――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は将棋がそこそこ強い。


ミツヒデさまといっしょ そのさん

 ヨシテル様との思い出話は思っていたよりも続き、気がつけば既に日が傾き始めていた。

 そのことに気づいたときに俺とヨシテル様はそんなに時間が経過するまで話をしていたのかと驚きながらも、顔を見合わせて苦笑を浮かべた。

 その後、俺がまだ義昭様に挨拶をしていなかったことをヨシテル様に説明してから退席することにした。

 ヨシテル様としては義昭様が拗ねてしまう可能性を考えて待ったをかけたのだが、挨拶できなかった理由にヨシテル様にしつこく呼び止められた。と言います。と言ったら引き下がってくれた。

 あの方はこう、最近になって自分の欲望に素直になってきているような気がする。それでも常識の範囲内であるし、多少の我儘くらいなら問題ないと思っているので放置しているが。

 

 そんなことがありながら義昭様への挨拶を済ませ、義昭様の要望で一緒に夕食を食べたり背を流したりしたのはもはや数刻前のことである。

 今俺は将棋盤を挟んでミツヒデ様と対峙している。

 こうなったのは、義昭様の背を流した後に就寝の挨拶をして廊下を歩いているときにミツヒデ様に捕まったからだ。まぁ、色々と積もる話があるので納得ではあるが、幾らか義昭様と一緒に居たことに対する嫉妬があるようにも思えた。

 最近はそういったことは成りを潜めていると思ったが、嫉妬自体はしているらしい。そのことに対して、俺の事を弟扱いし始めたがミツヒデ様はやはりミツヒデ様なのだな、とため息を一つ零したがきっと仕方ないだろう。

 そんなこんなで面倒だな、と内心で思いながらミツヒデ様の部屋の前に来たのだが、どうしてか将棋盤を取り出すとそれを縁側まで持って来て座るように言ってきたのだ。

 何でも俺が奥州に行っている間に任務で四国へと向かい、長宗我部様と呑み比べをしたらしい。その時に負けて、更に酔った勢いのまま将棋をして負けてしまったとのことだ。

 酔っていたとはいえ得意な将棋で負けたのが悔しかったらしく、その特訓相手に俺が選ばれた。ということになる。いや、酔っていたなら負けるのも仕方ないと思うのだが……でも長宗我部様に負けたのは確かに悔しいだろう。

 どちらかと言えばあの方は脳筋寄りの考えをするような方であるし、負けたくない気持ちは良くわかる。

 

 そんなこんなでこうしてミツヒデ様と対峙しているのだが、流石はミツヒデ様。付け入る隙がなかなか見当たらない。逆に俺が甘い手を打とうものなら容赦なくそこを攻めてくる。

 もう少しくらい手加減してくれても良いのではないか、とも思ってしまったがミツヒデ様を相手にするのなら正攻法ではなく適度に会話をしながら精神攻撃を織り交ぜれば勝てるので別に構わないか。

 

「ミツヒデ様。こうして将棋を指すのは構いませんが……」

 

「ん、どうした?」

 

「いえ、あまり遅くまで起きていると明日の任務に障りませんか?」

 

「む、確かにそうだな……ではこの一局だけで我慢しよう」

 

「あ、一局は指すんですね……」

 

「こうして用意もしたからな……それにそれは茶を用意してから言うことではないと思うぞ」

 

 まぁ、そうなのだ。折角だからと茶を用意したのは俺なのだ。いや、ミツヒデ様が好きだからということもあるが、日中にヨシテル様と話をした時にも用意したのでその延長で、というかなんというか。

 とりあえず、なんとなしに用意してしまったというのが大きい。そしてこれを飲まないまま捨てることも出来ない。となれば一局くらいは指すことになるのも当然か。

 

「それもそうですね……でも、一局だけですよ。ついつい興が乗って二局三局、というのは断りますから」

 

「わかっている。それに私はそこまで子供ではないからな」

 

