リアス・グレモリーは数え年にして7歳である。長寿である悪魔にとって雛も同然の存在である。
故に責任を負う立場に付くなど早すぎる、と声が上がっても仕方ない事だ。ただでさえ子供の上、リアスは魔力を観測出来ない“無能”の烙印を押され、今まで人間界で隠蔽されるように育てられた経歴がある。誰も彼女を責任ある立場につけようとは思わないだろう。本当にそれが真実であるならば。
『では、リアスが管理者として相応しい精神と実力を示せば宜しいのですね? 実績があれば文句はないと?』
微笑みを浮かべながら、政治を担う重鎮達へと宣言するサーゼクスの顔と重鎮達の反応は見物だったと、アジュカは後ほどリアスに語っていた。それを聞いたリアスは頭が痛そうに抱える事になるのだが。
こうしてサーゼクスを始めとした魔王四名、そしてグレモリー家が名を連ね、リアスを管理者として推し、リアスに管理者としての責務を果たせるのか是非を問う場が決定されたのだった。
「……という訳だ。納得して貰えたかな? クレーリア」
「……はい、そうですか。そう言えると思いで? ルシファー様」
クレーリアは明らかに眉を寄せて、不満を隠せずにいた。唐突に訪問した魔王に面を喰らい、更に唐突の解任の宣言だ。素直に頷ける筈もない、例え事情を聞かされたにしてもだ。
……いや、クレーリアの場合は事情を聞かされたが故に納得が出来ないのだが。両手を勢いよく机の上に叩き付けて、クレーリアはサーゼクスを睨むように見る。隠しきれない不満の現れなのだろう。捲し立てるようにクレーリアは口を開く。
「確かに教会側との折衝案として提示された施策はリアスの発案によるものです。リアスも携わり、貢献してくれた事は私もよく理解しております。ですが、その調整・調停を勤めたのは主に私です! 私がこの土地を統治して来たんです! その運営に滞りはなかった筈です!」
「それは私も認め、評価している所だ。だからこそ、クレーリア。君にはここではない、もっと別の場所でその才を振るって欲しいと私は思っている。元より、この地での経験はあくまで君にとっては本来、予行の筈だ」
「ですが!」
「勿論、急な決定で不満を抱くのは私とて承知だ。多少の無礼は目を瞑ろう。素直に吐き出すと良い。君にはそれだけの功績がある。私とて、君を斬り捨てようだなんて思っていない。むしろ、ここまで尽くしてくれた事には最大限の便宜を図るつもりだ」
サーゼクスは机の上に両肘をつき、手を重ねる。そうして向ける表情は至極真剣なものであり、クレーリアは一瞬言葉に詰まる。そして何かを言おうとして、しかし言葉にならずに歯を噛む結果となる。
「……、……私は」
「クレーリア。誤解して欲しくないのは君が用済みになった訳ではない。むしろ君の為を思っての事だと理解してくれないだろうか? ご実家からも現在の管理地から手を引くように話が来ているのではないかね?」
「っ、それは……」
「君は自分の手柄を奪われたように感じるのかもしれない。だが、ここより先は話していた通り天使や堕天使、そして我等悪魔を含めての和平を実現する為の本格的な活動に移っていく。……これ以上、この件に首を突っ込めば君の身を危険に晒す事になる」
「本気で和平を成し遂げるつもりなんですね……」
クレーリアは少し項垂れて、席に座り直し溜息を吐いた。確かにこれ以上の話は事が大きくなりすぎる。管理地を統治している程度の自分が踏み入れるような話ではない。身の危険があるというのであれば尚更の事だ。
わかっている。サーゼクスが自分の為を思っている事は。そして実家が自分をどれだけ心配しているのか。それをわからない程、クレーリアは暗愚ではない。だからこそ手を引くべきだ、と理性ではわかっているのだ。
