――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は万能型であり、特化型には劣ることがある。


マサムネさまといっしょ

 越後で上杉様から封印の塔や榛名、それと八咫鏡についての話を聞いた俺はその後予定通りに越後全土を視察した。既にその視察自体も慣れたもので特に問題なく終えることが出来た。

 今回は流石に室生様と遭遇するだとか、斉藤様にストーキングされるだとか、そういうこともなかったのである意味では拍子抜けだと思ったのは内緒だ。

 それと、視察を終えてから越後を出立する際に上杉様には毛利様と協力することは出来るか。と聞いたところ毛利輝元様の企みを阻止することは、封印の塔を守ることでもあるということで無事協力を取り付けることに成功した。

 多くの戦国乙女に協力を求める。というのも手かもしれないが、それだと此方の動きを勘付かれ易くなるので踏みとどまっている。協力を求めるにしろ、求めないにしろ、どちらにも利点があるというのが悩みどころになっているのだ。まぁ、俺が声を掛けて協力を仰ぐことはないだろう。と予想はしているのだが。

 とりあえずは毛利様、上杉様、それと勝負に勝ったのでいざとなれば協力してもらえる武田様の三人がいるだけでも充分な戦力だろう。毛利輝元様が俺に予想の出来ないような面倒なことをしていなければ、ではあるが。

 

 そうした話を上杉様としたのは数日前のことで、現在俺は奥州の港町に来ている。

 奥州を治めるのは伊達様ではあるが、伊達様が全ての執務執政を担当しているのではなく、伊達家の人間が総出で行っているのである。そのため、他のように居城に赴いて挨拶をする。という手段を取った所で伊達様が其処に居るとは限らない。

 なので今回は情報を集めながら奥州を視察し、この港町に居るという話を聞いたのでこうして足を運ぶこととなったのだ。まぁ、伊達様が居る理由はこの港町に魚介類を求めてやって来た。というものなのだが。確か伊達様の好物が魚介類のはずだから、そのためなのだろう。と予想は出来る。

 なんと言うべきか、伊達様は伊達様で結構自由な人なのかもしれないと思ってしまった。どこぞのカシン様と比べるとそうでもないと言えるのだが。

 

 港町を歩きながら様子を伺っているが、港町特有の活気とでも言えば良いのだろうか、他の町とは違った活気に溢れている。豊後も港町と言えば港町なのだがあそこは南蛮との交易が行われている場所で、漁師たちの町という感じではなかった。

 だがこの町は正に漁師たちの町と言える。獲れたばかりの魚や天日干しにされた干物、少し待ちの中心部に近寄れば魚介類をふんだんに使った料理を提供している料理屋などが軒を並べている。美味しそうな匂いがしてくるので微妙にお腹が空いて来るような、そんな気がした。

 とりあえず今日の昼食は適当に店に入ってから食べることにしよう。新鮮な魚介類を使った料理というのは今の時代、港町くらいでなければそうそう食べられるものではない。

 まぁ、俺が港町で新鮮な魚介類を手に入れてから京まで跳んだりすればその限りではないのだが。ヨシテル様か義昭様が望むのならばヨシテル様の忍である俺はそれに異を唱えることなく実行するだろう。ただヨシテル様の命の場合は異を唱えないまでも内心では思うところも絶対にあると思う。お使いに使われる忍なんてのは大体そんなものだ。

 

 そんなことは置いておくとして、港に辿り着いてざっと見渡してみると一箇所だけ他よりも人が集まっている場所を見つけた。何があるのかと気になったので近づくと伊達様が何故か魚を捌いて刺身を作っていた。

 その刺身を振る舞っているというか、魚を獲ってきた漁師がそれを伊達様に渡して、伊達様が捌いてからそれを漁師に渡しているようだった。

 見事な手際で捌く様子は、普段二刀を操っている姿以上に慣れているような気さえする。そして非常に活き活きと包丁を振るっているようにも見えるのはどうしてだろう。

 そんな様子を見ていると伊達様と目が合った。ただ適当な町人に化けているので俺だとは気づかなかったようだが、それでも少しだけ首を傾げいていたので何かしら勘付いている可能性はある。それでも手を止めない辺りは流石と言うべきかなんと言うべきか。

