まほは各車に周囲警戒を密にする様指示を出した。この戦いで大きな鍵を握るのは、黒森峰とプラウダ校なのは言うまでもない。参加した強豪校で1、2を争う巨砲重装甲を誇る戦車達を保有しているのは黒森峰である事は言うまでもない。
『こちらマウス!履帯を破損しました!!修理に時間が掛かります!!』
そして、2両保有している内の1両が砲撃を食らって、唯でさえ脆い足回りを撃破された。もう1両は運良く見付けたガレージのような場所にマウスを入れ、入口を完璧に偽装しているのでちょっとやそっとでは見つからないだろう。
「了解、援護に回る」
乗っているⅥ号にマウスの援護に向かうよう指示を出す。周囲を見回し、観測手を見張るが周囲には誰もいない。
―――あの女は上手くやる
まほは、久しぶりに精神的に追い詰められていた。まほを焦らせたのは、未だ嘗てみほだけだ。確かにプラウダやサンダースも十分に手強い相手だった。だが、相手が強ければ強いほどそれだけ“心構え”と言うものがある。今回も、そうだった。みほの作戦は教科書通り且つ、奇抜で周囲をアッと驚かせる。作戦を考えるだけなら、まほよりもみほの上かもしれない。
そして、今回もみほの作戦を聞いた時は無謀だと思った。だが、何故か、やれると思ってしまった程だ。いや、マウスを撃破した時や大会最後の一騎打ち等を考えれば、出来ると思ってしまった。
「大丈夫か?」
「あ、はい、隊長!」
まほもⅥ号から降りてマウスの履帯を直すのを手伝う。至近弾による破片と爆風で履帯と一部の転輪が破損しただけで、修理は容易だった。
「た、隊長!!何か、音がします!!」
「報告は具体的に!!」
「は、はい!せ、戦車の走行音がするんです!反響して、方向は分かりませんが・・・」
まほは素早くⅥ号の上に飛び乗り、双眼鏡で周囲を見回す。
「見付けた!7時だ!!」
まほがキューポラに飛び込み、車体を“食事の時間”に合わせて待ち構える。
「この音・・・ヤークトパンターだ!!マウス!砲塔だけでも動かせるか!!」
『も、もちろんです!!』
「では、7時に向けろ!!
『は、はい!!』
エンジンを切っていたマウスは慌ててエンジンを始動し、砲塔を旋回させる。非常にゆっくりだが、間に合う。
「っ来た!!」
そして、1台のヤークトティーガーが現れる。上には何かを持ったメンゲレが笑っていた。
「悪魔め!!撃てっ!!」
Ⅵ号とマウスが砲を撃つ前に、メンゲレが手に持った何かを撃つ。飛んできた飛翔体は空中で炸裂し、まほや砲手の視界を奪った。
『視界不良!?撃てません!!』
「構わん!!」
まほが叫ぶと同時に、ドドンと砲声が聞こえ、バキャッと音がする。何の音か分からないが、とてもつなく、嫌な感じがした。まるで、転けて
「ック!!次弾装填急げ!!」
「ハッハー!!よぉ、西住流!!」
まほが声をした方を見ると、隣にヤークトパンターが止まっており、メンゲレが立っている。ヤークトパンターの後ろにはM26E4が二両、そして、それ等にはローデリアとミラコが乗っている。
「お前の妹は
だが、上から降ってくる
メンゲレがゴンゴンと天板をノックすると、ヤークトパンターがゆっくりと進んだ。そして、後続のスーパーパーシングに乗ったローデリアが深々と頭を下げる。
「失礼します」
「ふふん、君は倒さないでおいてあげよう」
最後尾のパーシングに乗ったミラコがウィンクをし、90mm砲をⅥ号の履帯を目掛けて撃つ。転輪が3つ程吹き飛ぶ。追跡を絶たせる為だろう。
「ック・・・この屈辱、二度と忘れん!!」
みほが3両の戦車に叫ぶが、3両は颯爽と去っていった。
「た、隊長・・・」
「なんだ」
マウスの乗員が話し掛けて来たので、まほはそちらを見やる。乗員達が全員並んでいた。煤けた格好で、まるで内側から爆発に巻き込まれた感じだ。全員、怪我はないようだが、マウスが撃破されたアナウンスはない。
「ま、マウスが・・・」
車長が指差す先を見ると、マウスの砲身が
「ンなっ、どうして・・・あの時か!!」
そう、閃光で目を奪われていた時に聞こえた音だ。
「や、やってくれる!!!
何て奴等だ!!マウスの砲身に弾を撃ち込みやがった!!」
「ど、どうしましょうか?」
「取り敢えず、足を直す事が先決だ」
そこにドロドロとヘッツァーがやって来た。
「うっひゃ~これは凄いなぁ~」
車長の杏が一輪挿しのマウスを見ていやはやと感心している。
「大洗の会長か、何故ここに?」
「ヤークトパンター達の後をストーカーしてるんだよねぇ~」
「そうか。なら、我々は気にせず、後を追ってくれ」
「はいはい。小山、行くよ」
ヘッツァーはそのまま3両を追って走り去る。まほは無線を開き、みほに己の失態を報告する。
「西住隊長、聞こえるか?」
『どうしたのお姉ちゃん?』
「マウスの128mmが破壊された。副砲は使えるが、戦力には到底ならん。スマン・・・」
『分かりました・・・お姉ちゃんは無事?』
「ああ、ティーガーの足回りを吹き飛ばされたが、修理は出来る」
『良かった・・・お姉ちゃん、仇は私が取るから』
みほの言葉に思わず、笑ってしまう。常に、まほの後ろに隠れていたみほが今では自分を庇うかのように立っているのだから。
「ああ、不甲斐ない姉で情けない」
『そんな事ないよ!お姉ちゃんは、私と違って立派だよ・・・』
「ありがとう。それじゃあ、気を付けろ、西住隊長」
まほは無線を切り、ティーガーから下りる。
「さぁ、これを直して、あの
「「「「おぉ!!」」」」
まほの声に、マウスとⅥ号の乗員全員が、まほの気持ちに応えるかの様に拳を振り上げる。
マウスの砲身は韓国軍のブラックパンサーでしたっけ?
あれの砲身みたいになってます
勿論、あの戦車とは違い、砲身内部に異物が入り込んだ結果による砲身破裂です2、3年前に90式がやった感じですね
活けた人はビッチーヌ・ミーナ先生です
あと、普通、相手の砲口狙って撃って弾ブチ込むとか無理です
それが出来たら、誰も苦労しませんし
ちなみに、元ネタは某セラ重です