異世界で悪魔退治するのは間違っているだろうか 作:しゅーぞー
でも長くした分丁寧にかけたと思うのでゆっくりとお読みください
m(_ _)m
それでは本編をどうぞ
「
ネロの間の抜けた声が部屋の中に響き渡った
それもそうだろう
彼もまさか年端もいかぬ少女が目の前に現れるなど全く予想だにしていなかったのだから
ネロがしばし唖然としていると
「ほらほら、早くベッドに戻った戻った。まったく、ダメだろう?ちゃんと休んでなきゃ。せっかく助けてあげたのにまた倒れられたらこっちの立つ瀬がないじゃないか」
そう言いながらネロの体をベッドの方にグイグイと押してくる少女
ネロは少女に押されるがままベッドに座り込んだ
ネロの顔を見ていて思い出したのか少女はハッとした様な顔になり
「そういえば、キミが倒れてた所のすぐそばにそこに置いてある大剣と銃が落ちてたんだけど...一応持ってきたけどキミのかい?」
少女のその言葉に自分が今座っているベッドの奥側を見てみると、
そのそばにはネロが仕事の時によく着る青いコートも畳んで置いてあった
「あ、あぁ。俺のだ。ありがとう。大事な商売道具なんだ、なくなったら困る」
自分の装備がしっかりあることに安心したネロ、しかし彼には少女に聞きたいことが山ほどあった
何を質問しようかと思いを馳せていたネロが気付くことはなかった
「この世界に銃なんて代物は...ならこの子は一体...」
少女のその呟きに
それからネロは色々と知りたいことを聞こうと口を開いた
「なぁ、アンタ一体誰なんだ?そんでここはどこだ?俺はなんでここに?」
そう矢継ぎ早に頭に浮かんだ質問を繰り出すネロ
少女は突然喋り出した青年に面食らった様で、驚いた様な顔をした
「そんな一気に質問されても困るよ。順番に聞いてくれないと。そもそも人の名前を聞く時はまず自分からって習わなかった?」
そうネロの質問にそう返答しながら少し怒ったようにその細く白い腕を胸の下で組む少女
冷静になった今ではわかるがこの少女、年に合わない胸の大きさだ
腕に持ち上げられ柔らかそうに形を変えたそれが嫌でも目に入り、ネロは気まずそうに目をそこからそらす
「
自己紹介の後にそうおどけた様に言って優雅に一礼してみせると少女もそれを受けて恭しく
「うん、ボクの名前はヘスティア。ふふっ、よろしくねネロ。」
その返答に満足したのかネロの冗談に対して着ている割とピッチリめの服の端をつかんで持ち上げ礼をした後にそう言って笑顔で右手を差し出してくるヘスティア
「...あぁ、よろしくな、ヘスティア」
ネロは少しのためらいの後にそう言って差し出された少女の華奢な手を右手でつかむのだった
そのためらいは別に少女の年齢不相応な体を見て目線のやり場に困った結果生じたものではもちろんない
ネロが危惧していたのはこの右腕を見せてしまってもいいのだろうか、という懸念であった
自分で言うのもなんだがこの右腕は初めて見るものには多大な恐怖心を与えてしまうと自負している
なのでいつもは腕の周りに包帯を巻いて三角巾で隠しているのだがもちろん依頼先にそんな邪魔なものをつけて行く様なことはなく、この時のネロはその右腕を無防備に晒していた
ヘスティアは自分の右手を握る異形の手を珍しいものを見るかのような目でまじまじと見ながら
「この腕、少なくとも
その質問にはネロが"人間"であるのか"人外"であるのかを尋ねるニュアンスが含まれていた
ネロは自分の正体が本当はこの少女にとっくに見抜かれているのではないかと憂慮した
ヘスティアにはそんな意図はなく、それは青年の勝手な想像に過ぎなかった
しかしながらネロからしてみればヘスティアの質問はもっともなものだった
道端に倒れていた男を助けてみたら右手が異形のものだったのだから
その正体を知りたくなるのは当然だった
これまでネロの右腕を見たものはキリエ以外奇異の視線か侮蔑の含まれた視線で見てくるかのどちらかだった
しかし、ヘスティアの顔を見やると、こちらの視線に気づいて首をかしげるその仕草の中にネロに対しての恐怖や侮蔑などの感情は見受けられず、ただ単純にこちらは一体何者なのかを知りたがっているだけのように思えた
変な奴だ
そう思うと同時に心のどこかで嬉しいとも思っている自分もいる事に気付いたネロは妙な気恥ずかしさを感じてそれを振り払うように一度かぶりを振ると
「いいや、俺はまごう事なき人間だ。
「へぇ〜悪魔なのかい...って悪魔ぁ!?」
一瞬受け入れかけたがすぐに驚きをその端正な顔に貼り付けるヘスティア
コロコロと表情を変える少女にネロはある種微笑ましい感情を覚えつつもきちんと説明をする
「あぁ、俺には悪魔の血が流れてる。完全な悪魔じゃないんだけどな」
「へぇ〜、人の身に悪魔を宿す...か。
そう含みがある口調を取った彼女にネロが怪訝そうな視線を送るとネロのその視線に気づいた様で
「いや、なんでもないんだ。気にしないでおくれ。あ、そういえば質問にまだ答えていなかったね」
思い出したかの様に先ほどネロがした質問のことを話題に出すヘスティア
うまい具合に話を変えられた感は否めないが今は自分のこの右腕がどう思われているかよりも現状を把握するのが先決であろう
ネロはそう結論付けると少女の話に耳を傾けることにした
「まず、ここはどこかって質問だったね。というか普通この世界に住んでる人だったらここのことを知ってるのはもはや常識の範疇だけど...まぁいいか、ここは"迷宮都市オラリオ"この広い世界でも随一の大都市だね。」
彼女の口にした言葉"オラリオ"はネロにとっては全く馴染みのない言葉であった
依頼先の地名でももちろんないし、ネロの故郷の名前はフォルトゥナだ
ネロだってバカではない。オラリオなんて都市が自分が地に足をつけた範囲に存在しないことくらいは分かっていた
ならばここはどこだ?
