やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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ん~手直ししながら書いてたら
予定外の結果に!

とゆーわけで、どーぞー。





第6話 新生奉仕部

 

 

 

陽炎の乱心を鎮圧した朧。以前の朧であったなら成し得なかった快挙である。だが、雪ノ下雪乃として歩んできた道程には、合気道を習得する事も含まれていた。今回はそれが幸いしたのである。

八幡は対話する為に、陽炎を拘束し、その舞台を奉仕部の部室へと移したのであった。八幡、雪乃、平塚の3名の前に由比ヶ浜を座らせる。

これより語るは、由比ヶ浜が意識を取り戻すまでの間にあった会話である。

 

 

 

「まさか由比ヶ浜も転生者だったとはな。ところで雪乃はいつ気付いたんだ?」

 

 

「あれは確か…由比ヶ浜さんの好きな人の話になった時ね。まさか好きな人が同じ人だとは思わなかったのよ。それで売り言葉にカッとなってつい…その……」

 

 

「つい?その?何を言ったんだ?」

 

 

「………弦之介様の名前を出してしまったのよ。まだ癖で少し出てしまうの…仕方ないでしょう?名前を聞いた後、人が変わったように弦之介様の名前を叫んでいたわ。」

 

 

「もしかして前世で因縁の深い名前に反応したとか?」

 

 

「いや、比企谷。さすがにそれはないだろう。たまたまだよ、気にするな。」

 

 

「そうね。確かに平塚先生の仰るとおり、偶然の線が強いと思うのだけれど。」

 

 

「そう…だよな。考えすぎだな。」

 

 

 

 

転生者の覚醒など現代科学では勿論、過去の文献を紐解いてみても、克明に記された事例などないだろう。この場では幾ら考えたところで答えなど出やしないのだから。

談笑をしながら由比ヶ浜の目覚めを待つ三人。ふと由比ヶ浜の体がピクリと動いた。徐々に覚醒していく由比ヶ浜の意識。彼女の目に映るは、想い人と恋敵と平塚である。急ぎ体を起こして状況を確認するも、拘束されて自由を奪われている事に気付いた。八幡は由比ヶ浜に近付くと静かに語りかけた。

 

 

 

「なぁ、由比ヶ浜。もう里は無いし、伊賀と甲賀で争う時代も終わったんだ。だからもう雪乃を、朧を目の敵にするのは止せ。」

 

 

「弦之介様……陽炎は悔しゅうございまする。想いが叶わないばかりか、伊賀虫を退治する事も禁じられ、今生での恋も諦めろと仰るのですね。」

 

 

「あぁ、酷なようだが俺は争いは嫌いなんでな。出来れば平和に生きていたい。何も過去に縛られる事はないだろ?」

 

 

「それでも!陽炎は忘れられませぬ!こんな伊賀の娘と祝言など!」

 

 

 

 

陽炎は激情のままに言葉を言い放つ。返す言葉に困窮する八幡。静観する雪乃。完全に空気の平塚。しかし、この場に於いて、最も俯瞰的な視点で状況を見ることが出来る者がいた。平塚静その人である。平塚は現状を理解し、第三者視点での解決を考えていた。

 

 

 

(もしかしたら、解決は出来ないが解消なら私にも出来るかもしれんな。)

 

 

 

 

その時、またもや平塚に妙案が閃いた。それは神の叡智の如く平塚の頭に舞い降りたのだ。これぞ天才軍師孔明の如き神域の策略である。またもや平塚は思った。もしかして私は孔明の生まれ変わりなのでは?と。無論、そんなことはなかった。

 

 

 

「由比ヶ浜、ちょっといいかね?君と二人で話したい事がある。」

 

 

「くっ!……わかりました。」

 

 

 

平塚の雰囲気に流されて部室を出る由比ヶ浜。そして全てを見通したかのような平塚の姿がそこにあった。平塚はもう以前の平塚ではなかった。過去に繰り返してきた失敗は、彼女を大きく成長させていた。だからこその孔明。だからこその叡智。そう、確かな手応えを感じていた。

 

 

(うん、いける!)

 

 

平塚の策略の概要を説明する。

由比ヶ浜は想い人と、恋敵が相手では感情的になりまともに話せない。そこで善意の第三者である平塚の出番である。自分は教職の立場であり、何より人生に於いて先達者だ。これ程の適任はいないだろう。だが、この場で話し合うは愚の骨頂である。そこで平塚は『部室』を出るように由比ヶ浜を導いたのだ。あの名軍師、諸葛亮孔明が只の田舎武将の一人であった劉備玄徳を導いたように。

これにて、Q.E.D証明終了。

 

 

あとは出たとこ勝負である。

 

 

 

 

 

「あの、先生?どこまで行くんですか?」

 

 

「何処でもない。強いて言うなら何処でも良かったのだよ。」

 

 

「は?言ってる意味がよくわかんないし。」

 

 

 

平塚は突然立ち止まり、由比ヶ浜を見ながら語りかける。

 

 

「なぁ、由比ヶ浜。君は比企谷が好きか?」

 

 

 

一瞬、ビクッと体を硬直させる由比ヶ浜。しかし今更な内容の質問である。だが平塚は先生である。その先生に自分の恋愛話をするのは羞恥を極めた。

 

 

 

「えぇと、まぁなんと言いますか、好き……です。」

 

 

 

