――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は若干枯れ気味。


シンゲン/ケンシンさまといっしょ

 武田様が町に戻り、何をするのかと思えば酒を求めて酒蔵へと迷うことなく突き進んでいった。どうしてだろうかと思いながらも後を付いて行くと周囲の酒蔵よりもひときわ大きな蔵へと入っていった。

 こうした場合は一声かけて入るのが普通だと思うのだが、武田様は躊躇うことなく中へと歩を進めてから大声で人を呼んだ。そうすると少ししてから酒蔵の人間が奥の方から歩いて出てきた。完全に部外者の俺が口を挟むことはないと判断して黙って話を聞いていると、今ある最高の酒を用意して欲しい。ということだった。

 武田様は上杉様と酒を飲む場合は普段から用意出来る限りで最高の物を用意するようにしているらしい。それは上杉様のことを思ってではなく、半端な酒を用意するなんてことは格好悪いとのことだ。

 それは上杉様も同じらしく、甲斐で飲むなら武田様が最高の酒を用意し、越後で飲むなら上杉様が最高の酒を用意する。そしてそれはもはや勝負の一つとして扱われているのだとか。

 相手を唸らせるような酒の用意が出来れば勝ち。出来なければ負け。だがどうにも酒に関しては上杉様に分があるらしく、上杉様を唸らせるような酒の用意は難しいのだと武田様が悔しそうに教えてくれた。

 そんな話を聞きながらふと思い出すのは以前に織田様に頂いたというか押し付けられたというか、どう表現したら良いのか悩むがとにかく酒を頂いた。織田様が自信満々に良い酒だと言っていたのでもしかしたら上杉様を唸らせるというか認めさせることが出来るかもしれない。

 ただ、俺がそれをする理由は特にないので、また二条御所に戻って落ち着けるときにでも飲むとしよう。それに俺は酒ではなく料理担当になっているのだし。

 

 そう考えながら酒が用意されるのを見ているのだが、味見と称して出てきた酒を一つ飲み干してしまった。

 

「美味ぇな!これならきっとケンシンだって満足するに違いねぇぜ!」

 

 とても満足そうな笑顔を浮かべてそう言った武田様は別の酒へと手を伸ばそうとしていた。放っておいても良いのだが、なんとなく武田様がこのまま此処で酒を飲み続けそうな気がしたので止めておく。

 

「武田様、今から飲んでいると上杉様との呑み比べで負けてしまいますよ」

 

「別にちょっと飲んだくらいじゃ変わんねぇぞ?」

 

「万全の状態で挑むべきかと思いますが。まぁ、本音を言えばさっさと食事の用意に取りかかりたいので酒を飲むなら戻ってからにしてください」

 

「戻ってからなら止めないのか?」

 

「はい。武田様が勝とうが上杉様が勝とうが俺には関係ありませんから。俺にとって重要なのは食事とツマミで武田様に美味いと言わせることです」

 

「お前……ヨシテルとか以外のことになると結構淡白って言うか、冷淡なところがあるよな」

 

「忍なんてそんなものですよ。忍が心を砕く相手なんて主やその家族、仲間だけだと思いますし」

 

 こんなことを言っているがそれ以外にも幾らか心を砕く相手はいるがそれをわざわざ言う必要はないだろう。それに一応ヨシテル様の忍として恥ずかしくない程度には気を使っているつもりだ。

 まぁ、こんなことを言ってはいるのだがなんだかんだで世話を焼いてしまったりするのはたぶん俺の性分とかそんな感じのことなのできっとそれは仕方ないことだ。

 

「そんなもんか?まぁ、良いけどよ。

 それなら戻ってから……いや、飲まなくて良いか。どうせケンシンが来たら飲むんだし」

 

「そのことですが……川中島から此処までとなると時間がかかるのではありませんか?」

 

「んー……大丈夫だろ。ケンシンならどうせすぐに来るし問題ねぇよ」

 

「謎の信頼が見えますが」

 

「いつものことだしなぁ。それに馬を走らせれば結構速いからへーきへーき」

 

「……まぁ、上杉様のことは武田様の方が理解しているでしょうから武田様がそう言うのであれば」

 

