やはり俺が甲賀弦之介なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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無事に長かったチェーンメール事件は
これにて、終了。


どーぞ!




第14話 二人の転生者と事件の解決

 

 

 

大岡と大和が叫ぶ中、八幡と葉山はお互いに目配せをする。

教室内で事が公になるのは望ましくない。大岡と大和に素早く詰め寄り、八幡は大和の背後から手刀を一閃。葉山は大岡の鳩尾へ拳を一発入れて気絶させた。

 

 

 

「とりあえず二人を運ぶぞ。」

 

 

「比企谷、どこに行く気だ?」

 

 

「保健室だ。葉山、お前にも手伝ってもらうぞ。」

 

 

 

大岡と大和を連れて教室を後にする二人であった。だが、残された教室内では未だに騒然としていた。

トップカーストのグループが突然騒ぎ出したかと思えば、グループのトップと、クラスでも有名な笛吹き男の二人が、騒ぎの元を一蹴して静めたのだ。これを無かった事にしろとクラスメイト達に言うのも土台無理な話と思われる。

 

 

だが、ここは情報操作も十八番の忍が三人もいたのである。

 

 

 

「えーと、戸部っち、迫真の演技だったよ!すごいねー?」

 

 

「え?何の話なん、それ?イテッ!」

 

 

「戸部くんはすごいなぁ。僕、感動しちゃったよ。ね、由比ヶ浜さん?」

 

 

 

大根役者ばりの棒読みの由比ヶ浜に、アドリブも状況把握も弱い戸部。そんな二人に、すかさず助け船を出す戸塚であった。

戸塚の援護によりクラス内の空気も緩和し、日常を取り戻す事に成功する。ただし、一部の関係者には不信の種を残すのであった。

 

 

 

「ちょっと待つし!今の絶対におかしいじゃん!結衣、なんかあーしに隠してない?」

 

 

「えーと、止むに止まれぬ事情があると言いますか…。」

 

 

「まぁまぁ、三浦さん。話をするなら放課後でもいいんじゃないかな?もう授業が始まっちゃうよ?」

 

 

 

由比ヶ浜を責め立てる三浦に対して、戸塚はすかさず横槍を入れて話を流す。放課後までに何かしらの偽情報を、葉山を通じて流しておくだけで解決すると踏んだのだ。事実、その通りとなる。まさしく先見の明があったと言えよう。

そして同時刻。

保健室で八幡は、大岡と大和を目覚めさせた。葉山には念の為、ある人物を呼びに行ってもらった。

 

 

「大岡と大和。同じクラスの比企谷だ、わかるか?」

 

 

「うむ。確かに主は比企谷じゃのう。」

 

「儂らを此処に連れて来たのはお前さんだが、一撃をくれたのもお前さんじゃ。」

 

 

「単刀直入に言う。お前らは転生者だろ?名前を聞かせてくれねえか?」

 

 

 

大岡と大和がニヤリと笑うと、二人は名乗りをあげる。八幡が一般人と思い、簡単に名乗った。油断していたのも原因の一つだろう。

 

 

「大岡とは最早、仮の姿。儂の名は小豆蠟斎。伊賀鍔隠れ十人衆の一人じゃ」

 

 

「ほぅ。お主は蠟斎であったか?儂の名は、蓑念鬼と申す。伊賀鍔隠れ十人衆の一人じゃ。今は大和と言う名前じゃのう。」

 

 

「そうか…実はこの学校には他にも転生者がいるんだ。甲賀と伊賀の転生者だ。そして今はどちらの忍も仲良くやっている。もう里のしがらみも無いから、二人も過去の因縁に縛られないで平和に過ごしてほしい。」

 

 

 

念鬼と蠟斎は顔を見合わせると、何やら不穏な空気を漂わせる。八幡を囲むように位置取ると、八幡に語りかける。

 

 

 

「のう、比企谷とやら。其の方の申す他の転生者とやらには、伊賀は何人いるのかのう?」

 

 

「お前らを含めて5人だ。小四郎に天膳、それに朧殿もいる。」

 

 

「ほほぅ。それはそれは…ところで甲賀の忍は何人いるのかのう?」

 

 

「……四人だ。今は甲賀も伊賀も無く、みんな高校生として平成の日本を生きると決めた。お前らにもそうしてもらいたい。転生者と知られること無く、静かに暮らしてもらいたい。その為の協力者もいる。」

 

 

 

八幡も不穏な空気を感じとり、二人に対して警戒を厳にする。念鬼は何やら考える仕草をとり、蠟斎は最後の質問とばかりに八幡に語りかけてきた。

 

 

 

