艦隊これくしょん~五人の最強提督~   作:ODINMk‐3

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第17海 嵐を前に破天荒な提督

(翌々日)

 

<埠頭>

 

翔「艤装よし、資料よし……これで全部だな」

 

ガタッ

 

翔「さて……海軍の勝利の美酒、奪わせてもらおう……!!」

 

~~~~

 

<食堂>

 

ガララ…

 

伊良湖「あっ、おはようございます。今日はサンドイッチです。今すぐご用意しますね」

 

翔「ああ、おはよう伊良湖。メシは後にしてくれないか。ちょっと、言うことがある」

 

伊良湖「えっ?ああ、はい……」

 

一応カウンターに俺のを置いてくれたようだ。伊良湖に感謝の言葉を贈り、俺は皆の目の入る席に資料を置く。

 

翔「全員、注目!!」バンッ!

 

『!!!』

 

全員が俺の方を見た。食事の手を止めてしまったことには本当に申し訳ないが……

 

翔「まず、おはよう。食事を止めてしまったことにはすまない。まあ、耳だけは傾けてくれればいい。

さて、本題だ。海軍がある作戦を企てている。内容はまさしくお前らが軍艦時代のものと酷似している。まあ、どうせ相手も同じ形で沈めてくるだろ。

それに、俺達が介入する訳だ。どうせ海軍にばれるってんなら、格好つけた方が相手も一目置いてくれるはずだ。

……という訳だ。この作戦は複数の鎮守府による合同作戦らしいが……俺達はこの鎮守府だけで作戦をクリアする」

 

アイオワ「What`s!?それは無謀すぎるわカケル!!複数の鎮守府と考えれば大和型だって二隻以上いるはず。それをMe達でやり遂げるというの!?」

 

長門「落ち着け、アイオワ。

恐らく、海軍は練度の穴埋めに複数……つまり、多くの艦娘でそれを成功させるはずだ。しかも、士気は最悪だがな……。

対して私達は数は少なくも練度は鎮守府トップクラス。しかも戦える提督が五人、そして士気は並外れている。

そう考えれば、戦力が大きいのは此方だ。私達はいわゆる『少数精鋭』。数が少ない分、敵に見つかる可能性も低い。

そして……お前は、その作戦の『通り道』を無視して本拠地を叩くんだろう?」

 

通り道……作戦を行うことにおいて撤退路や補給線を作る作戦だが、俺はそれを無視して本拠地を叩く。

……ばれたか、流石清志が育んだ艦娘だな。

 

翔「……ああ、当たり前だ。そんな暇をしているなら新しい艤装が造ったほうがマシだ。

というわけだ。俺達は直接本拠地を叩く。それが任務だ」

 

大和「初任務が大規模作戦の本拠地破壊なんてね……」

 

武蔵「まあ、翔らしいではないか。

それで、翔よ。その作戦はどのように叩く?」

 

翔「……『奇襲』する。それだけだ」

 

奇襲!?と全員の口が揃う。それに、俺もまたオウム返しする。

 

赤城「き、奇襲ですか!?しかし、リスクが重すぎますよ!?」

 

翔「大丈夫大丈夫。源氏の義経だって崖を後ろにして布陣する平氏を崖を飛び降りて奇襲したし、敵の士気も落ちるだろ」

 

霧島「いや、それとワケが違いますよ!?」

 

翔「……チッ、ああもう一応説明してやらぁ」

 

とりあえず、隅にあるホワイトボードを引き摺ってきてミッドウェー島をペンで書き、磁石の赤と青で味方と敵を表示する。

 

翔「まず、これで敵のいる島だ。その正面沿岸部に敵の親玉、それを守るように正面に布陣している。奴らは後ろが深海棲艦の支配下と思って後ろと横をガラ空きにしている。

正面から行けばまさに格好の的、横からでもすぐに動けるから無駄だ。

じゃあ、どうすれば敵を叩けると思う?」

 

天龍「……正面からでも横からでも無理ってんなら、もう無理だろ」

 

金剛「天龍の言う通りネ。やっぱり、他の作戦を遂行した方が勝率が上がりマース」

 

……バカか?コイツら、とんでもない落とし穴あるぞー。俺の旧友だったら普通に出るはずだ。

 

翔「……おい、正面と横があるならもう一つ二次元的に方向があるはずだ。しかも、目にも入れることは不可能だ」

 

潮「……!!後ろからですか!」

 

翔「……何か人によって考えが異なることを知ったよ。

まあ、潮の通りだ。後ろ……つまり陸から奇襲すれば敵は上手く対応できないはずだ。深海棲艦も目は正面方向にしか無いとはいえないが、全方向を見れる奴なんていねえはずだ。それを考えりゃ、後ろからの奇襲が妥当だ。

しかも、布陣されている敵艦も陸から砲撃されることには予想できずに士気はガタ落ちだろうよ」

 

高雄「しかし私達の砲は附角を取ることは不可能なので下山時に砲撃することはまず不可能です。しかも、機動性も人間並に劣ることとなります」

 

……ああ、確かにそういう問題あったな。まあ、擬態すればいい問題だ。

 

翔「だが、敵艦の目を欺けばいい問題だ。つまり、艤装を展開して擬態すればどんな奴の目を欺けれるぞ」

 

大和「そして敵の様子を伺い咄嗟の隙に敵を叩くということですか……」

 

全員がまあ納得してくれたようだ。

 

翔「まあお前ら『人間』だし、人間らしい戦い方でやろうじゃねえか。まあ、一応軍艦としての力も必要だがな」

 

翔「だが、その前に……おい、分かってんだろ」

 

目を向けるのは山盛りのサンドイッチを貪んでいる空母がいる席である。そのうちの四人が肩をびくつかせた。

 

翔「……これは、お前らの弔い合戦でもある。俺達の前で気を抜くんじゃねえぞ!!」

 

赤城「……分かっています、翔さん。この作戦は私達の生死の運命を懸けた戦い。貴方に笑われないよう頑張ります!!」

 

翔「……よく言えました。よし、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、メシ食ったら工廠に来い」

 

翔「……あっ、忘れてた。作戦開始は三週間後、海軍はその翌日らしい」

 

三週間後!?とまた口が揃う。そんなに驚くことなのか……?

 

翔「あ、追加。三週間“しか”ないんだぞ?三週間“も”じゃねえぞ?

今日からこの作戦……名を『MI作戦』の準備を行う!!

空母は新しい艤装を120%こなしきれるように自主訓練、他の艦は希と望、咲姫との演習を行え。

そして、潮、如月、羽黒、村雨の四人は俺との訓練だ!!いいな!!」

 

『了解!!』

 

翔「んじゃ、メシを食いな。九時にそれぞれの奴に集合しろ!!相手にするのが俺は埠頭、咲姫達はグラウンドに集合だ!!」

 

それを言い終えると資料の事を追伸で言い、カウンターに向かってサンドイッチをひとかじり。

 

間宮「翔さん……此処から、本当に貴方の言う『日常』になるのですね……」

 

翔「ああ、所詮俺にとっちゃあ戦争こそ『日常』さ……まあ、お前らの生活はちゃんと保証する」

 

間宮「確かにそれも心配ですが、貴方自身の事もあります」

 

翔「心配するな。俺は死なねえよ」

 

間宮「……」

 

