――様といっしょ   作:御供のキツネ

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戦国乙女LBのプレミアムエディション特典ドラマCDのネタでやってみたくなった。
ドラマCDのネタバレもりもりなので、それが気になる人はスルー安定です。

後悔をしていない。公開はしているけれど。(リキュウ様並の言葉遊び)


番外の二 酒宴

「結城……姉上は大丈夫なのでしょうか……」

 

「義昭様……」

 

 ヨシテル様のことを思ってか、そんな言葉を口にする義昭様に対して俺は何も言えなかった。

 その横顔は憂いを帯びていてどんな言葉をかければ良いのかわからなかったからだ。

 

「……いえ、結城に問うことではありませんでしたね……」

 

「申し訳ありません、義昭様……俺にはどのように答えて良いのか、わかりかねます」

 

「仕方ありませんよ。ええ、仕方ないのです……だって……」

 

 言葉を切ってから前方を見据える義昭様に続いて、俺もそれを見る。そこにいる、ヨシテル様の姿を。

 

「姉上があんなに酔ってしまうなんて、思っていませんでしたからね……」

 

 ヨシテル様は完全に酔っ払いになってしまっていた。大友様がワインを勧めて、ヨシテル様がそれを遠慮がちに受け取っていたのだが、いつの間にがどんどんと酒が進んでしまい、気づけば現状である。

 酒臭い。臭すぎてどん引きである。とりあえず風遁で酒気が此方に来ないようにしておこう。

 

「風遁・風刃乱舞」

 

 指を二本揃えて立て、本来なら組む印を省略して忍術を発動させようとする。

 

「結城!?それはこの間見た木々をばらばらにした忍術ですよね!?」

 

「冗談ですよ、冗談。印も省略してますから精々風が吹く程度のものですよ」

 

 言ってから今度こそ忍術を発動させる。少し強めの風が吹いて此方に漂ってきていた酒気を全て押し返した。

 義昭様にはまだ酒は早いし、酒気に中てられるかもしれない。それは避けねば。

 

「よ、良かった……結城、冗談にしても肝が冷えてしまいますよ……」

 

「ちょっとした冗談のつもりだったんですけどね。次からは気をつけます」

 

 しかしどうしたものか。ヨシテル様と大友様が酔っ払い、立花様が呆れ、絡まれているミツヒデ様が困惑し、それを楽しそうに見ているカシン様。はっきり言って関わりたくない。しかし何故カシン様は今回も細川ユウサイの姿を使っているのだろうか。

 いや、それは置いておくとしてカシン様は悪ノリというか、力で持って真の平和を!とか言っているが放っておいて良いのか不安になる。

 ただ、すぐに話の流れがおかしくなってきた。なんだ、正義の味方プリティゼネラルとは。ほら、カシン様が困惑しているではないか。

 大友様も正義の味方をやりたいとか言っているし、立花様を巻き込んでいるし……。

 

「義昭様。乙女ホワイトとか聞こえますよ」

 

「そうですね……乙女ブルーとか、乙女レッドとかも聞こえますね……」

 

「ミツヒデ様は乙女パープルだそうです。語呂の悪さが……」

 

「乙女ンジャー……」

 

 もはや義昭様と二人でドン引きである。巻き込まれた立花様とミツヒデ様が不憫でならないが……いや、それ以上にカシン様は何をやっているのだろう。奥都城空間とはカシン様の力が最大限発揮できるあれだろうか。

 それと効果音を口で言うのはやめた方が良いと思う。思春期男子か。

 それにしてもカシン様。口に出さないまでも言いたいことはわかります。変な茶番に巻き込まれて大変ですね。

 

「義昭様。心底あれに巻き込まれなくて良かったと思う俺は、ヨシテル様の忍としては許されないことでしょうか」

 

「いえ……これは、仕方が無いと思いますよ……僕も巻き込まれたくありませんから……」

 

 そんなことを義昭様と話しているとつまみがどうとか言い始めていた。

 カシン様も料理が出来るというのは俄かに信じがたいのだが……どうしてレシピ通りに作ると言っている立花様に喧嘩を売っているのだろう。立花様は立花様でそれに対して真っ向から言い返している。

