東方日常記   作:ぬんちゃくティッシュ

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☆東方project二次創作です


東方紅魔星

───紅魔館、正門前───

 

「………」

 

彼女は幻想郷で最も門番に向いている(笑)妖怪、紅美鈴。今日も館を守るべくネズミ一匹たりとも…!

 

「……zzz」

 

……前言撤回。彼女は幻想郷で最も門番に向いていない妖怪、紅美鈴であった。静かながら大胆に寝ている当門番さんの目の前にメイド服を身に纏ったスラッと背の高い女性が立っていた。その方をどなたと心得る!天下の紅魔館のメイド長、十六夜咲夜であらされるぞ!

…変な紹介シーンは置いといて、今は美鈴に生命の危機が迫っていることは、寝ている本人には知るよしもないこと。

 

「め・い・り・ん?」

 

「……zzz」

 

咲夜がとてもとーっても優しい声で話しかけても起きない。永眠しているのだろうか?

 

「お仕置き…食事抜き…」

 

今度は耳元で囁いてみる作戦決行。今の美鈴からしてあらゆる不利な言葉を並べると…。

 

「…zz…か…勘弁して…くださいよ咲夜さん…」

 

少しは効き目があったようだが、あくまで夢の中の咲夜が夢の中の美鈴を起こしただけ…か。

 

「起きなさい!美鈴!!」

 

「ふひぃ!?」

 

 

─side 紅 美鈴─

 

「堂々と大胆不敵に熟睡してくれちゃってまぁ。偉くなったものね美鈴」

 

「い…いやぁ…咲夜さんほどでも…あーあはははは…」

 

どうしよう…。どんな言葉を立て並べても咲夜さんの手中にある輝く銀ナイフが牙を向けてくる、

 

「良い?今回は時間的に忙しい時間帯だからもう行かなきゃならないから見逃してあげるけど、今度寝ているところを見たら、容赦なくナイフが飛ぶわよ?分かった?」

 

「は…はい!ガッテンでございます!」

 

「…大丈夫かしら」

 

最後に言葉をこぼして中に入っていった咲夜さん。相変わらず咲夜さんは怖いな…。特にあの時を操る能力が目の前にあるから身がすくんじゃいますよ…。

…まぁ、起こされちゃいましたし、真面目に門番に取りかかろうではありませんか。

 

 

───紅魔館、キッチン───

 

─side 十六夜 咲夜─

 

今私はランチを作っている。飛びっきり…は言い過ぎだけど、美味しいものを食べないとうるさかったりするのが私の主。正にカリちゅまである。しかし嫌にならないカリスマを持たれてるからこそ、私はこうしてランチを作っているのだ。

今日は朝から美鈴が寝ていたみたいだからランチの用意は一人分浮いた…と。パチュリー様はどうされるのかしら?

 

「聞いてくるしかないのね」

 

正直面倒くさい。と言うより、パチュリー様のあの声を聞くと笑いが込み上げて来て耐えるのが大変なのよね…。

 

 

───紅魔館、ヴワル地下図書館───

 

「……」

 

時間を操れるのは毎度思うけど、便利なもの。移動の時間すらロスに繋がるところを削減できるところは大きい。だけど何故か美鈴には気づかれる。今日は爆睡だったから良かったけど、転た寝程度なら感付かれる。気を使う程度ってそう言うことかしら…。

今はそんなことより。

 

「パチュリー様。まもなく昼食となりますが、いかがいたしましょう?」

 

「あぁ、もうこないな時間やったんか。たまには上で食おう思うとったんや」

 

…ダメ、今口を開いたら声をあげて笑ってしまいそう…!ダメだと分かってるのに…くくく…。

 

「はぁ…。かしこまりました」

 

「どないしたんや咲夜、ため息なんかついて」

 

はっ…しまった。ついため息をついてしまった…。本当はあなた様のせいですよと言いたいところだけど、主の友人様にそんなこと言えるハズもなく…。

 

「な…何でもないですわ、ご心配をおかけして申し訳ございません」

 

一応悪意がないことはわかっている。でも笑っちゃうの。人間笑うことをやめちゃうと死んじゃうのよ。

ふと時計に目を向けると、正午の30分前を差していた。この図書館には巨大な振り子時計があるから便利が良い。…おっと、こんな悠長にしている場合ではない。

 

「もうこんな時間。ではパチュリー様、失礼いたします」

 

……。

 

「咲夜…私の声聞いて我慢してくれよぉるさかい、悪いことしとる気がする…。ま、ええか。細かいこたぁ気にせぇへんねや」

 

 

───紅魔館、リビング───

 

─side レミリア・スカーレット─

 

私は…今最高に…優雅に…本を読んでいる…その姿は正に…カリスマよ!

