やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

2 / 18
ついに第2話リリース!

言ってみたかっただけ。
今後はキャラもブレブレになってきます。
予定ではですが。





第2話 理解者

 

 

 

「………朧…殿?」

 

 

「あ……弦…之介……様…?」

 

 

 

 

二人はこの現代の日本にて生まれ変わり、今生でもまた巡り合う事が叶うのであった。

 

 

 

「朧殿!儂を、俺を覚えているか?」

 

 

「弦之介様……朧はまた来世で出逢えると信じてました。弦之介様のことは忘れようもございませぬ。」

 

 

「朧殿っ!」

 

「弦之介様ぁ!」

 

 

 

 

二人は抱き締め合った。その両頬に涙を濡らしながら。前世では望まぬ死合いの末に、ついぞ結ばれる事の無かった二人。来世では幸せになろうと誓った。時を超え、現世でようやっと結ばれたのだ。そんな二人を祝福するかのように、奉仕部のドアは開かれた。

 

 

 

「入るぞ。仲良くやっているかね?えっ!ひ、比企谷に雪ノ下!お、お前達、何をしている!?」

 

 

 

二人は終始抱き締め合っていたという。婚期を焦る独り身の独神には、酷な光景である。

 

 

 

「平塚殿、真にかたじけない。儂の探し求めていた人と、ようやく逢えたのじゃ。この引き合わせ、言葉では言い表せぬ。」

 

 

「平塚様、ほんに朧はうれしゅうございます。現世にて、ようやっと廻り逢えたのでございまする。お慕い申しております、弦之介様…」

 

 

「な、な、何を言ってるんだ君達は?私にはさっぱり理解出来ないぞ!納得のいく説明をしてもらおうか! 」

 

 

「落ち着かれよ、平塚殿。此度の一件、儂が説明しよう。」

 

 

「教師をからかっているのか?その喋り方を止めたまえ!比企谷、これは最後通告だ!」

 

 

「儂は無用な争いは好まぬ。じゃが、儂に敵意を剥くのは止めよ。」

 

 

「警告を破ったな?喰らえ!衝撃のぉぉ、ファァストブリットォォォォォ!!」

 

 

 

 

生徒指導の平塚は後にこの事をこう語った。「私の通告を無視した。だから自慢の拳を見舞ってやった。」と。

だが、その拳は彼の者に届くことは叶わなかった。敵意を向けられた八幡(弦之介)は、眼を見開く。その眼は金色に光を放ち、平塚の拳は自身に牙を剥いた!

 

 

「見よ!平塚殿ッ!」

 

 

 

「う、うわぁぁぁ!!馬鹿な?こ、拳が勝手に!?」

 

 

 

平塚も教職のその身の前に、女性である。その端正な顔に拳を叩き込むのは些か憚れるものがあるだろう。いくら加減しているとはいえ、八幡(弦之介)の瞳術は敵意を向けてきた相手を自滅させる忍術である。平塚が覚悟を決めたその刹那!

 

 

 

「弦之介様ぁ!!」

 

 

 

雪ノ下(朧)の瞳が蒼く光輝き、硝子の割れるような音と共に、八幡(弦之介)の術は解けてしまう。拳が止まった平塚は、しなだれる様にその場に崩れ落ちた。暫し放心状態の平塚に雪ノ下(朧)が話し掛ける。

 

 

 

「平塚様、これが私と弦之介様の忍術にてございます。弦之介様の瞳術を、私の破幻の瞳が打ち破ったのでございます。」

 

 

「うむ、かたじけない。朧殿。少々熱くなり過ぎたやもしれぬ。」

 

 

 

 

それから二人は、平塚にお互いの過去を語る。平塚は思いもよらぬ壮絶な出来事に、自らの双瞼が熱くなるのを抑えることが出来なかったという。きっと今生で結ばれた二人に、未だ婚期を追い続ける自身を重ねたのか、今後は応援すると気概を見せたのであった。

 

 

「お前達、必ずや幸せになりたまえよ。その悲願の為なら、私も協力しようではないか。」

 

 

「平塚殿………かたじけない。」

 

 

「平塚様、ありがとうございます。」

 

 

「だが、いくら現実で前世からの転生だと言っても、電波くんとしか見られないからな。まずは喋り方を戻したまえ。比企谷、雪ノ下、どちらも今生の記憶もあるのだろう?」

 

 

 

 