 ついつい夜更かしをしてしまうほど子供ではない。ということだろうがそれは果たしてどうだろうか。

 ミツヒデ様は負けず嫌いなところがあるのでもしこれで俺が勝利してしまったら必ず二局目を要求してくるだろう。だからと言って勝たない。という選択肢はない。

 適度に精神攻撃を混ぜながら勝たせてもらおう。そして何を言われようと一局で終わらせてやろう。

 そんなことを考えてから慎重に打っているのだが……あれ、ミツヒデ様ってこんなに強かっただろうか。

 

「ミツヒデ様、腕を上げました?」

 

「一応な。大変不本意だが時折カシンが尋ねてきてはヨシテル様を馬鹿にするような言動を取るのが耐えられずに追い出そうとしたら「ならば貴様が得意なことで勝負をしてやろう。我に勝てたのなら大人しく出て行くが……さてどうする?」と言われてな。それで将棋で勝負したのだが……」

 

「あぁ、カシン様もこういうの得意ですからね。

 それで、その様子だと負けてしまったと」

 

「……私は思うのだ。将棋を指しているときは静かにするべきだと」

 

「カシン様らしく精神攻撃は基本。と言うところですか」

 

「冷静に考えなければならないというのに、カシンがヨシテル様のことを口にするせいで……!!」

 

 なるほど。将棋のような頭を使うものが得意なカシン様が更にミツヒデ様に対して精神攻撃を行ったと。それではミツヒデ様は勝てないだろう。

 カシン様は人の心を抉るようなことを平然と口に出来るし、人が最も苛立つことが何かを理解した上でそれを的確に突いてくる。そんなカシン様を相手にした場合、ミツヒデ様ではまず平常心を維持出来ない。

 ミツヒデ様はヨシテル様と義昭様のことを大切に思っているからこそ、この二人が侮辱されようものなら烈火の如き怒りを抱くのだから。いや、抱くだけではなく表面にも普通に出てくるが。

 

「ならミツヒデ様はそれを克服すべきかと。心の内に怒りを抑えて、冷静にあれるように」

 

「……わかってはいる。だがそれが出来れば苦労はしないんだ……」

 

「でしたら俺がその練習の相手をしましょうか。具体的に言えば精神攻撃を仕掛けます」

 

「……結城であればヨシテル様と義昭様を侮辱することもないか。少しずつ慣らしていくには丁度良いかもしれないな」

 

「では、対局中に仕掛けますので冷静に差すようにお願いします」

 

「わかった」

 

 短い言葉で答えたミツヒデ様は集中して将棋盤を見つめている。さて、ではどんな言葉をかけようか。

 ヨシテル様と義昭様を侮辱するようなことは俺にはとてもではないが言えないのでそういうのとは違う方法を考えなければならない。まぁ、それ以前にカシン様ほどのことを言える自信などないので、本当に練習程度にしかならないだろう。

 

「そういえばミツヒデ様」

 

「来るか……どうかしたのか?」

 

「いえ、義昭様の背を流そうとしてヨシテル様に止められていたと侍女に聞きましたが本当ですか」

 

「……背を流すくらい普通だと思ったのだが……」

 

「義昭も先ほど「兄上に背を流されるのは良いのですが、ミツヒデには……」と言っていました」

 

「よ、義昭様はきっと私に対して遠慮をしてくださっているだけに違いない……」

 

「普通に考えて義昭としては女性に背を流されるのは恥ずかしいのでしょうね。ということでミツヒデ様。義昭の背を流そうとするのはやめてください」

 

 割とずばっと言ってみる。無闇に遠回しな言い方をしてもミツヒデ様は絶対に聞いてくれない。だったらこういうのは真っ直ぐ面と向かって言うに限る。

 それに今回は精神攻撃を仕掛けるとも言っているのでこれで動揺するようならカシン様を相手にするのはまず無理だ。それに義昭様も恥ずかしがっているのだからやめてもらわなければならないということもある。

 というかやめてください。それに関して相談される身にもなってください。

 

「なっ!?べ、別に背を流すくらい良いではないか!それに結城ばかりずるいと思うぞ!」

 

「ずるいどうこうではなく、義昭がそう望んでいるのですから仕方ないでしょう?