 

「お姉様…コーラを片手に何やってんの?」

 

「何って、本を読んでるのよ」

 

せっかく良い雰囲気にカリスマが出来上がってたのに…フランに水を差されちゃったわね。

 

「なになに…? "目指せ!真のカリスマ!!カリちゅまからカリスマになれる⑩の方法"?」

 

「口に出さないで…悲しくなっちゃうから…」

 

我が妹には敵わないわね。でもフランは正直私の事どう思ってるのかしら。…考えても仕方ないわね。嫌いなら嫌いで接するわ。これぞカリスマよ!

 

「(お姉様…変な物でも食べたのかな?それとも本の影響であんな覚醒した魔王みたいなポーズ取ってんのかな…?)」

 

「お嬢様、妹様、お食事の用意が出来ました」

 

咲夜がお昼を告げに来た。と言うことはもう日は天辺だと言うこと。

 

「あら…もうそんな時間なのね」

 

 

───紅魔館、リビング(お食事ver.)───

 

─side 語り手─

「咲夜。一人、美鈴がいないようだけど?」

 

「美鈴なら、"門番は門を離れるわけにはいきません!私の事は気にせず、食事を楽しんでください!"…って言ってました」

 

…一方美鈴は。

 

 

───紅魔館、門前───

 

─side 紅 美鈴─

 

「はっくしょん!…うぅ。このくしゃみは、咲夜さんが噂したんだな。何かと酷いことを言ってるみたいだ…お腹空いたな」

 

…お仕置きはなかったけど、食事抜きはあったみたいだ…はぁ。

 

「溜め息ついて、どうしたのだー?」

 

「…?」

 

声がする方へ目を向けると、そこには妖精二人と妖怪一人。チルノさんと大妖精さん、そして声をかけてきたルーミアさん。どこかへ遊びにいくのでしょうか?

 

「いやぁ…お腹すいちゃって…あはは」

 

もう朝から何も食べてないから…。え?朝食?寝過ごして食べれませんでしたけど何か?

 

「また寝てたんですね、美鈴さん」

 

「…わかっちゃいました?」

 

相変わらず大妖精さんは鋭いです。だからチルノさんとうまい具合に溶け込めるんですね。

 

「でも門番としての体術と基礎体力、そして類い希なる強さがあるから紅魔館は手放さないんだろうね」

 

「…ぇ?」

 

今の言葉を発したのはルーミアさんでも大妖精さんでも、私でもございません。発したのはチルノさんです。⑨であるはずのチルノさんが凄くまともな事を言ってます…。

 

「大妖精さん…。チルノさんはどうしちゃったんです?」

 

「やっぱり気になりますか…チルノちゃんが⑨じゃなく頭が良くなったと言うか、性格が変わったと言うか…」

 

「実はこんなことがあったのだー」

 

─幼女説明中…─

 

「…と言うことなのだー」

 

「えぇと、つまり…」

 

話を要約をして言うと、以前魔理沙さんの薬でガチルノになれるようになったが、服用した理由が天然だの⑨だの。これ以上これに関して被害を出さないため…と、霊夢さんがほとんど無理矢理チルノさんを命蓮寺に叩き込んだ。そう言うことかしら。もしそれが真実だとしたら命蓮寺はかなり恐ろしい場所ですね…。あの結構頑固なチルノさんがここまで変化するとは…。

 

「まぁ私としてはチルノちゃんが⑨じゃなくなってもお友達ですから」

 

「優しいんですね大妖精さん」

 

「むしろ⑨状態のチルノちゃんは結構イラッと来ますからね」

 

「……結構お口が悪いんですね大妖精さん」

 

ギャップが凄すぎて掴めないキャラしてますね大妖精さん。

 

「美鈴一緒に遊ぼーなのかー!」

 

「そうですよ。人数多い方が楽しいですし」

 

チルノさんが敬語を使うと言うのも新鮮ですが、なんか引っ掛かる新鮮さですね…。むしろ調子が狂いそうですね。

 

「まぁ丁度暇だったんですよ。喜んでご一緒します」

 

たまにはこう言う息抜きも必要ですよね?日夜門を護っている(笑)から少しくらい許されますよね?自己暗示しながらも不安を覚えていますが、3人と共に平野に向かいます。

 