 

「おつまみですか……結城も料理が得意ですよね」

 

「ええ、幼い頃に料理番の侍女に化けて潜入任務などもしていましたからその頃に。ところで立花様の言ったレシピ通りに、って料理の才能が壊滅的な人には厳しいんですよね」

 

「そうなのですか?ドウセツ殿の言っていたように先人たちの残した設計図、というものなのにですか?」

 

「出来ない人はとことん出来ませんからね……ついでに、カシン様の言うように創意工夫というのは素人がやると大惨事です。カシン様は自信があるようですが……」

 

「私としては、カシンが料理を出来ることに驚きです……」

 

 俺も驚きである。だが話を聞いていた限りでは細川ユウサイとして潜伏するにあたって必要だったから出来るようになった、という俺と似たような理由でどこか納得してしまった自分がいた。

 それにしても、決着を付けるために料理対決。などと言っているが……酔っ払いの戯言。として処理する人間がいない。これは押し通されてしまいそうだ。

 

「ゆーき!!すたじあむのよういをしてください!!」

 

 しまった、巻き込まれた。

 

「……結城、諦めましょう……そして、出来ることなら被害が少ないように動いてください」

 

「義昭様……わかりました、出来る限りのことをさせていただきます」

 

 義昭様に余計な心労を与えてはならない。これは俺がどうにかしなければ……!

 大友様は既に酔いが醒めているのではないか、と思えるほどにはっきりと喋っている。後で立花様と一緒に説教でもしてやろうか。

 

「蘇るが良い!鋼鉄シェフ!!」

 

 ノリノリでそんなことを言っているがある意味鋼鉄なのは立花様だけで、カシン様と巻き込まれて三人目にエントリーされてしまった俺は違う。

 横を見れば困惑以外の感情が伺えない立花様と意外とやる気になっているカシン様。

 ヨシテル様は美味しいおつまみを期待しています。なんて言いながらワインを飲み干した。

 

「そしてこの方!次期室町幕府将軍、足利義昭様です!!」

 

「えっと……巻き込まれてしまいましたが、出来る限り穏便にお願いしますね」

 

 審査員として巻き込まれてしまった義昭様の表情にはどこか諦めが見て取れる。余計な心労を与えないように、と思ったのに大友様のせいで台無しである。許すまじ大友ソウリン。

 一瞬だけ大友様に向かって殺気立ってしまったが、意外なことに立花様はそれを黙認してくれた。きっと立花様にも思うところがあったのだろう。

 肝心の大友様は一瞬だけビクッと身を震わせたが、そのまま司会を続けていた。

 テーマはお酒のおつまみ。となっているが……立花様はレシピ通りに作り、カシン様は創意工夫した独自の作り方を。という状況のようで俺はどうしたら良いのだろうか。

 

「レシピの偉大さを思い知らせて差し上げます」

 

「返り討ちにしてあげましょう」

 

 なんだかんだで二人ともやる気になっており、完全に巻き込まれただけの俺は浮いている。いや、馴染みたいとは思わないのだが。

 とりあえず好き勝手に作ろう。もし作るものが被ってしまうのであればそれはそれ、いきなりのことだったので仕方が無いと諦めてもらおう。

 

 何故か大友様から調理の様子を知らせるように、と言われてしまったミツヒデ様がとても不憫でならない。だが同じく不憫に思ったのか義昭様に激励されてやる気を出したので、放っておいても良いだろう。

 しかし何故二人とも肉じゃがを作ろうとしているのだろう。美味しいとは思うが完全に被ってしまっているし、変えた方が……いや、あの二人なら被っているからと変えることはないだろう。

 むしろ同じ料理なら、レシピ通りに作った物と創意工夫を凝らした物で味の違いが出るはずだ。比べるにはもってこいだろう。

 

 それに対してヨシテル様のコメントは「煮物は好き。でも肉じゃがの方がもっと好き」というもので俺が口出しをする必要は完全になくなった。これで否定的なコメントでもあればそれとなく変更を促そうかと思ったのだが、ヨシテル様が良いならそれで良い。

