<大本営鎮守府 執務室>
大淀「第一艦隊から打電。『艦隊、帰投。電、雷大破、他四隻中破』だそうです」
提督「そうか……。ふぅ……」
金剛達第一艦隊が、無事に帰投したことに安堵の溜め息をつく。大淀も、私の側に立つ長門と陸奥もだ。
陸奥「大丈夫だったようね」
長門「ああ……。赤城と加賀が中破した時から緊張感が凄かったぞ……」
提督「だが加賀曰く五人組の旅人がその窮地を助けてくれた……彼らに何と御礼をすればいいだろうか……」
深海棲艦を倒すことが可能なのは、長門や金剛のような艦娘のみだ。しかし、そんな敵を倒すことのできた彼ら。嘘だろ、と思いたいが加賀が言ったことだ。それに、彼らが来なければ金剛達は深海に沈んでいたはず……
大淀「……ん?また、打電です。
ええと……『金剛達はやられているから、一足先に修理に行かせてる。しかし、俺達は闇雲に動くことはできない。だから、代わりに誰か来てほしい。できれば、ここの提督さんも同行を頼む』……だそうです」
提督「私のご指名か……搬入ドックに向かうとしよう」ガタッ
長門「ま、待て!金剛達を助けたとはいえ、海軍の差し金かもしれんぞ!!私が行ってくる!」
確かにそうだ……しかし、出向かなければいけないのだ。
提督「長門。海軍だとしたら、金剛達を無理矢理連れていくはずだ。それに、加賀の打電では水上に立っていたと言っていたし、普通なら出来ぬ芸当だ。
だが……万が一、海軍と考えて拳銃と軍刀くらいは持っていくさ」
長門「……分かった。なら、私や陸奥も艤装を装着させてもらう」
すると、長門と陸奥は戦いにて扱う巨大な艤装を取り付けた。大淀は艦娘だが、戦いに必要とする艤装がないため、戦うことは不可能だ。
提督「それじゃ、会いにいくとしようか。大淀、休んでていいよ」
大淀「あっ、はい」
大淀も作戦指示時のヘッドフォンを外し、私に一礼して執務室を出た。
私と長門、そして陸奥は鎮守府の廊下を渡って、彼らの待つドックへと向かった。
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<搬入ドック>
翔「あぁーっ!俺の○Fがァッ!!」←C○(ブルー、ファルコンッ!!)
望「フッ……」←ク○パ(韓国料理じゃない)
咲姫「おりゃあっ!!」←ピー○(桃じゃない)
希「ぎゃああぁぁぁ!!!」←カー○ィ(悪魔じゃない)
金剛達を修理に行かせて、俺達は最新ス○ブラを3D○で大乱闘してます。成人は、何やら艦隊運用の為に分厚い本を読んでいる。
翔「カモーン!ブルーファルコン!!」
「「「ぎゃあああぁぁぁ!!!」」」
切り札で、三人を青い近未来の車ではね飛ばす。これで、勝利は確実だ!!
ギイィィィ…
長門「失礼する。金剛達を助けたという五人組はどこにいる?」
翔「っしゃあっ!!」1st
咲姫「うえぇん、最後~」4th
望「チッ……」2nd
希「くうぅ~!!」3rd
ん、何か声が聞こえたが、どーでもいー。
翔「よっしゃ、俺のかc…あっ……」
長門「……」
な、何かすっげえ睨み付けてるよあの同じ服を着た二人!?でも、白い軍服の人は何か微笑ましく見ている。
翔「あっ……ええと……」
長門「……貴様達が、金剛を助けたのか?」
それに、俺達は首を縦に振った。
長門「そうか……。会ってすまないが、貴様達は海軍を知っているか??」
『知らない(です)』
海軍?ナニソレ、ワン○ース?
成人「海軍、ですか……。僕達は生憎軍には入らないタチなので。それに、僕らは生い茂った沿岸部を歩いてただけですよ」
成人が、自分達が敵でない事を示すかのようにそう説得する。
長門「そうか……なら、何故金剛達を助けたのだ?」
翔「ったりめーだろ?
