やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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平塚先生の呼び方もバラバラですが、
これは仕様です。
あと、八幡と弦之介、雪乃と朧、由比ヶ浜と陽炎。
これも呼称がバラバラなのはその時々の
感情によって変わります。


それでわどうぞー。




第5話 料理対決、決着す

 

 

 

ある晴れた放課後の家庭科室にて、愛に生きる二人の勝負が始まろうとしていた。その見届け人として、平塚教諭。検分役として、比企谷八幡が選ばれた。互いに譲れぬものがあり候。料理対決がここに始まったのである。

 

 

「これより料理対決を行う!ルールはバーリトゥード(何でもアリ)だ!比企谷が美味いと感じた料理の勝ちとする!」

 

 

「問題ないわ、望むところよ。」

「無論、願ってもない!」

「あの、これ何なんですか?」

 

 

 

三者三様の想いが交差する中、一人蚊帳の外である八幡だけが、未だに状況を一切説明されていなかった。

 

 

 

「お題は、クッキー!制限時間は30分とする!それでは、ガンダムファイト…レディィィゴォォォウゥゥ!!」

 

 

 

決まった!そのとき平塚はそう思った。人生で言ってみたい台詞ベスト10の一つを言えたのだ。それも絶好の舞台で。これから始まる熱いバトルには欠かせない。

唐突だが話を脱線させてもらおう。これはある例え話である。A子さんとB子さんがいたとする。お互いに面識はないが、二人はジャニー○が好きらしく、コミュニケーションをとろうとした。A子さんは言いました。

 

 

 

「ジャ○ーズなら、誰が好きなの?」

 

 

 

B子さんは答えました。

 

 

 

「マッ○かなー?カッコイイよね~。」

 

 

「え、誰それ?」

 

 

「…………。」

 

 

 

これをジェネレーションギャップと言う。話を戻そう。この時、不用意にGガンネタを放った平塚に誰も反応しなかったという。唯一、八幡を除いて。

 

 

 

「あんた何歳だよ?てか、ネタ古すぎでしょ。いや、俺も好きだけどさ。」

 

 

 

料理を始めないどころか冷めた視線を送る二人に、平塚は涙を流していた。だが比企谷八幡だけは違った。平塚を肯定した。八幡にはそんな気はなかったのかもしれない。だが、八幡の言葉によって、暗雲立ち籠める平塚の心に一筋の光明が射し込んだのである。平塚を救ったのだ。

 

 

 

「そのような事はどうでもよい!早よう、始めようぞ!」

 

 

「同感ね。先生、早く始めましょう。」

 

 

 

コイツら鬼だ。平塚はそう思いながらも、あらためて開始の号令を出す。今度は普通に。最早、彼女に覇気はなくなっていた。

 

 

 

「それでは、開始…。」

 

 

 

陽炎はお得意の携帯から、美味しいクッキーのレシピを掲載するサイトを検索する。対する雪乃はマニュアル通り(教科書)のレシピで作り始める。そして二人のクッキーが出来上がるまでの間に、八幡は平塚教諭に状況説明を受けていた。

 

 

「なるほど。由比ヶ浜は陽炎の転生した姿だったわけだな。そうか、陽炎も……。」

 

 

前世で弦之介であった頃、陽炎からその恋慕の想いを聞かされていた。そしてその想いには応える事はなかった。弦之介には、朧という想い人が既にいるのだから。八幡は甲賀弦之介として思うところはあったが、今生は既に平成の世。最早、昔の因習に縛られる事など馬鹿らしい限りである。八幡は平和が大好きなのである。だから八幡は陽炎に対話を持ちかける。

 

 

 

「なぁ、由比ヶ浜。一つ聞かせてもらってもいいか?」

 

 

「弦之介様………はい。なんなりとお聞き下さいまし。」

 

 

「甲賀の陽炎としてじゃない。普通の高校生だった由比ヶ浜結衣としての、お前の依頼って何だったんだ?」

 

 

 

 

陽炎は押し黙った。前世でも想い人であり、生まれ変わった先でも同じように恋い焦がれた。運命的な出会いをしていたのもあり、きっと何度でも好きになってしまうのだろうと思っていた。前世では結ばれぬ大きな障害があったものの、今生ではその障害は無い。その差は非常に大きい。それには陽炎の忍者としての体質に起因する。

己自身が情欲を抱くと、致死性の高い猛毒が出てしまう身体なのである。その為、家柄としては釣り合うものの、子を成す事が出来ないので弦之介と結ばれる事は無かったのだ。しかし、今は違う。自分の身体はただの女の子なのだ。ならば陽炎としてではなく、由比ヶ浜結衣としての想いを伝えようと決意する。

 

 

「今から話す事は、陽炎としてではありませぬ。由比ヶ浜結衣としての言葉でございまする。」

 

 

 

陽炎は、いや、由比ヶ浜は己が想いをポツリポツリと語り始めた。

 

 

 

「…ヒッキーのことが好きになったの。や、最初はサブレを助けてもらったのが、きっかけなんだけどね。あの時のお礼をずっと言いたかったの。けどあたし勇気が出なくて…それで奉仕部に来たんだよ。それがあたしの依頼だよ。」

 

 

 

八幡は考えていた。由比ヶ浜が言っていた事についてだ。八幡には全く身に覚えがなかったのである。由比ヶ浜のいうサブロー?を助けた記憶は無い。誰かと勘違いしているんじゃないか?それともエリートヤンキーのことか?いや、サヴィルロウを略した言葉かもしれん。まさか、あの時の銀行に由比ヶ浜も居たのか?と、全く見当違いの事を考えていた。下手な考え休むに似たり、八幡は聞いてみる事にした。