「主に今後、交渉役としてリアスを当てていくつもりだが、君は冥界に戻ってからも私に協力して欲しい。過激派以外の中立派を穏健派に同調するように利を唱えて欲しいのだ」
「今回の経験を活かして、ですか?」
「今回の仕組みは和平に繋がる仕組みとして、私は悪魔側にも少しずつ浸透させて行きたいと思っている。詳細を詰めれば、あの仕組みには施せる手は多い。それには三大勢力が一丸となる必要があるがね」
「悪魔の足並みを合わせる為に協力しろ、という事ですね? その活動を私にさせていただけると」
「その為にはベリアル家の方々ともお話をさせて頂くつもりだ。彼の家は利として今回のシステムには評価してくれている。ただ、やはり悪魔としての自尊心や感情の問題となると話は別になってくるがね」
「その緩衝役として私を?」
「あぁ。勿論、君が了承してくれるというのであれば、だが」
クレーリアは拳を握り、眉を寄せてしまう。これは自分の今後の一生を大きく左右する選択だ。成功すれば破格の報酬が、失敗すれば失うものは余りにも多い。
感じる重圧にクレーリアは目を伏せて、手で顔を覆い隠してしまう。伏せた瞼の裏で浮かんだのは何故か気に入らない“アイツ”の顔で、クレーリアは歯を噛む。
「……どうあっても今後、私はこの駒王の地に関わる事は出来ないのでしょうか」
「それは流石にベリアル家の意向もある。私の一存では決めかねる。そして私としても了承しがたい。君を失うのは今後の冥界にとって損失になると私は思っている。君は未来を担う事の出来る悪魔だ。その先駆けとなって欲しいと思っているのだよ」
「それなら、尚更私がこの地で折衝役をやらせていただく事は出来ないのですか? 私は一度、自分で引き受けた仕事を放り投げたくはありません。リアスが信用出来ない訳でも、ルシファー様を疑っている訳ではないのです。ただ、ただ私は……!!」
どうして自分がこうも納得いっていないのか。クレーリア自身掴めていない。理性ではわかっている。サーゼクスが自分を気遣っている事も、それに見合った席も新しい役割も提示してくれているのもわかる。
だが感情が追い付かない。突然だと言う事も含めて、自分の中で暴れ狂いそうな感情の訳がわからぬまま、クレーリアは訴える。だが、それに返すサーゼクスの反応は無情とも言えるものだった。
「すまない、クレーリア。これは確定事項なんだ。君はよくやってくれた。――本当に、感謝している」
「……ズルいですよ。魔王様が、頭を下げるなんて! ズルいじゃないですか……!」
サーゼクスはクレーリアに頭を下げるのを見て、クレーリアは嘆くように声を零す事しか出来なかった。
……その様子を影で見守っていたリアスは、目を逸らすようにして、そっとその場を離れた。
* * *
サーゼクスとの話が終わり、クレーリアは家を出て公園のベンチに座って呆けていた。噴水から溢れる水滴をぼんやりと眺め、いつの間にか日が落ちようとしていた。
夕焼けに染まった空にはカラスが飛んでいて、鳴き声を上げながら巣へと帰っていく。それでもクレーリアは動かずにぼんやりとし続けるだけだ。
そんなクレーリアの視界に移る姿があった。それは小柄の影、夕焼けに照らされた紅髪は尚紅く。風に揺れながら、まるで輝くかのように。そう、そこに立っていたのはリアスだった。複雑な表情を浮かべてリアスはクレーリアを見ていた。
「……クレーリアさん」
「……リアス」
「隣、座っても良いですか」
リアスからの問いかけにクレーリアは何も返さないが、何も言わずにリアスが座れるようにスペースを空ける。リアスもクレーリアの隣に座って、空を見上げる。
それから2人の間で会話は無く、暫しカラスの鳴く声だけが響き渡る。口を開いたのはクレーリアからだった。
