艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第22海 作戦決行~しかし、やっぱりこうなる~

<MI島 深海棲艦本拠地>

 

潮「よいしょ、と……」

 

赤城「よし……これで全員準備できましたか?」

 

成人「ええ、OKです」

 

岩のように擬態させた艤装を展開させ、灰色の布を被さって私達は陸の岩場に伏せる。

周りは暗いのに灰色に染まり、目の前の海と陸にいる敵はピタリと止まっている。だが私達は鮮やかに染まっており、自由に動ける。成人さん曰く、時間を止めているそうだ。

 

長門「私達はこのまま待機。翔が来て旗を掲げたら一斉に砲撃、及び航空戦を開始する」

 

『了解!』

 

成人「それでは、ご武運を」

 

成人さんは私達にそっとお辞儀をして、まるでガラスが割れたかのような異空間の穴に入る。そして穴が塞がる中、成人さんはにっこりと笑顔を浮かべて手を振っていた。

そして視界は灰色から暗雲の夜になり、深海棲艦は黒と白に染まった。

 

大和「(……敵の司令塔らしき姫級が偵察をしていますね)」

 

武蔵「(うむ。だが、アイツらには海からではなく陸から来ることは想像してないがな)」

 

陸奥「(まあ、翔は海からだけど……)」

 

私達を含め皆が、目の前の敵を血眼になって観察している。一番手前で陸にいるのが此処のボスだろう。その奥にいる艦隊に何かを指示しているようだ。

 

暁「(……ッ)」ジャキッ

 

響「(……!急かしては駄目だよ暁)」

 

暁「(でもっ、目の前に敵が……)」

 

吹雪「(気持ちは分かるけど、堪えて)」

 

雷「(そうよ。翔が来るまで我慢よ!)」

 

暁「(うぐぐ……)」

 

此方も此方で、目の前に敵がいることに落ち着けない人達が砲や武器を構えている。でも、姉妹や随伴の人達に宥められている。

……そういえばお姉ちゃん達、大丈夫かな……?それは、如月ちゃんや村雨ちゃん、羽黒さんにも言えることだけど、私自身も不安……。

 

司令塔『……何?』

 

長門「(!!皆、敵が動いたぞ、息を殺せ!)」

 

天龍「(もうやってるぜ、長門さん!)」

 

右手に持っている主砲を手放し、私はそっと口と鼻を押さえる。息はしなくてはいけないけれど、敵に動きが表れた以上、息を潜めなくてはと提督がそう仰っていたのだ。

 

司令塔『……零時方向ヨリ飛来スル物体……イヤ、“鳥”ダト?』

 

レ級『ハイ。シカシ、撃チ落トセル程小柄デハアリマセン。迎撃続行シテマスガ、足ガ止マルドコロカ遅クスルコトモ……』

 

夕張「(鳥……?深海棲艦の主砲でも撃ち落とせない鳥なんて、いないはずよ)」

 

雪風「(鳥……ですか。見てみたいです)」

 

鳥……私達はまさか、と互いに顔を合わせた。村雨ちゃんも如月ちゃんも同じ顔で私を見つめている。

 

潮「(まさか……だよね?)」

 

村雨「(アレの全貌を見られるなんて、ね)」

 

如月「(でも、深海棲艦の砲撃を物ともしない固さを持ってたなんて……)」

 

羽黒「(純粋な移動基地だと思いましたが……)」

 

そうすると、正面の方向から何かの鳴き声と機関音が響く。何か何かと私達四人以外の全員は周りをキョロキョロと見回すが、私達はただ正面を見つめていた。

 

司令塔『ナッ……!?アレガ、アレガ“鳥”ダトイウノカ!?!?』

 

赤城「(で、デカい!!)」

 

加賀「(も、物凄く派手わよ!?)」

 

電「はわわ……金ピカなのです!」

 

アイオワ(Wow!Golden bird!!)」

 

ローマ「(目、痛い……)」

 

正面からその姿を現したのは、金色に輝く鳥……いや、『戦艦』だった。例えるならば、ある仮面のブルーボールが扱う空中戦艦だが、艦首が鳥の頭部になり、翼が細かく作られたものとなっている。

 

潮「(皆さん、あれは味方です。提督が所有されている“戦艦”です!!)」

 

『(戦艦ンッ!?!?)』

 

金剛「(こ、此処は宇宙世紀じゃないデース!)」

 

比叡「(ひええぇぇ!!デカイ!デカすぎます!)」

 

霧島「(完璧に敵の気を引く前提の戦艦ですね。でも……あの尾羽や金色のボディ。まるで……)」

 

榛名「(不死鳥……いや、“フェニックス”ですね)」

 

ゆっくりと佇む戦艦は此処でスピードを落とした。その時、あの船の甲板に何かが立っている。そして、その甲板から何かが下りると同時に船はスピードを上げて私達の上を通過する。

 

司令塔『ッ!アレヲ撃チ落トセ!!』

 

深海棲艦が落ちる何かに砲を向ける。

その時……

 

「やらせっかよ!!」ジャキッ

 

ダダダダダァンッ!!