 

 

 

「なぁ由比ヶ浜。非常に言いにくいんだが、俺はサブローを助けた記憶は無いんだが。何かの隠語なのか?」

 

 

「サブローじゃないし!サブレだし!あたしん家の犬だし!もぉヒッキー最低ッ!キモいッ!」

 

 

 

由比ヶ浜はシリアスな雰囲気をぶち壊され、顔を赤面させて半分涙目になっていた。八幡は未だに喉に小骨が引っ掛かったように思い出せずにいる。むしろサブレという名前にセンスが無いなとすら考えていた。

 

 

 

「なぁ由比ヶ浜。犬のネーミングセンスはともかく、お前ん家の犬を助けたとか覚えがないんだけど。」

 

 

「助けてくれたし!車に轢かれそうになってたのをヒッキーが助けてくれたじゃん!」

 

 

 

比企谷八幡は思い出した。

高校の入学式の日に確かに犬を助けた。代わりに八幡は轢かれてしまったが、体が勝手に動いたのだ。礼を言われるような事ではないと八幡は思った。

 

 

 

「なぁ、由比ヶ浜。それでも俺が勝手にやった事だ。礼を言われる事じゃない。」

 

 

「たとえそうだとしてもさ、あたしにはそれが嬉しかったの。それからヒッキーを見ているうちにだんだん好きになったんだよ?」

 

 

「おい、好き好き言うなよ。勘違いしちゃうだろ?ビッチめ。」

 

 

「ビッチ言うなし!でね、順番が逆になっちゃたけど……ヒッキー、好きです。あたしと付き合って下さい!」

 

 

 

これは驚愕の事態。八幡は驚いていた。まさか自分の事を好きになってくれる女の子がいるとは思わなかった。ボッチであった彼を好きになってくれたのだ。これほど嬉しい事はそうそう無いだろう。だが、八幡にはもう何者にも代えられない大事な人がいる。意を決してその気持ちに対峙する。

 

 

 

「由比ヶ浜……気持ちは素直に嬉しく思う。だけど、今の俺には好きな人がいるんだ。悪いがお前の気持ちに応える事は出来ない。すまん……」

 

 

「……そっか。やっぱりなんだね……。たはは、あたし何やってんだろ?ゴメンね。けれどお礼くらいはさ、させてほしいんだ。」

 

 

 

話を終えると、由比ヶ浜はクッキーを作り終えていた。雪乃も作業を終えて待っていてくれたみたいだ。空気を読んでくれたのだろう。平塚教諭に至っては空気になっていたが。八幡は雪乃に微笑みを向ける。

その刹那、八幡には一瞬の隙が出来た。由比ヶ浜は陽炎の記憶や体験から、己の忍術も理解していた。ならばその思考も陽炎のようになるのは無理も無いだろう。クッキーに吐息を吹き掛ける。由比ヶ浜の口から出た紫色の息がクッキーを蝕む。

そして丁度クッキングタイマーが勝負の終わりを告げた。

 

 

 

「双方そこまで!それではこれより実食に入る。検分役比企谷が食べ比べた後、結果発表となる。それでは比企谷、前へ。」

 

 

 

テーブルに座る八幡の前に、雪乃と由比ヶ浜が作ったクッキーが並ぶ。こんがり綺麗な狐色のクッキーと、ダークマターのような異色のクッキー。とりあえず綺麗なクッキーを食べる八幡。これは美味しい…心の中で感嘆の声を上げる。そしてもう一つのクッキーへ手をかけるのを戸惑ってしまう。

 

 

(どうしても食べなきゃ駄目なの?)

 

 

考えながら美味しい方のクッキーを食べ終えてしまう。ついに食べなければいけない時が来てしまう。由比ヶ浜からは不適な笑みが浮かび、八幡は顔をひきつらせた。ゆっくりとクッキーに手を伸ばしたその刹那、そこで朧が動いた。

 

 

 

「弦之介様ぁぁぁ!」

 

 

 

雪乃、いや朧の眼が光輝くと、クッキーはパリーンと音をたてる。クッキーは割れてないのだが、何かが割れる音がしたのだ。チッ!と舌打ちをする由比ヶ浜から紫色の靄が溢れ出す。よく見れば顔を上気させ、自身の体を抱き締めるように胸元を強調していた。健康な男子高校生である八幡は思った。ハッキリ言ってエロい!しかしあの紫色の靄はヤバい!と。

 

 

思考が定まらないままの八幡に陽炎が接近する。しかし咄嗟に八幡と陽炎の間に割って入る朧。その眼が光輝くと、またもやパリーンという音がして陽炎を包む紫色の靄が霧散する。そして接近する速度を利用して陽炎を投げ飛ばした。背中を強く打ち、陽炎は気絶した。

 

 

 

「そこまで!勝者、雪ノ下!」

 

 

 

最後に平塚教諭が美味しいところを持っていった。これにて幕引きである。

 

 

 

 




なかなか更新出来なかったのですが、
それはスロットが悪いと思います。
あと仕事も忙しかった!

ちなみに書いている時は朧の、
「弦之介様ぁぁぁ!」を
思い出しながら書いてます。
MAXBETボタンを押した時のカットインです(笑)

氷の女王の凍てつく視線が、破幻の瞳になるのを
書けたから満足!


でわまた次回に。


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