 あぁ、当然として着替えの手伝いもダメですからね」

 

「では何であれば許されるというのだ!?」

 

「護衛や勉学を教えることは出来ると思いますが」

 

「出来るが、確かに出来るがそれだけでは気が済まない……もっと義昭様のお世話を……」

 

「必要ありません。義昭はまだ子供ではありますが、全て他人にやってもらわなければならないほど幼くはないのですから。それに必要であれば俺がやりますので」

 

「ずるい!」

 

「ずるくありません」

 

 たったこれだけでミツヒデ様の打ち筋はボロボロになっている。この会話の間に何手も打っているのだが普段と違い悪手を平然と打っている。やはり精神攻撃は基本だな。

 とはいえこんな話題でまともに響くのはミツヒデ様くらいなもので、対ミツヒデ様用の精神攻撃とでも言えば良いのだろうか。

 

「私は義昭様がまだまだ幼い頃からお世話をしてきたのだぞ!」

 

「そうですかそうですか。あ、ミツヒデ様。飛車角落ちましたよ」

 

「え?あっ……」

 

「全滅させましょうか」

 

「なっ!?ゆ、結城相手にそんなことをされるわけがないだろう!

 集中…集中して打たなければ……」

 

 一旦話を終わりにして打ち始めると徐々にミツヒデ様本来の実力を発揮し始める。やはりミツヒデ様は冷静に対処して来ると強い。まぁ、その冷静さが剥ぎ取られてしまうととても残念なことになってしまうのだが。

 今後の足利軍のことを考えるとその辺りを改善して欲しいような気もする。というかしてくれ。

 

「明日の朝食はどうしましょうか」

 

「……何がだ」

 

「いえ、侍女に任せるか、俺が作るか、という話です」

 

「普通に侍女に任せておけば良いと思うぞ?」

 

「それもそうですね……俺は明日の夕食でも作りましょう。ヨシテル様と義昭には何が食べたいか確認を取ってから作ったほうが良いでしょうし」

 

「ん?普段であれば先に決めているのに、明日はお二人の食べたい物を作るのか?」

 

「ええ、離れてばかりですからたまには。ミツヒデ様も何か食べたい物はありますか?

 全員同じ物でも構いませんが、別々に使っても良いと思っていますから。どうでしょう?」

 

「ふむ……では、私も頼もうか。何が良いか、ということは明日の夕食を作る前までに伝えれば良いか?」

 

「はい。そのようにお願いします」

 

 流石にこうした普通の会話では揺さぶることは出来ないか。とはいえ此処から適当に揺さぶって行くことも出来る。

 今回は先にそうして仕掛けるということは言ってあるので割と手加減というか、遠慮せずに言えるのでありがたい。

 

「あぁ、そうだ。栄養の面を考えると嫌いな物も食べることになるかもしれませんけど、そこは諦めてください」

 

「…………別に、他の物でもなんとかなるのではないか?」

 

「なりますよ」

 

「であれば別に……」

 

「それは面白くない、もといたまたま嫌いな物が、ということがありますし」

 

「今面白くないと言わなかったか……?」

 

「気のせいですよ、気のせい」

 

「はぁ……そういうのはヨシテル様との時だけにしておけ。ヨシテル様であれば結城とのそうした遣り取りも楽しみにしているからな」

 

 楽しみにしてくれているのか。まぁ、確かに楽しそうにしてくれているとは思っていたが……そういうことなら遠慮は必要ないということか。

 いや、必要ないからとやりすぎるということはないのだけれども。

 

「そうなんですか?なら適度にそうしてふざけるのも良いかもしれませんね」

 

「あぁ、適度に、ならな。やりすぎるなよ?」

 

「わかってますよ。加減には気をつけます」

 

「そうか。それなら良いんだ。

 ……これからもヨシテル様のことを頼むぞ」

 

 なんというか、今までであればもっと違う反応をしていたのに、こうして頼むぞ。と言われると違和感を覚えるというか、ちょっとむず痒い感覚がするというか。いや、でもミツヒデ様が俺をちゃんと認めてくれていると考えると悪いことなどはまったくないのか。