俺達ァ弱い立場の存在に味方する奴らだから、やられかけた六人を助けたんだ」
長門「!!」
長門が豆鉄砲を喰らったかのような顔になる。
長門「……貴様達を信用しよう。そして、金剛達を助けた事に感謝する」
翔「気にすんなよ。俺達は弱い立場に味方するだけだから、当たり前の事をしたまでさ」
堂々と、あの凛々しい女性をいつもの眼差しで見つめた。
「フフフ……やはり予想通りのようだな、君達は」
すると、ただ傍観していた軍服の男が何やら嬉しそうな声でそう言った。すると、彼は俺達の前に歩いてきた。
翔「……お前が、此処の提督さんか?」
提督「うん、勿論さ。さっき、長門が失礼したよ。彼女、気難しい性格だからね」
提督の優しい微笑みや爛々と輝く目から、彼は平等に接する存在だとすぐに分かった。……彼となら、いい酒を飲めそうだ。
提督「おおと、紹介が遅れた。
私は、この鎮守府で金剛達といった存在を指揮する提督だ。次いでに、本名は東郷清志。宜しく頼むよ」
翔「そうか……。
俺は雄崎翔だ。んで、隣のポニーテールの子は妻の咲姫、後ろにいるのが俺達の子供の希と望だ。あっ、そして本を抱えているのは、俺の従者にあたる成人だ」
咲姫「咲姫です。うちの人がすみませんね」
希「希だよー!てーとくさん、宜しくね!」
望「望ですっ……よろしくです……」
成人「翔さんの紹介に預かりました、成人です。突然のご訪問申し訳ありません」
それぞれ、違う対応で提督……清志に紹介した。
提督「ん、翔君に咲姫君、希君、望君、そして成人君か。宜しくね」
提督の手が伸びることに、代表して俺が提督と握手をした。ごつごつしているから、相当のベテランだろうな。
提督「此処で立ち話してるも何だし、応接室で話そうか。あっ、長門に陸奥。彼らはとてもいい人そうだから、艤装は外していいぞ」
長門「うむ……」
陸奥「ええ……」
すると、二人の背負っていたMGS(マルチギミックサック)みたいなのがホログラムのように消えた。
提督「それじゃ、私について来てくれ。長門と陸奥も、いいかい?」
長門「ああ」
陸奥「ええ」
兎に角、上陸して提督と長門と陸奥といった二人の女性について行くのだった。
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<応接室>
提督「さてと……これで話せるね」
金剛達を助けてくれた五人を鎮守府に案内し、執務室の隣にある応接室へと誘い込む。三人用ソファが対に、その間にテーブルがあるだけのシンプルな構造だ。軍だからって、資金をこんな事に使ってはいけないからな。
でも、相手は五人だ。仕方なく、そのうちの希君と望君を執務室で待機させて、私の両端に長門と陸奥が座るようになっている。相手も、リーダー格と思われる翔君が咲姫君と成人君の間に座っている。
提督「すまないな。本当はお茶かお菓子を出したいところだが、間宮さんと伊良湖さんが昼食を作ってて無理だったんだよ」
翔「結構だ。提督さんよりも立場の低い余所者だ。それに突然な事だから、無理だっただろう」
提督「そうか……」
私は改めてという感じで小さく咳払いして、三人に面向かって話す。
提督「改めて、私はこの鎮守府の提督である東郷清志だ」
長門「私は、長門型戦艦の『長門』だ。先程はすまなかった」
陸奥「長門型戦艦の二番艦の『陸奥』よ。長門の妹にあたる存在よ」
翔「俺は雄崎翔だ。馴れ馴れしいかもしれないが、これが俺のポリシーでね」
咲姫「雌崎咲姫です。先程紹介した翔の妻です。夫共々、宜しくお願い致します」
成人「成學成人です。名字の『學』は学校の学の古い方なのでお忘れの無いようお願いします。
二人の……いわば執事や秘書のような位置付けです。宜しくお願い致します」
翔君はため口だが、私は彼のような人が大好きだ。咲姫君と成人君は敬語だが、馴染めばすぐにため口になるだろうな。