 ただそうして見ているとどんどん人が増え、捌かなければならない魚の量も比例して多くなっているので大変そうに見える。手伝うべきか、そのまま見守るべきか少し考えてしまう。

 まぁ、本来の目的が伊達様に会うことなので此処は手伝っておくべきだ。というわけで変化を解いてから一歩前に出ると伊達様が驚いたように目を見開いたがすぐに納得したようにも見えた。

 

「結城殿!もし良ければ手伝ってはもらえないか!」

 

「ええ、構いませんよ。何故こんな状況になっているのかはわかりませんが、協力します」

 

 手を洗うために水を張った桶があるのでそれで手を洗ってから置いてある包丁を手に取って捌くようにと渡された魚を捌いていく。並んで同じことをしているが流石魚料理が得意だとか、魚介類が大好きだというだけあって俺よりも手際が良く、感心してしまう。

 これでも料理に関しては俺の知り合いの中では一番とまでは行かないまでも上手だと自負していたが……普段から魚を使った料理や魚を捌くことに慣れている分、伊達様は俺よりも上手だということだろうか。

 ヨシテル様や義昭様に振る舞うこともあると考えれば一度伊達様に魚料理について習うのも手なのかもしれない。なんてことを思いながら作業を続ける。

 

「流石だな、安心して任せられる」

 

「手伝い程度でしたら問題はありませんよ。まぁ、伊達様ほどの腕ではないので邪魔にならないように気を張っていますけどね」

 

「私なんてまだまだ若輩だ。剣も料理もな」

 

「相変わらず謙遜をしますね……純粋な剣の腕前で言えば全国でも上位に入りますし、魚料理にしてみれば相当な腕前かと思いますが」

 

「剣ではヨシテル殿に及ばず、料理で言えばその道の職人に劣る。ならばまだまだ若輩だな。

 どちらも精進あるのみ。道は長く険しいものだ……」

 

 うん、微妙に話がずれているような気がする。伊達様はなんと言えば良いのか……こう、少し天然が入っているような気がしてならない。普段であれば気にならないのだが、こうして普段しないような話をすると少しずれていたりするのだ。例の如くヨシテル様が天下泰平を成した後から。

 もうそういうものだと思ったほうが良いのだろうか。ヨシテル様が天下泰平を成す。平和になる。戦国乙女問わず皆気が緩む。ポンコツ化とか天然化とかその他諸々。嫌な連鎖だ。

 まぁ、それでも手を止めていないのだからちょっとくらい可笑しな天然になっていても問題はないのだろう。

 

「それにしても、この状況の説明をお願いしても良いですか?あ、手は止めませんのでご安心を」

 

「ん、確かに説明しなければならないな。

 まず私は新鮮な魚が欲しくてこの港町にやって来たのだが、漁師に話をしたら捌いて欲しいと言われたのだ。それでなら魚を捌く代わりに幾らか獲ってきた魚を分けて欲しいと言ってな。

 その取引は成立したのだが……その、周りの漁師もそれなら自分も、と声を上げて気づけばこの状況に……」

 

「あぁ、そういうことでしたか。いえ、どうしてそうしたのかはなんとなくわかるので納得です」

 

「なんとなくとはいえわかるのか……流石だな……!」

 

 妙な感心のされ方をしているが、それは置いておくとして。伊達様の包丁捌きは見事なもので料理をする人間としてはその腕前が非常に高いことが伺える。はっきり言って見ているだけでも少し楽しい。

 きっとそれは周囲に居る人間全員がそうなのだろうことは表情を見ればわかる。捌いてもらって刺身を食べている人は勿論のこと、伊達様を見ている人たちはみんな楽しそうにそれを見ている。

 あと、ついでに途中参加した俺が伊達様の手伝いをしているのを見て、大道芸の一種か何かだとでも思ったような人まで集まっている。

 ただ捌いているだけなのと、手伝いをしているだけなのに何故だ。いや、伊達様も俺もたまに投げた魚を空中で捌いたりして時間の短縮を図っていたりするのが原因か。

 

「それにしても、全く減らないな……いや、寧ろ順番を待っている漁師が増えているような気もするが……」

 

「増えてますね。伊達様がこうして捌いているのを聞いて人が寄ってきている。というところでしょうか」

 

「特に変わったことはしていないのだが……」

 

