とある不動のGMC   作:はち   .

9 / 25
GMCは手を抜かない

「え~っと、戦車が増えた事で人も増えました。

 次は、戦車30両どうしでの戦闘になります。相手は黒森峰の10連覇を破った強豪プラウダ高校です。巧みな戦術と高性能な戦車を使い、我々を翻弄してくるでしょう。多分、普通にやれば、我々は確実にm痛い!?!」

 

 司会をしているローデリアが議事堂に集めた臨時戦車部員達に士気の下がる様な事を言うので、脇に積んであった『戦車による基本戦術』という本を投げ付けてやる。

 

「な、何するんですか部長!?」

「黙れ。お前は何処のスパイだバカチン。

 え~、この大馬鹿者の言う事は無視しなさい。我等ユークレイン校に敗北の文字はない。何故なら、我が方の戦車は全て重戦車しかないからだ。T34の砲弾なんぞ、豆鉄砲に等しい。直撃しようが何しようが、せいぜい装甲を凹ませる程度の威力にしかならん。

 だが、スターリンシリーズやKV2には非常に注意を払わねばなるまい。特に、スターリンシリーズは別名“アニマルキラー”と呼ばれるため、見付けた場合には即座に排除せねばなるまい。そうしないと、幾ら重装甲を誇る我等がユークレイン社製重戦車も装甲を叩き割られてしまう。勿論、そんな事が起きんように、諸君等には常に冷静で居て貰いたい。

 私はこの部の部長だ。そして、ユークレイン校戦車部の隊長。諸君等は私の命令を聞き、それを忠実に遂行すれば良い。右を向けと言ったら右を向けば良いし、左を向けと言われたら左を向けばいい。馬鹿でも出来るし、アホでも分かる。

 だが、諸君等はバカでも阿呆のどちらでも。砲手は何時、如何なる状況でも的確且つ精確な射撃をし、操縦手は車体の特性を掴み、路面状況を見極め、最適且つ最速の道を選ばねばならない。装填手は車長の命令に合わせ素早く弾種を選び、装填しつつ、車長の補佐をしなければならない。

 そして、我が校の無線手には各種観測係としての任がある。その為、弾道学等を学んでもらいます。我が戦車部のモットーはただ一つ“遠距離から一方的に”です。最低でも5km圏内には入られないように間接砲撃によって敵の戦車を排除します。

 ですが、理想と現実は違います!聖グロリアーナ、サンダース付属は上手く行ったがプラウダではどうかわからない!!何故なら、戦場はアウェーで、更には天気予報を見る限り、その日は雪が降るらしいです。積雪は我等重戦車には非常に厄介な敵でしかない!

 諸君等に求めるのはただ一つ!何時、如何なる時でも冷静たれ!そして、命令に対して疑問を持つな!ただそれだけである!!戦車道は部隊全員でやるものであり、一人一人に仕事と責任と義務がある!だから、君達はそれを確実に素早く、そして、完璧に遂行する事を私は求める!!

 ユークレインに勝利と栄光を!我等に勝利と栄光を!!」

 

 腕を振り上げ叫ぶと、全員が腕を振り上げてオー!!と叫ぶ。総勢、300人近い人数の生徒達が戦車道万歳だの戦車部万歳だのと叫んでいた。脇にいるミラコが肩を竦め立ち上がって議事堂を後にした。なので、私もイザールに士気を下げぬように告げ、ミラコの後を追う。

 

「どこ行くのよ」

「私はね、部長」

「ええ」

「私は戦車部の臨時副隊長をやっている」

「そうね、私が任命したもの」

「本来は剣道部の部長兼主将だ」

「知ってるわ」

 

 ミラコは脇の常緑樹に背中を預け、腕を組む。

 

「剣道は武道だ。戦車道も武道だ。そして、どちらにも道がある」

「何が言いたいのかしら?」

「今の君が歩むは外道だ。正直、今までの2戦で強く思った。私は、親友として君に忠告する。

 