 ただ、カシン様の方から漂ってくる匂いは肉じゃがのそれとは全く異なる匂いだった。香辛料を使っているようで、忍の嗅覚には少しきつい。

 とはいえ、それらが体に害のあるものではないようなので何も言うことはない。それよりも俺の作っている料理を完成させなければ。

 

 大友様とミツヒデ様は二人の作り料理が気になるようで、俺の方に来ることはなかったが正直助かった。普段は作らない物なので邪魔をされるようなことがあれば失敗していたかもしれない。

 それでも、義昭様は俺が作る物が気になるようで時折様子を伺っていた。大丈夫です、義昭様。怪しい物、不味い物は作りません。そういう意味を込めて目が合った際に小さく頷いておいた。

 義昭様も頷き返してくれたのできっと意味は通じたことだろう。

 

 少ししてから、制限時間が来たようで二人とも完成の声を挙げた。大友様が俺を見てどうなのか、と言いたげだったので遅れて完成しました、と伝えた。

 まず立花様の肉じゃがだが、義昭様曰くとても美味しいらしい。

 

「先人たちの知恵の結晶である肉じゃがが美味しくないはずがありません」

 

 そう言い切った立花様は自信に満ち溢れており、義昭様の反応も当然のことだと言うようだった。それでも、誇らしげにしているので嬉しいものは嬉しいのだろう。

 カシン様はその様子を見て舌打ちをしていたが、そういうのは控えた方が良いと思います。

 

 ヨシテル様も同じくとても美味しいとのことだが、その後にまたワインを一気飲みしていた。ヨシテル様は今日だけで一体どれだけの酒を飲んでいるのだろうか。酔っ払いめ、と思うよりも心配になってきた。

 明日は酷い二日酔いで動けなくなる可能性が高い。二日酔いに良い物はなんだっただろうか、用意しておかなければ。

 

 次にカシン様が作った料理は香辛料をふんだんに使った物で、その匂いを嗅いだだけでヨシテル様の酔いが醒めていた。二日酔いの心配はいらないようで安心した俺はどこか少しずれているのかもしれない。

 ただそれを口にした義昭様には刺激が強すぎたようで咽ていて、その様子を見てカシン様はとても楽しそうだった。高笑いして狙い通りだ、とでも言うような様子だった。

 義昭様の様子に心配して傍に寄ったヨシテル様とカシン様に詰め寄ろうとするミツヒデ様、ノリノリで司会をしていたが一気に真面目な表情になってカシン様の一挙一動を見逃すまいとする大友様に、いつでも攻撃できるように構える立花様。

 それを見ながら俺は義昭様に水の入った湯飲みを差し出しながら優しく背中を撫でる。

 毒ではないにしても、まだ子供の義昭様にはあれだけ入れられた香辛料はきつかったのだろう。

 

「ありがとうございます、結城……」

 

 差し出した湯飲みを受け取り、飲み干してから一息ついた義昭様はそれからカシン様の料理に対する感想を述べた。

 

「とても辛いのですが……それでも、すごく美味しいです……」

 

 それを聞いてどういうことなのか、というようにカシンを見る面々と義昭様に姉上も食べてみてください。と言われてカシン様の料理を口にするヨシテル様。

 同じように咽てしまったようだが、やはり美味しいと言うヨシテル様。

 

 なんでもこの料理はカレーというらしい。初めて聞く料理名ではあるが、どういう料理なのかはなんとなく理解した。香辛料がきつく、最初は驚いてしまうが食べ進めて行くうちに癖になる。とのことだ。

 なるほど、肉じゃがと同じ材料を使いながらも、少し加えるものを変えるだけでこうも変わる。というのは創意工夫を凝らした物と言えるだろう。一手間加えるだけでより美味しくなる、というのは料理の極意とも言える。

 ただしカシン様。それカレーのレシピ通りに作ってませんか。

 

「では、最後に結城。どのような料理を作ったのですか」

 

 カレーを食べ終えたヨシテル様が俺を見てそう言った。おつまみじゃなくて料理と言っている時点でどうかと思うがとりあえずは良いだろう。

 俺の作ったものはどちらかと言えばカシン様のように一手間加えた、もしくは材料と過程を少し変えたものなのだが……。

 

