――様といっしょ   作:御供のキツネ

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オリ主は戦国乙女から気に入られている。
色々とハイスペックなところや、人間性など。


シンゲンさまといっしょ

 数日間二条御所で大人しくしていたがただ横になっていたのは最初の一日だけで、後は眠っている間に鈍った体をヨシテル様や義昭様、ミツヒデ様に怒られながら鍛えることだったり、琥白号の為にヨシテル様と義昭様を誘って遠乗りに出たり、ミツヒデ様と将棋を指したりとそれなりに忙しかった。

 それと、義昭様に挨拶をする際には毎日手を握られるようになった。義昭様曰く、ちゃんと確認しなければ不安になるとのことだったのと、そう長い時間手を握られるわけではないので甘んじて受けることにしたがそれにヨシテル様も参加するとは思ってもいなかった。まぁ、ヨシテル様は手を握る度に何故か顔を赤くして俯き気味になるのだが。

 尚、その様子を見たミツヒデ様に小言を少しと、あまり無茶をするなとの言葉と共にあの優しげな目で見られたのは未だに腑に落ちない。あの日からどうしてかミツヒデ様は俺に対する態度が竜胆たちのように弟にするそれに非常に似てきている。解せぬ。

 とりあえず原因であろう竜胆たちと話をしたが、この間俺の事を怖がっていたはずなのになんてことをしてくれたのかと聞けば、任務に関しては恐ろしいこともありますが普段は弟です。と真顔で言われた。やはり年下と言うことで舐められているのだろうか。そんな疑問も覚える数日であった。あと、竜胆たちはきっちり減給しておいた。

 

 そんな数日を過ごした俺だが、漸く任務に戻ることが出来た。現在は武田様の治める甲斐へと向かっているのだが何処も変わらず平和そうで安心した。田畑を耕す人々は怯えや警戒などなく自らの仕事に励んでいるし、茶屋で話されているのは以前までの何処で戦があった等の話ではなく何処の町でどんなことがあった、何処其処の領地を治める方はどんな統治をしている。そんな他愛のない話ばかりだ。

 そして甲斐に近づけば近づくほどに道行く人々にさえ活気が見られるので武田様の統治は素晴らしいものなのだろう。ただ、茶屋で武田様と上杉様が川中島で模擬合戦をするという話を聞くことが出来たのであの二人は乱世が終わっても未だに勝負事を続けているようだった。

 流石に命の取り合いはしていないらしいが、大食いだったり酒の飲み比べだったり蒸し風呂や滝行蒸での我慢対決などをしていたとか。今回は模擬合戦であるが、周囲の農村には事前に伝達が行われ被害が出ないようにと手は打っているという話だが、実物を見てみないとなんともいえない。今回は領地の様子を見るだけでなくその模擬合戦の様子も見させてもらおう。

 そう考えながら街道を歩いていたのだが、新たな茶屋が見え、そしてその店先に人だかりが出来ているのを発見した。茶屋に人だかりが出来るなんてことはそうそうないのだが、どうしたのだろう。

 

 何があるのかと気になって人だかりの最後尾から茶屋の中を覗き見ると見覚えのある人物が団子の皿を積み重ねているのが見えた。いつもの兜は被っていないがあれは武田様に違いない。

 頬の傷だとか長い髪だとか、豪快に団子を食べている様子だとか、どう見ても武田様だ。あの人は一体こんな場所で何故大食いなんてしているのだろうか。

 人だかりから聞こえてくるのは武田様だと気づいていない人たちの困惑の声と、武田様だと気づいた上でどうしてここにいるのだろうかという困惑の声だった。どちらも困惑している。まぁ、その領地を治める人間が街道で商いを行っている茶屋に現れることは少ないだろうし、あまつさえ大食いなんて普通はしない。

 こうしている人々の中で武田様から直接話を聞けるのはきっと面識のある俺くらいだろう。周りの疑問を解消するためにも、そして挨拶をしておかなければならないので一歩下がってから変化を解いてから人だかりの間をすり抜けるように通って武田様が座っている席の正面へと立つ。

 そうすると武田様は俺に気づいたようで団子の皿を一つ積み重ね、茶屋の娘に一声かけてから追加を注文した。それから俺に向き直ってにっと笑って口を開いた。

 