「……心配されてるのは、凄くわかるの」
「……はい」
「ここから先は確かに私の手に負えない。リアスはさ、私に言ってない秘密とか色々あって、だからサーゼクス様から今回の事を言い伝えられたんでしょ?」
「元々、共犯ですから。私とお兄様は」
「そっか。じゃあ、予定調和だったって事ね。今回の決定は。ずっと前から、決められてたんだ」
「……はい」
「そっか」
再び、お互い言葉を無くす。リアスはクレーリアへと視線を向けて、どこか迷うような、言葉を探すようにして視線を落とす。ようやく見つけた言葉はとても沈み込んだもの。
「……私が、クレーリアさんを利用したと思われても仕方ないです」
「うん。いや、わかってるわ。大丈夫、リアスが悪気がないのも、私を心配してくれてるのもわかってるの」
「クレーリアさん……」
「でもね、なんだろう。なんでかな。……もう、アイツとここで関わる事も無くなるんだなぁ、って」
空を見上げながら呟くクレーリアの言葉に力はない。アイツ、と口にするクレーリアが誰のことを指しているのか、リアスにも想像がついていた。2年ほど一緒に生活した仲だ。それを察せられない程、浅い付き合いじゃない。
周りから見てわかっても、本人が気付いていないという事もある。今回はその例だった。そしてリアスはわかっている。偶然か、必然か、或いは運命と言えたのか。だからこそリアスはクレーリアの次の言葉を待つ。その言葉を受け止める為に。
「……ねぇ、リアス」
「なんですか?」
「凄く、寂しいんだ。なんかぽっかりと胸に穴が空いたみたいで……」
クレーリアが胸を押さえるように掴む。視線を地面へと落として、自分の心を少しずつ言葉にして吐き出していくように。
「こんな途中で、って思うし、いきなりで混乱するし、もう何があってもここで生活する事はないんだろうな、って思うとさ。……思うと、さ。ぽっかり空いちゃうんだ。胸に穴が。それで一番最初に浮かぶのが、ムカツク奴の顔でさ……」
クレーリアの声が震えていく。あぁ、と。息を吐き出したクレーリアは自分の頬に手を伸ばした。そこには雫が伝っている。涙が零れ落ちていた事に気付いてクレーリアは表情を歪ませた。
失って気付くものもあるという。それが当たり前過ぎて、身近すぎて、意識する事もなくて。そして失う事で初めて気付くのだ。その失った物の大切さを。どれだけ自分の心を占めていたのかを。だからこそ打ちのめされてしまう。
「……あぁ、そっか。私、八重垣の事、好きになってたんだ」
口にしてしまえば簡単で、パズルのピースが嵌るように納得してしまう。心が晴れ晴れとして、そしてだからこそ締め付けられるように痛い。ようやく気付いた自分の気持ちが心に刃を突き立てているようで。
疑問が晴れたようなクレーリアの言葉を聞いたリアスは思わず眉を寄せて、視線を逸らす。あぁ、とクレーリアの口から吐息が零れて、自分の両手で顔を覆うように隠してしまう。
「……馬鹿だなぁ、私」
「馬鹿な訳、ないですよ」
「だって相手は聖職者よ? 悪魔が聖職者に恋をするなんて、馬鹿みたい」
「良いじゃないですか、別に」
「そう言えるのはリアスだからでしょ。……あー、もう、本当に」
馬鹿みたい、と。繰り返すように呟くクレーリアは流れる涙を隠すように拭う。それでも次から次へと零れていく涙は止まりそうになくて。
悪魔と聖職者。恋をしてしまうのは確かにハードルが高くて、実らない恋だという事はわかってる。理屈ではわかってる。けれど、感情が追い付きそうにない、だからこそ零れていく涙が止まらないんだと、わかっている。
「……いや、逆に良かったのかもね」
「クレーリアさん?」
「ほら、だって。告白しなきゃ、諦められるし。ここから離れちゃうなら仕方ない!」