「俺が作ったのはこれです。どうぞお召し上がりください」

 

 底が浅く広い器に盛ったそれは、肉じゃがと同じ材料を使っているが、色合いや見た目はだいぶ違うものだった。

 俺が出した物が何なのか、誰一人としてわからない様子だったがとりあえず食べてもらうことにした。

 

「ん……これは……!」

 

「……汁気が多いのでさっぱりとした薄味かと思いましたが、濃い目の味付けになっていますね……

 ですが、辛いということはありません。むしろ丁度良いように感じます」

 

「そうですね……とても美味しいと思いますよ。それに、なんというか……わいんが飲みたくなってしまいますね……」

 

 飲みたくなってしまいますね、とか言ってからワインを口にするまでに迷いがなかったのは気のせいだろうか。

 まぁ、とりあえず慣れない料理だったが成功したと言えるだろう。

 

「結城様、こちらの料理はどういうものなのでしょうか?」

 

「ざっくり言ってしまえば南蛮風の肉じゃが、でしょうか……いえ、名前はビーフシチューと言うそうですが。

 南蛮の商人の方に話を聞いて作れるようになったのですが、ワインに合うと聞いたので今回作ってみました。

 南蛮人とは味覚の違いがありますので、いくらか味付けは変更していますが」

 

「ふむ……ということは、これはレシピ通りに作ったというよりも創意工夫をした、ということですね」

 

 俺が立花様のように作らなかったことで気分を良くしたカシン様は、言いながら立花様を見ていた。

 カシン様は気づいていないのか、俺のように味付けを変更するなどは創意工夫と言えるがカシン様のはレシピ通りに作ったものだ。それを指摘したい。

 

「とりあえずまだ鍋の中にあるので後で食べたい方はどうぞ。

 それでヨシテル様。審査結果をお聞きしてもよろしいですか」

 

 参加したとはいえ、巻き込まれただけの俺としてはさっさとこの茶番を終わらせたい。なので結果を審査委員長であるヨシテル様に聞くことにした。

 どれが選ばれても不思議ではない、と言えば良いのかも知れないがとりあえずカシン様のカレーはないだろう。

 美味しい料理という条件なら大丈夫だとは思うが、ヨシテル様がカレーを食べてから口にしたのはワインではなく水だ。どうにもワインにカレーは合わないらしい。

 

「この勝負、ドウセツの勝ちです」

 

 普段から作っている料理ではないということもあり、立花様には劣っていたようだ。そしてやはりワインに合うかどうかが鍵だったらしく、それを聞いてカシン様が割りと本気でショックを受けて悔しそうにしていた。

 それを見てヨシテル様が良い感じの話を続けていたが……カシン様は料理人ではありません。カシン様も納得しないでください。ミツヒデ様と同じで微妙な気持ちになってしまうじゃないですか。

 それから立花様と互いを認め合うみたいなことで友情を育まないでください。

 

「……義昭様。疲れましたね……」

 

「私は美味しい料理が食べられたのでそこまでは……あ、びーふしちゅーのおかわりをお願いします」

 

「あ、はい。かしこまりました、義昭様」

 

 そんな盛り上がりを見せるヨシテル様たちを尻目に、俺と義昭様はそれらに関わりなどないとでも言うようにしていた。

 とりあえず、義昭様が俺の作ったビーフシチューを気に入ってくれたようでなによりだった。

 昼間から飲んでいたためにワインがなくなって、気づけば日も暮れて夜になっていた。

 まだ飲もうとしているヨシテル様と大友様だったが、それぞれ立花様とミツヒデ様に叱られていた。そして大友様と立花様は日が暮れているというのに帰ると言っている。

 泊まっていけば良い、というミツヒデ様に対して、立花様は近くに宿を取っていると返した。それでも、宿の狭い風呂では物足りないだろうとせめて風呂だけでも入って行くようにヨシテル様が勧めている。

 どうやら全員で入るという話になっているようだが、そこに義昭様を巻き込むのはやめていただきたい。余計な心労を与えないようにしていたのに、大友様のせいで台無しだ。それに対してまだ追い討ちをかけるつもりか。

 ミツヒデ様も全力でそれを止めている。まぁ、どういった感情を持っていてそうしているかは知らないが。

 