―――その道は、危険だぞ

 

 間違えないで欲しい。私は君の味方だ。それだけは忘れないでくれ」

 

 ミラコがジッと私を見つめる。なので、私はそれに笑って返してやることにした。

 

「ミラコ。貴女は1つ勘違いしているわ」

「勘違い?」

「ええ、そうよ。とてもとても大きな勘違いをしているわ。

 私の道は外道だって?君は何を勘違いしているのかね、親友。戦車道とは即ち、戦車の在り方を表す道。愚直に正面から撃ち合うだけの道を戦車道と呼ぶのなら、私はそんな物は潰れてしまえと思っている。だが、違う。多種多様な戦車があり多種多様な戦術がある。

 その中で、私が取った戦術はどこにも()()()()()()()()だけだ。つまり、私は外道を歩むのではない。新たな道を開拓しているのだよ、親友。勘違いしてくれるな。剣道と戦車道は全くの別物だ」

 

 ミラコに寄り掛かり、頬をに手を添える。ミラコが驚いた様に私を見詰める。そのまま顔を近づけると、頬を真っ赤に染めているではないか。

 

「冗談よ。アンタ、私が攻めに回ると途端にヘタるわね。

 まぁ、試合中にヘタレなければ私は何も言わないわ。編成考えなくちゃいけないわね。貴女、マウスとE-100とどっちに乗りたい?」

「ど、どっちでも良いわよ」

 

 ミラコがフンとそっぽを向いた。なによ?

 

「何拗ねてるのよ。子供じゃあるまいし」

「拗ねて何かないわよ」

「そう?なら、どっちが良い?」

「どっちでも良いわよ。私は貴女の味方であり部下なんだから。

 私達(部下)貴女(隊長)の命令通りに従えばいいんでしょう?えぇ?」

 

 ふふん、成程。

 

「OK、じゃあ、E1003両の部隊が貴女指揮下の剣道部員に与えるわ。マウス9両を投入し、残りの17両の内4両をシュトゥルムティーガーね。あれ、動いたでしょ?」

「ええ、大丈夫よ」

 

 あの後、E-100を学校艦に入れるという事になり、余分な重量である死蔵されている戦車共を探していたら4両のシュトゥルムティーガーが出て来たのだ。38cm臼砲の威力は凄まじく、ゴミのようにあったM26パーシングを粉々に吹き飛ばした。射程が5kmちょっとしかないので、物量で破られた際の近接防衛として働いて貰う。つもりだ。

 

「なら、その4両ね。残りの13両だけど、3両をえっと、なんだっけ?ヤークトパンターだっけ?首動かない奴」

「そうよ」

「なら、それ。ヤークトパンターはシュトゥルムティーガーの防衛用ね。で、残り10両はM26E3だっけ?」

「E4よ」

「それそれ、スーパーパーシングで編成ね。此奴等は前線での観測班ね」

 

 M26パーシングは本当に大量にある。高性能、整備性、生産性が高く、更には重戦車と思えない速度が出せるのだから。アメリカ産戦車は基本的に合理主義の塊なので、製造ラインを練習するに最適なのだ。車でやれよ!って話だけど、我がユークレイン社は装甲車専門なので仕方ない。

 

「重戦車を砲弾観測に使うなんて、贅沢だと思わんかね?」

「別に、ちぎって投げるほど有るんだからさぁ、それに、ウチにある戦車で一番早いのはM26だけなのよ。トースターだっけ?あの首無も中々早いけど、数ないし」

 

 観測用としては防御力に何等問題はないけど、流石に3両しかないとねぇ?だから、M26パーシングに増加装甲をしたとかいうM26E4スーパーパーシングって奴を用意した。ぶっちゃけ、製造するのめっちゃ簡単だから、ガスバーナー片手に1年生が授業でくっつけてくれたのだ。

 後は、練習だけね。やれやれ全く。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。