――様といっしょ   作:御供のキツネ

50 / 60
オリ主は遠慮しなくていい相手にはあまり遠慮しない。
そして容赦もしない。


カシンさまといっしょ そのに

 奥州では伊達様と小早川様の二人と出会い、視察も行うことが出来た。諸国を回って様子を見てくるという任務と、戦国乙女の方々と会って榛名の欠片を陽の力へと少しばかり傾けることにはきっと成功したはずだ。

 それと小早川様に言われた通りに、折を見てから自分の気持ちとやらに向き合わなければならない。

 まぁ、それよりも先に今から向かっている場所が俺にとっては微妙に厄介なところなのでそっちに意識を割かなければならないのだが。

 とある山奥、幾多にも張り巡らされた結界を越えて辿り着くのは人を寄せ付けることのないこの場所には不釣合いなほどに大きな屋敷。その屋敷の門の前には一人の忍が門を守るために佇んでいた。

 

「結城か……」

 

「お久しぶりですね、紫苑。カシン様に呼ばれていますので通していただけますよ」

 

「カシン様からそのような話は聞いていないが……良いだろう、通れ」

 

「随分とあっさり通しますね……以前であれば一戦交えるくらいしたはずですが」

 

「それをしたせいで門は全壊、塀は半壊、私は半死半生、鬼灯も同じく半死半生。結城が全て直して、治療もしてくれたが、また同じことをするわけにはいかないからな……それに結城であれば通しても問題はないと判断している」

 

「なるほど……次は屋敷全壊くらいしようかと思っていたので残念ですね」

 

「そんなのだから私は仕方無しにお前を通すのだ!全く、カシン様のお気に入りでなければ斬り殺しているというのに……!」

 

「出来ると思いますか?」

 

「……そこはそれ、その……が、頑張れば出来るかもしれないから……!」

 

 初対面のときのような態度を貫き通そうとしていたようだが、そうはいかない。というか紫苑はからかえば面白くて、そういう意味でカシン様に気に入られているのだからこういう反応は当然と言えば当然かもしれない。

 あの方は遊んで楽しい人間を気に入るようになってきているのだから仕方が無い。そして紫苑はからかうと非常に面白いのだから、普段からカシン様に遊ばれていそうだった。

 

「そうですかそうですか。ところで紫苑、カシン様は相変わらずのご様子で?」

 

「ん?そうだな……確かにカシン様は相変わらず一人でふらっと何処かに出て行ったと思ったらいつの間にか戻ってきていたり、かと思えばユウサイの姿で京や駿河に遊びに行ったり、そのことに気づいて追いかけると入れ違いで屋敷に戻ってきていて、何処に行っていたのか、と怒られたり……本当に相変わらず自由すぎる方だ……」

 

「あぁ、本当に相変わらずですね。主に紫苑と鬼灯で遊んでいるところとか」

 

「私と鬼灯は遊ばれているのか!?」

 

「遊ばれてますよ。お二人はカシン様のお気に入りの玩具らしいので良かったですね、カシン様から必要とされているようで」

 

「お気に入りの玩具……いや、だがカシン様のお気に入り且つ必要とされていると思えば……有りか……!」

 

 紫苑にとってはそれはそれで有りらしい。俺ならば絶対にお断りである。

 まぁ、カシン様のことが大好きというか忠誠を誓っている紫苑にとってはどんな理由であろうと気に入られていたり、必要とされるのは嬉しいのだろう。

 ただ、同じく忠誠を誓っている鬼灯の場合は気に入られていることは嬉しいが玩具として、という点で喜ぶべきか嘆くべきか考えるのではないかと思う。

 

「そういえば、鬼灯はどうしたんですか?」

 

「ん、あぁ……鬼灯ならカシン様の命によって団子を買いに行っているぞ。

 みたらしと餡子、それときな粉に胡麻だったか……それと確か饅頭や羊羹も……」

 

「あの方はどれだけ食べる気ですか」

 

「最近食事を出しても今は饅頭を食べているから必要ないとか、それよりも今は団子が食べたいとか、豊後でカステラが売られているからそれを買ってこいだとか、間食ばかりだがな……」

 

「何でそんなのを許してるのかわかりませんけど、ちゃんと叱らないと。お菓子ばかりじゃなくてご飯も食べなさい、と」

 