「よぉ、結城。待ってたぜ」

 

「待っていた……あぁ、歩き巫女ですか」

 

「あぁ、俺の優秀な歩き巫女が結城が甲斐を目指してるって教えてくれたからな。ヨシテルの忍が優秀なのは百も承知だが、俺の忍だってそれに負けねぇくらいに優秀だぜ?」

 

「相も変わらず武田様は負けず嫌いですね」

 

 呆れを含んだその言葉が気に入らなかったようで武田様は頬を膨らませて不満を表現した。そして机に肘を着いてから手に顎を乗せて俺を軽く睨んできた。

 

「んなもん当然だろ。負けっぱなしなんて気分悪いぜ。

 ヨシテルとの戦なんて気がつけば兵は皆無力化されて、ヨシテルと俺との一騎打ち。それも早い段階で決着が着いたからな。今度は俺がヨシテルをぎゃふんと言わせてやろうってずっと考えてるんだ。

 まぁ、そんな機会はなかなか来ねぇし……まずはケンシンとの決着を付けねぇとな!」

 

 不満そうに睨んでいたかと思えば、上杉様と決着を付けると言ってから楽しそうに笑っている。武田様のこうした自らの感情を隠すことなく表情に出すところは非常に好ましく思う。腹芸の出来るというか得意なカシン様の相手をするよりも遥かに気が楽であるし、わかりやすいというのは精神的に非常に良い。

 ただ言えることがあるとすれば、こういったところが軍略などにも長けているのに後ろに(物理)が付いてしまう原因にもなってしまっているのだろう。以前に聞いたのは「作戦なんてどうでも良い。真正面から攻めるぞ」とかそんな感じの言葉だったか。宝の持ち腐れというかなんと言うか。

 それでも、上杉様と組んだ場合には猪突猛進な武田様を諌めてから互いに作戦を練りあうことが出来るのだからこの二人を組ませると恐ろしい。先の戦ではそのようなことが起こらないようにと先立って武田様を攻め落としたのは間違いではなかったはずだ。

 その後それを聞いた上杉様との戦においては、上杉様が随分と気合を入れていたので少々苦戦することになったので結果としては多少マシになった、程度の違いでしかなかった。それでも二人を同時に相手取るよりは遥かに良い状態で戦が出来たのだが。

 とりあえず一言断りを入れてから向かい側に座り、武田様を見ると何かを思いついたように見える。

 

「結城ならもう知ってるかもしれねぇけど、今度ケンシンと模擬合戦することになってるんだ。領地の様子だの何だのを見て回ってるんなら見るだろ?」

 

「武田様は話が早いですね。構いませんか?」

 

「おう、良いぜ。ってよりも折角だし立会人にでもなってもらおうかって思うんだけどやってくれるか?」

 

「ええ、わかりました。ただし上杉様が納得するのであれば、ですが」

 

「ケンシンなら大丈夫だ。単純に立会人になってもらうってだけだからな。

 そうと決まればすぐにでも川中島に、って行きたいのに合戦まで日があるからなぁ……」

 

「武田様はすぐにでも上杉様と戦いたいようですが……決着は付くんですか?」

 

 はっきり言わせてもらうが、武田様と上杉様の戦いに決着が付くとは思えない。どちらかが勝ったとしても次は自分が勝つと言って再戦を求めるだろう。そしてそれに対して勝った方は次も自分が勝つのだから別に構わない。と返して結局戦績が引き分けになってしまう。そんなことばかり起こるのだろう。というか実際に起こっているのではないだろうか。

 

「当然だろ!今回は俺の勝ちできっちり決着を付けてやるぜ!」

 

「参考までに聞きますけど大食いってどちらが勝ちました?」

 

「そんなの俺に決まってんだろ。俺の方が圧倒的に食ってやったからな!」

 

「では酒の飲み比べではどちらが?」

 

「それは……まぁ、ケンシンに負けちまったけどさ……」

 

「蒸し風呂での我慢対決」

 

「俺の方が長く蒸し風呂に入ってたな。炎の軍配を操る俺がそうした熱さに耐えれないでどうするってんだよ」

 

「滝行」

 

