艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第20海 あと一日~逆らう因縁を前に~

<ハザマ 海上>

 

赤城「瑞鶴さん!閃光で成人さんの目をくらまして下さい!!」

 

瑞鶴「はい!分かってます!!」

 

加賀「私もやるわ。海中からの奇襲を仕掛ける」

 

遠くで、蒼龍さんと飛龍さんと交戦している成人さんめがけ、私達は弓を引き矢を射る。炎、水、光を纏った矢は鮮やかに空に軌跡を作る。

そして、一足早く炎と水を纏った流星や彗星が姿を現した。

 

蒼龍「うぐぐ……貴方ってそんな強かったんだ……(飛龍、来るよ!)」

 

成人「僕だって、祖先は翔さん達を守るべく生まれた者の末裔です。これぐらいできてもおかしくはありませんよ!!」

 

飛龍「にしては、何かを召還したりしてるね。一応、護衛らしいっちゃらしいね!!(分かった、限界まで近づいたら全力退避ね)」

 

暗いが遠くから僅かに仕草が見えることに、限界まで持ってくれるようだ。即座に次の矢を弦に引っ掻け、次の攻撃に備える。

 

バアァァンッ!!!!

 

成人「ッ!(瑞鶴の閃光!!)」

 

飛龍「(退避!)」

 

蒼龍「(了解!)」

 

一応持っておいたグラサンをかけ、光の中成人さんを置いて二人が即座に近くの岩垣に隠れる。光に気を取られている成人さんに、上空の私の、海中の加賀さんの艦載機が攻撃を仕掛けた。

 

成人「(……!!“マーメイド”!)」

 

ザバアァァンッ!!!

 

翔鶴「やっぱり、人魚に形を変えて水中に逃げましたね。私の矢であぶり出しますか?」

 

加賀「私の子達がいるのよ。とにかく、ダメージを与えるだけ与えて位置も特定、見つけたら一斉に対艦矢で仕留めるわ(翔鶴の空けた穴に対艦矢を打ちなさい)」

 

加賀さんの指示で岩垣に隠れる二人が了解した。兎に角、頼りなのは加賀さんの艦載機だけ。私達は見つけるまで棒立ちなのだ。

 

加賀「……!!成人さんは深度を下げていくわ。流石に水でカバーしているけれども、捕まえられなくなるわ」

 

翔鶴「位置は分かりますか?」

 

加賀「……此処から6時方向。斜め60°の角度で深度を下げているわ。恐らく、貴方が射る時には距離は300mくらいよ。5秒で、そして彼より手前に放ちなさい」

 

翔鶴「はい!」

 

振り向くと共に翔鶴さんが弓を引いた。変形して翼の形をした飛行甲板が銀色に輝き、矢も風が纏う。

 

翔鶴「3、4、撃ちます!!」シュバッ!!

 

赤城「私達もやりますよ!」

 

岩垣から現れた二人も弓を引き、私も弓を引き矢を放った。

翔鶴の矢は風を吹かせて海中を切り開き、私達の矢の活路を作る。

 

成人「……!!」

 

ザクザクザクッ!!

 

肉に矢が貫く音が聞こえた。三本、位置からして当たったのは私と加賀さん、瑞鶴さんのみだろう。遠くにいる二人にとっては狙うのは無理かもしれなかった。

 

成人「……プハァッ!!」

 

赤城「大丈夫ですか?」

 

成人「これくらい、大丈夫じゃなきゃ戦線に立てられませんよ」

 

海から顔を出した成人さんは、下半身を魚から人に形を変えて水面に立つ。矢は見事に体を貫いており、それはいつ見ても生々しかった。

 

成人「いつつつ……最近手加減しても被弾してるなぁ……もうちょい能力使うべきだな」

 

加賀「やめて下さい。貴方が本気を出されると私達の攻撃全部無効化されるので」

 

はいはい、と成人さんは矢を無理矢理引き抜く。矢に貫かれた傷はすぐに塞がれる。恐ろしい再生力には、私達も感心する。

 

成人「これぐらいやれりゃ、運命なんて覆りますよ。貴女達の心次第で、ですがね」

 

赤城「……」

 

成人「まあ、貴女達は翔さんと同じパターンでやらかしてますからね。貴女達にはそのチャンスがあります」

 