 ただ、やはりミツヒデ様が相変わらず困った弟を見るような目になっている点だけは認めない。そういう目をしてもまだ俺が許容出来るのは、昔から俺を知っている人間だけだ。

 

「ところでミツヒデ様。どうして俺のことをそんな困った弟を見るような目で見てくるんでしょうか」

 

「ん?おかしいことか?」

 

「おかしいですよ。しかもそれがこの間の一件から急にとか、どう考えてもおかしいです」

 

「いや……ふと考えたときに、なんとなくそんな風に思えてな……竜胆たちもそんな目をして結城を見ることがあるんだ。別に構わないだろう?」

 

「構わない、わけがありません。そういうのはもっと俺のを昔から知っているとかそういう人限定です。

 それにミツヒデ様は色々と俺に対して態度が変わりすぎてませんか?」

 

 これは純粋に疑問だった。何故俺に対して態度がそこまで変わったのだろうか、と。

 別に俺が何かをしたわけではないし、ミツヒデ様と特別何かを話したわけでもない。だというのにどうしてだろうか。

 

「あぁ、その、な……最初は怪しいと思っていたが、ヨシテル様の為に働いている姿や、私ではどうしようもなかったヨシテル様の精神的な支えになったり、義昭様がいつも暗い表情をしていたのを笑顔にしたことだったりと色々とやってくれていたからな。

 ただ、どうにも最初に厳しい態度を取っていた手前、それをいきなり変えることも出来ずにいたんだ……

 そんな中であんなことが起きて、ああいう話をしただろう?その時に、何でも出来る完璧な人間のように思っていたお前が、実はそんなことはないヨシテル様と同じで抜けているところがあるのだとわかってな。

 なんだか、そんな相手に厳しい態度を取り続けるのも、ヨシテル様と義昭様のことで嫉妬をし続けるのも馬鹿らしくなったんだ」

 

「……俺、そんな完璧な人間のようでしたか?割と適当なところとか、どうしようもないところとかあったと思いますけど……」

 

「私の見ている範囲では、だ。ヨシテル様や義昭様を相手にしているときはそうだったのかもしれないが、私と話をしたり何か任務で一緒になった時は見事なものだった。

 まぁ……今になって考えると、私の態度のせいもあったのかもしれないが……」

 

「そうですね……ミツヒデ様の見ている前では失敗は許されない。くらいには思ってましたね」

 

「それが原因か……うむ、まぁ……私が悪かった、ということか……」

 

 そういうことだったのか。まぁ、失敗は許されない。ということで慎重になっていたし仕方ないか。

 しかし何と言えば良いのか。そういうことを気にしているミツヒデ様は普段とは違う姿であり、普段は変人だとか思うこともあるが、見目麗しい方でもあることから大変可愛らしい。

 

「気にしないでください。そういうことであれば仕方ないと思いますよ。

 弟扱いというのは仕方ないと思えませんが」

 

「いや、それはもう、な。それこそ仕方ないと諦めてくれ」

 

「……ミツヒデ様、そこはもう少し考えてくれませんか?」

 

「すまない、それは無理だ。私の中でお前はもはや困った弟だからな」

 

 そう言ってから少し困ったように笑うミツヒデ様は、それでも何処か楽しそうに見えた。

 こうして見ると、前まではミツヒデ様と親しくなれるというか、信用してもらえるかと少し不安に思っていたのだが、もはやそんな心配は必要なさそうだ。

 だがそれは置いておくとして。随分と油断しているというか将棋を指す手が甘くなっている。そんなつもりはなかったのだが……これは特に言わなくても良いか。

 

「困った弟ですか……普通に同僚とか、仲間ってくらいで良いんですけど……」

 

「もうお前に対する対応はそれで決まりだ。諦めてくれ」

 

「はぁ……いや、何を言っても聞きそうにありませんから諦めますか……」

 

「あぁ、そうしてくれ」

 

 今度は非常に楽しそうに笑った。ミツヒデ様が俺にこうした表情を見せてくれるのはもしかすると初めてのことかもしれない。ヨシテル様と義昭様が関わることであれば良くあることなのだが、今回はあの二人が絡んでいない。

