか……)」
すぐに答えが導き出せたが、誰なのかは俺が絶対会えない触れるほど近くで限りなく遠い人だとは分かった。
翔「ああ……分かった。それくらいなら、何時間でもやってやる!」
如月「……!!本当に?」
翔「勿論だ。だが……本当に俺でいいのか?」
村雨「何言ってるの、提督。私達は貴方のおかげで強くなれたのよ?」
翔「そうかもしれんが……俺は架空の武器で例えるなら『ダーインスレイヴ』だぞ。
ダーインスレイヴは鞘から抜いたらその刃が血に染まるまで、鞘に戻らない魔剣だ。俺もそうであるかのように、敵を潰し尽くすまで決してその手を緩めない。守る為の力でなく、相手を滅ぼし尽くす力だ。それでもか?」
羽黒「はい。しかし、提督の力は私達を守ってきてるじゃないですか。キラードロイドと呼ばれる『兵器』を討ち、私達も提督という恩人に助けられたのです」
コイツらの覚悟は、昔の親友五人に相当するものだ。分かる、中にある水や炎、花、山と風の力が膨大になっていく。アイツらの霊力や魔力、神力が増すかのように……
翔「……ああ、分かった!毎日特訓してやる!!」
潮「……!!ありがとうございます!」
四人が顔を上げ、また頭を下げた。……あの時は、俺とコイツらの立場が逆と考えると、コイツらが俺が頭を下げた時の気持ちがなんとなく分かった。
翔「とりあえず、帰るぞ。
スケジュールは午前9時から11時、そして午後2時から4時までの4時間だ。55分挟んでの10分間を休憩とする。一応、水分補給や栄養補給もしておけよ。それと、これは明後日からにする。妖精さん達が新しい服や艤装改造を行うから」
潮「前とはあまり変わりませんね。でも……提督自身が少しずつ本気を出されるのですか?」
当たり前だ、と答えると立ち上がって甲板から飛び下りた。それに、四人も階段を駆けて下りてくる。
翔「もう11時か……早く戻るぞ」
如月「夜の方がお肌はいいのに~」
翔「バカ言え。そしたら体形とんでもないことになるぞ。今の生活リズムを維持することが健康的なことの基本だ」
如月「ふふっ、は~い♪」
月光の元、ぽつぽつと光が消えていく鎮守府にへ俺達は戻るのだった……
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<海軍本部司令室>
「何だとォッ!!!W島どころか、本拠地のMI島が完全に崩壊してるだと!?」
「はい、しかも周りには敵が死屍累々となっています。まるで……嵐が通り過ぎたかのような……」
「クソが……我々が1ヶ月練った作戦なのだぞ!?倒す敵無くしてこの作戦など意味はないッ!!」
ギャーギャー
マッドドッグ『……』ジー、ジー…