――様といっしょ   作:御供のキツネ

3 / 60
オリ主はたらし(仮)スキル持ち。


番外の三 ハロウィン

 大友様より届いた書状に、俺に豊後へと来て欲しい。という旨が書いてあったらしく、ヨシテル様の命により豊後へ向けて出立したのが数日前。

 現在は大友様が統治をしている豊後にやって来たのだが……以前に見たときとは違う様相を呈していた。あちらこちらに南瓜を使った飾りだったり、蝙蝠を模した飾りだったり、見たことがない飾りばかり使われていて何かの祭りでもあるのだろうか。

 疑問に思いながらも人の波の中を歩いていると子供たちが店先にいる大人たちに向かって「とりっくおあとりーと」と言っているのが聞こえてきた。どういう意味なのだろうか、そう思ってふとそちらを見るとその子供たちは何やら包帯をグルグル巻きにしていたり、大きな黒いとんがり帽子を被っていたり、黒い裾がぼろぼろになったマントを羽織っていたりと様々な格好をしていた。

 そしてその言葉を言われた大人は子供たちにお菓子を与えているようで、そういう祭りなのかと一人で納得してしまう。ただあの言葉を子供が言えばお菓子を貰える。というだけなのか、他にも何かあるのか。それは現状では判断が出来ない。

 

 それから気づいたこととしては、歩いている大人には子供たちは何も言わない。ということだ。こうして歩いていても子供たちが来ることはないし、周りを見てもそうだ。子供たちに声をかけられているのは全員が店先の大人で、判りやすく言えばその店の店員である。

 子供がどこかの店の店員にお菓子を貰う祭りなのか。いや、それにしては南瓜などの飾りはどういう意味があるのだろうか。疑問は尽きないがとりあえずは大友様に会いに行こう。

 大友様がいるのは町の教会だというのを大人や子供たちの話から察して向かっているのだが、何処を見ても南瓜の飾りがあり、子供たちが楽しそうにあちらこちらへと走り回ってはお菓子を貰っている。

 それを見ていてなんとなくではあるが理解出来たことは、子供たちがどこか店先で店員に「とりっくおあとりーと」と言うと大人からお菓子を貰える。その際に子供たちは何らかの、あれは仮装だろうか。それをしなければならない。町は南瓜の飾りや蝙蝠などを模した飾りを使って飾りつけをしなければならない。

 それをなんとなくで理解はしたのだが、どういう祭りなのかまったくもってわからない。そして大友様がそんな状態の豊後に俺を呼んで何がしたいのかもわからない。

 まぁ、それは本人に確認を取れば良いかと思って教会に入ると大友様が小さな南瓜の飾りがついた黒いとんがり帽子を被り、マフラーを首に巻いて両手に箒と破けたところからお菓子が覗いている大きな袋を持っていた。ただ、子供たちに群がられているせいなのか、着ている服は引っ張られて微かに膨らんでいる胸に巻いたサラシが良く見える。

 他にもスカートを引っ張ろうとしている子供もいるので流石にこのまま放っておくことも出来ずに上着を一枚取り出して大友様の頭上へと放り投げる。ふわりと落ちた上着は上手く大友様の肩の上から羽織らせることが出来てとりあえずこれ以上肌を晒すこともない、はず。

 

「え、これって……あ、結城!来てくれたんですね!!」

 

「ええ、ただいま参上致しました。

 ところで大友様、これはどういう状況なのでしょうか?」

 

 子供たちを宥めながら、それでも上着だとかスカートだとかを引っ張られているのだが俺の方へと歩いてくるので此方からも歩み寄りながら少し挨拶をして状況を確認する。

 俺には仮装した子供が別の子供たちに襲撃されてお菓子を奪われているようにしか見えないのだが、さてどういう状況なのだろうか。

 

「えっとですね、豊後では今なんとハロウィンを行っているんですよ!」

 

「はろうぃん、ですか?」

 

「はい!なんでも南蛮で行われている秋の収穫を祝い、悪霊を追い払う行事だそうです!