 実際俺がどうこう言ったところで、上杉様については武田様の方がわかっているのだしその必要性はなかったか。それに少し本気を出せば今から京まで戻るのに半日掛からない俺があれこれ言うのもどこかズレたことなのかもしれない。

 とりあえずはこれで武田様が此処で飲むことをやめて戻るというので、漸く料理の為に動けるようになる。まずは厨房に入って材料は何があるか把握しなければ。肉料理、とは言われたがちゃんと野菜も食べられるようにしつつ、どうせなら上杉さんの好物である山菜も使いたい。それならば何を作れば良いか考えなければならない。

 武田様は白米を大量に食べたいとのことなので該当する料理は何か。そういえば作れる物の中で丁度良いのがあったはずだ。食材さえ揃っているようならそれを作るのも悪くはない。

 

「よし、そんじゃ戻るか。結城が何を作るのか、楽しみにしてるぜ?」

 

「ええ、ご期待に沿えるものが作れると思いますよ」

 

「へっ、自信満々だな!そんなに言うなら期待させてもらおうじゃねぇか!」

 

 意気揚々と用意された酒を呼び出した忍に任せてから酒蔵から出る武田様に続いて歩き、躑躅ヶ崎館へと歩を進めることとなった。ただし、途中であちらこちらの店に顔を出したり、町人たちと話をしたりで思っていたよりも時間が掛かってしまったが、その様子を見る限りやはり武田様の統治は問題のないもののようであった。

 元々全国を飛び回っていたからざっと見た感想としてはどこも平和そのものであったが、こうして落ち着いて見るのとではまた違ってくる。

 後は模擬合戦ではどのように周囲の村への安全を考慮しているのか、それを確認することが甲斐ですべき俺の仕事だ。そしてそれが終われば越後に向かわなければならないだろう。

 躑躅ヶ崎館へ入るとすぐに武田様は侍女たちに声をかけて俺を厨房へと案内させた。どうしてそんなことをしなければならないのか、それを武田様が説明していたがそれでも侍女たちはイマイチ納得していない様子だった。他所の忍に料理をさせるから厨房を使わせる。なんて言われてすぐに納得できるわけがない。というよりも使わせたくはないだろう。

 それでも武田様の言葉である以上は従うほかにはない。まぁ、邪魔をされるわけではないだろうし俺が気にすることではない。食材を確かめて作れそうなら作ろう。とはいえ、道中で聞いた限りでは問題なく揃っているようなので大丈夫だと思うが。

 

 とりあえず厨房に到着してから使っても良い場所を借りて食材を取る。そして調理器具を探してみると丁度良い物を見つけた。実に順調である。後は武田様の忍が採ってくることになっている山菜が揃えば準備は完了する。

 山菜を待つ間に下準備をするのだが後ろの方で料理番の侍女たちが俺の様子を見ている。妙なことをしないように見ているのか、料理をすると言ったからどれくらい出来るのか確認したいだけなのか。それはわからないが俺はおかしなことをするつもりもないので気にせずに下準備を続ける。

 野菜を切り、豆腐を切り、肉に関してはある程度の大きさがあったほうが武田様が喜びそうなのでそこを気にして切り、砂糖や醤油、酒などを混ぜた物を作っておく。何事も準備が大事なのでこういった作業は結構好きだったりする。

 そうした俺の手際が慣れた物であることを見ると感心したように後ろで頷いている気配がする。別にこうして見られること自体はどうでも良いのだが、侍女たちは料理をしなくても良いのだろうか。俺は武田様と上杉様の食事と酒のツマミを用意するのだが、侍女たちは躑躅ヶ崎館に居るほかの武将たちの食事を作らなければならないはずなのだが。

 まぁ、慣れているのだろうし放っておいても問題なく作りそうではある。ひとまず白米を炊くのとほうとうの準備をしなければ。これらに関しては少し早めに作っておいても良いだろう。というか白米を炊くには時間が掛かるので先にやっておかなければならない。ほうとうは食事の前に火をかけてから温めれば良いのでこれもやっておこう。

 

 そんな風に順調に料理の準備だったり、料理をしていくともはや背後から聞こえてくるのは感嘆の声のみで、懐疑的な声や視線は既になくなっている。それと、竈に火をいれる作業を火遁で済ませた際には便利そうという声も聞こえた。俺は竈や焚き火に火をつける際には火遁を使っているが非常に便利である。料理番の侍女がこれを覚えることが出来れば料理も大変簡単になるのではないだろうか。