「急いでいるせいかある種の曲芸染みてますけど」

 

「この程度急ぎでやる場合は普通だぞ?」

 

 あれ、伊達様ってこういう人だったっけ。もっと冷静沈着、冷たいようで義に厚く面倒見も良い性格だったはずなのになんでこの人はこんなに可笑しな方向に突き進んでいるのだろう。

 パフォーマンスとして空中で捌いていると思ったのに素でやっていたのか。思っていたよりもポンコツ化が進行しているようでちょっと怖い。全戦国乙女ポンコツ化計画とかそんな感じの恐ろしい計画が裏で進んでいるのではないかと邪推してしまう。いや、そんなものあるはずがないのだが。

 

「普通は魚を空中に投げて捌いたりしませんよ」

 

「だが結城殿もやっているだろう?」

 

「俺のはあくまでもパフォーマンスですので。まぁ、する必要はありませんが人が集まっていますしこれくらいやっておけば好印象を抱かれることがあります。そうすると後々使えますので」

 

「なるほど……だが、パフォーマンスか……私にとっては普通のことなのに……」

 

「いや、俺の場合は。ですから気にしないでください。というか落ち込んでないで手を動かしてください」

 

 自分にとっての普通の行動が他人にとってはパフォーマンスだった。ということが思いのほかショックだったようで伊達様は落ち込んでしまった。そして手も止まってしまったので動かすようにと促す。

 量がどんどん増えているので俺一人ではまず間に合わないし、伊達様が動いてくれないとどうしようもない。というか本来これは伊達様がやるべきことなので俺が主導でやるわけにも行かない。むしろやりたくない。

 それに漁師たちも俺より見目麗しい戦国乙女である伊達様が捌いている姿の方が見ていたいだろう。

 

「それにその取引をしたのは伊達様ですよ。途中で投げ出すようなことはしないでください」

 

「む!私はそのようなことはしないぞ!」

 

 軽く挑発してみると思っていたよりも簡単に釣られてくれた。そして先程よりも、いっそ華麗とも言える包丁捌きで次々と魚を刺身へと変えていく。

 それと同時に歓声が挙がる。もはや刺身を作ってもらうことよりも、伊達様の姿が見たいだけのような気がしてきた。というわけで手伝いはするがなるべく目立たないように伊達様の補助を主にやろう。その方が楽だったりするというのもある。

 

 その後やる気を出した伊達様を手伝って漁師たちに刺身を振る舞い終わり、漸く落ち着いて話をすることが出来るようになった。

 

「ふぅ……漸く終わったか……結城殿、手助け感謝する」

 

「本当に少し手伝った程度ですのでお気になさらず」

 

 実際、伊達様を挑発した後から俺がやったことは本当に簡単なことばかりで、あの状況を切り抜けることが出来たのはどう考えても伊達様の成果だ。

 まぁ、それでもちゃんと感謝の意を表するという辺りが伊達様らしいというか、根が正直な善良な人間らしいというか。いや、こんな表現をすると俺が捻くれた人間のように捉われそうなので自重しておこう。

 

「いや、本当に助かった。私一人ではきっと全てを捌き切ることは出来なかっただろうからな。

 それで……何故、結城殿は奥州に、というかこの港町に?」

 

「少し伊達様に用事がありまして……まぁ、奥州を治める伊達家当主としての伊達様に、なのですが」

 

「ふむ……当主ということにはなっているが、実際に統治を行っているのは私ではないからな……その用事の内容によっては力になれないかもしれないぞ?」

 

「そう畏まったものではありませんよ。ただ単純に奥州全土を視察させていただこうかと。

 ヨシテル様の命により諸国を視察して回っていますが、領主である伊達様に話を通しておこうかと思いまして。それに幾らか話も聞いておきたいと思いましたからね」

 

 なんだかんだで今まであれやこれやと見て回った際にもまず領主である方にどういった用件かを伝え、それから視察をしていたので今回もそれを行っているだけである。

 まぁ、伊達様が奥州に居ないようであれば実際に統治を行っている伊達家の方に話をしてから。と思っていたのだが今回は運良く伊達様が奥州の港町に居るということでこうして直接尋ねたのだ。

 

「なるほど……そういうことか。なら自由に見てもらっても構わない。必要ならその旨を記した書状を持たせようか?当主から一筆あれば誰かに邪魔されることもないだろうからな」