「そういえば、一つ聞き忘れておったわい。お主も転生者なのかのう?」

 

 

「……そうだ。」

 

 

「儂らも仲良くやりたいからのう。良ければ聞かせてくれんか?お主は誰の転生じゃ?」

 

 

「甲賀…弦之介だ。」

 

 

 

八幡が名乗ると、蠟斎は嬉々とした表情を浮かべ、念鬼は苦虫を潰したような顔を見せる。そして念鬼の様子に気付いた蠟斎は、念鬼に喝を入れる。

 

 

 

「念鬼!しっかりせい!敵の総大将の首級ぞ、今こそ好機じゃ!」

 

 

「お、応!我が髭の肥やしにしてくれるわい!」

 

 

「待て、お前ら!話せばわかる!」

 

 

 

蠟斎は自身の手をゴムの様に伸ばし八幡を狙う。念鬼も続いて髪を伸ばして八幡を絡めんと襲うが、嫌な予感が拭えない。その予感はすぐに的中する事となる。

八幡は二人の攻撃を避けて、己の視界に入るように誘導し、瞳術を仕掛けた。

 

 

 

「見よ、念鬼!蠟斎!」

 

 

 

「それなぁぁぁぁぁ!!」

 

「だなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

蠟斎は自身の手足が体に巻き付き締め上げられ、念鬼は自身の髪が体に巻き付き締め上げられた。

闘いの最中ではあったが、八幡は全く関係無い事を考えていた。野郎が自分自身を縛るプレイとか、誰得だよと。

同時刻、別の場所にて鼻血を噴出する女子がいたが、それはまた別の話。

 

 

念鬼は既視感に襲われていたが、時既に遅し。蠟斎も己の末路を悟ってか、早すぎる死に後悔の念を抱く。

二人が死を覚悟したその時、何者かがドアを開けて入ってきた。

 

 

 

「そこまでよ!」

 

 

 

パリーンッという音と共に、二人を拘束していた髪や手足は解け、体に自由が戻る。一度は死を覚悟したものの、生きている事実に二人は喜びを感じずにはいられなかった。

 

二人を救った者を一目見やると、そこには校内で有名人である雪ノ下雪乃が立っていた。そしてこの少女こそが朧であると確信した。弦之介の瞳術すらも破った、その破幻の瞳が何よりの証左となったのである。

 

 

 

「まさか、朧様では?小豆蠟斎で御座りまする。」

 

「その眼が何よりの証よ。朧様!蓑念鬼です。御健勝で何より。」

 

 

「二人とも転生してたのね…場所を変えましょう。二人にも話しておきたい事があるわ。」

 

 

 

八幡、雪乃、葉山、大岡、大和の五人は、保健室から奉仕部の部室へと移動する。保健室は人の出入りが少ないとはいえ、誰も来ない訳では無い。

八幡は移動中に、新しい転生者が現れた事と、今から話し合いをする旨を平塚にメールで報告する。

度重なる転生者が現れて、今度は二人同時という事もあり平塚は胃をキリキリさせるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

奉仕部に入り、長机を囲むように座る。皆が座ったのを確認して雪乃が語り始める。

まずは八幡との出逢いから始まり、自身が朧として覚醒してから今日までの出来事を語った。

転生者の協力者として平塚先生がいて、そして定められた掟を遵守する事を伝えた。

この時代に生きる者として過去の因縁は必要無いのだ。

 

 

 

「大体の事情は理解してくれたかしら?」

 

 

「雪ノ下さんがそう言うのならそれに従うべきだと俺は思う。大岡と大和はどうかな?」

 

 

 

雪乃が語り、葉山が賛同の意を表すと大岡と大和はそれに従う。

 

 

 

「それな。」

 

「だな。」

 

 

 

この場を借りて雪乃は、チェーンメールについての話と、三人仲良くする旨を伝えた。

 

 

 

「仲良くするのは賛成だが、俺はチェーンメールを送ってない。大岡じゃないのか?」

 

「いいや、俺も送ってないよ。今更、嘘をついてもしょうがないだろ。戸部じゃねえの?」

 

 

 

あとで教室に戻ってから戸部に話を聞くと、自分の武勇伝を皆に知って貰いたかったそうだ。大岡と大和の事もカッコよく書いてやろうと思ったら、あのような文面のメールになってしまったらしい。

悪意の無い悪意が巻き起こした悲しい事件であったと、後の奉仕部活動記録には記されている。

 

 

 

 

 

 

チェーンメール事件は解決した。

これにて、一件落着である。

 

 

 

 




新しい仲間も増え、依頼も解決。
そんな奉仕部に新たな事件が起こる。

次回もお楽しみに~。



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