 ただ、俺の使っている火遁と本来忍の使う火遁とは大きく違っているのでそう簡単なことではないのかもしれないが。

 そうしたことを考えながらも手を休ませることなく料理を続けていると厨房へと入って来る二つの気配があった。一つは武田様でもう一つはどうやら上杉様のようで、本当に躑躅ヶ崎館まで短時間で来ることができたのか、と少し驚いてしまった。

 

「おー!本当に結城が料理してんだな!」

 

「シンゲン、貴方が料理させてるのに何を言っているのよ」

 

「いや、料理が出来るってのは話に聞いてたけど実際に見たことがなかったからさ。もしかしたらヨシテルが見得張ってたかもしれないだろ?」

 

「上様はそんなことしないわよ……」

 

 聞こえてくる会話は非常に楽しそうで相変わらず二人の仲は良好のようであった。ただそれを言うようなことがあれば確実に否定されるのでわざわざ口に出すようなことはしない。異口同音に否定されても仲の良さを見せ付けられているような気しかしないのだが、とりあえずはそっとしておこう。

 それにしても会話内容からすると俺が料理をしている姿を見に来たような気がしてならない。それは構わないのだが、あまり作っている最中の姿というか、現物を見せたくはない。どうせなら食事のときに出して驚いてもらいたいものである。

 

「それと上様のことを悪く言うようなことがあれば結城が怒るわよ」

 

「マジかよ」

 

「ええ、確実にね。結城はあれで上様のことを相当大切に思っているみたいだもの」

 

 そういうことを話すのはやめて欲しい。事実俺はヨシテル様を大切に思っているが、それを他人に言われたくはない。俺と同じようになんだかんだで主を大切にし、それでいて苦労させられているような立花様であれば気にはしないが。

 いや、上杉様は武田様に苦労させられているのだからその点に関しては俺と同じなのか。大体が武田様の思いつきによって苦労させられているというのだからもしかしたら俺よりも大変なのかもしれない。武田様は上杉様に対して遠慮と言うものが全くないのでそれがどれほど大変なこと、もしくは面倒なことなのか想像もしたくない。

 しかし上杉様は付き合いが良いというか、武田様を見捨てることはないし最初は渋々付き合っているのに段々と気分が乗ってくるのか最終的には楽しそうにしているのだから、上杉様にとってはそれほど苦労させられているという感覚はないようにも思える。

 

「でも結城が怒るのって見た事ないし、興味があるけどな」

 

「……そういえばそうね……私も少し興味があるわ」

 

「そんな興味を持たれたからといっても俺は怒りたくはありませんよ、面倒ですし」

 

「結城らしいわね。シンゲン、諦めましょう。無理にでも怒らせようとして上様の耳に入ればきっと上様も相当お怒りになる可能性があるわ」

 

「あー……結城もヨシテルも、お互いに大事にしあってるしなぁ」

 

「そういう恥ずかしいこと平然と言うのやめてもらえませんか」

 

 事実ではあるがそれを言われると非常に恥ずかしいのでやめて欲しい。それを顔に出すことはないとしてもこの二人の場合は恥ずかしがっていると普通に見抜いてしまいそうなので、背中を向けたままの状態と言うのは非常に助かる。

 とりあえず少し落ち着いてから料理をしている手を止めて振り返る。そこに居たのはやはり武田様と上杉様の二人で、既に戦装束ではなく随分と楽そうな着物を着ていた。

 

「そんなことよりもお久しぶりです、上杉様」

 

「ええ、久しぶりね。結城は全国を回ってそれぞれの領地の様子を見ているのよね?それなら次は越後にいらっしゃい。歓迎するわ」

 

「有り難い話ですね。感謝致します」

 

「これくらい構わないわ。それに今日は結城が夕食を作ってくれるらしいじゃない。楽しみにしてるわよ」

 

「そうそう!結城が自信満々に言うもんだから俺もケンシンもすげぇ期待してるからな!」

 

「その期待は裏切りませんから安心してください」

 

