<鎮守府 書斎>
成人「……」コクコク
ペラッ
ダージリンティは最高だ。優雅な香りが鼻孔を刺激して、口にも心地よい風味が溢れる。これは、本が進むな。
そう、頬を綻ばせてブルーホワイトのティーカップを置いて、片手で持っている本に目を向けた。
成人「(……今日は、意外にも静かなのですね)」
いつもなら駆逐艦の子達がドタバタと走り、何処かで爆発音が響き、呆れるほど聞いた誰かの絶叫が聞こえる。
午後の時、それが飽きずに響くのに珍しく静かである。耳に入るのは、換気の為に開けた窓からの風と葉が擦れ合う音。時々誰かの話し声と鳥のさえずり。そして、自分が鳴らす紙を捲る、陶磁器がぶつかる音だけだ。
ヒュオォォ…
成人「!……ふふっ、誰か来るでしょうね」
微風に吹かれて入ってきた桜の葉。それは、僕の持つ本に栞を入れるかのように挟まる。
それに何か察した僕は本をそのまま閉じて紅茶を飲み干し、小さな流し台で洗った。
そうすると、相変わらず聞こえてくる誰かが絨毯の上で靴を忙しく叩く音。それに、ちょっと期待しながらも何故かいつもの椅子に座っていた。
コンコン
雪風「成人さ~ん!いますか~?」
島風「遊ぼ~、成人さ~ん!」
連装砲ちゃん「「「キュー!キュー!」」」
成人「はーい」
そう言って、扉をゆっくりと開いた。そこには幸福艦として戦い抜いた『雪風』と、40ノットで重雷装というワンオフ艦ともいうべき『島風』が立っていた。それに加えて、島風の艤装である人工生命体(?)である連装砲ちゃんも鳴きながらピョンピョンと跳んでいる。
成人「ん、雪風、島風。挨拶は?」
雪風&島風「「こんにちは~!」」
連装砲ちゃん「「キュキュ~!」」」
成人「こんにちは」
駆逐艦の中では、典型的な服装の二人は可愛らしく挨拶をする。これが、海軍では『兵器』として使われると考えると……吐き気を催します。
成人「で、どうしたのですか?」
島風「成人さん、島風達と遊ぼ!」
成人「ええ、いいですよ」
それに、二人と三匹(?)は喜んで小躍りしている。
にしても、遊ぶのか……僕、五人の中でもあらゆる面で異端ですからね。クソが付くほどの運動音痴です。
雪風「あっ、雪風達だけじゃなくて、暁ちゃん達もです!」
成人「……じゃあ、僕含めて8~9人ですか。何をするのか、決めてるのですか?」
島風「鬼ごっこだよ!」
島風、それ君の独断場じゃないですか。まあ、テクニックとかでどうにかなりそうな問題ですけど。
成人「鬼ごっこですか……。島風、手加減して下さいよ」
島風「分かってるって!ほら、行こ行こ!」
二人に両手を握られて、そのままの勢いで引っ張られる。肩や頭には、連装砲ちゃんが乗って小さな手をGO!と言わんばかりに挙げている。
僕はその勢いに驚いたが、僕はそれを笑みを浮かべてその勢いに乗るのだった。
~~~~
<グラウンド>
成人「ハァ……ハァ……」
雷「成人さん、遅いわよ~!」
吹雪「遅いですよ、成人さん!」
ま、まさか鬼が僕とは……ジャンケンは心理戦であったのに、見事に皆グーで僕チョキで負けましたよ。
それで……この有り様である。僕は5分で限界で、もう息が上がっている。それで、つまんないといじめに近い何かが起きている。
島風「咲姫さんから聞いたよりは、とても遅いね……」
成人「あ、当たり前ですよ!……ハァハァ…」
響「?どういうことだい、成人。翔達とは違うのか?」
成人「勿論。僕は翔さん達とは対照的に、莫大な知識を用いてそれを操るんです。それで、体力や運動神経なんてめっきりで子供にも負けるほど……」
雪風「な、何かごめんなさい。それも知らないで……」
いいんですよ、と笑みを浮かべてそう言った。
成人「翔さん達はいわゆる純粋な戦闘が得意です。ので、あのような人智を超える身体能力の持ち主です。
しかし、僕はサポートや雑魚相手の掃討が得意です。ので、身体能力を使わずに自分の知識を用いてそれで戦うのです」
例えば……と体を無機質に変える力で、腕に刃やガトリングガンを形成する。
暁「ヒッ!う、腕が武器になった!?」
成人「厳密には、僕は『学問』を司る力を持つので例えば化学の化合や分解を起こしたり、天文学のブラックホールを形成したりできます。
この時点で相当な能力ですが、応用すればこのように体を無機物にしたり動植物を進化退化、更には神話の武器を用いることもできます」
吹雪「……味方にしたらこの上ない頼もしい能力ですが、敵に回したら逆にこの上ない恐ろしい敵ですね」
確かに……という沈黙と視線が表れる。
成人「まあ、それで翔さんを死亡寸前まで追い込んだこともありましたね。あと一歩というところで負けましたけど」
島風「……そりゃ、学問だからね。それ相手に死ぬ寸前までおいやられて当然だと思うけど」
成人「いや、翔さんは僕の『学問』を打ち破るほど物凄い力の持ち主ですよ。例えば地球の1億倍の重力がかかっても平然と立っていたり、光すら飲み込むブラックホール相手に平然と逃れられたり、色々と常識覆してましたから」
もはやバケモノを超えた化物の翔。今では彼に勝てるのか怪しいほど、強くなっている。
僕も、いざという時は彼を賄えるほどの力を付けないと!!