「いや、俺は確かに負けたけどいっつも滝に打たれてるケンシンの方が有利に決まってんだろ。だからあれはケンシンが自分の得意なことで勝負を仕掛けてきたんだ」

 

 見事に一進一退の勝敗である。これでは本当に決着が付くなんてことは有り得ないのではないだろうか。今回の模擬合戦でさえどうせ二回目が行われるのだろうし、それが終わればまた別の内容で勝負をするに違いない。

 やはりこの二人は決着が付かないまま二人で楽しく勝負をし続けるのだろう。まぁ、不毛な対決のようにも思えるが二人が納得して行っているのであれば俺に止めるつもりはないし、周囲の民への配慮がされているのだろうから問題はない。

 

「でもあれだよなー、やっぱり勝つなら自分の得意分野ってのは当たり前として相手の得意分野で勝ちたいよな。

 こう、完全勝利!って感じでさ」

 

「あぁ、わかりますよ。自分の得意分野で勝っても達成感って少ないですからね。それが相手の得意分野であれば達成感も大きいですし、胸を張って勝てたと宣言できますし」

 

「そうそう。それで戦はお互いの得意分野ってよりも専門だろ?だから決着を付けるならやっぱり戦に限るぜ」

 

 言ってから腕を組んでうんうんと頷いている武田様はこれからの上杉様との勝負に思いを馳せているようで気合い充分と言った風に見えた。ただそんな武田様の左右には高く積まれた団子の皿があるせいで全く持って締まらない。それどころか武田様の背後には追加の団子を持ってきた茶屋の娘が居るので更にがっかり感が増してしまう。

 とはいえこれは以前からなので平和ボケをしているとか、そういうことではない。武田様は戦乱の世であろうが泰平の世であろうが、変わらずに自らを貫き通している名将であり、天下取りへと名乗りを上げた戦国乙女の中でも上位に入る実力者である。まぁ、普段が普段なのでそんな風にはあまり見えないのだが。

 しかし、上杉様が最も警戒し、対等な相手として認めているのは武田様なのだから普段の様子など関係ないのだろう。どんなにがっかり感が強くても、見る人が見れば実力者だとわかる。それでもそれを自然と意図せず隠しているあたり腹芸はせずとも考えの全てを相手に悟らせることもないのではないだろうか。

 

「っと、団子の追加が来たな。さっきから食ってるけど、やっぱり団子じゃ物足りねぇよなー」

 

「肉料理と白米あたりが武田様としては一番ですか?」

 

「当然!ちょっと濃い目の味付けにした肉料理と、俺用の丼に特盛りの白米。んでもってほうとうなんかもつけると良いな!って、そんな話してたら食いたくなって来たぜ……」

 

「では戻ってから作らせれば良いと思いますよ」

 

「だな。適当に伝令の忍を走らせて今日の夕食はそれにするように言っとくか」

 

「食事の用意をさせるために忍を走らせるのはどうかと思いますけどね」

 

「つってもなぁ……最近戦なんてないし、一応周囲のことは調べさせてあるけど何処もかしこも平和そのもの。歩き巫女も全国回ってるけど最近何かあったって言えば二条御所が騒がしくなってたくらいだぜ?

 だからこういうことに使ったって良いじゃねぇか」

 

 そう言われればその通りなのだが。実際に以前のように忍を走らせ続けている戦国乙女などいない。ヨシテル様の場合は天下人となった以上は全国の戦国乙女の動向に目を向けなければならないために俺や忍衆を使って情報を集めることはあるのだが、それも最近になって落ち着いてきた。

 とはいえ毛利輝元様の動向が気になるのである意味で私用で部下の忍衆を走らせている。という点では武田様とそう違いはないのかもしれない。

 

「で、二条御所が騒がしくなってた理由ってのは聞いても良いのか?」

 

「そうですね……足利軍の機密事項ということで」

 

「ちぇー、折角答えを知ってるだろう奴が居るのに話が聞けないなんてないぜ……」

 

 本当なら話しても構わないような気もするが、あの一件でヨシテル様は非常に落ち込んでしまい、義昭様には心配をかけ、ミツヒデ様の俺を見る目が変わり、軍全体で俺が無茶をしないように見張るような動きがあった。