「そこでカシン様を叱るという選択肢を選べるのはお前くらいのものだぞ……」

 

「選べないんじゃなくて、選ばないだけの紫苑にそう言われましても」

 

 子供か、と思って叱れば良いと口にはしたが、紫苑と鬼灯には厳しいだろう。カシン様の為ならば、カシン様が望むのならば、と何でもかんでもカシン様カシン様の二人である。

 はっきり言うと、子供を甘やかし続ける親のようなもので、あまりよろしくはない。

 そして、そんな感じだから俺は選べないのではなく選ばないと言った。まぁ、それを理解しているようで、紫苑は俺から目を逸らしたのだが。

 

 そんな紫苑に言いたいことはあるが、あまりカシン様を放っておくと面倒なことになるのでそろそろ屋敷の中へ入れてもらおう。

 

「まぁ、それはそれとして。

 カシン様をこれ以上待たせるのも何ですし、通りますよ」

 

「ん、あぁ……呼ばれているという言葉を信じるならば、カシン様がこの頃機嫌が悪かったのは結城が来なかったからだろうな。

 一応言っておくが、カシン様は今非常に機嫌が悪い。気を付けろよ」

 

「帰って良いですか?」

 

「お前が原因なんだから帰ろうするな!

 良いか、カシン様の機嫌が悪いと私と鬼灯が無茶を言われるんだぞ!」

 

「それっていつものことじゃ……あぁ、いえ、なんでもありません。大人しく向かいます」

 

 言ってから歩き出すのだがまだ後ろで紫苑がキャンキャンと何かを言っている。だがそんなものは関係ないと放置して屋敷の中へと歩を進めた。

 この屋敷だが、辿り着くまでの間に幾多にも張り巡らされた結界を越えなければならないことも大変だが、中に入ると更に厄介なことになっている。具体的に言えば幻術や結界で普通に歩けない。

 カシン様の忍びである紫苑と鬼灯は問題なく歩けるのだが、完全に部外者の俺ではそうは行かない。わざわざ幻術を見破り、結界を解いて歩く必要があるのだ。

 ただ、何度も訪れていることもあってどういった幻術や結界を張るのか傾向が分かっているので今となっては特に気を張り続けることなく屋敷の中を進むことが出来る。

 そして屋敷の最奥の広間に辿り着くと、其処には当然この屋敷の主であるカシン様が待っていた。

 

「遅いわ!!」

 

「いやぁ、色々と忙しかったので……」

 

「我が立ち寄れと言ったのであれば真っ先に来るのが道理であろうが!」

 

「……どうしてカシン様はそうもユウサイ様の体を使っている時と性格が変わるんでしょうね……」

 

「ふん、あれはあくまでも細川ユウサイの性格に寄せているだけのこと。

 まぁ良い。結城、我が貴様を呼んだ理由はわかっていような」

 

「榛名のこと、榛名の欠片のこと、呪いの起源のこと、チョコレートのこと、とかその辺りですかね」

 

「概ねその通りだ。榛名の欠片についてはイエヤスから聞いているな」

 

「ええ、カシン様が教えてくれなかったことも丁寧に教えてくれましたよ」

 

 何で教えてくれなかったんですかね、という思いを込めて皮肉っぽく言ってみたのだがカシン様はニヤニヤと笑うだけで効果はあまりなかったように思える。いや、むしろ俺の答えを聞いて非常に楽しそうにしているのである意味では効果があったのか。

 

「そうかそうか、やはりイエヤスは榛名の欠片について結城に教えたか。

 であれば結城、貴様はどうするつもりだ?いや、聞くまでもなく貴様は榛名の欠片を陽の力へと傾けるのであろうな。ヨシテルのことを想えばこそ、な。

 どれ、我が一つより深き闇の力へと傾けてやろうか」

 

 そう言ったカシン様はニヤニヤとした笑い方ではなく、悍ましさを感じさせる凄惨な笑みを浮かべていた。

 しかし、なんと言うか、その……俺は特に陽の力に傾ける気はないのだが。

 

「カシン様、楽しそうなところ申し訳ありませんが、無理に陽の力に傾けてしまおう。なんて考えてませんよ?