それは大きな"口"の中に飲み込まれたというものだった
それから気付いたらいたのだ
この"オラリオ"に
この部屋に
先ほどから頭の片隅でチラチラと瞬いていた可能性が突然鎌首をもたげ始めた
それはあの怪物に飲まれてどこかの世界に飛ばされてきたというものである
「そうか...オラリオか...」
そうヘスティアの言を反芻するネロ
おそらくは先ほどの自分の考えで正しいのだろう
帰る方法は全くもって検討つかないのがネックだが
とりあえずはそう結論付けたネロは次の少女の発言を待つ
「それで、次の君がなんでここにいるのかだけど、キミ大通りのど真ん中に倒れてたんだよ。冒険者通りのど真ん中にね。朝ボクが外散歩してたら人だかりが見えてね。なんか面白いことでもあるのかな〜って思って人混みをかき分けたら驚いた事にキミが真ん中に倒れてたわけ。もうびっくりだよ。そのまんま野ざらしにしておくわけにもいかないからキミをここに運んできたのさ。以上が事のあらましだよ」
「
懇切丁寧にネロが倒れていた状況を説明してくれるヘスティア
しかし、よくよく考えてみると引っかかることがあった
それはどうやってネロをここまで運んできたのかという事だ
この少女の華奢な体ではとてもじゃないがネロを持ち上げられるとは思えない
「なぁ、アンタどうやって俺をここまで運んできたんだ?しかも俺の武器まで持って...」
「あぁ、知り合いの神に手伝ってもらったんだ、あとでお礼を言いに行ったほうがいいよ?」
「...神?」
彼女は一体何を言っているのだろうか
神?
そんなものはいない
ネロは神というものの存在をあまり信用していない
それは熱心な信者であるキリエの両親が忌々しい悪魔どもによって殺された事に起因している
あの日からネロは神の存在を疑っている
「
そう言うとヘスティアは
「この世界に生きている人達が神の存在を疑うことはないはずなんだけどなぁ。いるわけないも何もそもそもキミの目の前にいるボクも神々の1人だよ?」
「ハァ?んなわけ...」
その時、ネロの身体をゾッと怖気が駆け抜けた
バッ!と身を翻してヘスティアとの距離を大きく取るネロ
今感じた殺気...いや、今感じたものはもっと強大な何かだった
神気...とでも言えるだろうか
信じたくもないが
だがそうでもしないと今感じた感覚の説明がつかなかった
今の一瞬で嫌でもネロは思い知らされた
この少女の発言が嘘でも誇張でもなんでもなく純然たる真実であるのだと
この少女、ヘスティアは神なのだ
比喩でもなんでもなく
すると唐突にビンビンに肌に感じていた神気が消失した
「分かってくれたかい?こんな風に無理に人に信じ込ませるのはあんまり主義じゃないんだけどね。こうでもしないと絶対信じてくれないでしょネロくん」
そこには先程までと全く変わらないヘスティアが立っていた
敵意がなくなったことを感じ取ったネロは脱力した
「
そう発言にたっぷり毒を混ぜて返すとヘスティアは痛いところをつかれた様に肩をすくめた
「それに関しては悪かったと思ってるよ。ごめんね。まぁキミは一般人なんかじゃないと思うけどね。ところで、キミ帰るところとかあるのかい?無一文みたいだけど。風来坊とかなのかい?」
「そんなわけないだろ。俺だって急にここにきて混乱してんだ。帰れるもんならとっくに帰ってるさ。アンタ神なんだろ?それなら俺を帰してくれよ」
神に対してあまりにも怖いもの知らずな発言をするネロ
ヘスティアが神であることを知ってもなお態度を変えようとは思わなかった
「生憎ボクら神々は地上では権能を全く使えないんだ。ここではボクらもキミら子供達と同じ人間だよ」
帰ってきた言葉はネロにとっては想定内の言葉であった
さすがにそこまで都合の良い展開はないだろう
「そうか、そりゃ残念だ。」
「キミ、全然そんなこと思ってないでしょ」
「
「む。なんかそう言われるとそれはそれで...」
そう断言するネロに悔しそうに言うヘスティア
しかしすぐに気を取り直した様で
「あっまた話が逸れちゃったね。それで、行くあてがないんだよね?キミ」
「だからそうだって言ってるだろ?」
「それならネロくんさ、ボクんちに一緒に住まないかい?助けた手前このまま放り出すのも気が引けるしさ」
その提案はネロにとっては願ったり叶ったりのものであった
本来なら一も二もなく飛びつきたいのだが....
