やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
簡単にハイハイ進むかと思ったのに。
そうはいかないみたいっすね。
ちょっと、サクサクと話を進めていきますね!
てなわけで、どうぞ!
由比ヶ浜が入部して数日が過ぎた。
それまではずっと平和な毎日が続いていたのであった。八幡は今日も部室で笛の音に興じ、雪乃はその音に合わせて舞いを披露し、由比ヶ浜は携帯をポチポチやっていた。奉仕部では由比ヶ浜の一件以来、依頼らしい依頼もなく、穏やかな日常そのものであった。八幡と雪乃は、この平和が恒久に続くことを望んでいた。
そんなある日の事である。
八幡が部室へと赴くと、雪乃と由比ヶ浜が部室の前で立ち往生していたのである。八幡は理由を聞こうと声をかけた。
「おい、どうしたんだ二人とも?部室へ入らないのか?」
「ひっ!」
「わっ!」
「そんなに驚かれると少し傷つくんだけど…。」
「な、なんだ、ヒッキーじゃん。ビックリさせないでよぉ~。」
「そうね、けれどこれで問題は解決したわ。八幡、部室の中に不審人物がいるのよ。なんとかならないかしら?」
不審人物と言われ、まさか自分のドッペルゲンガーか?と、少しドキドキが止まらない八幡であった。残念ながらその願いは儚くも散ってしまうのであった。部室を覗くと、確かに部屋の中でコートをはためかせた巨漢が居るではないか。その人物はこちらの存在に気付くと、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。八幡はそのままドアを閉じ、二人にこう告げたのである。
「本日の部活は終了だ。解散。」
そのまま二人に帰るように促すと、部室内より男のすすり泣きが聞こえてくる。そして翌日、またもや部室前で立ち往生している少女が二人いた。八幡はそのまま二人を茶に誘うと、部室をスルーして帰ってしまうのであった。更に翌日、今度はすんなりと部室に入る事が出来た奉仕部の面々は、平和を謳歌していた。その時、ふいにドアをノックする者あり。部長の雪乃は入室を促すよう返事を返す。
「どうぞ。」
「フハハハハ!我、参上!地獄の底より戻って来たぞ!!八幡よ、我との契約に従い、我が願いを叶えるのだ!」
いきなりの闖入者に驚く奉仕部の面々。驚き、怯え、半泣きになる女子勢。それとは逆に、面倒くさそうに闖入者を見る八幡。先日よりの不審人物とはこの男に相違無く、八幡は華麗にスルーしていたのだが、遂に正攻法で攻めて来たのであった。
「いや、もうお前キモいし。消えろよ、もう。願いを叶える義理も義務も俺には無い。早くそちらの窓からお帰り下さい。」
「ごらむ、ごらむ!これは異な事を申す。我とお主は、前世より主従の関係であるぞ?それにここは願いを叶える部活なのだろう?」
「え…?もしかして貴方も弦之介様の仲間なのかしら?」
「ほむん。仲間だと?我と弦之介様は………ん?弦之介様…………だと?うぅ、グオォォォォ!!」
不審人物が八幡との掛け合いで言い放った言葉に、過敏に反応する雪乃。だが、その時に出した弦之介というワードに反応して、不審人物は頭を抱えて叫びだした。この光景を見て、妙にデジャヴを覚える雪乃であった。
「なんか叫び出したんだけど。今回のはやけに芸が細かいな。」
「え、芸?ヒッキー、あの人は芸をしてるの?」
「芸には見えないのだけれど。どういうことかしら、八幡?」
「あれはな、中二病だ。つまり…」
そこで八幡先生による中二病講座が行われた。ある程度の説明に納得した雪乃と由比ヶ浜であった。だが、雪乃は嫌な予感がしていた。そして、その予感は的中する事となる。
「ぁぁぁぁ!…グッ、全てを思い出したわい。もしや八幡が弦之介様かの?」
「…どうやら予感が的中したようね。」
「え?え?ゆきのーん?どういうことかな?」
「フゥ、つまりはお前も転生者ということだろ?材木座。」
この男、名を材木座義輝という。残念ながら今の今まで語られる事はなかったのだが。材木座は自身の腹をポンポンと叩き、サスサスと擦ると似つかわしく無い笑顔でニカッと笑った。
「左様じゃ。拙者、甲賀卍谷衆の一人、鵜殿丈助(うどのじょうすけ)と申す。以後、お見知りおき下され。」
「お前も無事に転生してたんだな。再び会えて嬉しいぞ、丈助。ここにいる朧殿と陽炎も歓迎してくれるぞ、多分。」
「鵜殿様…あの時は、誠に申し訳ありません。伊賀の頭領としてお詫び申し上げます。」
「丈助…油断して伊賀者に殺されるとは…情けない。」
朧には謝罪され、陽炎には罵倒される丈助であった。ここで一つ語らなければならない事柄がある。丈助のベースとなっている材木座義輝は、人付き合いが苦手で、特に女性に対しては免疫も全くない所謂コミュ症である。しかし、前世の丈助は他者に対して友好的であり、社交性にも優れた面があった。女好きでお調子者なところもあるが、見た目によらず良く気が回り頭も切れ、冷静な分析能力を有する。かなり序盤で死んだ事を除けば優秀な忍である。
「良い良い、朧殿は御気に召さらずとも良い。陽炎殿は相変わらずの毒舌じゃのう。それにしても、御二人共、前世でも別嬪じゃったが、今生でもかなりの別嬪さんじゃ!弦之介様も隅に置けませんなぁ~?」
「ばっ!そんなんじゃねーよ。朧殿…いや、雪乃は俺の婚約者だからな。由比ヶ浜も、今は良き理解者であり、大事な仲間だ。」
「そう、私と八幡は今生でこそ幸せになってみせるわ。鵜殿様、赦してくれてありがとう。けれどセクハラ発言は許さないわよ?」
「や、あたしも後半でやられちゃったしね。たはは、丈助のことそんなに責められないかもだし。けど女の子に節操がないのは相変わらずだね!」
「良かったな、丈助。じゃあそこの窓から気をつけて帰れよ?じゃあな。」
こうして奉仕部にまたもや平和が訪れた。新たな転生者は特に害も無く、その体をスーパーボールのように弾ませると、部室の窓から飛び出して帰っていった。が、10秒後に帰ってきた。
「て、違うわ!我は、お主らに願いがあって参じたのだ。八幡…いや、弦之介様よ。我の願いを聞いてくれる……くれませんか?」
「おい、キャラがブレてっから。同い年だし、無理に敬語で話さなくていいから。あと弦之介様は止めろ。」
「えと、材津…くん?だったかしら?願いと言っていたけれど、ここは叶えるのではなくて、叶えられるようにサポートをする部活なの。それでもいいかしら?」
「もははは!それで構わん。それでは、我が悲願を聞いてくれ!実は…」
材木座義輝は己の依頼内容を語った。要約すると、『自作のラノベを読んで感想が欲しい』との事。まぁそれぐらいならばと依頼を受ける奉仕部の面々であった。後日、散々酷評されてしまい忍術を使って部室内を跳ね回るのだが、それはまた別のお話。
材木座も仲間になりました。多分。
これで甲賀卍谷衆も3人になりましたね!
伊賀は今は朧一人だけですが、
このほうが平和でいいかもですね。
でわ、また次回!