やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
このままトントンと更新したいなー。
勉強会を始めて小一時間が経過した。
既に飽きが出始めていた由比ヶ浜は、ドリンクを取りに行く際に先程の二人の姿を見かけた。
由比ヶ浜は暇潰しがてらに二人の席へと近づいていく。この時の由比ヶ浜の行動次第では未来は変わっていたのかもしれない。
「やっはろー!小町ちゃんだよね?良かったらあたしらの席に遊びに来ない?」
「えぇと、由比ヶ浜さんですよね?行きたいのはやまやまなのですが、勉強会は終わったんですか?」
「ちょっとぐらいの息抜きならいいかなーって。ほら、効率とゆーか合理的と言いますか……とにかく休憩も大事だなーって。それとも迷惑だったかな?」
由比ヶ浜の明るい雰囲気が、あまり面識の無い二人の警戒心や緊張といったものを薄れさせる。こういう場に於いてコミュニケーション能力の高さを遺憾なく発揮出来るのは、由比ヶ浜結衣の人柄の良さの表れである。
「それじゃあ少しだけお邪魔しちゃいます。大志くんもいいよね?」
「ウス。比企谷さんがいいのなら構わないッスよ。それに二人だとあまり話も進まないッスから。同級生のお兄さん達なら何か知ってるかもしれないッスし。」
「じゃあ決まりだね。何の話かわかんないけど、あたし達なら協力するよ。おねーさんにドンッと任せてね!タイタニックに乗った気でいてね!」
由比ヶ浜に連れられ、八幡達の席に二人は再び戻って来た。途中、由比ヶ浜の発言に対して「タイタニックって沈みますよね?」と疑問に思った二人であった。
二人が合流するので、勉強会は休憩に入らざるをえなくなった。仕方が無いので暫く手を休める事になり、談話する運びとなる。そして、少年の悩み事を聞く流れとなっていた。
「ウス。自分は川崎大志っていいます。うちの姉ちゃんが皆さんと同級生だと思うんスけど、姉ちゃんのこと知ってますか?」
「お前ら知ってるか?悪いが、俺は同級生の名前はあまり知らんからな。」
「クラスの女の子に川崎さんっているから、多分その子じゃないかな?僕も話したことないからあまりわからないや。」
「彩ちゃんも?あたしも川崎さんとはあまり喋らないんだよね。ヒッキーはクラスメイトの名前は全く知らないもんね。」
バツが悪くなった八幡は笛を吹き始める。店内に笛の音が響き渡り、周囲の目が此方に向き始めた。
慌てて周りが止めに入ったので、店側から注意も受けずに済んだのは奇跡と言っていいだろう。
「全くおにーちゃんは、どこでもおにーちゃんだね…。」
「さすがに驚いたッス。」
「あはは…僕もフォロー出来ないかな?」
「もぉ!なんで笛を吹くし!」
「いい音色だったわ、八幡。」
反応はそれぞれであった。
雪乃だけはいつまでも八幡の味方である。
話を戻すと、大志から事情を聞き出す。真面目な姉がここ最近になって朝帰りが多くなった。家に不審な電話がかかってくる。姉の現状を理解してあげたい。そして元の姉に戻ってほしい。という内容であった。
「あの川崎さんが……ねぇヒッキー。この依頼受けてあげようよ。」
「う~ん……まぁ同じ学校の事だしな、雪乃はどう思う?」
「奉仕部としては活動の範囲内だと思うわ。受けてもいいんじゃないかしら。」
「本当ッスか?皆さんありがとうございまス!」
こうして川崎沙希に対しての依頼は始まった。まずは諜報活動という事で、戸塚が川崎を調べに出ていった。
「1日だけ待ってね。だいたいの目星はつけてあるからさ。何かわかったら八幡に連絡するよ。」
続いて雪乃と由比ヶ浜から策が出てきた。八幡も含めると3重の策だ。これには川崎もひとたまりもないだろう。平塚先生のキャラを借りるなら、これではまるで現代の孔明ではないだろうか?
