やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
お待たせしますた。
もう忘れちゃった方もいるかもっすけど、
また再開します!
他の作品も同時に書いてくとダメっすね!
てなワケでドーゾ!
川崎姉弟と小町に異変が起きた。
「げ、弦之介…様?」
「朧…様…?」
「さ、左衛門……?如月…左衛門!?」
八幡達はこの現象には見覚えがある。
これは……転生者の覚醒だ。
『転生者対応マニュアル』
皆さんはその存在を御存知だろうか?総武校に次々と現れる転生者に対して作られた、静ちゃん特製のマニュアルである。
甲賀と伊賀の争忍の話を聞いた平塚は「まだまだ出てくるんじゃね?」と思い、自身だけでは対処しきるのは難しいと考えた。そこで奉仕部の出番である。穏健派の筆頭である八幡らは平塚の管轄であり、謂わば私兵みたいなものである。
※注(平塚の横暴な妄想です)
結論から言うと、奉仕部の転生者と甲賀衆はこのマニュアルの熟読が義務付けられており、つまり対応が可能ということである。
電光石火の早さで対応マニュアルの通りに動き始める三人。そして三人に指示を出す八幡。このマニュアルによると初動が肝心らしい。
「由比ヶ浜!拘束だ!雪乃は忍法の警戒!戸塚は周囲への対応だ!急げ!」
「「「了解!」」」
由比ヶ浜の当て身により、川崎兄妹は意識を失う。由比ヶ浜は普段こそアホの子がベースになっているが、そこは枯れても忍である。
由比ヶ浜は前世とあまり体格に差異は無い。あえて挙げるとするならば、やはりその胸の大きさだろう。それでも前世では大きい部類にカテゴライズされる。諸君は何故胸の大きさの話になったのか疑問に思うことだろう。それでは、この感覚のズレについて説明したい。
仮想空間、所謂VRによる感覚に似ているだろうか?現実世界での体格と、仮想空間での体格に差異が生じるとする。長期間違う体格で過ごした場合、現実世界と仮想空間での体格とのギャップが重大な障害となってくるのである。
実例として挙げると、ゲーセンの格闘ゲームをプレステで購入する。プレステのコントローラーでは無敗の男も、ゲーセンデビューするとボロクソにやられてしまうのに似ている。
そう…操作方法が違うのだ。
身体にも同じ事が言えるのである。
それでも以前のような体捌きを魅せる由比ヶ浜は驚嘆に値するのである。
「あれ?ヒッキー、小町ちゃんがいないよ??」
「後ろだ!由比ヶ浜!」
由比ヶ浜が振り返ると、ヨロヨロと小町は出口に向かって走り出していた。いや、出口にではない。正確には戸塚に向かっていたのだ。
小町の接近に気付く戸塚。
「小町ちゃん!?一旦、落ち着いて!席に戻ろう?」
小町は戸塚の前にてピタリと止まる。
場は少しの静寂に包まれる。
由比ヶ浜も八幡もつい止まってしまった。そして小町の口から驚愕の台詞が零れ落ちる。
「如月…左衛門か?」
「こ、小町ちゃん?何を言って…」
「先程、左衛門と呼ばれてましたね?貴方は…如月左衛門様では?」
戸塚は考えた。これは伊賀か?甲賀か?それとも別の何かだろうか?
ここで戸塚の考えについて話しておきたい。現在、転生者は全て伊賀と甲賀の忍で構成されている。だが、あくまでそれはたまたま続いただけだと考えている。他にも転生する者はいるのではないだろうか?それはごく自然な考えである。もしかしたら聖徳太子かもしれない。もしかしたら名も無き町民かもしれない。もしかしたら人間ですら無いのかもしれない。
ではこの目の前の小町はいったい誰なのか?自身の名前を出している事から関係者であると思われる。同姓同名である確率は限りなく低い。一つ心当たりがあるとするならば、彼女の名前が…左衛門にとって最愛の妹の名前が思い浮かんだ。
『お胡夷』
もしかしたら……そんな思いで戸塚は答えてしまう。
「如何にも。儂が如月左衛門じゃ。もしや、其方はお胡夷か…?」
「……で…った……んめ……」
「む?何と申した?」
「ここで会ったが百年目と申した!如月ぃ左衛門っ!!」
小町は両の手で印を組む。
前世では得意とした忍術だ。
数多の蝶が飛び交い、相手を惑わせる幻術の一種である。
「胡蝶の舞!」
某ファーストフード店内に無数の蝶が舞う。これは彼女の忍術の特性に由るものである。この地上にいるありとあらゆる爬虫類や昆虫を自在に操ることが出来るのである。
そして戸塚はこの忍術に覚えがあった。前世での戦いで一度体験したあの術にそっくりではないか。ならば対処は容易である。
「遅いっ!」
戸塚は目にも止まらぬ早さで小町に当て身を打つ。だらりと力が抜けて、小町は気を失ってしまう。今回の彼女の敗因は、転生してからの前世との身体能力の差である。戸塚や八幡等は転生してから己の体を甲賀流鍛練法で鍛えていた。どちらも転生したてであれば、この勝負はどう転んだか解らなかっただろう。だが、今回はその差によって僅かに戸塚に軍配が上がったのである。
「八幡!こちらは確保したよ!小町ちゃんは無事だからね!」
某ファーストフード店内を埋め尽くしていた蝶は露と消え去り、視界が晴れると八幡らは戸塚と小町の姿を確認した。しかし結構な騒ぎになってしまったので、店員への弁明を雪乃に任せて八幡達は近くの公園へと場所を移していた。
余談であるが、雪乃は店員に弁明する際にこう語っていた。
「…特殊なホログラムを使った映画のリハです。主演は私と眼の腐った彼です。映画内容は彼と私の純愛ラブコメディーで、家柄の違いから起こる様々な障害を乗り越えていくストーリーです。先程のシーンは、お互いの家からそれぞれ送られてくる刺客との対決シーンになります。そして数々の苦難を乗り越えて最終的に二人は幸せな家庭を築いていき、将来的には子供は八人にする予定です。八幡だけに。そして庭付きの大きな白い一軒家を買って……」
店員はもうお腹いっぱいとばかりに雪乃を早々に解放していた。
そして場面は変わり、公園にて集まる八幡一行と新たな転生者達。
一応、念のために川崎姉弟と小町は拘束されている。余談だが忍の者でも簡単には外せない拘束具である。八幡一行は三人が覚醒するのを待ってる間に、各々情報を刷り合わせる事にした。
「それでは今回の転生者について、各々の意見を聞かせてほしい。何か情報があるのなら共有してくれ」
八幡がそう告げると、戸塚と由比ヶ浜は各々の推測や意見を述べていく。二人の話を聞くに、川崎姉弟の正体は判らないが、恐らく甲賀と伊賀の者であろうということ。そして八幡の最愛の妹である小町だが、彼女だけはハッキリと正体が判明したのであった。
その正体を知る戸塚は、彼女の転生前である人物と深い因縁を抱えていたのである。それは命のやり取りをしていたあの時代では珍しいものでも無かった。だが、当人達にとっては捨て置けぬ問題であったのだ。
皆が見守る中、戸塚は八幡の顔を見ては苦しげな表情を浮かべるのであった。
そして意を決したのか戸塚の重い口がようやっと開いた。
「小町ちゃんは…………蛍火だ……!」
次回はいつになるか未定!
けれどこの前8,000枚出したから更新。
しっかり書く予定ですが、エタり出したら
お叱り下さい!