由比ヶ浜は顔を赤くして答えた。

その姿は先ほどまで見せていた般若の面を被ったものではなく、年相応の少女の姿であった。平塚は先達者として語り始める。

 

 

「恋も勉強も将来は…いや、未来はまだまだ不確定な事ばかりだ。君は諦められるのか?その程度の好きだったのかね?」

 

 

「ううん、好き。あたしヒッキーのこと大好き。諦めるなんてイヤっ!」

 

 

「そうか。ならあとは簡単だろう?比企谷を振り向かせるように、正々堂々と努力したまえ。それが恋する乙女の特権だ。あとは由比ヶ浜、未来を決めるのは君次第だ。君は今からどう行動するかね?」

 

 

 

由比ヶ浜としても陽炎としても初めての経験であった。今まで自分の周りにはこのように教え導いてくれる者など皆無であった。『先生』先んじて生きる者。由比ヶ浜や陽炎にはこのアラサーの言葉が何よりも響いたのである。

 

 

「平塚先生、ありがとうございます。あたし、ヒッキーと雪ノ下さんに謝ってきます。そして正々堂々とヒッキーに振り向いてもらいます!」

 

 

 

それが恋する乙女の特権だから!と由比ヶ浜は続けたかったが、恥ずかしくて言えなかった。寧ろ、いい大人であるアラサー女の口から出た事に対して、最大級の賛辞を送りたいとすら思ったのである。この事実は後に、由比ヶ浜が自身のblogで公開する事になる。だがこの時はまだ誰も知る由はなかった。

 

 

 

部室へと駆けてくる足音。その音は静かにリノリウムの廊下を駆け抜ける。常人ではおよそ気づく事はないであろう。忍の者が使う独特な走法である。そして部室を開けて、由比ヶ浜が八幡と雪乃の前に現れた。由比ヶ浜は二人の前で深々と頭を下げると、声を大にして叫んだ。

 

 

 

「ヒッキーごめんなさい!雪ノ下さんもごめんなさい!あたし、どうかしてた……もう取り乱したりしないから。」

 

 

 

由比ヶ浜の下げたままの姿勢では、彼女の顔を確認する事は出来なかった。だが、先程より床を濡らしているその雫が全てを物語っていた。八幡は雪乃に確認をとるように目線を送る。その意図を察している雪乃は頷き、二人は由比ヶ浜と和解したのであった。

 

 

「由比ヶ浜、お前の気持ちには答えられないが…その…なんだ、友達としてなら応えてやりたいと思っている。それじゃ駄目か?」

 

 

「ううん、充分だよ。ヒッキーありがとう。これからは友達としてよろしくね!」

 

 

「その……由比ヶ浜さん?私も譲る事は出来ないのだけれど、友達としてなら別に良いと思うわ。友達としてなら。」

 

 

「なんで2回言ったし!もう、ヒッキーもそうだけど、あたしは雪ノ下さんとも友達になりたいの!ダメかな…?」

 

 

 

捨てられた子犬のように雪乃の返事を待つ由比ヶ浜。その小さな肩は少しばかり震えていた。

 

 

 

「私も貴女とは…その…いいお友達になれると思うわ。こちらこそよろしくね、由比ヶ浜さん。」

 

 

「うん!ありがとう、ゆきのん!」

 

 

 

雪乃に抱きつく由比ヶ浜。それを見て、一件落着と微笑む八幡と平塚。照れながらも少し顔を赤くさせる雪乃。そして雪乃にしか聞こえない声で囁く由比ヶ浜。

 

 

 

 

 

「いつかヒッキーのこと、盗っちゃうからね♪」

 

 

「え?」

 

 

 

 

由比ヶ浜の爆弾発言もあったが、斯くして陽炎騒動は無事終わりを見せた。そして翌日の放課後に時は移る。奉仕部にて今日も依頼者を待ち続ける八幡と雪乃。雪乃は考えていた。先日の由比ヶ浜の宣戦布告についてである。

由比ヶ浜の行動力は先日で体験済み。陽炎であるヤンデレ部分が無ければ、雪乃の眼から見ても可愛い女の子である。八幡との絆は深いものではあるが、油断は大敵であると捉えていた。

 

 

「絶体に…渡さないわよ。」

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

「フフッ、気にしないでちょうだい。一人言だから。」

 

 

 

柔らかく微笑む雪乃を見て、八幡はこの笑顔を守りたいと思った。その時、部室のドアを勢いよく開ける者あり。件の少女、由比ヶ浜結衣である。

 

 

 

「やっはろ~!ヒッキー、ゆきのん!あたしも今日から奉仕部に入ったよ。よろしくね?」

 

 

 

嵐のようにやって来た由比ヶ浜から、入部届と平塚教諭からの簡易な手紙を渡された。内容は至極単純なものであった。

 

 

 

『由比ヶ浜も今日から奉仕部の一員だ。面倒を見てやれ。~諸葛亮孔明より~』

 

 

 

「ハァ、頭が痛くなってきたわ…」

 

 

「奇遇だな。俺もだ雪乃。」

 

 

「たはは、先生らしくて痛いね。」

 

 

こうして奉仕部に三人目の部員が誕生した。そして人知れず、現代の孔明(自称)も誕生していたのはまた別の話。

 

 

 

 




次回はあのキャラが登場します。
あのキャラ?うーん。わかんない。


ヒントは僕の大好きなキャラです。
それでわ、次回に!


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