提督「うん、宜しくね。……さてと、君達……」
翔「ん?」
成人&咲姫「「はい?」」
提督「最初に、私の部下である金剛達を助けてくれて、本当にありがとう。彼女達は、私達にとって家族同然の存在だからね」
翔「礼はいいさ。俺達は自分達でやったことだからね」
翔君は、白い歯を見せつけてニカッと笑った。……あの笑顔に、私もついつい頬が釣り上がってしまう。
提督「そうか。
それじゃあ、君達は『艦娘』や『深海棲艦』というものをご存じかい?」
「「「カンムス?シンカイセイカン??何それ、美味しいの??」」」
即答だった。しかも、完璧なハモりで陸奥が吹き掛けている。
というか、この台詞どこかで……あっ、蒼龍だ。「ミッドウェー?何それ、美味しいの?」って言った気がしたなぁ……彼女みたいに、子供っぽいようだ。
提督「知らないのか……なら、海のすぐ近くにいてもおかしくはないようだね。
それじゃ……ちょっと長くなるけど、いい?」
それに、三人は頷いた。あんなにフランクな翔君も、この時はとても真剣そうだ。彼は、いざという時は真面目になるタイプのようだね。
成人君に至っては、ノートとペンを用意している。とても真面目のようだね。
提督「それじゃ、話すね……」
提督説明中…
三バカ(翔、咲姫、成人)静聴中…
提督「……ということだ」
成人「なるほど……。
簡単に説明すると、去年に太平洋に謎の物体……いわば深海棲艦が世界の制海権と制空権を強奪し、日本は鎖国にならざるを得なかった。その時、長門さんや陸奥さんのようなWW2時に活躍した軍艦が転生、そして少女の姿となった『艦娘』が現れた。彼女達を提督さんは指揮して制海権を取り戻そうとしているのですね」
そうだ、と成人君に正解というジェスチャーと笑顔を見せた。
翔君と咲姫君も分かったようだ。
提督「……それとだ。私達は艦娘を指揮するのだが……質問をしよう。
君達は、艦娘を『兵器』か『人間』、どちらを主点に見る?」
翔「当然『人間』だ。
俺は昔忌み子や鬼の子として下らねえ虐待を受けた経歴あるしな」
咲姫「私もです。翔同様虐待を受けました……」
成人「僕もです。虐待を受けたという訳ではありませんが、どうも人を見下すクズは虫酸が走るんでね……」
翔君と咲姫君は虐待を受けてたのか……二人共、苦しかったんだろうな。
提督「そうか、私は君達のような寛大で優しい人を探してたのだ。
……私達は提督として、艦娘を指揮する義務がある。しかし、ある鎮守府で艦娘を虐待したり性行為を行ったりしたのだ。私はその鎮守府の訪問時にそれを見かけて警察へ報告した。
そして刑事裁判にて、私は被害者の……艦娘の弁護を務めたのだが……あっさり『無罪』となった。理由は一つ……『艦娘は人ではないから』だそうだ。
それが、ある一つの出来事の引き金となった……」
三人は、真剣ながらも怒りを露にしている表情になっている。長門と陸奥も、顔が強ばってるようだ。
提督「艦娘を指揮する組織として、彼女達を『兵器』として見る側と私のように『人間』として見る側に分かれた。そして、その溝は深くなっていき、『海軍』と『大本営』という2つの組織となった。勿論、私は『大本営』側として立った……」
私は、深呼吸してこう言った。
提督「君達に……頼みがある。
艦娘を『人間』として愛する組織『大本営』の一員に……なってはくれないか?」
それに三人はそれぞれ顔を合わせて、微笑んだ。
翔「勿論だ。こんな俺達だが、艦娘を人間として見る一人として力を貸す」
提督「!!あ、ありがとうっ!!」
思わず、私は額にテーブルに付くほど頭を深く下ろした。長門と陸奥もそうだ。私ほどではないが、三人に頭を下げている。
翔「頭は下げなくていい。
それじゃ……よろしく頼むぜ、提督さん」
提督「……ああ。頼んだぞ」
私は、翔君の手を両手でしっかりと握ったのだった。