「美鈴ー、少しは反省して真面目に…いないし。理由なくサボるような柄じゃないけど、何にしてもきっついお仕置きが必要ね…」

 

 

 

 

───幻想郷、ある野原──

 

紅魔館からかなり離れ、どちらかと言うと妖怪の山付近の野原に来ました。野原とは言えど森も近くにありますし、山も近いです。こう言う何かがある場所は遊びにもってこいですね。

 

「何して遊びましょう?」

 

「ん?紅魔の門番じゃないか?」

 

誰でしょう?この付近に知人はいませんが…。

ふと声がする方へ目を向けると、そこには…。

 

「探してたんですよ、美鈴さん」

 

地下に棲む鬼の星熊勇儀さんと、射命丸文さんがそこにいました。なんでしょう?嫌な予感しかしない…。

 

「(ほら勇儀姐さん、私が考えた挑発文句を言っちゃってください!)」

 

「(こう言うことは嫌いなんだが…美鈴とは手合わせ願いたいし、普通ではしてくれないし、仕方がない)」

 

「お二人、私を探しているとは?」

 

珍しい二人組が寄りによって私を訪ねてくるとは余程な事があるんでしょう。とりあえず、幼い妖精と妖怪は離さないと…。

 

「3人とも、少し席を外してくれませんか?」

 

「気を付けてくださいね」

 

これでOKです。あとは用件を聞くだけですが…。

 

「良いかい?美鈴、あんたにゃ前から言いたいことがあったんだ」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「ぇと…その…。お前んとこの主ってさ、なんと言うか…結構生意気なクソガキで…その妹は暴走癖だし、紅魔館ってイカれたお子ちゃまの集まり…だよ…な?」

 

「………」

 

「(言っちまった…すまん美鈴!)」

 

「(勇儀姐さん、何を言われても挑発してください。そうすれば戦ってくれますよ)」

 

何か文さんが勇儀さんの耳元で言っているようですが、関係ありません…。

 

「言いたいことは…それだけですか?」

 

「あ…あぁ、これだけだ」

 

「訂正する気も…ないんですね?」

 

「して欲しけりゃ、力づくでやってみな!」

 

もう我慢できません!不意を突くのは癪ですが、この身軽さを利用し顔へキックを決めて差し上げます!!

 

『バシぃ!!』

 

「おっと!不意討ちたぁやってくれるねぇ」

 

さすがは鬼の四天王です…不意を突いただけのキックでは防がれますか。

 

「こっちのターンだね、私を楽しませてくれよ!」

 

相手は怪力乱神を持つと言う強力なパンチャーです。一発まともに食らえば顔が変形するところか跡形もなく消し飛びそうですね…。FATALITYにはなりたくないのでできる限りかわしながら機会を伺いましょう!

 

「…!」

 

危ない!スレスレでした!変に考えるよりは直感に任せてかわした方が良いかも…とか言ってる内に拳が目の前に!

 

『バシィ!…ドゴーン!!』

 

く…。なんとか防げましたが、ガードもろとも吹き飛ばされてしまいました。お陰で山肌に激突し、岩壁が崩れてしまいました…。ですが、そこは人間と妖怪の差です。痛みは少しありますが、傷はありません。毎日数百本の咲夜さんのナイフを浴びてるので丈夫になっちゃいました。門で寝るのも修行の一環なのですよ!(嘘)

 

「私のパンチを食らって無傷で立ち上がるとはねぇ。やっぱり…アンタ良いよぉ!」

 

戦闘狂な目で突っ込んできますね…、油断できません!

 

─side 射命丸 文─

 

「…私が姐さんに紹介したんだけど、なんかヤバイ感じが…。絵面的にはとても面白い事なんですが…、幻想郷が崩壊しかねない事態に陥ってる気がします…」

 

とにかくこのままでは不味いです!誰かに助けを…!

 

…15分後。

 

…誰も集まらない。霊夢さんは面倒くさがって来ませんでしたし…自業自得なんですけどね。魔理沙さんは魔法の研究で閉じ籠っているし、守矢家は布教活動中で忙しいと断られるし、八雲家は冬眠中、紅魔館には美鈴さんのメンツの問題でいけませんし…あれ?これって詰んでね?