 そんな意味のわからない話なんてしたくない。それにあれを話すとなれば俺の醜態を晒すことになるのだから、言わないのが当然だ。それに他の方に話をした結果、無用に話を広めてしまう可能性がある。それなりに戦国乙女の方々から気に入られていると自覚はあるので、面倒なことになるのが目に見えているのだ。絶対に話さない。

 

「まぁ、無理に話を聞いても悪いし今回は諦めるか。それよりも結城は何か食わねぇのか?茶屋に寄ったなら何か注文するのが筋ってもんだぜ」

 

「それもそうですね……武田様を待つとなれば暫く時間もかかりそうですし……

 では申し訳ありませんが俺にも団子を一つお願いします」

 

「おいおい、一つで足りるのかよ」

 

「武田様を見ていると胸焼けを起こしそうですので一つで充分です」

 

 先ほどから会話の合間合間に運ばれてきた団子を片付けていく武田様の様子を見ているだけで胸焼けが起こりそうではあるが、確かに茶屋に入って何も注文しないというのは良くない。更に言えばこうして武田様に言われた以上は断りづらいというのがある。

 なので団子を一つだけ注文してそれをゆっくりと食べることにした。それに特に空腹感もないので本来であれば食べる必要もないのだから一つでも充分すぎるほどだ。

 

「そうか?これくらいは男なら食えるだろ」

 

「無理です。豊臣様と徳川様であれば普通に食べそうではありますが」

 

「へぇ……あいつらはそれなりに食えるみたいだな」

 

「ええ、豊臣様はそれだけ動き回っていますし、徳川様の場合は魔法を使うのが関係しているのだと思います」

 

「魔法か……ってことはカシンも?」

 

「カシン様は……あまり食べないですね。非常に少食ではありますが、甘味に関しては別腹のようではありますが」

 

「まぁ、あいつのあれは魔法ってよりは呪術ってやつだしな。

 ってことは結城の忍術で使うのは別の力なのか?」

 

「そうですね……気力とでも言えば良いのでしょうか?丹田で気を練り、それを全身に巡らせる。もしくは体の部位に回す。そうして忍術を発動させるのが俺の使っているものです」

 

「へぇ……なんか面倒だな。俺なら気合い入れて軍配を振ればそれだけでいけるのになぁ」

 

 気合を入れてやれば。と言うのはほぼすべての戦国乙女に共通する事項のようで、ヨシテル様も気合を入れて全力で居合いをする必要があると言っていた。どうして気合だけであんなことが出来るのだろう。俺は慣れているから忍術の発動も早いし、徳川様やカシン様も魔法や呪術の発動は早い。それでもそうした上で魔力や呪力を消費しているのだから他の戦国乙女よりも少し不利な気がしてならない。

 その代わり威力と範囲が反則的なのである意味ではバランスが取れているのかもしれないが。

 

「まぁ、今はそんなこと気にしても仕方ねぇか。

 食い終わったら俺は館に戻るけど結城も着いてくるよな?」

 

「ええ、構いませんか?」

 

「ああ、良いぜ。その代わり俺と勝負だ!」

 

「……何で勝負するつもりなのか聞いてもよろしいですか」

 

「結城が飯を作る。俺がそれを食う。美味いって言わせれば結城の勝ちで、言わなけりゃ俺の勝ち!」

 

 あぁ、つまり食事を作れと。確かに料理の腕には自信があるし、それについては以前にミツヒデ様が武田様に話しているのを見た覚えがある。だから知っているとして、どれほどのものか気になっていたのだろう。

 それをただ作れというのでは面白くないので勝負として提案しているのだろうが……まぁ、余裕で勝てる。

 

「わかりました。それで、わざわざ料理をするのですから勝った場合には何かもらえるんですか」

 

「あぁ、結城が欲しいってんなら何だってやるぜ?持ってない物で欲しいって言われたら……そうだな、それを手に入れるのに全力を出しても良いし、結城がそれを探してるってんなら手伝ってやる。どうだ?」

 

「乗りました。その言葉、忘れないでくださいよ」

 

「大丈夫大丈夫!俺に二言はねぇよ!」

 