 珍しい物を見た、という気持ちと、良い物を見た。という気持ちになり、小さく笑みを零してしまう。

 そうしてその後もそんな雰囲気で打ち続けているのだが、ミツヒデ様は非常に油断しているのか差す手がどんどん甘くなっている。話をするのが楽しくなっているせいなのだろうが、普段では絶対にありえない状況になっていた。

 これはそろそろ言うべきだろうか。全部終わってから言うようなことがあればたぶん怒られてしまうし……もはや挽回のしようもない状況になっているので今更だとは思うが。

 

「ところでミツヒデ様」

 

「ん、どうした?」

 

「盤上見てます?」

 

「何を言っているんだ。当然見ているに決まって……あ……」

 

「飛車角は最初に落ちて、歩は全滅、香車も落ちて桂馬も落ちました。金銀ともに一枚落ちて残り三枚ですよ。

 そちらの手元にあるのは歩が数枚と桂馬が一枚、此処からどうひっくり返すのか楽しみですね」

 

 うん、非常に楽しみである。良く考えると俺の事を弟扱いしてそれについて諦めろと言ってくるような相手だ。こういうところで容赦する必要は無い。

 それに元々は精神攻撃を仕掛けながら揺さぶって行く予定だったのが、楽しく会話して集中力を削ぐということになっただけだ。何ら問題は無い。

 

「ま、待て!この状態は……無理じゃないか!」

 

「いえいえ、こう……歩と桂馬を使って頑張って成金という手段を使えば多少は……」

 

「それまでに落とされるか、成った途端に落とされるのが見えているぞ!」

 

「いやぁ、大変ですね。あ、金貰いますね。変わりにこの成金なら持って行って良いですよ」

 

「貰ってもそれ歩だぞ!くっ……此処からどうにか逆転を……!」

 

 そんな会話をしてからはミツヒデ様が凄まじい集中力でどう打てば良いかと考えたが、まぁ、無理である。

 その後は一方的に俺が攻め、宣言通りに王将以外の全ての駒を奪い取ることに成功した。

 

「さて……詰みまでどうやればいいでしょうか」

 

「状況的にもう詰んでるんだが……」

 

「いやいや、動かせないくらいに、ということで」

 

「……投了以外ないか……」

 

 ということでミツヒデ様の投了でこの一局は終わりとなった。

 非常に悔しそうにしているミツヒデ様の前には多くの駒に囲まれた王将がほぼ身動きの取れない状況でぽつりと置かれている。それを見ているミツヒデ様は非常に悔しそうだった。

 

「……結城!」

 

「さて、それじゃ湯飲みは片付けますから将棋盤の片付けをお願いしますね」

 

「もう一局だ!次は負けない!」

 

「あ、明日の夕食は昼過ぎにでも教えてください」

 

「待て!もう一局!もう一局だけ……!」

 

「ではお疲れ様でした。そして、おやすみなさい」

 

「だから、もう一局だけで良いから……!!」

 

 そんなことをしつこく言い続けるミツヒデ様を置いて湯飲みと急須を片付けるために厨房へと跳ぶ。もう遅い時間になっているので侍女などは居ないが、さっさと片付けて俺も休むとしよう。

 流石に跳んで逃げた俺を追ってくるようなことをミツヒデ様はして来ないとは思うが……もしかすると明日また将棋をしなければならないかもしれない。

 それに対してため息を零してから、それでも、前までとは違って今ならばそうするのも楽しいのだろうな。と思って小さく笑んでしまう。

 少し不安に思っていたことも解決して、今日は良い気分で眠れそうだ。そして、きっと明日はヨシテル様や義昭様と色んな話をして、また夜にミツヒデ様と将棋を差す。そんなありきたりでありながらも楽しい一日にが来るだろうと思うと、何だか嬉しくなった。




ミツヒデ様と和解してからの、更に仲良くなる話。
こう、厳しい態度だったミツヒデ様と親しくなって優しい対応をされるようになって、それから更に仲良くなった時に素の笑顔とか見せて欲しい。

次回、ようやく安芸か四国。

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