 作ろうとしている料理はヨシテル様たちにも好評で、武田様と上杉様も気に入ってくれるとほぼ確信しているのでこうして断言できる。ただ、肝心の山菜が届いていないので未だに手をつけられていない。夕食の時間まではまだあるのだが、時間には余裕を持って動きたいので早めに届けて欲しい。

 まぁ、何も言わずに料理の中に山菜を仕込んでおくのも上杉様の反応が見れて面白いのかもしれないが。

 

「そういえば上杉様。今回行われる模擬合戦の立会人になってほしいと武田様に言われているのですが、その話は聞いていますか?」

 

「ええ、聞いているわよ。私としても結城が立会人になってくれると助かるわ。もし周囲への被害が出そうになっても結城ならなんとかしてくれるでしょうね。

 あぁ、勘違いしないでほしいけれど私もシンゲンもそんなヘマをするつもりはないわ。あくまでも保険として結城には備えていて欲しいっていうだけだから」

 

「なるほど。そういうことでしたらお任せください。最悪の場合は武田様と上杉様だけ隔離して被害が広がらないように手を打ちますから」

 

「隔離って何する気だよ」

 

「地面を隆起させて四方を囲む壁を作ります。その上から水を使って膜を作り武田様の炎と上杉様の雷を封じ込めます。まぁ、お二人が本気になれば容易く打ち破れるでしょうが、それでも被害を押さえ込むことができますので」

 

「……そういうことを簡単にやってのけるから結城は頼りになるわね。本当に、貴方みたいに優秀な忍がいて上様が羨ましいわ」

 

「だな。それに料理も出来るってんだから俺も結城みたいな奴が欲しいぜ……」

 

 上杉様からは忍としての力量を評価され、武田様からは料理が出来る点を評価されている。同じ戦国乙女で、ライバル同士だというのに何故評価する点がここまで異なってしまうのだろうか。

 ある意味武田様らしいと思えるし、上杉様らしいとも思えるので特に残念な気分にはならないのが不思議である。

 それと、俺はあくまでもヨシテル様の忍なので他の方の忍となるつもりはまったくないのであしからず。まぁ、以前までの傭兵のようにして雇われていたときならば仮初の主としては認めていたのかもしれないが。

 

「にしても夕食までは時間もあるし……よし、ケンシン!風呂入ろうぜ風呂!」

 

「今からって、流石に早すぎないかしら?」

 

「良いんだよ、どうせこの後は結城の作った飯食ってから飲み比べするんだぜ?そうなったら風呂入る時間なんてないだろ」

 

「確かにそうかもしれないけど……」

 

「なんだよ、俺と風呂入るの嫌だってのか?別にお互いに裸見るなんてのはいつものことだろ」

 

「……そういう言われ方をすると確かに嫌になりそうね」

 

 また夫婦漫才でも始める気だろうか。そういうことは他所でやって欲しい。

 まぁ、俺がするべき話は今切り出せそうにないので料理へと戻ろう。こっそりと武田様の忍が山菜を届けてくれたのでそれを洗ってから使えるように下準備を進めていく。その間にも後ろでは武田様と上杉様がああだこうだと話をしているが俺には関係ないことなので聞こえないふりをしておく。

 余計なことに巻き込まれないためには必要なことだ。普通にどういう話をしているのか全て聞こえているので本気で巻き込まれたくないような、少し参加して二人で、もしくは上杉様で遊びたいという気持ちにも駆られるのだが。

 

「なー、良いじゃねぇかよー。別に今更減るもんじゃねぇだろー?」

 

「減る減らないの問題じゃないわよ!変な言い回しされたら嫌になるに決まってるでしょ!?」

 

「そうか?でも風呂入って背中流すだけだろ?それくらいなら……

 …………いや、そうだな、ケンシンが嫌だって言うなら仕方ないよな」

 

「あら、今回はやけに素直に引き下がるのね……」

 

「まぁな。その代わりに……」

 

 そこで言葉を切った武田様が俺の方に手を置いた。標的が俺に来たのか、とげんなりしながら手を止めて振り返ると上杉様には見えていないようだが、なにやらあくどい顔をした武田様の顔が見えた。

 

「結城と一緒に入るとするか!」

 