 現状が問題ないのであれば、闇の力に傾いていても良いかな。とか考えてますし」

 

「は?貴様……本気で言っているのか?」

 

「ええ、本気ですよ。流石に闇の力に染まりきるのはお断りですけど、今くらいであれば問題はありませんから。

 まぁ……戦国乙女の方々は基本的に陽の力ですから、俺とカシン様だけ闇の力というある意味で仲間外れ状態になるというのが問題と言えば問題かもしれませんが」

 

 とは言ったが、毛利様は見た目が闇の力とか言われても信じてしまいそうである。あの方の場合はどちらなのだろうか。闇や悪しき気を祓い、迷える魂を鎮めることも出来るのできっと陽の力だとは思うのだが。

 それにしてもカシン様の今の顔は非常に面白い。普段であれば決して見せないような、口を開けて呆けているその表情は貴重なものだ。とりあえずその表情は覚えておこう。何かに使えるときが来れば投射術で寸分違わぬ今のカシン様の表情を紙にでも投射してばら撒いてやろう。

 

「待て、貴様はそれで良いのか?我が言うのも可笑しな話ではあるが、闇の力に傾けば傾くだけ陽の力に傾きづらくなるのだぞ。既に貴様やイエヤスが思う以上に闇の力に傾いているのだ、後戻りが出来ぬようになるぞ?」

 

「そこで心配してくれる辺りカシン様も変わりましたよね……」

 

「……別に貴様を心配しているのではない。ただ確認を取っているだけだ。

 だが……はぁ、貴様がそう言うのであればわざわざ我が手を出す必要はないな」

 

「おや、良いんですか?」

 

「構わぬ。それだけ闇の力に傾き、そして呪いの起源を宿していれば放っておいても闇の力に染まろうものよ。

 ……以前の我のようになるか、変わらず貴様であり続けることが出来るか。それは貴様次第だがな」

 

「問答無用で以前のカシン様のようになるかと思いましたが……どうにかすれば特に変わらない、と?」

 

「貴様であれば、な」

 

 どうにも以前から思っていたことではあるが、カシン様は俺のことについて、俺以上に色々と知っているような気がする。まぁ、榛名の欠片についてはカシン様は見れば分かる。程度のことなのかもしれないが、今回の闇の力に染まったとしても俺ならば何とかなるかもしれない。というのは俺が知りえない俺自身の何らかの情報がなければ判断は出来ないはずだ。

 ただ、それについて言及したところでカシン様は絶対に答えてはくれない。そういう方だということは理解している。

 

「まぁ良いわ。では榛名についてだが……貴様は榛名を欲するか?」

 

「特に必要はありませんが……毛利輝元様がどうにも榛名を欲しがっているようですね。って、そうだカシン様。聞きたいことがあります」

 

「何だ?」

 

「甲斐にて怨みの集合体を見つけましたが、あれカシン様の術のせいですよね」

 

「我は甲斐になど術を使ってはおらぬが?」

 

 俺の言葉を聞いて愉快そうな笑みを浮かべたカシン様は、術は使っていないと否定する。

 ということは本当に今回、そういった術は使用していないのだろう。そう、使用していないだけだ。

 

「では、そういったことが出来るような呪具をどなたか……そうですね、毛利輝元様に渡したのではありませんか?」

 

「ほう、何故そう思う?」

 

「あれはどう考えてもカシン様の術が影響していますし、わざわざそういった物を使っておく必要があるとすれば榛名を求めて暗躍している毛利輝元様くらいですから。

 それに室生様から聞いた情報と、部下を走らせて集めた情報に寄れば各地で斉藤様の目撃情報があります。ですので、カシン様が毛利輝元様に与えた呪具を斉藤様が使った。そのうちの一つを甲斐で見つけた。というところでしょうか」

 

「良いだろう、及第点をくれてやる」

 

「ということは、まだ他にも何かあると」

 

「特に隠すことでもない故に教えてやろう。毛利輝元には呪具の他に封印の塔の結界を解く道具を渡してある。

 この国をより掻き乱すようであれば我としては動き易いと思ったが……やれ、どうにもあれは使えん男よな。動くべき時に動かず、今になって漸く動き始めたわ。

 泰平の世などという多くの者が油断している今になって動くというのは手ではあるが……いや、それでもそちらに気づけば動く者も多かろう。やはり使えぬ」

 

 カシン様の毛利輝元様へ対する評価が厳しすぎるように思えるのは気のせいだろうか。

 いや、カシン様としては自分が行動を起こす前に適度に掻き乱してくれれば陽動程度には使えると思っていたのに、その素振りすら見せずに姿を消したのでカシン様としては忌々しく思っているのかもしれない。

