コポコポ…
“無敗デアッタ貴様ガコンナニ無様ナ姿ニナルトハネェ……”
『艦娘ヲ何隻モ沈メテキタ私ニトンダ面汚シヲサレタワ。アノ化ケ物紛いノ人間メ……!!』
“……マア、私達ノ中デモ相当ナ戦果ヲ誇った貴様ガ言ウコトネ。コノ事ハ信ジテヤルワ。ソシテ……今ヤ戦エヌ貴様ニチャンスヲ与エヨウト思ウノダケド……”
『ッ……!!邪魔ハ入レナイデチョウダイ。コレハ、私ノ“私闘”ナノ。艦載機一機タリトモ入レルンジャナイワヨ』
“無論ヨ。コレハ貴様ノ闘イナノダカラ……頑張リナサイヨ”
『……イツモ傍観者デアル貴女ニ言ワレタクハナイワネ。マア、アノ男ヲ確実ニ蜂ノ巣ニシテヤルワ』
~~~~
<鎮守府付近海域>
ザアアァァァ……
パシャパシャ……
翔「……何も出ねえな。駆逐艦すらいねえよ」
「「「「(そりゃ、提督が無双しましたからね……)」」」」
艤装が完成して一週間後、俺は四人を率いて鎮守府の近くにある海域を回っている。
無論、敵なんているわけがなかった。というかあの時が修羅場と思えると、今はのどかで平和な海だった。あの時飛んでいなかったカモメもその翼を大きく広げ、水面下の魚も体をうねらせて進んでいる。
村雨「……というより、此処より他の海域の方がいいんじゃないの?此処、もう深海棲艦なんていないんじゃない?」
翔「えぇ~、俺の勘が当たらないとはな……やっぱ、あのお金大好き巫女の方が鋭いか~」
潮「(お、お金大好き巫女!?金欠なのでしょうか?)」
羽黒「(巫女という役職から考えたら、普通ならあり得ない……いや、金欠ならあり得るけど……)」
如月「(きっと、その人が住む神社はお賽銭が少ないのかしらね)」
村雨「(食べ物の執着心も強そう……)」
「「「「いや、そんなわけないか……」」」」
翔「?」
※大体あってます。マジで。
何か訳の分からん一言を呟いた四人は互いに吹いて笑っている。それに疑問を抱きながら、その微笑ましい光景に俺も口角を上げていた。
そうして顔を正面に戻すと、見覚えのある場所が目の前で待っていた。
翔「……」パシャ…
潮「あれ、どうしましたか?」
翔「此処が、お前達が沈められかけた海だ」
潮達は突然の襲撃でまともに位置や此処の風景は確認してはいない。だが、雰囲気とかで分かったのだろうか、四人は此処だったという目をした。
翔「……!!」キィィ…
その時、やはりビジョンが働いた。
内容は、俺達五人が砲弾に直撃するものだ。その砲弾は正面から来ている。
なら……!!
翔「リフレクトビット!ナイトモード!!」
ビビビュン!
[ナイトモード]
砲撃を防御しようと服の中から3基でバリアを展開できるリフレクトビットを12基放ち、俺は弾を反射できるナイトモードを発動した。
キキキキィンッ!!
羽黒「ッ!?砲撃!!」
村雨「提督はそれを見計らって……!」
潮「また命拾いしましたね……」
翔「ぐちぐち言うな!距離からすると戦艦、接近するぞ!!」
了解!という迷いの無い返事が聞こえ、俺達は砲弾のシャワーを回避もしくは防御してフルスピードで接近する。特殊モードは100秒が限界。リフレクトビットはダンボール粒子の供給が必要不可欠だが、エターナルサイクラーでほぼ永久的に稼働しているから潮達の心配は無い。
翔「よし、敵が見え…た……ッ!?!?」
如月「どうしたの提督?……ッ!?あれって……!!」
潮「ヒッ……!!」
敵の容貌が見えた瞬間、思考がピタリと止まり、引き抜こうとした菊一文字とその柄を握る腕も止まった。四人もあの姿に顔から驚愕と恐怖が溢れてきていた。
戦艦棲姫『フフフ……マタ会エタワネ、“化ケ物”サン??』
ドオオォォォンッ!!!