 

「はぁ…どうやってあの二人を止めよう…。…ん?」

 

二人が争っていた場所に戻ると、その場いなかったハズの藤原妹紅さんが増えちゃって…。

 

「おめぇらさっきから五月蝿いんだよ」

 

「ん?アンタ竹林の所の不死身人間じゃないか」

 

「これは私と勇儀さんの関係です!邪魔をしないで頂きたいのですが?」

 

「何がおめぇらだけだ!周りを見てみろ!おめぇらが暴れるから山々が崩れて竹林にまで響くんだ!」

 

「アンタだって毎晩遅くに火事になるか位の業火を放ってるじゃないか」

 

「人を言う前に自らを直したらどうですか?」

 

互いに大量の火花を飛ばしあっています…。もはや一触即発の爆弾状態です…。

 

「もう我慢ならん!お前らまとめて消し炭と化してやらぁ!!」

 

「その様は馬に蹴られて三途の川だね!」

 

あぁ…3人がとうとうぶつかっちゃった…とにかく事態が大事になる前に逃げましょう!

 

「美鈴、いないと思ったらここにいたのね」

 

急に目の前に現れたのは紅魔館の咲夜さんと、咲夜さんに抱かれているレミリアさん。

 

「もう良いわ。下ろして、咲夜」

 

「かしこまりました」

 

言われるがままにゆっくりとレミリアさんを下ろす咲夜さん。改めて見るとやっぱりこの主従関係はうまく成り立っていると思う。

…んな事はどうでも良いんですよ!早く逃げないと!

 

「まぁまぁ好きに暴れちゃって。これは周りが見えてないわね」

 

その戦闘枠付近にレミリアさんは何の躊躇もなく近づいていく…。

 

「全く…早く美鈴を回収したいし。咲夜!」

 

「はい。少々お待ちください」

 

レミリアさんが命令したかのように咲夜さんの名前を呼ぶと、咲夜さんは何かタイミングを待っているようですね。

ッと!そんなこと言っている内に3人が一気に殴りかかろうとしてるではないですか!もう終わりです!

 

「………」

 

「今のパンチが当たってない?」

 

「しっかり狙ってパンチをしたんですがね」

 

「と言うよりは、意図的に外させられたようだが?」

 

「アンタたちいい加減にしなさい!!」

 

不思議な光景を打ち破るようにレミリアさんが叫んでますね。その斜め後ろにはしっかりと咲夜さんがついていますが…この光景、何となく分かってきました。

 

「お…お嬢様!」

 

「次は紅魔の主か?次から次へと!」

 

「良いから話を聞きなさい!!あなた達は今何をしていたか分かってるの!?」

 

「これは…色々な事情があってだな」

 

「言い訳は聞きたくないわ!」

 

妹紅さんが口を挟んだところにレミリアさんの喝が飛びましたね…不謹慎ながら、良い記事になりそうです!

 

「今あなた達は殺し合いをしていたのよ!?この幻想郷でのルールに無意味な殺し合いは厳禁とあるはずよ!勝負事は弾幕戦で決めるのがルールでしょう!?このルール違反が引き金に死んだらどうすんのよ!」

 

「いや…アンタに当たってないから良いじゃないか?」

 

「そうですよ、お嬢様は無事ですし」

 

「だまらっしゃい!私は自分の心配なんかしてないわ!あなた達の心配をしてるのよ!蓬莱人には分からないでしょうけど、命は1つしかない尊い大切な物なの!それを気安く潰し合おうなんて屑の骨頂な事してんじゃないわよ!!死んだら…もう会えなくなるじゃない!会えなくなるなんて、私は絶対に嫌よ!」

 

「「「……」」」

 

「…取り消す」

 

「…?」

 

「悪かったな。お仲間の悪口言っちゃって…」

 

「…。いえ、私もムキになりすぎちゃって…」

 

「私も、もう少し言葉で解決できるようにするよ」

 

レミリアさんが…あの3人を止めた…?凄い…これが本物のカリスマって奴なんだ!

 

「分かってくれて良かった。ところで、美鈴に言ったお仲間の悪口って?」

 

「……(ギクッ)!」

 

「えぇッと、確か。"お前んとこの主ってさ、なんと言うか結構生意気なクソガキで、妹は暴走癖だし、紅魔館ってイカれたお子ちゃまの集まりだ"でした」

 

「それ…本気で言ってんの?」

 

「私は記者に言われた事をそのまま言ったぜ」

 

「射命丸文ぁ!!」

 

「ひいぃぃぃごめんなさいー!!」

 

カリスマはやっぱり嘘でしたー!!!!

 

                 終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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