~~~~

 

<工廠>

 

赤城「私達に、力……」

 

加賀「翔のご厚意よ、五航戦」

 

瑞鶴「ハァッ!?アンタと赤城さんの為に私達の分も作ってくれたのよ!!」

 

蒼龍「落ち着きなよ、瑞鶴」

 

相変わらず加賀さんと瑞鶴さんがいがみ合っているが、私はそれに目を向けずに自らの忌まわしい記憶と向き合っていた。

私はあんな簡単に慢心してしまい、故に相手に攻撃を許してしまった。本当に愚かである。そして、飛龍さんに全てを任せて……!!

 

赤城「ッ……」

 

飛龍「赤城さん、赤城さん。私も同類なのですからこの戦い、必ず生き残りましょう!!」

 

翔鶴「そうですよ。私も貴女達の力になりますので、そんなにお悔やみになられないで下さい」

 

赤城「!!……ありがとう」

 

こんな素晴らしい後輩に恵まれた私は本当に幸せ者だ。なのに、あんな大失態を見せてしまったことを恥ずかしく思うわ……

 

「……おや、来られましたか」

 

加賀「あっ、成人さん。この五航戦をどうにかしてくれないかしら」

 

成人「はいはい。瑞鶴さん、重要な話がありますので、静粛に」

 

瑞鶴「っ……覚えておきなさいよ」

 

二人の仲の悪さに、成人さんも頭を抱えているご様子。その直後に、いつも通りに顔を戻す。

 

成人「さてと……これは、非常に強力な艤装です。恐らく、使い方次第では深海棲艦等敵ではないものでしょう。

しかしこれを120%扱うには、連携が必要であり、またこの艤装をきちんと扱えること自体も絶対必需です」

 

飛龍「……そういえば、何で120%なんですか?」

 

成人「120%とは100%を完璧とするなら、120%は自分自身も進化するくらい艤装を扱えることです」

 

加賀「120%……いけれるのかしら?」

 

成人「最初から諦めないで下さい。それでは、置いてあるアタッシュケースをお開き下さい」

 

そう言われ、私は屈んでそのアタッシュケースの留め具を外し、ゆっくりと開いた。

 

『!!!!』

 

それは、驚愕するようなものだった……


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