ドドドドォンッ!!

 

何かが聞いたことのある声を発して銃撃音と砲撃音を響かせる。弾は直撃させずに水柱を大量に立てた。

 

パシャッ

 

司令塔『ッ、貴様何者ダ!!』

 

「何者?そう言われちゃあ何とも言えねえな。

まあ、強いて言うなら……」

 

ダァンッ!!!

 

司令塔『グァッ!?!?』

 

「佐世保鎮守府……。

いや、『鋼翼団』団長にして最強の悪魔……

 

 

   雄崎翔だ!!」

 

何かが覆っていた布を自らの手で剥ぐと、提督が相変わらずの好戦的かつ余裕そうな表情でボス達の前に立った。

 

~~~~

 

翔「まあ……すぐにテメエらが死ぬがな」

 

両手両足に付けた黒い銃と腕の300mm砲、ブレイドメイスとレンチメイスをマウントした姿で、水上に立つ。

 

司令塔『フンッ!ダガ、コノ数デ我々ガ殺ラレルトデモ?』

 

翔「ああ。数なら十分……テメエら7匹の獲物に約40匹の猟犬が喰らいに来るぞ」

 

敵から砲を突き付けられているが、慣れたもので涼しく言葉を述べる。ケケケ……後ろにいるとでも思ってねえだろうな!!

 

レ級『ホザケ貴様!此処デブッ殺シテヤル!!』

 

翔「ああ、ほざけほざけ。殺してみるなら殺してみやがれ、ザコ共が」

 

不敵な笑顔で俺に対する注意をより強いものとさせる。後ろには、スタンバっていた全員が音を立てずに敵に砲を向ける。

 

司令塔『貴様ァッ!我ラヲ何ト思ッテイル!!愚カナ人間共ヲ根絶ヤシニスル深海棲艦ナノダゾ!!!』

 

翔「ああ、知ってる。というか、自分で名乗るんだな。こりゃあ、手間省けた。

……全員、袋叩きにしやがれ」バタァッ!!

 

隠していた旗を大きく掲げる。そして待ってましたと言わんばかりに、艦娘達は笑みを浮かべて撃つ寸前の主砲を深海棲艦に向けた。

       ・・・・

長門「全艦、翔もろとも撃てェッ!!!!」

 

「「「「えっ、ちょっt『撃てェッ!!』

あっ、ええぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」」

 

兎に角俺は砲撃のゲリラ豪雨を回避して、ぬるりと長門達と加わって銃とかを撃ちまくる。

 

翔「~♪~♪」ダダダダダダ……

 

潮「(アレ?いつの間に!?)」

 

村雨「(提督、逃げ足早いわね……)」

 

如月「(そして、この然り気無く銃を撃ちまくる姿……)」

 

羽黒「(何というか、外道……)」

 

見事に袋に入った獲物7匹は原型を留めずに肉の塊となったのだった……

 

長門「……チッ、アイツは逃げられたか」

 

大和「逃げ足の早い男ね……」

 

翔「呼んだ?」

 

武蔵「……まあ、分かってた」

 

俺がミンチにならないことに全員はため息をつく。

 

潮「え、ええと皆さん……提督に恨みがあられるのですか?」

 

長門「??いいや、これが我々の“遊び”だ」

 

村雨「遊びにしては残酷すぎますけど……」

 

陸奥「大丈夫わよ。翔は私達の砲撃に対して全然大丈夫だから」

 

羽黒「この前ボロ雑巾みたいになってましたよ!?」

 

翔「ああ、あの時は貫通耐性超マイナス値だったから」

 

如月「何それ!?というか、提督の耐性ってLBXみたいなものなの!?」

 

うん、と頷く。なるほど、と何故かメモる長門達とそれに呆れる潮達。何というか……その差が凄いな。

 

翔「んじゃ、休憩するか。夜食のおにぎり、艤装のどっかにあるぞ」

 

長門「全く、貴様という奴は……おっ、気の利く野郎だな!!」ドンッ!

 

翔「ふん、どうせ本拠地叩いても尻尾巻いて逃げる訳にはいかねえからな。……ん、梅干か」

 

赤城「腹が減っては戦はできぬ、ですからね。あっ、おかか」

 

瑞鶴「そうそ……うっ、か、辛ああぁぁぁ!!!」

 

その時、瑞鶴が口の周りを赤くしてのたうち回る。その手に握られたおにぎりには、わさびをたっぷりと入れていた。

 

翔「航空母艦の中にわさび入りおにぎりを入れておいたが……まさか、瑞鶴だとはな。ある意味河童の川流れだな」

 

瑞鶴以外の航空母艦『(セ、セーフ……)』

 

瑞鶴「やっぱ、アンタ最低だわ!!爆撃してやる!!」

 

翔「やってみろ~♪」ビュンッ

 

瑞鶴「言うまでもないわ!!」バシュバシュ

 

瑞鶴の矢を指で受け止めながら、煽るようにくねくねと回避する。

 

瑞鶴「ハァ……ハァ……、やっぱアンタ化物だわ。勝てる気がしない……」

 

翔「まあ、俺は『悪魔』だからな。この世界に正義も悪もクソもないから、自分達をそう称してる。はい、矢」

 

雪風「……翔さん、深海棲艦が見られません」

 

翔「恐らく、本拠地を叩かれた事を知らなさそうだな。……長い休憩にするか」

 

陸地に上がり横たわって空を見るが、雲のせいで見えない。

 

翔「……翔鶴、空に矢を放ってくれ」

 

翔鶴「??……ああ、はい」

 

キリリ…バシュ!!

 

翔鶴は体を反らせ、空に向かって矢先を向ける。風が矢に纏い、緑色に輝く。そして、矢を射ると矢から大量の風を吹かせて暗雲へと飛ぶ。

そして風は暗雲を消し去り、空には瞬く星達が煌めいていた。

 

長門「星か……此処のは随分と綺麗だな」

 

大和「星座についてはあまり知りませんが、これは綺麗ですね……」

 

翔「技術が発展しちまったから、冬の時期か山とかできなきゃこれくらい綺麗には見えんさ。

……皮肉なものだな。人間達がこんなのを作っていき、発見していく度に海は深く、大地は沈み、空は霞んでいく……どうして、そうならざるを得ないのかな……?」

 

リットリオ「……哲学的なのはあまりご存知ありません。でも、翔さんの言いたいことは何故か分かります」

 

翔「そうか。さてと……この綺麗な夜空を見るとするか」

 

そう言うと、皆が促されるように艤装を収納して寝転んだり、艤装を椅子代わりにして夜空を仰ぐ。

さて……気づくのはいつかな?

 

