<鎮守府付近海域>
翔「それじゃ……」チラッ
大和「……」コクッ
尻目で最前線に立つ大和に撤退させろというコンタクトを取ると、大和は理解して空母と一部の駆逐艦を除く高速艦を随伴させて撤退させているのが見える。理解してくれた大和にGJを送る。
海面を思いっきり蹴って前線のflagshipの駆逐艦をタイラントティターニアを薙ぎ払って、真っ二つにする。
大和「(よし、とりあえず安心ですね……)全砲門、撃てェッ!!」
長門「てぇー!!」
赤城「第三次航空隊!全機発艦!!」
大和姉妹と長門姉妹が敵前線を沈め、空母が艦載機を発艦させて後衛や敵艦載機を叩いている。砲弾は敵を凹ませ、魚雷は舷部に穴を開け、爆弾は敵に炸裂して炎を吹く。
俺も負けじと、タイラントティターニアで周りの敵を斬り、AMライフルで戦艦や空母に風穴を開ける。LBXならばタイラントティターニアは別として耐えて当然だが、深海棲艦は一撃で爆発する。時間の差によるスペックが歴然である。
翔「(ったく、今すぐオーレギオンで全部突き飛ばしたいところだがそれはよそう。まずは大和達の被害を抑えつつ確実に仕留めなけねばな……)」
[Set up『風魔手裏剣』]
[Set up『風神丸』]
クナイを取り付けた巨大な手裏剣を敵艦載機に投擲する。プロペラほどではないが高速回転して宙を舞う手裏剣は、敵の艦載機を全て斬り刻む。コントロール不可能だが、ホーミング機能が搭載されているので、海上の敵もガリガリと削って飛んでいく。
瑞鶴「(アイツ……忍者なの?)」
※いいえ、忍者ではありません。殺し屋デス
というかあんなバカデカイ手裏剣使う奴ほとんどいねえだろ。いるとしたら主とリンクしたカエルとか電気忍法使う車輪眼の男とかだろ。あっ、イチャイチャパラダイス見ないほうね。
翔「っ、数が減らねえな。ならっ!!」
タイラントティターニアから、アキレスIIの持つ穂先が2つあるツインパイルランスに変える。一応、AMライフルも盾のフレイムディフェンダーにしておく。
翔「必殺ファンクション!!」
『アタックファンクション・サウザンドジャベリン』
持っているツインパイルランスとフレイムディフェンダーが光となる。その代わりに、背にはその名の通り千本の光の投げ槍が整列している。立てられている槍は全てその穂先を敵に向け、俺の合図と共に矢の如く敵を狙って直進していく。
ほとんどの深海棲艦はその光の矢によって貫かれて、痛くなるほど鋭い断末魔を上げながら粉々に爆発した。
大和「すごい……」
武蔵「あんな技で、半数の敵を一撃で沈めた……いや、破壊しただと……!?」
赤城「(やっぱり、すごい。翔さんは確かに深海棲艦をザコ扱いできるほどの力の持ち主わ……!!)」
手元に槍と盾が戻ると同時に、2つのパイルの間にのビームランス発生機と、側面にブースターを取り付ける。
翔「行きやがれ!!」
ツインパイルランスを投擲すると側面ブースターとウィングによって加速と滑空、かつ2つのパイルとビームランスによって縦に配列させた敵は串刺しになる。
加賀「……!!彩雲から電文!この艦隊最後列に……戦艦棲姫!?」
すると、大和達の顔色がスッと消えて青くなった。
姫級……確か、重要拠点に配属されている特別強い深海棲艦と清志から聞いた。それによって、攻めてきた多くの艦娘は沈んだとか……
長門「(っ、マズイことになったぞ……!まさか、戦艦棲姫がこの艦隊を動かしてきたとは……!!)」
赤城「(この後ろには潮さん達や日本本土がある。……絶対に倒さなくては!!)」
翔「(ほぅ、まさか姫級がわざわざ此方に来たとはな……まっ、潮達を傷つけたんだから、バラバラに破壊しなくてはな……)」
苦虫を噛んだかのように顔をこわばらせて冷や汗を流す長門達とは対照的に、俺は初めての姫級に胸を躍らせる。
大和「翔さん……戦艦棲姫はル級やタ級の何倍も強いですよ。下手すれば……」
翔「ああ、分かってる。……だが、この実力でどこまでやれるか試したいんだ……」
持ったままのフレイムディフェンダーを光でその形を無くし、腰に差してある菊一文字を抜刀した。
武蔵「……骨は拾っておくぞ」
翔「あ?死ぬってんのか俺が。大丈夫に決まってんだろ!!」
武蔵「そうか……なら、帰ってこいよ!提督!!」
武蔵の挑発するかのような発言に俺はケロッと受け流して、刀を構えて海面を強く蹴った。
レ級『センカンセイキサマノトコロヘハイカセンゾ!!』
ネ級『ココデオマエハ_』
翔「邪魔」ザンッ
レ級とネ級が立ち塞がるが、構わず粉切れにしておいた。
というか、お前達は殺される運命だからな……
翔「さてと……どうも、先日はお宅の狂犬共がお世話になりました」
戦艦棲姫『フフフ……ワザワザデムクトハネェ、ニンゲン』
目の前には、黒いドレスを着て背中に巨人に似た何かを付けた女性が立っていた。こいつが戦艦棲姫……初めて生で見るが、普通の人間と変わらんようだな。角と肌の色と背中のソレは別だが……
翔「ああ、出向いて悪いか」
戦艦棲姫『フフッ、ワルクハナイワ。ムシロ……』
すると、巨人が唸り声を上げて俺に砲を向けた。
戦艦棲姫『オマエヲサガステマガハブケタワ!!』
翔「あっそ」
砲が撃たれる前に、俺はAMライフルで巨人の腕と頭をブチ抜く。すると、戦艦棲姫本体も唸り声を上げて傷つけられた部分に手をかける。
戦艦棲姫『ガアアァァァッ!!コノッ……タダノニンゲンナノニッ!!!』
翔「ハァッ?ただの人間とは違うんだよ、俺は」
巨人が傷ついた体のまま俺に砲を向けたが、菊一文字で砲筒と腕を賽の目斬りにする。奇声を上げて悶える戦艦棲姫の顔にストレートをかまし、仰向けに倒すと動かぬよう四肢を斬り落として、とどめにとルミナスシューターを片手で構えた。
戦艦棲姫『アアアアアァァァァァ!!
