艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第21海 あと零日~決戦を前に戦えぬ者は何を思う~

<工廠>

 

明石「ふぅ……これでよし」

 

午前5時くらい、まだ日が昇っていない。しかし、工廠は提督である翔さんの依頼で全艦の艤装の改修や我々が名乗る『鋼翼団』のマーキングや紋章の取り替え、そして彼から頼まれた武器と装甲の製造で妖精さんや私はフル稼働していた。

そして、私は翔さんの頼まれたものを全て造り終えた。武器を四種類、そして突撃用の装甲である。どれも、彼の設計通りの出来である。

 

“あかしさ~ん!かいしゅうできたです!”

“『こうよくだん』のマーキングできたです!”

“もんしょうとりかえ、リサイクルです?”

“はたパタパタ、きれいです~♪”

“かもふら~じゅ!”

 

知能がそれぞれ異なる妖精さん達が、個性あふれる報告をしてくれた。腰掛けたり倒れている妖精さん達に労いの言葉を一言、私は出来上がった武器と装甲を纏める。

 

明石「よし……翔さん、皆さんを任せますね」

 

その願いを込めて、それぞれの武器にお守りを付けた。不器用ながらも、縫いあげた翔さんの縫いぐるみだ。ちょっと無骨過ぎて咲姫さんに直してもらったけど……

……でも、貴方がいなくちゃ私達は生きられない。地獄に囲まれたこの世界で導いて下さい。

 

~~~~

 

<食堂>

 

伊良湖「間宮さん!かつ丼20個追加です!」

 

間宮「分かったわ!やるわよ!!」

 

はい!とやる気のある返事で直ぐ様取り掛かる伊良湖ちゃんを尻目に、私は揚げたカツを卵とじしてご飯の入った丼に入れる。そして、それを20個カウンターに出した。

 

翔「っしゃー!10杯目じゃー!!」

 

天龍「もう10かよ!?クソッ、負けてらんねー!!」ガツガツ…

 

長門「間宮、お代わりだ!!」

 

武蔵「私もだ!翔に負けてられん!!」

 

島風「ぷふっ……もう無理……」

 

連装砲ちゃん『『『キュー!!』』』

 

赤城「ガツガツ…」

加賀「ガツガツ…」

蒼龍「ガツガツ…」

飛龍「ガツガツ…」

 

グラーフ「す、すごい食いぶりだな」

 

瑞鶴「まあ、カツ丼は『勝つ』丼だから、負けられない戦いの前だからね。私達も食べよう!」

 

翔鶴「あっ、その前にお茶を」

 

サラトガ「私がやっておきます、ショウカクさん」

 

アクィラ「ん~♪カツのサクサクと卵がいいです~♪」

 

席に座ってカツ丼を食べる様子はそれぞれで、いつ見てもとても美味しそうに食べてくれて、私達はとても嬉しいものだ。

空母達のはペースが早すぎて、私達の手ではつけられなく、成人さんの能力で増やしているそうだ。成人さんの能力は未知数すぎて、世話になる私達がいる……

 

間宮「大食い大会はいいとして、喉つまr「長門ー!!大丈夫!?ほら水よ!」……」

 

伊良湖「言わんこっちゃないですね……」

 

苦笑いしながらの伊良湖ちゃんの言葉に、同情せざるを得ない。しかも、大会に参加している全員が同じタイミングでだ。赤城さん達はペースは落ちているが、ちゃんと噛んでいる。

 

リットリオ「アハハ……あっちは楽しそうね」

 

ローマ「そうね、姉さん。私達も参加しようかしら?」

 

アイオワ「Oh……それはよしましょ。苦しそうで怖かったわ……」

 

金剛「Hey!Iowaは臆病ですネー」ケラケラ

 

アイオワ「なっ!?Meだってカケルくらいに……むぐっ!?」

 

霧島「金剛御姉様!何煽っちゃってるんですか!!」

 

榛名「アイオワさん、お水です」

 

アイオワ「……ふぅ、Thank you ハルナ。苦しかったわ……」

 

ポーラ「カ~ツド~ン食い大会より、ワインを飲みましょ~♪ウヘヘヘヘヘ~♪」

 

ザラ「ポーラ!ワインばっか飲んで、マミヤさんの作ったカツドンも食べなさい!!」

 

高雄「フフ、ザラさんはいいお姉さんね」

 

愛宕「そうね~。でも、高雄はあまり優しくはないよね~」

 

高雄「……ノーコメントよ。でも、愛宕だって提督の後継者の翔さんの事でそわそわしてたよね?」

 

愛宕「なっ!?それをどこで!」

 

羽黒「愛宕さんも提督の事心配していたんですね」

 

愛宕「う、うん!まあ、そうよ。アハハ…」

 

周りもなかなか騒がしい様子。でも、私達も食べないとね。

 

成人「あっ、お二人共。ご苦労様です。此処は僕がお引き受けしますので、食べて下さい」

 

間宮「あら、ありがとうございます」

 

伊良湖「それでは失礼します」

 

とりあえず、厨房から出て、空いた席に座る。そして、自らが作ったカツ丼を前に手を合わせて、一口入れた。

 

間宮「……美味しい」

 

自分のものは毎日口に入れているが、このカツ丼だけは格別美味しかった。伊良湖ちゃんもその言葉が表れている顔で食べていた。

 

間宮「(……翔さん、このカツ丼で『勝利』を掴んで下さい!)」

 

私達が作ったものだもの、あんな作戦でやられるなんて翔さんにはあり得ない。

皆さんで帰ってきて下さい。美味しいご飯を作って待ってます。

 