翔「ッ!!回避しろ!!もしくはマルチウェポンラックのシールドを正面に回せ!!!」
あの時、潮達を沈めにかかった艦隊のボスの戦艦棲姫だった……だが、その面影は胴体と微かに見える顔のみだった。ほぼ全身が他の深海棲艦のもの、いわゆる継ぎ接ぎ状態だ。
俺によって斬られた両腕はリ級の腕を縫い付け、その腕にはル級の主砲付き盾を構えている。両足はチ級の下半身をそれぞれ付けて、その二つでスピードと雷装をカバーしている。そして、背中にはあの巨人はバラバラにされてもう無いがレ級の尻尾が三本とネ級の集中砲台が付いている。肩にもホ級の連装砲が取りついていたりと、完璧な継ぎ接ぎの化け物になりやがっている。
ふと我に返り、とにかくそいつの全砲門斉射に四人に指示すると背中のマルチウェポンラックに取り付けられているシールドを前を回して防御態勢に入る。俺は刀を抜いて、迫り来る砲弾をすらすらと避けて戦艦棲姫と対峙する。一瞬だが、全員砲弾を受け止めて無傷でいた。
翔「よう……てっきり死んでたかと思ってたよ。んで、次は継ぎ接ぎですかい」
戦艦棲姫『フフフ……ダルマ状態ノ私ヲイ級ガ庇ッテクレタノヨ。ソレデ、貴方ノ復讐ヲ果タセラレルヨウニナッタノヨ』
翔「そうかいっ!!!」
ガキイィィンッ!!!
菊一文字を横に一閃して、盾をぶった斬る。盾は使い物にならなくなって、手放すと待ってたかのようにその残骸からリ級の主砲が俺を覗いていた。
戦艦棲姫『甘イワヨ、クソガキ!!!』
ドオオォォォンッ!!!!
『提督!!!』
翔「へっ、心配するんじゃねえよお前ら」
俺を悲鳴に近い声で叫ぶ四人に俺は笑いかけて、当たる寸前に戦艦棲姫の顔を掴んでそこから思いっきり上に体を上げた。だが、レ級の尻尾が待ち受けていた。
羽黒「ッ、提督、援護します!!」
ダァンッ!ダァンッ!!
翔「おっ、サンキュー羽黒!ネ級の砲台も頼む!!」
村雨「任せて!」
羽黒の両肩のAMライフル48式αが放った徹甲弾がレ級の尻尾の先を貫通して、潮のブラストマグナム、村雨のカービンカタストロフ、如月にカラミティライオットがネ級の砲台を完璧に台無しにした。
それぞれにGJを送り、俺は戦艦棲姫の背後に回ってローキックをかました。これで、足は使い物にならなくなるはずだ。
戦艦棲姫「アァグッ!!コ、コノ化ケ物ガアアアァァァァ!!!!」
翔「さてと……降参するかい?」
戦艦棲姫「黙レ!!!!」
鬼のような形相で俺にリ級の主砲を向けてきた。だが、動じもせずに涼しそうな顔で流す。
戦艦棲姫『最後マデ……私ヲ辱シメテ!!』
翔「辱しめる……か。俺そんなことやってねえけど」
戦艦棲姫『黙レエエェェ!!!!』
狂った顔で、口から何かの液体を吐きながら主砲を顔に押し付けた。だが、それでも動じない。
翔「……BANG」
ビビュン!!
ダァンッ!!
ビュウンッ!!
ドドドド……!!
ドオォォンッ!!
戦艦棲姫『ガッ………!?!?』
不敵な笑みを浮かべてそう呟くと、戦艦棲姫の死角で潮達が砲撃した。
潮のマグナムは戦艦棲姫のこめかみを、羽黒のAMライフルとレーザーキャノンはそれぞれ四肢を、村雨のカービンは胴体を蜂の巣にし、如月はライオットで全身を撃ち抜いた。
戦艦棲姫は全身をやられて、首をゆっくりと周りに動かそうとしたが……
ドシャッ……
翔「……ようやく死んだか」
膝を崩してそのまま倒れ、マリオネットの切れた操り人形のように動かなくなった。
潮「提督~、大丈夫ですか?」
翔「おう、大丈夫だ。まあ、ちょっと砲撃喰らったけどね……」
とりあえず四人に待てと平手を前に出させ、海に浮かぶ戦艦棲姫の亡骸に向けて、レギオンランスを突き刺した。
ドオオォォォンッ!!!!