コノッ、コ、ノバケ、モノガァッ!!!』
翔「化け物?ああ、化け物だよ俺は」
カチッ
そのまま、ルミナスシューターのトリガーを躊躇なく、無慈悲に引いた。
バアアアアァァァァァァンッ!!!!!
(翌日…)
<執務室>
翔「……」
戦艦棲姫の艦隊を潰した翌日。昨日と変わらぬ提督服を着て、椅子に座って執務用の机で手を組んでいる。
今日は潮達に謝罪と、それと俺が戦う理由を教えるために呼んだ。とりあえず四人に大淀は既に退出させている。
コンコン…
翔「入って」
潮「失礼します……」
扉からは、昨日と同じ元気な潮達が現れた。対照的に元気もない(健康だが)自分はただ元気な四人を見て安堵したが、自分が誤った命令に心が重い……
翔「そこのソファ座って。
……すまねえ、昨日は……。まさか、とんでもねえ奴らが集まってたことに気づかなかったんだよ……」
座った四人に、俺は椅子から立って頭を下げる。それに、潮はおどけた顔で
潮「い、いいんですよ提督。大淀さんからは鎮守府付近海域の事をはっきりと知りましたし。
……それに、提督が助けてくれたのですから……!!」
如月「えっ、それ初耳なのだけど!?」
潮の発言によって、驚きに満ちた表情で俺に目を動かす。それに俺は平然に、でもちょっと緊張して言った。
翔「ああ、そうだよ。俺は提督としての立場を持ちつつ、艦娘を超越した能力を持つ『戦う提督』さ」
村雨「戦う、提督……?」
ああ、と短い言葉で村雨を質問で済ませる。
それに、俺は腕に光を集めてエルシオンハルバードへと形を留める。
如月「!?それって……エルシオンの槍……?」
翔「ああ。俺はLBXの持つウェポンを使って戦う。あのサイズで十分な兵器レベルの破壊力だ。もし、それが人間の扱うもののサイズになったとしたら……その破壊力は計り知れない」
潮「……確かに、そうですね。何せ、悪用されるレベルですから。
でも……どうして貴方は戦うのですか?」
エルシオンハルバードをその質量を光へとすると四人を見つめる。そして、潮の質問に対して理由を言った。
翔「提督というものは、常に高み見物するものだ。その地位をもって部下をマリオネットで操る……。
俺はそれが気に食わんさ。部下が危険に瀕しているのに俺の立場はただただ見下すことが嫌いなんだよ。というか、そういう存在自体嫌い……。
それに……お前達のような可愛い女の子であるということもさ……男としてのプライドが廃るんだよ。
……だから殺るんだよ、俺は。味方に迫る刃は俺が噛み砕き、敵と見なした物は完璧に破壊する……ということだ」
ハァ……と一息ついた。机に置いてある大淀の淹れたコーヒー(砂糖10個)を一口、湯呑みをゆっくりとコースターに置いた。
翔「何というかな……お前達のように可愛い奴らがバケモノ戦ってる光景なんて想像したくもねえんだ。そんなに細い腕で、傷もない体で、幼い性格で戦わせるなんて、現実は残酷だな……」
あの本当の戦争が記憶に甦る。
まだ生まれて十数年の子供が、毒ガスによって殺されかけた時の悲鳴……あの悲鳴だけは忘れん……。あんな、下らない過ちを繰り返させないためにな……!!!
潮「……提督」
翔「何だ、潮」
潮「それが運命なのですから……提督。それに、私は提督である貴方が戦えることに、とても心強いです」
潮は、俺の目に心の中にある信頼を描いたかのような表情と目で真っ直ぐ見てきた。
如月「そうわね。いざという時は頼りにするわ、提督♪」
村雨「こんなイケメンが私達の力になるなんて……村雨も頼りにするわね♪」
羽黒「わ、私も、是非お力を貸してもらいますね」
後の三人も、潮に続いて発言した。
にしても、頼られるとはな……まあ慣れっこだし誰に頼ろうか。俺は……皆を頼るか。じゃないと、ヤンデレ咲姫の再来になりそうだし……
翔「ああ、戦う提督と自称した俺だ。期待には十分に応えるさ。男に二言はねえよ!!」
提督帽と手袋を脱ぎ、ニカッと笑う。するとその笑みに応えるように、四人も俺に似た笑顔を作った。
大淀「……ふふっ、私達も頼りにさせてもらいますね。提督……」