 

「ええ、いずれは米沢城へも向かうことになりますので助かります」

 

「米沢城に居るのは今は小十郎だが……結城殿であれば問題はないだろう。見た目は、少々厳ついが……」

 

「片倉様は……そうですね、ご職業を間違えていますよねあれ」

 

 武将と言うよりも農家である。そう、農家。決してヤのつく自由業だとかではない。ほら、葱振り回したりしてるしきっと農家なのだ。片倉様の作る野菜は美味しいので実は時折他の土地で買える特産品と交換したりしているので仲はそれなりに良い方だったりする。

 なので実は書状がなくても問題なかったりするのだが……それはそれ、伊達様からの厚意なのでそれを無碍にするわけにはいかない。こういう場合は大人しく感謝して受け取っておくべきだ。

 それに伊達様の厚意を無碍にしたことが片倉様に知られれば絶対に怒られる。というかあの方は怒髪天と言うようなことになりかねない。

 

「いや、別に間違えてはいないと思うぞ?ちゃんと私の家臣であり、立派に統治を行ってくれている。確かに顔は怖いが……うん、顔は怖いな」

 

「え、あの方は農家だったりするほうが活き活きとしてそうですよね。という意味で言いましたけど?」

 

「…………なぁ、結城殿。このことは小十郎には内密に頼む。その、小十郎は怒るときは私が相手でも本気で怒るんだ」

 

「ええ、そういう話は片倉様から聞いていますよ。それで?」

 

「それに小十郎には私が幼い頃から世話をしてもらっていてどうにも頭が上がり難い。だから怒られるのは少し苦手なのだ……」

 

「なるほどなるほど。それで先ほどの俺が農家の方が活き活きとしていそう。という言葉に対して顔がどうのと言ったのが片倉様に知られると怒られると」

 

「そうだ。だから内密に頼むぞ!」

 

 うむ、必死である。いや、確かに片倉様は怖いから仕方ないのかもしれない。

 俺にしてみれば執務よりも農業をするのが楽しそうで、時折葱で部下の兵士を叩いたりしている姿を見るのでちょっとお茶目な人のような気もしている。伊達様にとっては幼少期からの世話役でもあるようで、怒られた記憶が尾を引いているのかもしれない。

 あの方は非常に優しいし面倒見が良いので怒らせなければ良いだけなのだが……まぁ、幼い頃の記憶というのは払拭しづらいのでそれも原因になっているのだろうか。

 とりあえず、ばらしても楽しそうに思えるが此処は素直に頷いておこう。何かあればばらすかもしれないが。

 

「わかりました。今回は秘密にしておきます」

 

「そ、そうか!助かる、ありがとう!」

 

 そこまで片倉様にばれて怒られるのが嫌なのか。なんというか子供が親に叱られたくない。とかそんな感じに見えてしまうのはきっと気のせいではないと思う。

 うん、ばらすのはやめよう。子供を虐めるなんてことはあってはならないのだから。とか思った俺は悪くない。

 

「ところで伊達様。小早川様と一緒かと思いましたが、違いましたか?」

 

「いや、ヒデアキ殿とは一緒に行動しているぞ。ただ今は私が漁師に魚を貰う為に別行動をしているが……宿で大人しく待っているのではないか?」

 

「そういうことでしたか……まぁ、小早川様が一人で町を散策というのは想像がつきませんから、そう言われると納得です」

 

 あの小早川様のことだから一人で外に出たとしても犬に吠えられるとか、道に迷うだとかで泣きそうになっている姿が容易に想像出来てしまう。もしくは漁師は声が大きいことが多いので、道に迷った末に声を掛けた結果、大きな声で返事をされて怯えていそうだ。

 ……いや、流石に小早川様と言えどそこまではないはず。と思えるような、思えないような。

 

「であればとりあえず小早川様と合流しましょうか。話をするにしても、その後で充分ですので」

 

「あぁ、そうさせてもらえると有り難い。あまりヒデアキ殿を一人にしておきたくはないからな。

 それに一人きりで長い時間放っておくと泣き出してしまわないか心配になってしまうのでな……」

 

 伊達様もそう思うのか。まぁ、小早川様の性格を考えると仕方のないことか。

 