 ただ、私がその後に聞いたのはそういった意味合いで行う場合とこうして南瓜の飾り、ジャック・オー・ランタンを作って飾ったり、仮装した子供たちが近くの家を訪れてお菓子を貰ったりする場合があるそうなんです。

 それで豊後では後者を行事として、というかお祭りとして町全体でやることにしたんですけど、流石に何処の家でもお菓子が貰える。なんてことには出来ないので協力をしてくれるお店限定にしてますよ。

 その目印として飾っているのがジャック・オー・ランタンです!」

 

 得意気にそう話をしてくれる大友様だが、未だに子供たちに服や袋を引っ張られている。ただそうしながらも子供たちは突然現れた俺の事を警戒しているようではあった。

 まぁ、周りの大人は大友様の様子からそうして警戒する必要はないと判断してくれているらしく特に変わった様子はない。ただ男性陣の幾らかは俺が大友様に上着を投げてかけた辺りから何やら悔しそうというか、俺を恨みがましく見ていたりする。

 なんとなく察するが、大友様のことを下心の篭った目で見ていた人ばかりなのでそういう意味で見てくるのだろうが、今の季節にあの格好は風邪を引いてしまう可能性がある。流石に領主である大友様のことを思えば俺のように上着の一枚くらい羽織らせようとするのが普通ではないだろうか。

 それに大友様は戦国乙女である。そう、乙女だ。本人がその辺りに無頓着になっているとしても、常識ある人間ならば多少なりと気を使うべきだと思う。それと、大友様が風邪を引いた場合に苦労するのは絶対に立花様だ。同じ主に苦労させられている人間としてそれを見過ごすわけには行かない。

 というか立花様はどうしたのだろうか。こういった祭りをするにしてもあの立花様が大友様を一人にしておくとは思えない。

 

「なるほど。それは理解出来ました。

 ところで立花様が大友様を一人にしておくとは思えないのですが、一体何処に?」

 

「ドウセツなら今お城からお菓子を持って来てもらっていますよ。思っていたよりも子供たちが沢山来てくれて、持って来た分だけじゃ足りなかったんです。

 ドウセツなら私よりも足が速いので、それでお願いしました」

 

「あぁ、そういうことでしたか……」

 

 確かに大友様の周りには子供たちがいるが、離れた場所にも何人も居て、協会の外にも居た。その全員にお菓子を配っているのであれば生半可な量では足りないだろう。現に今も大友様が持て居る袋からお菓子を取ろうと躍起になっている子供もいる。

 ……立花様がどれくらい前にお菓子を取りに行ったのかわからないが、間に合うのだろうか。下手をすると立花様が来る前に大友様が持っているお菓子が全てなくなりそうな気がする。子供たちはお菓子を貰うというよりも、もはや強奪しに掛かっているのだから。

 

「あ、結城を呼んだ理由はですね、ほら、この前に……ってあぁ!ダメですよ!これはまだ貰ってない子たちの分で皆にはもうあげたじゃないですか!だから手を放しましょうね?ね!?」

 

 喋っている最中に子供たちがお菓子の入った袋を強奪しようとしていることに気づいたらしく、手を放すように説得をしているがその効果ははっきり言ってない。袋を奪われまいとする大友様と何が何でも袋を奪ってやろうと躍起になっている子供たち。端から見る分には子供対子供の構図にしか見えないのは大友様の見た目のせいなのか、はたまた奪われまいとする姿が子供っぽく映ってしまうせいなのか。

 それにしても大友様が戦国乙女であり力が強いとはいえ、袋が破けて中身をあたりに撒かないようにと考えて力加減をしているせいか子供たちに押され気味である。袋を引っ張られているのに押され気味というのも不思議なものだが。

 

「だ、ダメです!本当にこれ以上はダメなんですってば!

 ほら!聞きましたか今のビリッて音!もしこれ以上引っ張ると袋が破けて中のお菓子が散乱しちゃいますよ!?だからそっと手を放して欲しいんですけど、って何で増えてるんですかぁ!」

 

 大友様の言葉を聞いて確認してみると確かに子供の数が増えている。全員が楽しそうに袋を引っ張っているのでお菓子が欲しくてやっているのか、大友様も反応が面白くてやっているのか良くわからない。

 まぁ、全員楽しそうにやっているので大友様の反応見たさにやっている可能性が非常に高い。それに袋を見ているのではなく大友様の顔を見ながらやっているし、ほぼ確実だと言っても過言ではないだろう。

 ただ大友様はそのことに気づいていない様子で、今も必死に袋を守っている。もうすぐ破けそうな気はするのだが。

 

「あ、どうしましょうこのままだと本当に袋が破けますどうしたらって結城は見てないで助けてくれても良いと思うんですけどというかお願いします助けてください!!」

 

「大友様、手遅れかと」

 

「え?あ、あぁぁああぁぁ!!??」

 