翔「それじゃあ……帰るぞ」
「「「「……はい(ええ)!!」」」」
戦艦棲姫の爆発を後ろに、俺は四人を呼んで鎮守府へと帰るのだった……
~~~~
<食堂>
潮「__ということがあったんだ」
吹雪「へぇ、そうだったんだ」
出撃後の夕食、私は駆逐艦の皆に今回の出撃の事を話していた。
電「やっぱり、翔さんは凄いのです!姫級にも怯えずに戦えるなんて、司令官さんが選んだだけあるのです!」
如月「??……ああ、もしかして電ちゃん達の前の提督の東郷清志さんという人かしら?」
響「そうだよ。前の司令官は戦えないけれど、翔と同じくらい優しい人で何より彼ら以外で唯一響達を人間として見てきた人だよ」
潮「へぇ~、ちょっと会ってみたいなぁ」
それに同情するように頷く如月ちゃんと村雨ちゃん。周りを見てみると、相変わらず島風ちゃんは物凄いスピードで食べて赤城さん達は私達の何倍もの量をゆっくりと味わっていて、羽黒さんも高雄さんと愛宕さんと楽しそうに談話している。
スウゥ……
翔「(にしし……暁のピラフにフラッグ刺してやらぁ。暁よ、恨むなっ……!!)」
ガシッ
咲姫「か~け~る~く~ん?何やってるのかなぁ??」ゴゴゴ…
翔「あっ、えっとぉ……」ダラダラ…
咲姫「ちょっと来てくれる??」ガシリッ
翔「あっちょっ……」ズリズリ…
その時、提督の叫び声が聞こえてきた。
翔「ギャアアアアアァァァァ!!!!ソーリーソーリー!!アイムソーリー!!!」
咲姫「I don`t allow(許さない☆)」
翔「オウウゥゥマアァィィィガアァァァ!!!」
『…………』
両足を掴まれ引きずられる提督と、それを引きずる咲姫さん。……そうして、廊下の闇へと消えていった……
長門「ハハハ……相変わらずだな」
陸奥「また暁ちゃんをいじろうとして……彼も意地悪なのね」
蒼龍「それを言うなら私達の事も心配してクダサイ……」シクシク…
赤城「蒼龍さん、ご飯に涙が落ちてしまうわよ?」
金剛「……この隙にカケルのご飯と味噌汁の中にマーマイト入れてやるデース……」コソコソ…
比叡「金剛御姉様ェ……」
皆はそんな光景に苦笑いをしたり、何かイタズラを仕掛けたりととても楽しそうだ。
潮「アハハハ……」
雷「全く、相変わらずわね翔さんは。いっつも暁のピラフの上に旗を刺すんだもの」
暁「もうっ、ホント翔はお子様なのね!」
駆逐艦『(暁(ちゃん)が一番お子様と思うけれど……)』
不覚にもそう思ってしまった……
翔「ギャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!!!!!」
武蔵「全く喧しいな、アイツは。そろそろいじるのやめてほしいのだが……」
大和「まあ、いいじゃないの。あれが私達の提督なのよ?」
飛龍「翔さんを爆撃する私達をどうにかしたいけど、出来ない……」ポロポロ…
加賀「飛龍、ちゃんと食べなさい」
霧島「……翔さんは大丈夫なのかしら?」
榛名「あの人のことだから大丈夫ですよ!というか大丈夫じゃないならとっくに死んでる気がします」
天龍「お、オイオイ榛名さん。その言い方はねえぞ……」
提督の断末魔に皆は平然としている。まあ、私達もそうだけど……
雪風「それよりも、潮ちゃん!如月ちゃん!村雨ちゃん!」
「「「ん、何?」」」
雪風「この鎮守府に慣れて、楽しい?」
当たり前だ、楽しいに決まっている。
とちょっときょとんとして二人に顔を合わせるが、揃って笑みを浮かべて
「「「うん!勿論(だ)よ!!」」」
そう答えました。
その後、何か疲れた提督が金剛さんが入れたマーマイトとやらを入れたご飯を食べて、盛大に吹き私を含む皆が大爆笑したのでした。