やはり一色いろはは先輩と同じ大学に通いたい。   作:さくたろう

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ハメだけで投稿するのは初めてな気がしますが、シリーズ物です!

さくたろう知ってる人ならわかるかもですが、たぶん甘くなります。たぶんですけどね!



プロローグ

「はぁ……」

 

 七月の太陽の光が溶けた水銀のような輝きとは裏腹に、わたしは一つの悩みを抱えていて――。

 

 先輩たちが総武高を卒業してから4ヶ月。

 受験生になったわたしは、進学先について悩んでいた。

 

「おっはよーいろは!」

「あ、おはよ、碧」

 

 慣れ親しんだ通学路を歩いている途中、友人の碧に後ろからぽんと肩を叩かたので挨拶を返す。

 すると、何やらわたしの顔を覗き込んで心配そうに口を開く。

 

「どうしたの? 朝から暗い顔しちゃって」

「んー……いろいろとね……」

「なになにー? 悩みがあるなら言ってみなよ。力になるからさ!」

「うーん。あのね……」

 

 そして、わたしの悩みを碧に打ち明けることにした。

 だって碧言いだしたら聞かないし……。それに、友達がそう言ってくれるのは素直に嬉しいから。

 

「実はね、この前の模試で志望校C判定だったんだ……」

「ああ……、それで悩んでたんだ」

「うん、でね……。なんていうか……うう」

「なになに? どうしたの?」

「碧、絶対誰にも言わないでよ!?」

「任せて任せて! あたし口堅いし!」

 

 ホントかなぁ。心配なんだけど……。

 でも、ここまで来たら言っちゃうしかないよね……。

 

「えっと……、わたしがその大学を目指すのって、その……憧れてる先輩がいるからなの」

「ほうほう、いろはの想い人がいるってわけね!」

「ち、違うからっ! そんなんじゃないの!」

「ふふっ照れてる照れてる。ホント可愛いねぇいろはは」

「むぅー。……だからね、わたしどうしても先輩と同じ大学に通いたいの」

 

 ホント、わたしったらどんだけ先輩と同じ大学に通いたいんだろうなぁ……。

 でも、それくらいわたしは先輩が好き。

 この想いは他の誰にも、もちろんあの二人にだって負けるつもりはないから――。

 

 わたしの相談を聞いた碧は、顎に手を添えながら真剣な表情をしている。

 こうして見ると、碧ってやっぱり綺麗だなぁ。なんでこの子彼氏いないんだろう。わたしが男なら放っておかないのに。

 

「あ、いろは!」

 

 ちょうど学校の門に到着したとき、いい案をみつけたのか碧が微笑んだ。うん、やっぱり可愛いなこの子。わたしも負けてないけど。

 

「ん、どうしたの?」

「あんたさ、あたしと同じ塾に通わない?」

「塾……? 予備校じゃなくて?」

「そ、塾。あたしの知り合いのお姉さんが経営に携わってるんだけどさ、そのへんの予備校なんかより断然安いし、結構教え方も上手なのよ」

「塾かぁ……」

 

 予備校よりも安いっていうのはちょっと魅力――いや、かなり魅力的かな。お金がかかると思って予備校に行くのはちょっと躊躇ってたけど、それなら……。

 

「ちなみに場所はどのあたりなの?」

「えっと、コミュニティセンターってあるじゃない?」

「うん」

 

 もちろん知ってる。あそこは先輩との思い出がある場所でもあるから。

 

「その近くなんだけど、どう? もし、いろはに行く気があるならあたしから話しておくし。上手くいけば更に安くなるかもしれないよ」

「ほんとっ!?」

 

 ああ、神様仏様碧様! 授業料が安くなるってもう碧が神様に見えるよ。持つべきものは友人って本当だなぁ。

 

「是非、お願いします!」

 

 わたしは碧に向かって頭を深々と下げ、精一杯のお辞儀をした。

 

 

   *   *   *

 

 

 放課後になり、わたしは碧に案内されて今後お世話になる予定の塾に向かっている。

 あれから碧が知り合いのお姉さんに聞いてくれたらしく、大歓迎だと言われたみたいで。

 それを聞いてわたしも両親に連絡をした。

 もちろん、普通の予備校よりも安く、評判のいい塾ということを付け加えて。そっちの方が交渉に有利になるに決まってるもんね。

 すると、両親も『それならそこで頑張ってみなさい』と、快く承諾してくれた。ありがとう、お母さん。

 

「着いたよいろは」

「あ、ホントに近いね。こんなところに塾なんてあったんだぁ」

 

 辿り着いた塾は、コミュニティーセンターと目と鼻の先。

 二階建ての建物には『スノーゼミナール』と書かれた看板が掲げられている。

 前に先輩と来てたとき、こんな塾あったかな?

 

「この塾ができたのは四月だからね。でも、この辺だと既に人気なんだよ? 講師もいい人が多いしね」

「そうなんだ。でも、それだったら定員とかあるんじゃないの?」

「だね。まぁいろははあたしのコネがあるから。ちゃんと感謝してよね?」

「うっ……ありがとうございます」

「よろしい! じゃあいこっか」

「うん」

 

 碧の後に続き、ガラス窓の自動ドアを潜り中に入る。

 今日はお金とか書類がまだだから入会手続きができないけど、碧の知り合いのお姉さんの好意でお試しで講義に参加させてもらえるらしくて。

 ホント碧には感謝しなくちゃなぁ……。

 

 ロビーから廊下を少し歩くと、ドアが開いたままの少し広めの部屋の前にやってきた。

 

「今日はこのクラスで講義があるから。さ、入ろ?」

「ちなみに講義って何するの?」

「これから受けるのは現文、その後は英語だけど……。どうする、どっちも受ける?」

「うーん。お試しだしとりあえず今日は現文だけ受けてみようかな?」

「そうね、今日はそれでいいかもね。じゃ、席につこっか」

 

 空いている席に二人並んで座る。わたしたちの他には男女合わせて生徒が数人。

 こういうところって、大人数で受けると思ってたけどそうでもないのかな?

 

「ほら、これ教材ね。一緒に見よ」

「あ、うん。なにからなにまでごめんねぇ」

「いいからいいから。この借りは必ず返してもらうし!」

 

 にかっと笑う碧を見てどきっとする。……いや、まってまってわたしそっちの気はないからね!? 

 今のはただ不意打ちにやられちゃっただけで――

 

 心の中でそんな言い訳をしていると、講義開始のチャイムが鳴り出す。

 同時に談笑していた生徒も前を向き始める。

 

「そういえば、講師ってどんな人なの?」

 

 碧に素朴な疑問を投げる。

 

「ああ、現文はちょっと変わっててねー。○○大学の一回生が――」

「すまん、遅れた……」

 

 碧が言い切る前にドアからスーツ姿の男性が慌てて入ってくる。

 教壇の前の立ち息を整えると、辺りを見渡して――

 

「先輩……?」

 

 相変わらず死んだ魚のような目をした、わたしの想い人がそこに立っていた。

 




とりあえずこんな感じで進めていきたいと思ってるんで宜しくお願いします(`・ω・´)
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