 気づいたが時既に遅し。今正に袋が左右に引っ張られて盛大に破け、中身であるお菓子が空中に舞った。

 その時の大友様は目を大きく見開き、口を開けて叫んでいた。そしてそんな大友様を見て、更にはお菓子が降って来るのを見た子供たちは目を輝かせていた。とはいえ、一つずつ丁寧に包装されているわけではないようで、いくつかは剥き出しのままになっていた。何と言えばいいのか、とりあえず詰めた。ということだろう。

 それが地面に落ちるようなことがあれば勿体無いことになる。とも思ったのだが子供たちは落ちてくるお菓子を器用に全て受け止めると嬉しそうに食べ始めた。ただし、大友様は魂が抜けたようになっている。

 

「あぁ……お菓子が全部なくなっちゃいました……このままじゃ悪戯が……!」

 

「悪戯?」

 

「え、えぇ……実は仮装した子供たちにトリックオアトリートと言われた場合、お菓子をあげるか悪戯されるかなんです……だからちゃんとお菓子を持ってないと、この人数に悪戯されることになって……

 うぅ……去年は墨で顔に悪戯書きされて最終的には真っ黒にされちゃいましたし、今年こそはそんなことにならないようにって思ってたのにぃ……」

 

「随分と変わった行事ですね……あ、子供たちがお菓子を食べ終わったみたいですよ」

 

「ってことは……」

 

「ソウリンさま、とりっくおあとりーと!」

 

「おかしくれなきゃいたずらするぞー!」

 

「おかしもらってもいたずらするぞー!」

 

「さっきお菓子食べたじゃないですかぁ!!」

 

 お菓子を食べ終えた子供たちにあっという間に囲まれてお菓子を要求されている。ただ既にお菓子を持っていない大友様がその要求に応えられるわけもなく、そして子供たちはお菓子よりも悪戯をしたいようで随分と理不尽な要求をしている。

 そして追い詰められている大友様は視線をあっちこっちに彷徨わせていたが俺を見た辺りで止まった。そして何かを思いついたように俺を指差して叫んだ。

 

「き、今日は前に来てくれていた蝶々のお兄さんが来てくれましたよ!ほら!今回は前よりも凄いことしてくれるらしいですから、皆で見ましょうね!」

 

「大友様、いきなりそんなことを言われても困ります」

 

「あぁ!たしかにちょうちょのおにーさんだ!」

 

「あかいちょうちょとばして!あかいちょうちょ!」

 

「おれきいろのちょうちょがいい!」

 

「あおいの!あおいのくるくるーって!」

 

「あぁ、はいはい。少し静かにしましょうね」

 

 大友様の言葉を受けて子供たちが俺の周りに集まって来た。確かに以前、忍術で蝶々を飛ばしたがそれが随分と気に入られていたらしい。それにしてもここにいる子供たちの全員があの時居合わせた子供たちというのには少しばかり驚きもある。

 仕方なしに蝶々を作り出して飛ばすが子供たちはすぐにそれに食いついた。

 

「おぉー!いっぱいとんでる!」

 

「わぁ!あったかい!このちょうちょあったかい!」

 

「こっちはちょっとびりびりする!」

 

「ひんやりしてるよ!あおいのはひんやりしてる!」

 

 火遁の蝶々、雷遁の蝶々、水遁ではなく今回は氷遁の蝶々を複数飛ばして子供たちの関心を集めてみたが前と同じで非常に楽しそうに蝶々に触れている。

 攻撃性の低い見た目重視であるからこそこうして触っても平気だが、本来であれば触れた瞬間に爆破炎上したり周囲を電撃で焼き払ったり触れたモノを瞬時に凍り付かせるような術だ。こんな使い方をする物ではないのだが、術が完成する前に見せた相手に頼まれたのだから仕方ない。

 それに子供たちも楽しそうにしているので良しとしよう。まぁ、その子供たちに混じって大友様も楽しそうにしているのだが。

 

「結城、見てください!青い蝶々を捕まえましたよ!」

 

「ソウリンさまだけずるい!わたしもつかまえたい!!」

 

「ならぼくはこっちのあかいのつかまえる!」

 

「だったらおれはきいろいのだー!」

 

 大友様が氷遁の蝶々を捕まえて自慢げにしているとそれに感化された子供たちが他の蝶々を捕まえようとし始めた。何人かは握り潰そうとしているのではないか、と思えるような捕まえ方をしているがそんなことをすると消えてしまうので捕まらないように少し高い位置を飛ばしておこう。