それからは今後の身の振り方や、二人の現状等を三人で話し合った。そして平塚は願い、八幡は誓い、雪乃は祈った。二人が幸せに生きていく為に。

そして時は過ぎ、完全下校時間となった。

 

 

「もうこんな時間か。今日は色々とありすぎて、時間が経つのがアッという間に感じるよ。もう遅いから、二人とも気を付けて帰りたまえ。それじゃまた明日な。」

 

 

「はい。平塚先生、さようなら。」

 

「うす。先生もお気をつけて。」

 

 

 

そして二人は部室を閉めて帰り道についた。前世では破幻の瞳を持つ忍、才能は露程も無かったが、伊賀鍔隠れ衆を率いる頭領の孫といえども、夜道は危険であり、また世間一般の美的感覚からすれば、その容姿は端麗、見目麗しいとは彼女を指す言葉であろう。八幡は彼女をマンションまで送る事にした。

 

 

「そういえば、お前ん家ってどーなってんだ?」

 

 

「そうね、少し特殊かもしれないわ。うち、お金持ちだから。」

 

 

「マジか。庶民に対して排他的とかないの?」

 

 

 

 

また両家が憎しみ合うような事態は避けたいと八幡は強く思う。伊賀と甲賀。現代の世では当時程の隆盛は無いだろう。しかし世の中から憎しみが無くなった訳ではない。

 

 

 

「そこまででは無いと思うのだけれど。あの時みたいに両家が憎しみに囚われてるような事はないわよ。」

 

 

「そっか。そんじゃあの時みたいにはならないか。一安心だな。」

 

 

「フフっ、なんだか夢みたいね。お互いに口調も容姿も違うのに、貴方が弦之介様だと魂で確信しているわ。」

 

 

「雪乃……俺達は、元は一つの魂だったんだろ?だからいくら離れてても、また互いに惹かれ合う。」

 

 

「っ!弦之介様…私の言ったこと、覚えていてくれたのですね……嬉しい……。」

 

 

「朧殿……儂もじゃ。」

 

 

ところどころ口調が古めかしくもあり、若者らしくもあるが、そこに眼を瞑れば仲睦まじい高校生の下校風景であった。八幡は今日のこの日まで生きてきて良かったと心底思った。

 

 

 

「儂は現代で言う、リア充(果報者)じゃ。」

 

 

 

八幡は自宅に帰ってからそう呟いた。

 

この時、八幡は齢十五にして同棲を求められていた。この事象には経緯がある。雪乃はマンションでの一人暮らし。そして今日までは雪ノ下雪乃として生きてきた。だが弦之介との現世での邂逅を経て、伊賀の朧としての記憶に目覚めてしまった。そうなればもう想いは止まらない。雪ノ下雪乃として寂しいと思う事はあった。しかし、それは朧としての寂しさではない。今は比企谷八幡だが、甲賀弦之介を知ってしまっているのだ。そんな彼女の心の間隙を誰が埋める事が出来るだろうか?

否っ!甲賀弦之介、その人を置いて他にはいないであろう。だが、彼にも比企谷八幡としての人生があり、家族もいる。最愛の妹を置いてはいけない。いつかは御互いに巣立つ時が来るだろうが、今はまだその時ではない。と、比企谷八幡は考えた。雪乃の家族に面通しも出来てなけらば尚更である。

 

 

 

「おにーちゃん、お帰り!…え?おにーちゃん……だよね?なんか雰囲気変わった??」

 

 

「んなことねーよ。ただ婚約者が見つかっただけだ。もう飯は出来てるのか?」

 

 

「なーんだ、婚約者が見つかっただけか~。うん、ご飯はもう出来てるよ!おにーちゃんと一緒に食べたくて待ってたんだよ。あ、今の小町的にポイント高い♪」

 

 

「最後のがなければ良かったんだがな。じゃあ、早速食べるか。」

 

 

「うん、今日のは自信作なんだよ!て、えぇ~っ!!こここ、婚約者が見つかったってどーいうこと!?おにーちゃん、犯罪とかじゃない……よね?」

 

 

「驚くの遅すぎだろ。あと、何気に兄を信じてないよね?泣くよ?泣いちゃうよ?」

 

 

 

こうして比企谷家の夜は更けていった。晩御飯後の小町からの質問攻めに辟易としたのはテンプレである。

 

 

 

 

 




平塚先生は理解者となり、協力者となりました。
小町も理解者となるか?
次回、お楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。