それは聞いたことがある。グラーフさんから、翔さんには希さんと望さん以外に二人子供がいたということを。しかし、翔さんが力不足や一瞬の油断で命を落としてしまった。

私達より皮肉すぎることだ。あんな余裕な中で爆撃されて格納庫爆破されたのがマシに思える。だが、自分だけ生きて周りが死ぬのは酷すぎる事だろう。

 

成人「そう考えれば、西村艦隊で唯一生き残ったある駆逐艦ですかね。まあ、史実では大本営はウソをついた。騙された民衆はそれを初めて知った瞬間、どう思ったのでしょうね」

 

瑞鶴「……『時雨』の事ね。でも、ウソをついたことには私も捻れないわ」

 

成人「だから……『大本営』という組織名を心底嫌ってましたよ。まあ、海軍だって、どこぞの海賊世界では敵を倒す為には民衆もろともブッ殺す元帥さんがいらっしゃいますからね。

僕は清志提督に泥を塗ってるつもりはございません。寧ろ、その汚名返上をしてたんでしょうね」

 

確かに、上層部にとって兵は一つの捨て駒に過ぎない。負けそうな時は逃げる。私はそういうのは嫌いだ。

思えば……あの駆逐艦がその被害を受けまくってましたね。私と加賀さんの護衛艦で、潮さんの姉……

 

成人「少し休憩しましょうか。その次いでに、この下らない僕らの存在をどう称するか話しましょう」

 

指を鳴らすと海上に椅子とテーブルが現れる。その上にお茶とお菓子が乗っている。休憩という訳で、私達はそれぞれ席に座る。

 

蒼龍「ねえ成人。大本営って名前は消すの?」

 

成人「不吉なので消します。その名の為に戦ってきた彼には、申し訳ありませんが……」

 

加賀「確かに……大本営なんて不吉な名前はよしましょ」

 

加賀さんも賛成の意を持っている。私も、提督には申し訳ないが大本営という名を消すことに同意する。

 

瑞鶴「んじゃ、どうすんの?私達、このまま名無しの軍?」

 

成人「なわけにはいきませんよ。れっきとした名が無きゃ格好つかねえ、と翔さんは言いますよ」

 

赤城「フフッ、想像できます」

 

置いてあるティーカップに手をかけ、一口紅茶を入れる。どうも、この味には慣れないが芳醇な香りは緑茶とは違う良さがある。

 

蒼龍「ん~……んー!ああっ!!何て名前がいいか分かんないよ~」

 

飛龍「私も~。何で私達こんな名前なんだろうね。赤城さんと加賀さんはともかく」

 

成人「……ならば、僕個人が考えている僕らと海軍の立場を考えましょう。

まず、海軍の元帥を『神』とする。ならその神に慕う者、つまり提督は『天使』となります。天使は人間を戒める役割がありますからね」

 

瑞鶴「なら、翔は?」

 

成人「……『悪魔』ですよ」

 

悪魔という言葉に私は身を震わせた。成人さんも不敵な笑みをうっすらと浮かべている。

 

成人「悪魔は己の野望、正義を貫く者。そして、神という存在に背いた者だから僕達には打ってつけです。

まあ、僕ら自身化け物ですから『悪魔』より恐ろしい者ですからね。ああ、大丈夫。僕らは味方を喰いませんから」

 

蒼龍「……ヤバい。そのゾクゾク感が治まらない」

 

蒼龍さんの言う通りだ。この恐怖が治まらない。加賀さんも冷や汗を流している。

 

成人「さてと……悪魔に基づいた組織名にしますか。『エンジェルキラー』とか『アドミラルクリーナー』とか『ネイビーブレイカー』とか」

 

赤城「いや、そこまで海軍潰す気なのですか。というか、『天使の殺し屋』はともかく『提督掃除屋』『海軍破壊者』とか完璧悪役ですよ」

 

成人「もうちょっと正義感が必要ですね……」

 

私達を頭を抱えている。ああ、どうしよう。

 

翔鶴「……『鋼翼団』とかはどうですか?

