とある不動のGMC   作:はち   .

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GMCは笑う

「ユークレイン」

 

 待機場所に戻り、戦車を全て載せ終わった後、黒森峰の西住が現れた。背後には部員が全員いる。

 

「あら、西住流。何かしら?」

「私は貴様に負けたが、私の仇はみほが取る」

「なんだそれ?」

 

 脇に居たカナリスがアホかという顔で西住を見る。

 

「自分の妹に自分の仇打たせるとか、もうね」

 

 そして、ミーナも呆れたという顔でせせら笑う。なので、私が二人に拳骨を落としておく。

 

「ごめんなさいね、あの二人、頭が()()の。二人共、操縦と射撃は良いんだけど、どうも頭が軽いのよ」

「別に、気にしていない」

 

 西住が静かに告げる。背後にいる部員達も全員がジッと私を見ている。隣にいるローが少し不気味だと言う感じに私を見ていた。

 

「ロー、なんて白けたツラしてるのよ?

 ほら、笑えよ?えぇ?」

 

 ローの頬を抓って揉んでやる。

 

「や、やへへくらはい!!」

 

 そして、ローがパチーンと私の手を叩く。それから、頬を確かめると、不器用な笑みを浮かべてみせる。そして、それを西住に向ける。

 

「ぶっさいくな笑みね」

「全くだな」

 

 言うと、ローが一気に仏頂面に戻る。西住が苦笑し、頭を振る。

 

「貴女は、この女みたいなキャラは似合わない」

「わ、分かってますよ、そのぐらい・・・」

 

 ローがムニムニと自分の頬を揉みながら告げる。それから、しばらく考え、キュッと口角を締めた。胸部の紙装甲を張り、ミニマムの癖に自分を大きく見せようとしするんだから滑稽だ。

 

「部長、今、すんごく失礼な事考えてますね?」

「さぁ?」

 

 ローが別に良いですとそっぽを向く。

 

「それで、負け犬。何の用だ?」

 

 西住に向き直ると、西住もキュッと顔を締め行き成り歌いだす。それに合わせて、背後にいた副隊長の伏見だか、逸見だかって奴やその他部員達も歌いだした。足で地面を踏み鳴らしリズムをとっていく。周囲にいた我が校の部員達や整備係が驚いた顔をしている。

 

「パンツァーリート、だったか?」

「そうですね。バジル大作戦ですよ」

「ふーふん。各車に次ぐ。空砲準備」

 

 携帯を取り出し、積み込みを終えた戦車に電話をする。

 

『はぁ?』

「良いからやれ」

 

 暫くして、準備が完了したと報告が入る。黒森峰は全員が声を張り上げ歌っている。良い歌だ。

 

「敗北者諸君。勝者からの手向けだ。全車砲撃!」

 

 凄まじい轟音が鳴り、パンツァーリートをかき消した。全員が、私を睨み中には悔し涙を浮かべている部員も居た。

 

「部長・・・」

「笑えよ、ローデリア。次は、我々が泣いている番だぞ?」

「・・・・・・はい」

 

 ローデリアがニヤリと笑い、私のあとに続く。私達は脇に止まっていたキューベルワーゲンに乗り込む。運転手は相変わらずカナリスで、監視はミーナだ。

 

「何で彼奴等歌ってたわけ?」

「なんの歌だ?」

 

 ミーナとカナリスが振り返って私達を見る。すると、ローが心底呆れたという顔で応えた。

 

「パンツァーリートですよ!!仮にも戦車部部員なんですから知ってて下さいよ!!」

「「こんなダサい歌は知らない」」

 

 二人が口を揃えて答え、ローが二人に殴りかからんとしたので慌ててローを抑えた。

 

「そ、それで、何で歌ったのよ?」

「バルジ大作戦って映画では、窮地に立たされた戦車部隊の隊員達が、『自分達はまだまだやれる』って言う意思表示で歌っているんです」

「だから?」

 

 カナリスが首を傾げる。それには流石のミーナも溜息を吐いた。つーか、バルジ大作戦とか初めて知ったわ。

 

「つまり、彼奴等は『負けたが、我々はまだやれる』って言いたい訳よ。アンタ、本当に頭どうにかしなさいよ?」

「おー?」

 

 カナリスが本当に分かってるのか分かったと頷いた。

 

「じゃあ、何で戦車ドーンやったんだ?」

「お前等のやる気なんぞ、この砲声が吹き飛ばしてやるって言う意味よ!!

 言わせんな恥ずかしい!!」

 

 カナリスの頭を思いっきりぶん殴ってやった。本当に、カナリスの頭の出来には心配ね!!


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