「いや、ちょっと待て。何か企んでるだろアンタ」
「...!?」
生来ネロは人の企みや裏に敏感な方ではない
それならばなぜそんなネロでもそのことが分かったのかというと
「そ、そそそそそんなことあるはずないじゃないか!これはただの人助けさ、人助け!」
そもそもの話ヘスティアの挙動が不審すぎたのだ
住まないかい?の下りからヘスティアの目が露骨に泳ぎまくっていた
さすがにネロでもそこまであからさまだったら分かるものだ
「それで...何が望みなんだ?」
そう端的に切り出すネロ
図星をつかれヘスティアはしばし下を向いて視線を彷徨わせ狼狽した後、意を決したかの様に顔を上げネロの目をしっかりと見て
「え〜〜〜〜っと、ボクのファミリアに入ってくれませんかっ!」
そう言いながらDOGEZAを敢行するヘスティア
そんなヘスティアに対してネロは
「あぁ、いいぜ」
そう軽く返事をした
もとよりネロはこの世界の常識について疎いのだ
今はまず寝床を確保したい
だが宿を借りようにも金がない
だから今はヘスティアの提案を受け、住居を確保するのが吉だろう
「そうだよね、いきなりこんな事言ってもダメだよね...ってえぇっ!?良いのかい!?」
とても驚いた顔でネロを見てくるヘスティア
自分で提案しといてなんなのだろう
「本当なんだね?ホントのホントにホントなんだね?弱小ファミリアだよ?キミ以外メンバーは誰もいないよ?それでも良いのかい?」
今でもネロの発言を信じることができないのかうわ言の様に何回も同じことを繰り返し念押ししてくるヘスティア
「だから、入るって言ってんだろ。そのファミリアとやらに」
そんなヘスティアを安心させる様にそう告げるネロ
するとヘスティアはその大きな瞳をうるうると潤ませながら
「〜〜〜っっっっやったーーー!!ありがとうネロくん大好きーーー!!」
そう言いながらネロに飛びかかり、その柔らかい頬をネロの頬に擦り付けてきた
「
「ネロくぅ〜ん!!ありがどぉぉぉぉぉ」
つい一瞬前まで諸手を挙げて大喜びしていたのに今ではその口調には少々泣きが入ってき始めていた
そんなヘスティアに驚きつつネロは
「ったく...世話の焼ける...」
優しく左手でその頭を撫でてやっていた
ヘスティアが泣き止むまで
しばらく経ってヘスティアが泣き止むと
「ありがとうネロくん、キミってば顔に似合わず意外と優しいんだね」
一転して花の様な可憐な笑顔をその綺麗な顔に浮かべて頬を赤らめるヘスティア
「余計なお世話だ」
そう皮肉交じりに返すもその表情についつい目を奪われてしまうネロ
そんなネロに
「それじゃあ、ネロくんのファミリア入りも決まったところで、ボクの友達に挨拶回りに行こうよ!ネロくんをみんなに紹介してあげなくちゃ!ヘファイストスに、ミアハに...」
と、ネロは完全に置き去りにして勝手にこれからの算段を立て始めたヘスティアはテンションマックスでネロの手を引いて部屋の入り口から階段を登り、外へ出た
少女の手は暖かく柔らかく、少々ネロはドギマギしてしまっていた
外へ出てから後ろを振り返り今自分が出てきた建物を見ると、それは朽ちた教会の様な形をしており、さらに上に目を向けると空は雲ひとつなく青く澄み渡っていた
それから外の眩しさに手で目の上に庇を作りながら地上に視線を戻し、目の前ではしゃぐヘスティアのその様子を見ながらネロは
「
ずんずん前を行くヘスティアに手を引かれるままにそうひとりごちたのだった
いかがでしたでしょうか
早く異世界バトルが書きたくて筆者うずうずしているのですがテストが近いため、しばらく更新する事ができないと思います
お待たせする分クオリティの高いものを書き上げられる様頑張りますのでお待ちいただければありがたいです