決して折ることも、千切れることも、燃やすこともできない鋼の翼。それで私達は羽ばたくんです。自由な空を。そして目指すんです。平和な海を」

 

『……』

 

翔鶴「あっ、えと……駄目ですか?」

 

『それだっ!!!』

 

私はその名前はまさに相応しいものだと思った。何せ、まさに私達らしい組織名だ。悪魔なんて似合わない、けれど私達に『翼』は似合う。

 

赤城「いや、物凄くいいですよ!!」

 

加賀「よく考えついたわ。翔鶴、やるじゃない」

 

蒼龍「それなら皆納得するよ!」

 

飛龍「鋼の翼……いい響きだよ!!」

 

瑞鶴「私も納得するわ翔鶴姉!とっても私達らしい名前よ!!」

 

成人「……凄いですね。それで、デザインはこんな感じですがよろしいですか?」

 

成人さんのスケッチブックに、上に向かって翼を広げている鳥だった。でも、少し懲りすぎてるかもしれない。

 

翔鶴「ううん……その形でもっと抽象的にしたらどうですか?単純な形で表した方がマーキングする際にいいです」

 

成人「なら、こうですか?」

 

翔鶴「……それです!まさしく、鋼翼団らしいです!!」

 

成人「それじゃ、この案を翔さん達に出しましょう!ご意見を出してくださってありがとうございます。

……それじゃ、演習をしましょうか」

 

全員が席を立ち、艤装を展開する。勿論、距離を取って。

 

成人「それじゃ、少しだけ能力の使用範囲を広げますね。さあ!かかってこい!!」

 

蒼龍さんと飛龍さんが攻め、残りの私達が弓を引く。

さあ、明日の運命を覆してやろうじゃないか!!