 それでも俺としてはカシン様の言うように泰平の世だからこそ動いている。というのに納得してしまった。ポンコツ化の進む戦国乙女の方々では気づかないうちに毛利輝元様が目的を達成するというのは決して有り得ない話ではないからだ。

 まぁ、それでも元々毛利輝元様を探し続けている毛利様が居るので果たして本当にその考えで動いたとしてどれほど効果があったのか、と考えるとあまり良い手ではないのだろう。

 だが俺にとって重要なのはそこではない。

 

「封印の塔の結界を解く道具ですか……思っていたよりも状況は悪そうですね……」

 

「我にしてみれば、あの者が榛名を手にしようが関係ないと思っていたのでな。いや、実に申し訳のないことをしたなぁ?」

 

「心にもないことを言うのやめてください。しかし……そうなれば此方としても早い段階で手を打つべきですね」

 

「そうであろうな。手を打てるならば打つが良い。

 あぁ、我に助力を願う、などと戯言を抜かすなよ」

 

「言いませんよ。毛利輝元様に関しては此方でどうにかしますから」

 

 事実今回の件に関してカシン様に助力を願うことはない。

 もしカシン様の力が必要になることがあれば、それはきっと榛名を使って何かする必要が出てきたときくらいだ。なるべくならカシン様には大人しくしておいて欲しいので。

 

「そうか、であればこの話は仕舞いとしよう。

 ならば次は我の呪いの起源だが、聞きたいことがあるのではないか?」

 

 聞きたいことはある。それをわかった上でこうして問いかけてくるのがカシン様らしくはあるが、それで聞いたことに対して全て答えてくれるとは限らないので毎度毎度困ってしまう。

 それでもカシン様に問いかけ、答えを貰うことで個人的には好転するのでそれはそれとして諦めているのだが。

 

「少し前に眠っている時にあれを見ましたが、カシン様そっくりですね。

 まぁ、奥方様の封印術などがありましたし、間違いはないかと。それときっとあれは俺の意識の深層とか、そんな感じだったのかもしれません」

 

「……見た目に関しては我は知らぬが、我の憎悪であるならば似ていても可笑しくはあるまい。それでそれがどうかしたか」

 

「いえ、実はですね、それを何処かで見たことがあるような気がして……で、変な話ですけどカシン様は何か知らないかな、と」

 

「知らぬな。あぁ、知らぬとも。我に聞くでないわ」

 

「……?あぁ、いえ、そうですよね……妙なことを聞きました」

 

 何か違和感を覚える返答だった。普段であれば知らないまでももう少し言葉を重ねるはずなのに。

 例え俺が聞いたことが、カシン様にとって全く関係のないことであってもだ。

 それなのに今回は知らない、聞くな。それだけだった。もしかしたら何か知っているが知られたくないのかもしれない。ただ、だからと言ってしつこく聞いても答えてはくれないだろうし、下手に聞いて機嫌を損ねるわけにもいかない。

 結局は俺が引き下がるしかないのか。

 

「ただ、呪いの起源について我が言えることは……貴様があれを斬ることが出来れば消えるだろうさ。

 当然、憎悪は我に戻ることはない。下手に手を加えた結果、あれが我に戻れば貴様にとっては厄介だろう?

 で、あるならば斬って見せよ。そのためであれば多少を手を貸してやろう。どのような決着となるか、暇つぶし程度にはなろうものよなぁ?」

 

 と思ったらいつも通りのカシン様だった。さっきの違和感は俺の気のせいでしかなかったのだろうか。

 

「では、斬るためにはどうすれば良いんですか?」

 

「貴様の意識を起源のある深層まで落とし、そこで殺し合えば良かろう。

 ただ、我の憎悪故貴様では勝てぬやもしれぬ。そうなれば貴様は死に、憎悪は我に戻る。だが貴様があれを斬ることが出来れば貴様の抱える問題を幾つか解決することになろう。

 そうさな……榛名を使え。多少は貴様に勝機が見えるだろう」

 

「なるほど……ですが、俺に榛名が使えますか?」

 

「我が制御してやる。我の娯楽のためであれば、その程度は手を貸してやろう」

 

「……わかりました。では毛利輝元様の件が片付いた暁にはどうかご助力を願います」

 