「あ、なんだったらゆーきもいっしょにはいりましょうよー」

 

 義昭様を諦めたと思ったら俺を標的にするか。

 

「遠慮させていただきます。どこぞの呑んだくれ共の後始末をしなければなりませんので」

 

 事実として空になった瓶やつまみの入っていた皿、酔っていたせいか食べ零しが畳の上に散乱している。普段であれば絶対にそういったことはしないヨシテル様がそうしたと考えると頭が痛い。

 呑んだくれ共、と言われた大友様とヨシテル様はへらへらと笑っているが、立花様とミツヒデ様は申し訳なさそうにしていた。流石にあれの片づけを任せるとなれば当然か。

 まぁ、カシン様はそんな俺を見て笑っていたが。

 

「着替えなどは侍女に用意させますので、どうぞごゆるりと」

 

 それだけ言い残して手の空いている侍女を探しに飛ぶ。

 すぐに着替えを用意するように伝えて、酒宴が開かれていた広間の片付けに移る。ヨシテル様が楽しそうだったのでとりあえずは良しとするが、もし次があるようなら厳重に注意しなければならない。

 ……とりあえず、片付けが終わったら義昭様の様子を見に行こう。酒宴の熱に中てられて眠れない。などということはないと思うが、念のために。

 

 しかし、忍の聴覚には露天風呂で騒いでいるヨシテル様たちの声が聞こえてくるが、ため息しか出て来ない。

 内容は多少なりと色のある話であるが……まぁ、基本呑んだくれの戯言程度にしか思えない。枯れているのか、今日の出来事が原因なのかわからない。いや、枯れてはいない、はず。枯れていないと思いたい。

 そんなことを思っていると天下泰平の話になり、すぐに蜘蛛がどうとか聞こえてきた。そしてヨシテル様の絶叫も。

 やはりため息しか出て来ない。続いて聞こえてくる内容として、カシン様の頭の上に蜘蛛が居て、それをヨシテル様が鬼丸国綱で斬ろうとしているのだろう。

 以前見た震えながら蜘蛛と対峙していた姿を思えば、きっと今回も同じようになっているのだろう。

 流石に雲切なんてしないだろう。そう思っている時期が俺にもありました。

 

「天剣一刀 雲切!!」

 

 その叫びと共に轟音が鳴り響いた。やってくれたなあのポンコツ。

 音を聞いて何事かと思ったのだろう義昭様が片付けを終えた俺の下に来たので大まかに説明したが、それを聞いて義昭様もため息をついていた。そうしてしまうのも仕方がないだろう。

 

「結城……心配なので行ってきてくれますか……?」

 

「……不本意ですが、わかりました。義昭様はもう遅いのでお休みください」

 

「わかりました。……結城、後はお願いします」

 

 義昭様の言葉を聞いて廊下に出て、同じく音を聞いて不安そうにしていた侍女を従えて露天風呂に向かった。

 露天風呂に着けば、正に大惨事と言った様子だった。ため息よりも怒りが湧く、がそれ以上に何故この方はこんなことをしているのかと思うのと同時に、その後処理をしなければならないのが哀しくなってくる。

 

「……きっと意識を失っているでしょうから回収をお願いします。体を拭き、浴衣を着せたら部屋に運んで寝かせてください。それと、俺は露天風呂を修繕しますので何かあれば聞きに来てください。

 …………こんな時間ですが、どうかよろしくお願いします」

 

 疲れた様子の俺を見て、同情するような目をしていた侍女たちだが、指示を出してからは早かった。

 沈んでいるヨシテル様たちを回収して、残ったのはぼろぼろの露天風呂と俺だけで、これの修繕をしなければならないと思うと気が重くなる。

 

「はぁ……これは暫く禁酒ですね……」

 

 そんな呟きを零して作業に移る俺の背中はきっと、哀愁の漂うような背中になっていたに違いない。




特典のドラマCD楽しいですね。普段わからない乙女たちの一面がわかるので大満足です。

個人的に一番可愛かったのは義昭様。
あと、ユウサイ様の体は想像以上に平ららしいです。平ららしいです。(大事なことなのでry)

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