 

~~~~

 

<執務室>

 

翔「『鋼翼団』……なかなかいいじゃねえか!エンブレムも単純ながらも鋼の翼を表現できている!!

望!このエンブレムを艤装や服に付けるように頼む!!」

 

望「分かった!一応印刷してもらったから、妖精さん達に今日と明日で終わるように頼むよ!!」

 

バタンッ……

 

翔「……『鋼翼団』か。俺が昔考案した『死の幻想曲』より何倍もマシじゃねえか。

……ヘッ、こりゃあのカリスマお嬢さんの事笑えねえな」

 

明日が作戦決行日。戦争なのに、何故か胸が躍る。

 

翔「……さてと、今日はこれで終わりにすっかぁ!」

 

胸が躍る故に体がステップしている。

さてと……明日頑張るぜ!!




・一、二五航戦改造計画(望オリジナル)

MI作戦に向けて、望を始めとする工廠の艦娘と妖精達が製作した傑作。通常の艤装にはない『兵器』らしさに背いた特徴的なフォルムや性能を持つ。
この改造計画において各航空戦隊ずつにコンセプトは異なるが六隻共、
・飛行甲板を長く、そして太くし、艦載機も艦載機の発艦数を2倍に(つまり火力が2倍)
・飛行甲板をスタンフィール・インゴットにすることで大幅軽量化、防御アップ+ジェット機の使用可能
・機関をエターナルサイクラーにすることで燃料の補給を必要としない→空母達は少し小食に&速力をアップ
・砲撃戦に加勢できるよう飛行甲板両端に中口径ビーム砲1挺ずつ取り付け&対艦近接信管兼徹甲矢の導入
のような改造を行った。これでも十分な改造内容だが、望はそれでもと各航空戦隊ずつに違う特殊能力を入れた。

<一航戦>
改造内容:艦載機を別次元なまで強化

・赤城山の煉獄

日空母の頂点とも言えよう赤城には、望は『炎』の力を与えた。
炎の力は常に漏れており、まるで飛行甲板が炎上しているかのようになり、時々炎が飛行甲板上を飛び交っている。
炎の力は発艦した艦載機に爆発的火力と運動性、そして対弾耐性を与える。特に火力はまさに異常値で7mm、20mm機銃でも駆逐艦の12.7cm連装砲や軽巡の14cm単装砲に匹敵し、魚雷や爆弾は一発で下手な戦艦を沈めれる。運動性に至っても陽炎が立つレベルで敵を翻弄する。対弾耐性は炎のおかげで溶かしたり威力を弱めたりできるが、流石に耐えられない時もある。
服装にも僅かだが変化があり、胸当てには真っ赤に燃え盛る赤城山の風景が彫られている。

・加賀岬の津波

赤城が『炎』の力ならば、その赤城と並ぶ加賀は『水』だろうと、望はその力を与えた。
赤城の飛行甲板同様に、加賀の飛行甲板は『水』の力が溢れており、飛行甲板は常に水に包まれて時折波立っている。
『水』の力は発艦された艦載機を包みこむ。あらゆる攻撃を守り、まるで水を得た魚のように海に突撃して不意打ちをすることができる。運動性こそそのままだが、飛べる場所が多くなったことから逸脱した強化となっている。
胸当ては青くなり、そして浮世絵の波が彫られている。

<二航戦>
改造内容:近中距離戦闘の大幅強化

・蒼龍の吹雪

この強化こそ、空母という艦載機に攻撃を任せた艦にとっては異例だろう。だが、望はだからこそと二航戦にこの力を与えた。
蒼龍には、望は『氷』の力を与えた。また、“龍”という名前を持つからこそこの力が相応しいと思ったからだ。
飛行甲板の形は完璧にそれそのものを離れて、竜の頭部が飛行甲板前部に、蝙蝠の翼が後部に取り付いている。
竜の首は20mにも伸び、自律して首で薙ぎ払ったり吹雪を吐いたりして自動で攻撃する。しかし、蒼龍自身の動きも合わせると威力と範囲が高まる。蝙蝠の翼は点対称に合体させてブーメランとして投擲することもできる。また、攻撃の際には0K(-273°c)の絶対温度の為下手に触れたら氷漬けにされる。
また純粋な遠距離武器の弓をも近接武器として兼用するために、弓矢を上下分割することで双剣になるギミックも取り入れた。
また砲撃戦での対艦矢を射ると氷の力が入れられて相手を氷漬けにしたり、氷の礫で広範囲に攻撃できる。
鉢巻きは改二のものとは異なり、『絶対零度』の言葉と氷を吐く龍が描かれた緑色のものとなっている。

・飛龍の稲妻

蒼龍の吹雪とほぼ同じだが、氷から『雷』の力へと変化した。
他に、竜の頭部や翼のデザインが違ったりとあるが、ギミックや用途はほとんど変わらない。しかし雷へとなったことで飛行甲板が高圧電気を帯びており、当てた敵を感電させたりそれによって近くの敵にも僅かながらダメージを与えられる。弓も双剣ではなく、そのまま片方を回転することで双刃(薙刀)として扱う。
また、対艦矢を射ると雷の能力で矢の速度が光となり相手を一撃で貫く。拡散することはないが、雷雨の中射ると避雷針となって周りに落雷を落とさせるという離れ技もできる。
改二デザインとは全く異なり、『疾風迅雷』の四字熟語と電気を帯びた龍が描かれたオレンジ色の鉢巻きを巻いている。

<五航戦>
改造内容:相手の妨害、戦闘海域環境の半持続的変化

・銀鶴の神風

望自身も姉として慕う翔鶴型航空母艦。普通ならとびきり活躍してほしいところが、望は敢えてバックアップを重視した能力を与えた。
姉、翔鶴には父の名も入っていることか、望は『風』の力を与えた。
飛行甲板はまるで変形するかのように無数の亀裂が入り、時々銀色の帯が上から下に流れている。
『風』の力を得る時は、艦載機の矢も対艦矢問わずに射る時。矢を構えると同時に飛行甲板は変形、弓と合体してあたかも鶴の翼が広げているような形となる。弓を引くと矢に薄緑の風が大量に纏い、そしてそのまま射ると矢の軌道上に暴風に匹敵する風を吹かせる。艦載機は勿論、駆逐艦のような軽い艦は簡単にひっくり返される。そして、雨や雪といった航空戦に適しない環境では雲に向かって放つと一瞬にして天気が晴天へと変わるために、艦載機を持たない艦隊と有利に戦える。
また、胸当てには翼を広げて立つ鶴の彫刻が彫られている。

・縁鶴の聖光

妹、瑞鶴は『瑞』の字を持つことから、『光』の力を周りに役立てる為に攻撃ではなく補助に回した。
形状やギミックこそ翔鶴と変わらないが、銀色ではなく金色の帯が時々流れる。
弓を引いた時矢は金色に輝き、射ると五秒後にフレア弾並の閃光を放つ。敵には目潰しや撤退の際の目くらましにも活用でき、夜戦では敵の注目を逸らさせたり光を当ててダツでメッタ刺しにすることもできる。また、艦載機の矢と同時に射ることで矢から艦載機へ変化するタイミングを計られないように視覚的に邪魔することもできる。
また、胸当てには羽ばたく鶴の彫刻がされている。

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