「ではその小早川様が待つ宿に向かいましょう。頂いた魚は俺が運びますね」

 

 言ってから漁師たちが置いていった魚の入った桶を持ち上げる。桶には並々と水が入れられており、更に大量の魚が入っているのでそれなりに重たいのだがこれくらい俺にとっては軽いものだ。当然、俺にとってそうであるように伊達様にとっても非常に軽いのだろう。

 それでもこういう場面では男である俺が荷物を運ぶのが良い。と師匠に教わっているので実践しておこう。まぁ、常識という点で考えればそんな師匠の教えだから。という考えなしでもそうすべきなのだが。

 

「そうか、では頼む。お礼に昼食は私が腕を振るおう!これでも魚料理は得意なんだ、期待してくれ」

 

「ええ、期待させていただきます」

 

 豊臣様が言うには伊達様の作る魚料理は絶品らしい。得意と言うのは知っているし、先ほどの包丁捌きを見れば疑いようもないが、味に関しては食べてみなければわからない。まぁ、あの豊臣様の反応を思い出す限り心配する要素はないのだが。

 それに好きこそ物の上手なれ、と言うように元々努力を惜しまない伊達様であれば俺が思っている以上に美味しい魚料理を作ってくれそうなので心配どうこうよりも期待の方が圧倒的に大きかったりする。

 

「案内するからついて来てくれ。ただ、もしかするとヒデアキ殿が宿の外に出て町を散策している可能性があるから少しだけ回り道をさせて欲しい。

 宿に向かう際に、ヒデアキ殿がお菓子を売っている店を気にしていたからもしかしたら、な」

 

「小早川様は見た目に違わずまだまだ子供ですね……まぁ、そういう方は多いですが」

 

 大友様とか豊臣様とか前田様とか。

 

「確かにそうだな。だが、そういうところが微笑ましいものだと私は思うぞ?」

 

「それはわかります。ただ、もう少し落ち着きを持って欲しいと思いますけどね」

 

 大友様とか豊臣様とか前田様とか。

 

「まぁ……それは私も思うことがあるな……」

 

「ですよね……」

 

「ヒデアキ殿は必要以上に怯えずに落ち着けばもっと強くなれるというのに、どうにもな……」

 

 そっちか。普段の様子ではなく鍛錬に関することだったか。いや、確かにその通りではあるが、小早川様は怯えて混乱して適当に振り回しているのが強いのだから今は放っておいても良いのではないだろうか。

 まぁ、黒葬の滅多斬とか必殺技なのか適当に振り回してるだけなのかわからないようなのでも充分な威力を持っているのは俺としては納得できないのだが。

 ただ小早川様の持っているあの鎌は元々が毛利様の三魂爪のうちの一振りである隆景であることを考えれば、使い手の実力が低くてもある程度の威力は保障されているようなものだ、という考えに行き着く。

 やっぱり納得がいかない。

 

「だからと言ってなんとかなる小早川様ではありませんけどね……」

 

「そうだな……それもヒデアキ殿の個性だから無理に治せとも言えないが……」

 

 何と言えば良いのか、伊達様はまるで小早川様の保護者のように見えてしまう。保護者と言えば毛利様もそうなるのだろうが……あれか、放任主義気味で厳しい父親と傍に寄り添いながら厳しいながらも見守る母親とかそんな感じか。

 ただこんなことを伊達様はまだ大丈夫だが毛利様にばれると面倒なことになるので決して表には出さない。

 そんなくだらないことを考えながらふと思う。そういえば俺は小早川様に会うことは平気だが、小早川様の方が大丈夫だろうか。何度か顔は合わせているが未だに俺に慣れてくれない。やはり初対面で軽く炙ったのが悪かったのだろうか。

 ……まぁ、少しすると落ち着くので良い加減完全に慣れて、挨拶の段階からまともに対応して思いたいものだ。




魚料理が得意なマサムネ様の作った料理が食べたい。絶対美味しい。
それで平静を装っているけど本当は味の感想を聞きたがってそわそわしてるマサムネ様に美味しいって伝えたい。
それで安心したような、嬉しそうな声で「当然だ。魚料理は得意だからな」とか言われたい。

花、打ちました。とりあえずカシン様のハートキャッチしました。
尚、ドはまりした模様。

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