「……クレーリアさん」
「本当、恋なんてすぐ冷めるし、大丈夫、大丈夫。いやいや、私もなんだってアイツの事なんか……――」
「――クレーリアさん!!」
次から次へと零れ出るクレーリアの言葉を止めたのはリアスだった。リアスは顔を覆い隠していたクレーリアの手を引き、正面から目を合わせる。
悲しみの色が濃く浮き出たクレーリアの顔が目に映る。大声で自分の名を呼ばれた為か、クレーリアはただ驚いたようにリアスを見ていて、しかし何を切っ掛けとしたのか、くしゃりと顔を歪めてリアスの胸に顔を埋めるように抱きついた。
「なんで……なん、で……!」
「……良いんです。良いんです。だから、全部吐き出して。私が聞きます。全部、全部聞きますから……」
「……ぅっ……ぁ……っ……! なんで、好きになっちゃったんだろ……! なんで、今気付いちゃったんだろ……! なんで、もっと、早く……!」
「好きになるのは、仕方ないじゃないですか。好きに、なっちゃったんだから」
「じゃあ、代わってよ! 私、頑張るから……代わってよ、リアス……! 上手くやってきたじゃない……! これからも、私、頑張るから……! サーゼクス様を、説得してよ……! やだよ、気付いたのに……離れろなんて……あんまりだよぉ……!!」
リアスの胸に額を押し付けて、肩を掴みながら泣き縋るクレーリアをリアスは抱きしめようとして、しかし、抱きしめる寸前でクレーリアの肩に手を置く程度で留まる。
クレーリアから目を背けるように瞳を閉じて、クレーリアの肩を撫でるように触れながら口にする言葉は、きっとクレーリアにとって残酷な言葉になるだろうと思いながら。
「……ごめんなさい」
その一言で、クレーリアが言葉を無くす。ただ、ただ声を押し殺すように泣きながらリアスの胸に顔を埋める。抱きしめる事も出来ずに、リアスはただクレーリアのしたいようにさせる。
クレーリアが落ち着くまで、ずっと。慰めるような事は何一つ出来ないまま、リアスは空を見上げるように視線を上げる事しか出来なかった。
* * *
悪魔社会は簡単に言えば実力社会だ。力ある者にこそ発言権がある。どんなに正しい意見を言おうとも、そこに力が伴っていなければ意見を通す事も叶いはしないのだ。
その構造は実にわかりやすい。勿論、それだけが全てじゃないのはわかっているけれども、何よりも意見を通す為には力の誇示が必要だというのはシンプルでわかりやすい。つまりは示してしまえば良いのだから。
今回、私が管理者として認められるかどうかを確かめる試験として用意された場。そこには単純に力を示せ、と言う戦場が用意されている。レーディングゲームなどで用いられる異空間のフィールド。私はそこで準備運動で体を動かしていた。
まずは実力を示して貰おう、と重鎮達の意向から用意されたこの場。ここで力を証明出来なければ資格があるか問うまでもない、とでも言いたいのだろうか。まぁ、お兄様もかなりの啖呵を切ったらしいし、ここで私を潰せばお兄様の発言力は弱まる事になるだろう。
『リアス、聞こえるか?』
「アジュカ様。聞こえますよ」
『調子はどうだ?』
「やってみないと何とも。やるだけやります」
『お前らしい返答だな。まぁ、言われるまでもないが、お前の活躍次第ではサーゼクスの政治的立場も愉快な事になるからな。思う存分にやって来い』
「グレモリーの名に恥を塗る訳にはいきませんから」
通信機から聞こえてくるアジュカ様の声に返答しつつ、私は解し終えた体を伸ばしてフィールドを見る。特に変哲もない、闘技場のような場所だ。障害物もない、ただ平坦なフィールド。
目を閉じて思い出すのは、夕焼けの光に照らされながら涙を流して縋るクレーリアさんの姿だ。私は何も言う事は出来なかった。少なからず、あぁなるだろうと思っていたから。わかっていながら見逃した。