~~~~

 

翔「……来たか」

 

その言葉に、全員は上体を起こして戦闘態勢になる。夜空を仰いで眠たそうにしやがったのに、皆の目がキリッとしている。

 

翔「んじゃ……俺はどうしようと考えているか?」

 

長門「殲滅戦?」

 

島風「撤退?」

 

いいや、と俺はそう言って敵の群れを背に艦娘達を見る。

 

翔「……撤退だ」

 

ビュウウウウウゥゥゥゥゥン!!!!

 

そう言うと、後ろの群れがパルスレーザーによって跡形もなくなる。その爆風に髪と服がたなびき、後ろには俺の身丈の二倍もある飛行機が舞い降りる。

 

翔「だが、『前に』だがな……このMI島から佐世保まで……行けるか?」

 

長門「行けるか?いいや、行ける!それしか言えないだろ?」

 

分かってやがる、とそう呟くと飛行機が5つのパーツに分かれて、俺の体を覆う。艦首は槍に、艦底は盾に手で握り、翼部は背中に合体、ブースターは足にそれぞれ履くように合体する。

 

翔「んじゃ……全艦全速力で佐世保鎮守府……いや、家に帰るぞ!!側面ブースターを点火しろ!!」

 

全員が海に立つと、艤装に取り付けられたブロック式のブースターを点火、約45ノットものスピードでMI島を離脱する。

 

ゴオォォォ……

 

潮「あの戦艦も来てくれました!」

 

翔「俺は正面の奴らを潰す。お前らは側面の連中をやれ!頼んだぜ、お前ら!!」

 

槍で皆に頼んだというメッセージを送り、俺は目の前に邪魔をしてくる奴らを片っ端からブッ潰しに脚部ブースターをフル出力で向かった。


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