 しかしこうしていると子供たちはハロウィンそっちのけで蝶々を追いかけることに夢中になっていて、その中に大友様が混じっている。俺は本当に何のために呼ばれたのだろうか。

 結局疑問は解消されていないのだが、お菓子を要求されるよりはマシかと蝶々を量産しながら飛ばしているが少しして大友様は自分の状態と俺の視線に気づいて動きを止めた。

 

「あ、いや、これはですね!子供たちに合わせてあげただけで、ついつい綺麗で手を伸ばしたら捕まえられたからはしゃいだとか、そういうことじゃありませんからね!?」

 

 自分の行動が子供っぽいということがわかっているからか、顔を真っ赤にしながら必死にそう弁解する大友様だが今更である。大友様がどこか子供っぽいのは知っているし、それで立花様が苦労しているのも知っている。

 それを無理に取り繕う必要はないのだが、本人としては気になるところなのだろうか。俺としては子供っぽいことよりも先ほどの肌を晒していた状態のことについて気をつけて欲しい。本人が普段から気にしないのか、今回は子供たちを相手にしていて気づかなかったのか。

 

「そ、そんなことよりもですね、結城を呼んだ理由を説明します!」

 

「あ、はい。大友様が子供たちと袋の奪い合いしたり絶望したり蝶々追いかけたりで結局聞けてませんでしたからね」

 

「その話は良いんです!適当においておくとして……結城を呼んだ理由は簡単なことですよ。

 前に見せてもらった蝶々の忍術をまた子供たちに見せてあげたかったのと……」

 

 簡単なこと。と言って悪戯が成功した子供のように得意気に俺を見ているのだが一体どうしたのだろうか。

 

「トリックオアトリートです!お菓子をくれないと悪戯しちゃいますよー?」

 

「……大友様はもう立派な大人の女性で、俺は南瓜の飾りなんてつけてませんよ」

 

「なんでそんな可哀想な物を見るような目になってるのか問いただしたいんですけど」

 

「いや、大友様さっき自分で言ってましたよね。子供たちが、って。

 それなのに何でとっくに大人の仲間入りを果たしている大友様にそんなこと言われないといけないんですか?」

 

「結城はチョコレートを持ってるってヨシテル様から聞いたからです!

 南蛮のお菓子の中でもなかなか手に入らないチョコレート。それを結城が持っているどころか作れるなんて聞いたら欲しくなるに決まってるじゃないですか!」

 

「まさかはろうぃんに託けてチョコレート貰おうとしただけですか?」

 

「はい!」

 

 そんなくだらない理由で呼んでおきながら何でそんな満面の笑みを浮かべているのか俺には理解が出来ない。

 

「はぁ……別にチョコレートくらい構いませんが、大友様であれば簡単に手に入ると思うんですけど」

 

「しょくらあとなら簡単なんですけど、調理済みのチョコレートになると手に入らないんですよ……で、そんなことよりもトリックオアトリートですよ!」

 

「はいはい。食べすぎは注意ですよ」

 

 呆れながらもチョコレートを渡すと大友様は目を輝かせながらそれを受け取り、子供たちに気づかれていないことを確認しながら隠した。

 別に此処で食べてしまえば良いのに。と思っているとそれを察したのか大友様が俺の傍、というか耳元に口を寄せ小声で理由を教えてくれた。

 

「子供たちに気づかれるとですね、確実に欲しがられるので隠したんですよ。流石に全員分を結城に貰うわけにはいきませんし、下手をすると折角貰ったチョコレートが子供たちの餌食になりそうですから」

 

 餌食という言い方はどうかと思うが、確かのあの子供たちなら大友様から奪い取るくらいしそうである。先ほど袋を強奪しに掛かったことから絶対にやると思う。

 しかしこうして呼ばれてチョコレートを強請られるだけというのも釈然としないし、軽く仕返しでもしておこうか。

 

「大友様、とりっくおあとりーとです」

 

「……え?」

 

「お菓子を渡すか悪戯をされるか選んでください」

 

「え、え!?ちょっと待ってください!結城だってもう大人ですよね!?」

 

「大友様がそれを言える立場じゃありません。どちらでも好きな方を選んでくださいね。

 あ、すぐに選んでくれないと強制で悪戯です」

 

 そう言うと大友様は焦ったように手持ちにお菓子がないか探すが先ほど俺が渡したチョコレートしかない。

 そんな大友様を尻目に俺はどんな悪戯をしかけてやろうかと思いながらとりあえず筆と墨を用意しておく。素敵忍術は今日も実に使い勝手が良い。

 悪戯書きくらいで良いかな、ということで筆に墨をつけて準備をしながら待つが大友様は諦めが悪いようであれこれと周りまで探し始めた。だがお菓子は全て子供たちが食べた後なので残っているはずもなかった。