私は、クレーリアさんの恋の成就を奪う。悲恋で終わっても、きっと尊かっただろうその恋を奪う。本来だったら命を落としていた、だから命を救ったのは間違いじゃない。正しい事をしたんだ。仮にそう言われても私は良かったなんて口にしないし、言えない。
他でもない私自身の意志で。私自身の願いを叶える為に。本来、誰かが得る筈だった幸せを奪い取る。それは罪として覚えておかなければならない。誰も責めないのだとしても、私は自分の責任としてこの罪を背負っていくと決めたから。
『おっと、お相手さんが来たみたいだぞ』
アジュカ様の声に顔を上げると、私が位置する逆側に転移魔法陣が浮かび上がる。
見た目は20代前半ぐらいの男性だった。貴族風の衣装を身に纏い、一礼をする。見覚えのない方だと思い、思わず興味深げに視線を向けてしまう。
『あぁ、現役の若手……その中でも大王家と懇意にしている家の奴だな。若手の中でもかなりの実力者だぜ』
「成る程」
通信機から聞こえてくるアジュカ様の囁きに私は頷く。今回の件の構図として、古い悪魔、言うなれば大王派と私、魔王派の対峙とも言い換える事が出来る訳で。
それでも若手か。まぁ、表向き無能と言われている私ならこれぐらいが妥当なのかな。私は一礼をした相手の男性へと一礼をする。
「お初にお目にかかります。リアス・グレモリーと申します」
「これはご丁重に。私はコーネリア・フォカロルです。グレモリーのお嬢様」
第一印象は柔和な印象な方だと思う。どちらかと言えば線が細く、美男子と言えるタイプの人だ。微笑を浮かべているし、普段は女性の方にはモテそうだと思ってしまう。
それにしてもフォカロル家と言えばグリフォンの翼を持つ悪魔の家系だったかな。確か悪魔として得意とするのは風と水とお義姉様から教わった覚えがある。
「今回は貴方が悪魔として人間界の土地を預かり、その責任を全う出来るのか見極めるテストとお伺いしております」
「はい」
「……こう言ってはなんですが、誰も馬鹿馬鹿しいとこの話を受けずにいて、私が立候補させて頂いたのですよ。引き受ける事でお偉い方にも覚えを良くしていただけると思いまして」
声を潜めて話しかけてくるコーネリア様に私は成る程、と頷いてしまう。確かに相手はグレモリーの無能と言われている私が相手だ。試験の相手をしろ、と言われても好んで相手をしたがる人はいないか。いたとしても打算か、或いは物好きだろうな、と。
「何分、我が家はそこまで有名でもないですから、こうでもしなければ名も売れなくてですね……」
「苦労なさってるんですね……」
「上級悪魔と言えど、ピンからキリという事ですよ。さて、それでは始めましょうか。今回は模擬戦形式で、実戦と同じように戦わせていただきます。フェニックスの涙も魔王様が用意してくださっているとの事ですので多少の怪我は覚悟してくださいね? リトルレディ」
「お気遣いありがたく頂戴いたします。コーネリア様」
「いえいえ。私としてもそこまで乗り気ではありませんが、これも名を売る為、顔を売る為、お相手を務めさせていただきましょう」
そう言いながらコーネリア様が広げた翼は悪魔の翼ではなく、鳥のようなグリフォンの羽根。それを見た私も拳を握り、姿勢を低くするようにして構える。
コーネリア様が両手を広げるようにして構える。両手から吹き荒れるのは風だ。渦巻くような風の中に水気が堪っていく。やがて水気は礫となっていく。
「まずは挨拶代わりです。行きますよ」
コーネリア様が宣言し、風の渦と、渦の中で渦巻く礫が私へと向かって放たれたのを確認し、私は低く呟く。
「Boost」
『Boost』
『