 そしてそんなことを言うのであった。それを聞いた上杉様だけではなく、料理番の侍女や護衛の為に隠れていた忍までもが驚きの声を上げており、その反応を楽しむように武田様はにやりと笑った。

 それと同時になんとなく武田様の狙いを理解してしまい、一瞬だが呆れたような表情へと変わってしまったのだがそのことを見逃さなかった武田様はより笑みを深くするのであった。武田様が何をしたいのか、俺に何をさせたいのか察してしまったせいではあるが、そういうのは遠慮したい。下手をするとヨシテル様の耳に届いて怒られるというか、小言を貰うことになってしまうのだから。

 まぁ、乗るのだが。

 

「仕方ありませんね……ええ、わかりました。背中を流す程度、お任せください」

 

「いやぁ!結城は話がわかる奴で助かるぜ!

 それじゃ、飯の準備は一旦おいといて風呂行こうぜ!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよシンゲン!それに結城も!!」

 

 意気揚々と動き始めた武田様と、その後ろに続いて歩こうとする俺の前に上杉様が立ちふさがった。

 

「んだよ。ケンシンが風呂入らないって言うから結城と入るだけだろ。なんで邪魔すんだよ」

 

「そうですよ。俺はあくまでも上杉様の代わりとして背中を流すだけです」

 

「おかしいでしょ!?シンゲンは確かにガサツだけど、乙女なのよ!?それなのになんで男性の結城と一緒にお風呂なんて入ろうとしてるのよ!!

 それに結城も結城よ!普通断るのになんでそこでシンゲンの言うことに従ってるのよ!上様に言いつけるわよ!?」

 

「俺は別に、相手が結城なら気にしねぇけどな」

 

「領地にお邪魔している状態ですし、多少なりと言うことを聞いておくべきかと思いまして。

 それに大丈夫ですよ、俺は義昭様の背を流すこともありますから慣れていますので」

 

「お、そうなのか?ならやっぱ頼んで正解だったかもなー」

 

「背中を流すのが上手か下手かとか、そんな話じゃないのよ!!

 あぁ、もう!結城は大人しく料理でもしてなさい!ほら、シンゲン行くわよ!仕方ないから私が背中を流してあげるわ!!」

 

 上杉様の言いたいことはわかっているので、あえてそれを間違った解釈をしたように返せば我慢ならないという様子で武田様の手を取ってズンズンと歩き始めた。

 そうして手を引かれている武田様は非常に楽しげであり、笑いながら言った。

 

「そういうことだから、結城は飯の方頼むぜ!それとありがとうな!」

 

「いえ、この程度のことであればお気になさらず。どうぞごゆっくりと」

 

 まぁ、言ってしまえば上杉様を嵌めるために片棒を担いだだけなのだが。

 少しくらい二人か、もしくは片方一人で遊んでみようかな、なんて考えていたので武田様の考えは渡りに船と言った感じであった。そしてこのことを気づいたとしてもきっとそれは入浴中のことであり、怒りの矛先は俺ではなくまずは武田様に向くので湯から上がる頃には怒りもある程度は収まっているだろう。

 やはり人で遊ぶ場合はどの程度怒るかを考えてから、問題ない範疇に収めるのが大事だ。カシン様は相手を怒らせようと関係ないので好き放題やっているが俺にはとてもではないがそんなことは出来ない。今回は武田様が上杉様の怒りをほぼ全て受けてくれると思うと運が良かったのかもしれない。

 

 そんなことを考えながら、侍女や忍へと事情を説明してから料理を再開する。あの二人が出てくるまでにはそれなりの時間がかかるだろうから、料理のほうが先に完成してしまうだろう。

 ならばついでにツマミも完成前まで用意して食後に飲み始めた場合すぐに出せるようにしておこう。ただ、なんとなくではあるがまた蒸し風呂で我慢対決でもしそうなので遅いようなら侍女に頼んで様子を見に行ってもらわなければならないのかもしれない。




なんだかんだ一緒にお風呂入るだろうけど言い回しによってはきっとケンシン様は嫌がるような気がする。
でも結局シンゲン様に流される未来しか見えない。

花ではお助けキャラに選べるらしいですけど、それっと復活的なので出てくるって事ですかね。出番少なそう……

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