 言ってから屈託なく笑う武田様には悪いが勝ちは貰ったも同然である。あの他人を褒めることをしないカシン様にさえ美味しいと言わしめたことがある俺にとって、武田様にそう言わせることは簡単なことだ。

 というか武田様は色んなものを食べては「これは美味いな!」とすぐに言うのだから勝てて当然なのだが。武田様はその辺りのことを考えた上で提案してきているのか、甚だ疑問である。

 とりあえず今すぐに欲しいものはないので、そのうち榛名を探すことになるだろうからそれの手伝いをしてもらおう。ああまで断言したのだから頼りにさせてもらっても罰は当たらない。ついでに上杉様を巻き込むことが出来れば尚良い。

 というか上杉様であればもしかすると現在榛名が何処にあるのか知っているかもしれない。事情を説明して納得してもらうことが出来れば俺が思っているよりも簡単に手に入る可能性がある。ただ、榛名を探しているのが俺だけではなく斉藤様と毛利輝元様がいるのでそれに対する戦力として期待できる。

 

「よっしゃ、そうと決まれば戻ろうぜ!あ、どうせならケンシンの奴も誘うか。

 どうせ川中島でどう動くか考えてるだろうし、使いを走らせて連れて来させれば良いよな」

 

「模擬合戦の前ですよね?」

 

「そうだぜ。でもお互いの手なんて大体わかってるし、前哨戦ってことで飯食ってから飲み比べだな!」

 

 果たしてそれで良いのだろうか。そんなことを提案して上杉様が頷くかどうか……いや、多分呆れながらも仕方が無いと言いながら頷くとは思うが。武田様のすることに関して上杉様はあきらめるのが随分と早いのはやはり付き合いの長さから来る諦観であるのかもしれない。

 

「肉料理とほうとう、んでもって白米沢山炊いて……あ、ケンシンの為に山菜を使った料理も頼むぜ!それから飲み比べするんだからツマミが必要だな。こう……酒が進んで、その上でちゃんと美味いツマミも用意してくれよな!」

 

「なんで全部俺が作ることになってるんですか。いえ、別に構いませんけど……山菜の用意はどうするつもりですか?」

 

「んなもん忍を走らせるに決まってるだろ。ケンシンと飯食うときはいつもそうしてるぜ」

 

「……武田軍の忍は、少々不憫ですね……」

 

 戦以上に食事に関する雑用をさせられているなんて、普通では考えられないことなのだが。いや、チョコレートのためだけに豊後まで跳んだ俺が言えることではないのか。

 それにしても本当に上杉様を巻き込むことになるとは……武田様には感謝しておこう。その感謝の気持ちは料理で返すとして、何を作るか考えなければならない。武田様が満足し、更に上杉様も満足するような料理。なかなかに大変そうだが腕が鳴る。

 

「良いじゃねぇかそんなこと。それよりもさっさと戻って料理と酒の準備しねぇとな!」

 

 団子を全て食べ終わってからそう宣言した武田様が立ち上がると、傍に忍が一人現れて武田様の変わりに勘定を払っていた。普段からそうしているのであろうことがわかるほどに澱みがなく勘定を済ませるとすぐに姿を消した。ただ気配は武田様の周囲から離れることはなかったので本来の役目は護衛なのだろう。

 

「結城ー、行くぞー!」

 

 俺も勘定を済ませてから武田様を追うと既に馬に乗っており、そう言い放ってからすぐに駆け出した。

 料理や上杉様との食事、飲み比べが待ちきれないようで一刻も早く戻りたい。そんな風に見えてしまい、まるで子供だな。なんて思ったがそれを口には出さずに後を追うように俺も駆け出す。

 

「流石にこれくらいじゃ着いてくるよな。それじゃ、いっちょ飛ばすか!」

 

 そうして非常に楽しそうに馬を加速させる武田様に追従するように駆けながら、ふと思う。

 斉藤様は武田様と上杉様で遊ぶのが楽しいと言っていたし、どうせなら俺も二人で遊んでみようかな、と。




シンゲン様がご飯とか一杯食べてるのを眺めたい。
一杯食べる女性って可愛いですよね。レッドキャッスルさんとか。

甲斐越後では四話か五話くらいを予定。
彼女たちは決して影が薄かったりリストラされるようなキャラじゃないんですよ……

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