~~~~

 

(午後11時)

 

<埠頭>

 

大淀「……まさか、夜戦を仕掛けるとは……」

 

翔「何だよ。不満か?」

 

大淀「いえ、夜だと視界が……」

 

翔「なあに、専用のバイザー搭載するように依頼したから、簡単に敵を見つけれるぞ」

 

青いクリア素材のバイザーを見せつけても、やはり不安は不安だ。

何せ、彼らはMI作戦においての最終海域を奇襲で制圧するというのだ。確かに、奇襲というものは相手の士気を崩し、混乱させるというメリットがあるが、失敗すれば終わりなのだ。例え、艦娘は愚か、姫級でも余裕の彼がいても……気を置けない状態である。

 

翔「……不安だろうな。まっ、こんな形は初めてだが、ある事件で俺は旧友とその事件に真っ正面から激突したことがある。全員無事で解決したさ。

これは前のとは違うが、コイツらの命は預からせてもらうよ」

 

大淀「……」

 

翔「何だよ淀さん。シけた顔して、お前は戦えない身なのだろ。なら、元から戦うことの出来ねえ奴らと俺達が帰ってくることを祈ってくれ」

 

大淀「……そうですね」

 

彼の前向きな考えは周りを照らす太陽のようで、思わず私は頷いた。彼の後ろにいる皆さんも笑顔を浮かべてくれた。

 

翔「んじゃ……よく聞け!!

この作戦は、俺達『鋼翼団』の初陣にして平和への険しい旅の第一歩だ!!全員死なずに帰って来るぞ!!

そして……海軍の勝利の美酒を奪ってやろうじゃねェかァッ!!!!」

 

『オオオォォォォォォォッ!!!!』

 

参加する艦娘が拳を振り上げて声を張り上げた。その光景は圧巻で、あたかも古代ローマの兵士達のように見えた。いや、まさに翔さんの率いる艦娘達は、それに近いものになったのだろう。

 

翔「俺が、この旗を掲げた時に敵を撃て!いいな!!俺は真っ正面から来て敵の注目を引かせる!!

いいな!この旗を掲げるまでじっと待機だ!」

 

全員が、その旗と翔さんを見て頷く。全員、やる気に満ち溢れた目をしていた。しかし、心情はどのようなものか……

そして、私や明石の傍にいた成人さんがそろそろかと空間を割って異空間への道を作った。

 

成人「それでは、僕について来て下さい。

後時間はその時に止めますので、その時にスタンバイをお願いします」

 

大淀「……全員、敬r「敬礼などいらん。ただ、コイツらを見送ってくれるだけで嬉しいもんだ」……ですね」

 

やはり、彼は軍や主従の常識を平然と破られてしまう。でも、そのほうがいい。その方が私達らしいのだ。

成人さんを先導に、翔さんと艦娘が異空間に入っていく。それに、私達は異空間の穴が塞がるまで見送った。

 

大淀「(……全員、帰ってきて下さいね)」

 

私達は『鋼翼団』。決して燃えることも千切れることも折れることもない翼で自由な空を羽ばたき、平和な海へと目指す者達。

彼らがそうであることを祈るかのようにもう何もない異空間の穴のあった景色を見、そして私もどこにあるのか分からぬ艤装を見つけ出し彼らの元で戦えれるように、と手を絡めて目を瞑った。


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