「あぁ、任せておけ。榛名の制御程度、我にとっては児戯にも等しいものよ」

 

 違和感はなくなったが、カシン様は自分のためだと言いながらも随分と俺に協力してくれるようだった。

 普段であればもう少し渋るなり、手を貸して欲しければ、と何か交換条件を出してくるはずなのに、どうしてだろうか。もしかすると呪いの起源、それを斬らせることでカシン様に何か得るものでもあるのだろうか。

 もしくは今更になって憎悪を取り戻そうとしているか。いや、それはないか。今のカシン様には以前までの憎悪に対して未練などはなく、それがどうなろうが、もはや関係ないという考えを持っているはずだ。

 あくまでも俺の想像と予想でしかないそれはきっと当たっていると思う。カシン様は口では否定的なことを言うが、今の生活やあり方を気に入っているのだから。

 

「さて、ではそれらについてはもう良かろう。

 最後に話すべきことだが……」

 

「あ、カシン様。チョコレートいります?」

 

「ふん、どうしても、と言うのであれば受け取ってやらんこともないぞ?」

 

 真面目な話は終わりということでチョコレートを話題に出してみたのだが、どうしてこうこの方は上から目線なのだろうか。それにユウサイ様の体であればまだ違うのだが、今のカシン様はチョコレートが欲しいと顔に書いてあるように見える。

 やはり自分の感情を隠すことなく表現する、カシン様本来の姿はこういうところがわかりやすい。言葉に関しては辛辣なものが多いが、俺としてはどういう感情を持っているのかわかりやすい今の姿の方が好ましく思える。

 単純に、対処する際に、もしくは腹の探り合いをする際にやり易いから、という理由ではあるのだが。

 

「あ、それほどではないので良いです」

 

「どうしても、と言うのであれば受け取ってやらんこともないぞ?」

 

「カシン様、その結晶を浮かび上がらせるのやめてもらえません?それから光線飛ばすとかやめてください」

 

「どうしても、と言うのであろう?」

 

「はいはい。どうしてもカシン様に受け取ってもらいたいので、良ければ受け取ってください」

 

「そこまで言うのならば受け取ってやろうではないか」

 

 攻撃するための結晶が浮かんでいたが、その先端は全て俺に向いていた。もしチョコレートを渡すことを渋るようであれば本気で攻撃されていたに違いない。

 しかし、素敵忍術で取り出したチョコレートを渡すと口では偉そうにしながら、そして表情を変えないように気をつけているようだが、微妙に嬉しそうにしているのがわかる。それを指摘すると絶対に攻撃されるので黙っておくが。

 

「ところでカシン様。紫苑から聞きましたが鬼灯に団子や饅頭、羊羹を買いに行かせているらしいですがちゃんと普通の食事もしましょうよ」

 

「我に食事など特に必要はない。であれば何を食おうが勝手であろうが」

 

「そういう問題ではなく、折角用意してもらったんですから、ね?」

 

「断る。団子があるならそれを食えば良い。饅頭があるなら饅頭を、羊羹があるなら羊羹を。

 まぁ、今はチョコレートがあるならばそれで良いだろう」

 

「お子様ですか」

 

 ご飯よりもお菓子が食べたい!ということらしい。本当にお子様そのものな考えだった。

 

「ふん、関係ないわ。それよりも結城、もっと寄越せ」

 

「はぁ……仕方ありませんね……」

 

 何を言っても意味がないことを悟って追加のチョコレートを渡す。

 それを受け取って満足そうに頷くのを見ながら先ほどの違和感について考える。

 呪いの起源を見て、何処かで見たことがあるような気がした。それについて聞いたらあの反応だ。何か意味があるに違いない。ただ、それにどんな意味があるのかまでは現状ではわからない。

 もしかすると、意外と重要な何かなのかもしれないので、もう少し気に掛けておいても良いのではないだろうか。

 そんな風に考え込んでいたが、とりあえずは保留することにする。今は目の前の、と言うほどではないが毛利輝元様のやろうとしていること。それに対して気を向けておかなければならないのだから。




甘い物大好きで子供っぽいカシン様とかどうでしょう。個人的には良いと思います。
お菓子食べてばかりでご飯食べられないカシン様とか、良いと思います!

カシン様がお菓子頬張ったりする姿とか絶対に可愛いと思うんですけどどうでしょうか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。