その日は解散となり、決行は次の日となった。
翌日の放課後。総武校の校門前に一同は集まる。ちなみに戸塚はまだ戻っていない。なので、まずは雪乃の策から披露する事となる。
「アニマルセラピーって知ってる?これで川崎さんも荒んだ心が癒されて、口も軽くなるんじゃないかしら?八幡、頼んでおいた猫をこの箱にお願い。」
比企谷家の飼い猫で、名はカマクラと言う。そのカマクラをダンボール箱にちょこんと置くと一同は身を隠した。
その直後、大志から告げられる一言。
「あの……言いにくいんスけど、うちの姉ちゃん猫アレルギーなんスよ。」
第一の策が失敗した。失意の内にカマクラを家に戻すため帰る小町。だが、彼等にはまだ次策がある。
「川崎さんも女の子だからね!きっと恋愛とか憧れてるはず!ドキドキ乙女大作戦だよ!それじゃあ仕掛人の登場です。隼人く~ん!」
「やぁ。結衣から話は聞いたよ。今回は僕も協力させてもらうよ。」
説明しよう。仕掛人の葉山がイケメンスマイルで川崎を口説く。胸きゅんした川崎が葉山に相談するといった作戦である。
早速一同は場所を移して、川崎の元へ向かう。帰ろうとする川崎を下駄箱で発見。作戦を実行に移したら。
「やぁ。今から帰りかい?良かったらこのあと俺とトゥギャザーしない?」
「あ、そういうのいいんで。それとルー語キモいんだけど。もう話しかけないで。」
あえなく撃沈。わざわざ由比ヶ浜が父親から聞いてきたとっておきの台詞だったらしい。ジェネレーションギャップがここに来て仇となる。ちなみに葉山は失意の内に帰っていった。
こうなっては八幡の策しかない。八幡は待機してもらっていた平塚にメールを送った。近くに待機していた平塚が帰ろうとする川崎を呼び止めた。
「川崎…ちょっといいか?君は最近帰りが遅いらしいな。何かあったのか?」
「……それ、誰から聞いたんですか?先生には関係ないでしょ?」
「関係無くはないだろう?私はこの学校の教師で、そして君は生徒だ。御家族も心配なさってるんじゃないのか?」
平塚は確かな手応えを感じた。教師人生はまだ短いが、ここ最近の異常事態に比べたらまだ可愛い案件だろう。転生者が出てくる教師イベントは普通は無い。
生徒の悩みを解決する……そんな教師に憧れていた。これを語るには平塚の少女時代に遡るのだが、今回は省略しよう。
そして川崎は平塚に語りかける。
「先生……親になったことないのに気持ちわかるんですか?あたしの事より、まずは自分の心配したほうがいいんじゃない?」
「グハッ!!」
最後の砦が陥落した瞬間であった。
平塚は泣きながら帰宅したという。あとで奉仕部の面々がフォローしたのは言うまでもない。
八方手詰まりとなった八幡達であったが、そこで戸塚からメールが入った。
『情報を掴んだよ。19時に駅前で待ち合わせしよう。※要正装で』
八幡は戸塚からの内容を雪乃と由比ヶ浜に伝えて、各々一度自宅に戻る事になった。
駅前に到着した雪乃と由比ヶ浜は、八幡を探したが…すぐに見つかった。そこには羽織袴を着た八幡がそこに居た。
雪乃と由比ヶ浜はカクテルドレスに身を包み、三人並ぶと成人式の帰りみたいに見えるのは気のせいだと思いたい。
戸塚は別行動らしく、この場には現れない。
「これからホテルニューオータニに向かうぞ。」
戸塚からの情報によると、ホテルニューオータニのラウンジ『エンジェル・ラダー』に川崎はいるらしい。全ての情報が揃い、奉仕部一行は目的地に向かうのであった。
次回川崎編をお楽しみに~。
あまりバジリスク要素が無いのは
気にしたらダメですよ。