翌日、部活はミーティングになった。我が校は高行こうにあるまじき綺麗を持っている。まぁ、出資者が出資者だけに、そういうのも厳しいんだろうね。油臭い、鉄臭いじゃ誰も入ってこないし。
部活動も、有力ならば尚更金をつぎ込む。勿論、戦車部は出資者の主力商品と言う事もあって、結構立派な部屋と練習場を貰っているが、基本、船の上なので、十数両の戦車しかおいていない。戦車共が重すぎて、船が沈むらしい。なので、制作した戦車は片っ端から陸へ上げていくとか。
「はい、司会はローデリアくぅ~ん」
「それで、昨日、あんだけ大口叩いたからには絶対勝てる様な作戦持ってるんですよね?
昨日みたいな、せっこい戦術じゃなくて!」
ローが私に詰め寄ってくる。もう、スゲーウザイ。
「戦術は昨日と一緒よ。何言ってるのよ。動かずに陣地作って、相手が射程圏内に入ったらぶっ叩く。ソ連軍のパックブロだっけ?」
「パックフロントですか?対戦車砲陣地の」
「そうそう、それよ。そのパック使えば、相手がこっちに来る限り、狙い撃ち出来るわ」
ホワイトボードに陣形を描いていく。
「イザールのアホがサンダースとの練習試合を取り付けたわ。
戦車の台数は、こっちが10で向こうが20よ」
言うと、その場にいた全員がザワザワと騒ぎ出す。ちなみに、剣道部と柔道部に生徒会がいる。
「ちょっと、相手の方が有利じゃない!
ミーナが食べていたポッキーをペキンと折って抗議する。
「馬鹿ね。相手が20でもこっちはマウス3両、ケーニヒスティーガー3両、ヤークトティーガー3両、T281両で行くのよ?どうやって、負けるのよ?
一応、帰ってから調べたけど、サンダースの戦車で一番厄介になるのが、えっと、ファイアーフラム?とか言う奴」
「ファイアフライ!蛍です!敵の戦車なんですから名前をしっかり覚えてください!!!!」
ローがバンと机を叩く。何この子ムキになっちゃってるのかしら?
「まぁ、その蛍が厄介ね。えっと、大洗では、蛍1匹しか出てきてないけど、今回は20両だから、最低でも2両はいると考えて良いわ」
「その、蛍はどのぐらい強いんだ?」
脇でコーラを飲んでいたミラコが私を見る。どのぐらい強いんだろう?
「ロー」
「はいはい、来ると思いましたよ、えぇ!
ファイアフライは17ポンド砲を1門搭載しています。この17ポンド砲はAPDS弾を使用時に910mで192mmの装甲を撃ち抜きます。これは、ケーニヒスティーガーの前面装甲180mmを撃ち抜く程です」
ローが説明すると全員が騒ぎ出す。此奴、本当は敵のスパイなんじゃねーの?
「落ち着け、バカチン共。距離910って事は、こっちも射程圏内なのよ?良いかしら?こっちの射程は2.4kmで余裕で撃ち抜けるのよ?2400m、2400mよ!相手は910!1km、1000mもないの!!
ビビることはない、更に言えば、殲滅戦ではなく、フラッグ戦だ。蛍さえ潰してしまえば、奴等は何もできなくなるも同義。良いかしら?
戦車道なんてモンは、どんな砲弾も弾き返す分厚い装甲とどんな分厚い装甲でもぶち抜ける大砲もった戦車用意したほうが『勝ち』なんだよ」
言うと、全員が相互の顔を見て、私を見る。OK、あともう少しだな。
「しかも、考えてみろ?こっちは10両の超重量級の戦車だ。しかも、パックフロントを敷くって事は、殆ど陣地から動かない。つまり、実際やる事は砲手が引き金を引くだけなんだ。
何故か?既に、砲弾の着弾地点は事前に予測するからだ。後は、記録に沿って大砲の角度と位置を調節してやれば、あとは勝手に敵が当たってくれるんだぜ?考えても見ろよ?
剣道や柔道で竹刀を振れば全部一本、相手を投げれば全て一本。夢のようじゃないか!えぇ?」
ミラコが少し考え、手を上げる。む、流石ミラコね。技量馬鹿ばかりの柔道部やほかの剣道部員とは違うわね。
「何かしら?」
「そんなに
「逆に聞くけど、どうやったら
勿論、ミラコは戦車道なんてやった事ないから何も言えない。反論は出来無い。『自分の勘』と言う物で私を納得させられると思っているほど、ミラコは『バカ』じゃない。それに、客観的に見ても、蛍さえ潰してしまえばシャーマンでは我々は倒せないのだ。
「よろしい。次に、車両の割り当てだが、マウス1両はミラコが乗りなさい。そして、ミラコが乗ったマウスは『リトル・マザー』の符牒。その他マウスは『リトルボーイ』よ。6両の虎は各自話し合って乗るように。ヤークトは『ビッグノーズ』、ケーニヒスは『キング』それぞれ1,2,3。私のT28は『ビッグ・マザー』よ。布陣はT28の周りにビッグノーズを、そして、後を中心にキング、リトルボーイが集まりなさい」
ホワイトボードに布陣を描き、それぞれの符牒も書いておく。砲塔を持たないのは内側に。持つものはそれを守るように外側に配置するのだ。こうすれば、いざ、後ろに廻られても旋回砲塔が対処し、その間に我々無砲塔が敵を叩く。
「布陣は分かったわ。それで、試合まで我々は何をすればいいの?」
「決まってるでしょう?訓練よ。
生徒会、剣道部と柔道部にこのアホタレな試合が終わるまで我が戦車部に協力するよう命令を」
「「はぁ!?!」」
ミラコと柔道部部長がふざけんなという感じで立ち上がる。
「良いよ。一応、お偉方もこの試合に注目していてね。結果次第では、
おうおう、そんな事まで契約しちゃってるのかしら、この会長様は?悪い奴め。
まぁ、あの3強さえ倒せば、先ずは安泰だろう。私も、『楽してズルして楽勝かしらー』が好きだし。まぁ、そうなるには、完璧な計画と入念な準備をしなくちゃいけないのだけど。
「取り敢えず、砲撃の訓練をしなさい。なんでかしらないけど、ミーナが凄い射撃が上手いのよね」
「棒の扱いは上手いわよ」
「死ね。氏ねじゃなくて、死ね。下ネタ言ってんじゃねーぞこの糞ビッチが。
取り敢えず、この糞ビッチに射撃の事を聞きなさい」
「え~?私、そう言うの聞かれても困るんだけど?」
ミーナが何でそんなクソみテーにメンドクセーことやらにゃいけねーんだという顔で私を見ていたので、ポッキーを鼻に突っ込んでやる。
「やるわよねぇ?」
「や、やります!やりますから、ポッキー抜いて!!!」
「よろしい。基本的に、動く事はないけど、操縦技術も上げておきなさい。ほら、各自、自分達の乗る戦車決めて行動開始!!
弾薬、燃料に食事は全て生徒会が用意してくれるって話よ。それに、授業も戦車乗るのなら受けなくても免除してくれるとか」
「え!?」
イザールが私を見る。なので、睨み返してやるとハッハッハと笑って告げた。
「うん、戦車道の項目で参加する人だけは免除してあげる。
でも、サボってたりすると容赦無いよ?」
イザールが私を見る。なによ?私がまるでサボってるみたいな言い草ね。失礼な。
「わかったら、とっとと行く!」
パンパンと手を叩くと全員が教室を飛び出ていく。やれやれ、先が思いやられるわ。