 

「さて、そろそろ諦めましょうか」

 

「うぅ~……折角子供たちの関心が逸れたと思ったのにぃ……」

 

「はいはい。良いからとりあえず目を閉じてください」

 

 筆を近づけると諦めたようにぎゅっと目を閉じた大友様を見て筆を止める。ぷるぷると震えながら悪戯書きされるのを待っているが見ているほうが楽しい。そうして眺めていると恐る恐ると薄ら目を開けた大友様と目が合った。

 なのでにこっと笑って筆を更に近づける。するとまたぎゅっと目を閉じて震える。非常に楽しいがこれを続けていても大友様に怒られそうなので普通に悪戯をして終わらせよう。

 ただその姿を見て違う悪戯を思い付いたのでこっそりと回収しておいた、気になったお菓子を取り出す。白くて柔らかい、甘い香りのするお菓子をそっと大友様の唇へと押し当てるとびくっと一瞬震えた大友様。その反応に期待通りだと頷きながらそのお菓子を放す。もう一度大友様を見ると顔が赤くなっている。

 

 恐る恐る目を開く大友様だがその視線は俺の顔を見て、その次に俺が持っているお菓子を見る。そして俺が何をしたのか理解したようだった。その次に今まで以上に顔を赤くしてしゃがみ込んで顔を伏せてしまった。

 反応を見る限り俺が悪戯として口付けをした。とでも思ったが本当はお菓子を押し付けられただけ。ということに気づき、そんな勘違いをしてしまったせいで轟沈してしまったのだろう。

 

「……こういう悪戯は心臓に悪いのでやめてくださいよぉ……」

 

「お菓子を押し付けただけですけど?」

 

「絶対わかってやってますよねそれ……」

 

 しゃがみ込んで顔を伏せたまま大友様は何やら唸ったりしているがそれは放置だ。それにしても悪戯に使ったこのお菓子は何なのだろうか。面白いしちょっと気になる。

 

「これって何てお菓子なんですか?」

 

「それはマシュマロです……もう、こんなことに使わないでくださいよ!」

 

 がばっと起き上がったが未だに顔は赤く、俺を直視しないようにしている。乙女を相手にこんなことをするのは悪戯としても少しやりすぎたかもしれない。まぁ、チョコレート欲しさにわざわざ豊後まで俺を呼んだのだからこれくらいは我慢してもらおう。

 それとこのましゅまろは大友様が口をつけたというか、大友様の口につけたのだし俺が食べるわけにもいかない。ここは仕方ないので大友様に片付けてもらえば良いか。

 

「大友様、あーん」

 

「え、あ、あーん?」

 

 俺が何をしようとしているか理解していない大友様は言われるがままに口を開いた。なのでその隙にましゅまろを入れる。

 その行動に驚いたように一瞬動きを止めたが、その後にゆっくりと咀嚼してから再度しゃがみ込んでしまった。

 

「うぅー……普通に恥ずかしいですよこれ……」

 

「俺はあまり気にしませんよ。それに楽しいですし」

 

「くっ……結城のたらしスキルが微妙に高くて悔しいです……!」

 

 大友様が何を言っているのかわからないが、俺個人としては大満足だ。顔を赤くしてしゃがんでいる大友様は暫く立ち直りそうにないので俺は子供たちの相手をするとしよう。

 飛ばしていた蝶々は過半数が捕まっており、未だに捕まえようとしている子供たちもいる。捕まえやすいように低めに飛ばしてみれば小さな子供も難なく蝶々を捕まえてご満悦のようだった。

 完全にはろうぃんとやらからは離れてしまったが楽しそうにしている子供たちを眺め、そして赤くなってしゃがんでいる大友様の頭を軽くぽんぽんと撫でながらなんだかんだで、豊後に来たのは悪くなかったかな。と思いながら、子供たちに捕まっているために飛んでいる蝶々が少なくなっているのも物足りないだろうと子供たちのために新しく蝶々を飛ばすのだった。




10月31日はハロウィンです。
そしてソウリン様の萌えカットインにハロウィンの様子があります。
やるしかない。というわけでハロウィンでした。

ところでソウリン様って胸小さいようで実は結構あるような気がします。
戦国乙女の中では小さい方であることは確実ですが。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。