電「……それ聞くと、翔さんがどれくらい強いのか分かりました。成人さんもですが深海棲艦余裕で壊滅できますね」
成人「まあ、そうですね。
……しかし、深海棲艦がどういうものなのか考察はできますが、辻褄が合いません。ので下手に壊滅するわけにはいきませんね」
雷「確かに……、深海棲艦の存在って分からないよね。現れてもう数年だけど、全く。海軍もどうにか探ろうとしてるけど、全て空回りだからあてにならないわね」
成人「ん……それは、ゆっくり考えましょう。
それじゃ、鬼ごっこの続きやりましょうか。僕、能力で身体能力を上げているので十分いけるかと」
暁「というか……それ、使えば良かったじゃないの?」
『あっ……』
そうだった……。最近平和すぎて能力を使うの久々だった……。
まっ、いいか。
<ドゴオォォンッ!!!
翔「またか、瑞k……蒼龍ウウゥゥゥゥ!!!」
蒼龍「ひゃあああぁぁぁぁ!!!ごめんなさーーーい!!!!」
ダダダダダダ……!!!
電「アハハ……相変わらずなのです」
吹雪「何故、翔さんってよく赤城さん達に爆撃されるのでしょうか……?」
響「……というより心無しか蒼龍さん、足速くなってない?」
島風「確かに、速い速ーい!」
蒼龍「ちょ、助けてくd、ギャアアアアアアァァァァ!!!!」
翔「フフフフフ……」←満面の笑み
その後、翔と蒼龍の鬼ごっこを皆で眺めていたのだった……。
※蒼龍は捕まりタイキックをされて、裏の犯人である飛龍はバックブリーカーされました。
・成學 成人(せいがく なりと)
年齢:25歳(体の成長速度を無に近いレベルで遅くしている)
身長:177.6cm(身長はmmからkmまで変化)
体重:65.3kg(mgからtまで変化)
<概要>
佐世保鎮守府提督である、翔と咲姫の親友であり、五人の中で異端の存在である。
力はなくともその完璧ともいえる知識と能力で彼らの支援を務めながらも、あらゆる敵を潰す。
<容姿>
黒髪黒眼で、中性的でイケメン。体形もスラリとしており、翔とは対照的に長袖長ズボンや制服を着ている。中でも、白衣+伊達眼鏡はメチャクチャ似合う。
<性格>
五人の中では非常に真面目で、常識的。明るくてバカ集まりの中では異端のため、非常に浮いているが真面目なだけあって四人も彼を信頼している。
艦娘からもあらゆる面で信頼してるため、どこぞの鬼神並に多忙である。しかし、時間を止めて休んでいるためあまりストレスは溜めていない。
怒ることは全くないが、もう万が一怒らせると持ち前の能力を用いて殺しにかかる。その怒りは、翔達4人が協力しないと止められないほど。
<戦闘能力>
勿論、異端なだけで成人の運動神経は皆無。そのため、肉弾戦では最弱。
しかし、『学問』を司る能力と自らの持つ知識で四人にも負けないほどの力を持つ。体を無機物にしたり触れたものを灰や錆にしたりとどこぞの大海賊時代のアニメに出てくる悪魔の能力みたいだが、それを大きく上回る+海に嫌われないという超チートであるため、時には翔をも超える力を持っている。
他に汎用性も広いため、ファンタジーでいう魔法使いや僧侶、賢者みたいなものである。(翔はバトルマスター+パラディン、咲姫はハンター+アサシン)
<弱点>
一番致命的なのは、能力を封印されること。それだけで成人の戦力は皆無まで低くなる。(だが、問題なのは封印すらも解くし隙も全く無い成人をどうやって封印するかである……)
他に運動も苦手であるため、外遊びでは能力を使わない限り確実に勝てる。