<ハザマ 海上>
長門「……(撃て)」
武蔵「(了解、撃て!)」
ドオオォォォンッ!!
手や目で示す合図で、武蔵に無音の海に砲撃を轟かせる。
もう咲姫、希、望の三人との演習で私達の弱点を身をもって知った。掛け声によって動きを予測され、下手な砲撃は簡単にかい潜られ、私達に近接戦を仕掛けられた。
まさに、この弱点を克服せねばと空母六隻と翔の直属艦四隻以外の全員が護身術や手話等の本や訓練に勤しみ、今日こそが勝負時とも言える。
それは
咲姫『作戦決行3日前、私達に砲撃を受けさせなさい。そして命中することができなければこの弱点を克服できてないということよ』
そう、咲姫に宣告されたからだ。
私達が三匹の子豚……いや、虎を狩るためにこの海全体がピリピリしている。私もこの気迫に気圧されそうなくらいだ。
大和「……!!(敵艦見ゆ!……望さんです!)」
長門「(了解。……全体に目を通しているな)」
すると、私達の岩垣より左側の岩垣に隠れている天龍達第二艦隊で合図をしてくる。
天龍「(長門さん、オレが出る。その隙に狙ってくれ!)」
長門「(分かった。三式弾を使うからすぐに離れろ。いいな)」
天龍からグッドサインをもらい、アイオワの合図で動くことになる。私は仰角を僅かに上げ、天龍は刀を構えて艤装を外して身を潜めている。
アイオワ「(three…two…one……GO!!)」
天龍「(!!)」バシャッ!
望「!!」
天龍が突撃する音で、望は直ぐ様天龍を見る。その隙に、私はそのままの状態の41cm連装砲を放つ。
天龍「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」
ドオオオォォォン!!!
望「(咆哮?威嚇か……いや!!)」
望が動かずに鎌を構え、天龍はそのまま直進する。天龍の咆哮が砲撃音をかき消し、砲弾の事に気づいてないようだ。
バババアァァァンッ!!!
望「何っ!?ぐあぁっ!!」
天龍「うっしゃあっ!!」
三式弾が分裂し、焼夷弾をばらまく。それに望は気づくがもう遅く直撃、天龍は爆発寸前に足を止めて飛び退き、ガッツポーズをした。私達も心の底から歓喜する。
長門「……望、これで勝ちか?」
望「……ああ、僕の負けだ」
降参の仕草に、我々も岩垣から身を出す。
そして、思った。ようやく、勝てたのだと……!!
望「だが……!!」
ドオォン!ドオォン!!
長門「ぐぁっ!?」
陸奥「きゃあっ!」
大和「っ!!」
武蔵「うおっ!?」
希「喜ぶのは!!」
咲姫「遅いわよ!!」
見事に填められた……!!後ろに咲姫と希がいることには気づかなかった。完璧に赤城のように慢心していた。
「そっちこそ……気が抜けてマース!」
希「……!!」
ガキイィィィンッ!!!
後ろから金剛の声が聞こえた直後、つんざく程の金属音が響く。振り向くと、ナックルを握った希が金剛の装甲を変化させた腕とぶつけ合っていた。
長門「金剛!!」
金剛「撃つのはStopネ!天龍、龍田、希をお願いしマース!!」
天龍「おう!任されたぜ!!」
龍田「希ちゃん、行くわよ~!!」
私も一応と歪まずに済んだ第一、第四砲塔を振り向きながら照準する。
バァン!バァン!!
天龍「ッ!!咲姫の野郎……!!」
咲姫「邪魔はさせないわ!!」
龍田「貴女の言葉、変えさせてもらうわ!!」
天龍と龍田が銃撃を仕掛けた咲姫と近接戦闘でぶつかり合っている。一応咲姫側は武器は限られているため有利だが、やはり経験のおかげで一気に形勢逆転する。
しかも、金剛も限界のようだ。腕の装甲にスパークが走っている。
霧島「金剛姉様!!此処は私が!」
希「ッ!!邪魔ァッ!!」
比叡「守ります!!」ガァンッ!!
上から奇襲する霧島に迎撃する希が比叡の装甲を合わせたシールドで受け止めた。比叡は榛名の超速スピードで押して離脱して、霧島の装甲のハサミは希の腕を鋏んだ。
希「ッ!!……負けたよ」
霧島「よし!これで咲姫さんだけです!」
咲姫「フフフ、私だけになったわね……さあ、来なさい!!」
銃を鈍器のように構え、天龍と龍田を圧倒している。その時、並列して放たれた魚雷と矢が咲姫に向かっていた。
咲姫「ッ!!」
吹雪「そこです!」
飛び退いた咲姫に余裕を与える間もなく吹雪が砲撃する。だが、自身の体を生かして回避された。
夕張「ああ、あとちょっとだったのに!」
咲姫「自分の体も回避の一つの要素よ」
島風「……遅いよ!!」
その時、咲姫に島風が蹴りを入れた。だが、当たり前のように受け止められる。
雪風「足が止まりました!砲撃を!!」
高雄「もうやってますわ!!」
ドオオォォォン!!!
手の空いた艦全員が咲姫に向けて砲撃する。それに……
咲姫「ふっ!!」
『!?!?!?』
見事に体を反らして回避した。足を狙うということを忘れてしまった証拠である。
アクィラ「ッ、全機出します!」キリリ
リットリオ「待って、アクィラ。時間はあるわ。包囲してやりましょう!!」
長門「分かった!全艦単横陣で砲撃しまくれ!!25ノットを持続したまま頼む!空母は絨毯爆撃だ!!」
サラトガ「Yes sir!」
瞬時に咲姫を正面に横に整列、そのまま砲撃を行う。砲撃は装填時間に応じて調整をしており、1秒の間の隙はできないようにしている。
爆撃機もフルに活用して全弾投下すれば着艦、また爆弾取り付けて発艦のループである。
咲姫「……っ!!」
長門「……全員、押し切れ!!」
『うおおおぉぉぉぉ!!!!』
銃を放ちまくって迎撃と回避を両立する咲姫に当たるようにと願う。
そして……着水音ではなく爆発音が聞こえた。
咲姫「うぐっ……負けよ」
長門「……やった……やったぞ!!」
直後、皆が喜び合っていた。抱きしめ合ったりハイタッチなど、この2週間4日に及ぶまさに一方的な戦いをそのまんま相手に返したのだ。
咲姫「喜ぶのは、まだよ」
希「喜ぶというのなら、MI作戦を終えた後だよ?」
望「ホント、僕らってラスボスみたいなのかな?」
それに、皆の歓喜はすぐに消える。だが、これを期にMI作戦を成功させようという目標がすぐに生まれた。
長門「……ああ、そうだな!!」
電「電、頑張るなのです!!」
咲姫「それじゃ、今日は休み。明日からは貴女達で演習をしなさい」
ハザマが自動的に開かれ、私達は鎮守府のグラウンドに地を踏みしめる。
長門「……これで、翔達に並べるかな?」
陸奥「無理だとしても、私達の連携は敵無しになるくらい強くなれるわよ」
大和「……わね」
武蔵「ああ!」
私達の仰ぐ空は……珍しく青かった。