一方、妖夢の方は…
───side 魂魄 妖夢───
はぁ…幽々子様が張り切って資金の工面に当たって下さるのは、私にとってもありがたいこと。こうやって白玉楼が財政難に陥ってしまったことに責任を感じているんだからマシかもしれないけどね。
でも、本心から幽々子様にお願いしたいことは資金の工面ではなく、食事の制限なんだけどね…。
今の今まで主が知っての通りの大食女で、1週間は持つだろうと思っていた食料がまさか朝食1回で無くなってしまう…たしかあの時、まだ足りないまだ足りない!って駄々こねるもんだから追加でもう1週間分の食料を買い足したんだっけ?すぐ無くなったけど。
とにかく…だ。今とやかく言ったところで幽々子様が気が変わってダイエットに打ち込まない限り何も変わらないし、現に今バイト探しに出てるみたいだけど正直言って全く期待が持てない…。だから私の方でも金を工面致しましょう。…そう言う魂胆でございます。
…と言うことで、やって来ました紅魔館。ここなら雑用くらいにでも雇ってくれそうな気がします!
「頼もう!」
「………」
うんともすんとも言わない…。ちなみに門番である美鈴さんがすぐそこにいるんですけど、噂に聞いていた通り何をしても起きなかったので無視せざるを得なかったので…。
とはいえ、返事がないなぁ…。まぁこれだけ広ければ仕方がないかな。
「頼もー!」
これってそもそも勝手に入っちゃって良いのかな?門番がいる以上ダメなんだろうけれど、肝心な客の選別係の美鈴さんが寝ちゃってるから入る手段が無いんだけど…。
『はい?どちらさん?』
「うぇ!?ど…どこから声が!?」
「門の上よ。カメラとスピーカーがあるじゃない?」
「カメラとスピーカー…あ、ありました」
「あら、妖夢じゃない。今行くから待ってて」
「あ…はい」
紅魔館がまさかの監視カメラを仕掛けるなんて現代技術に手を伸ばすなんて。と言うか、幻想郷ってカメラなんて…と言うか何で私カメラなんて知ってるんだろう?まぁ、良いか。これ以上掘り下げたらメタい話になるし。
「お待たせ、妖夢。いらっしゃい」
音声が切れてほんの数秒後でパッと現れたのは紅魔館のメイド長、咲夜さんであった。どうりでさっきのスピーカーの声が聞き覚えあるなって思ったら…納得した。
「えっと…まずなんですけど…」
「あぁ、このカメラとスピーカーでしょ?だって、これ付けてないと美鈴が寝てばっかりで門前の客の対応が出来ないから困るのよ。これ付けたお陰でなんとかなってるけど、美鈴は私の仕事を奪わないで下さいよ!ってご立腹のようだけど」
「張の本人が寝てますけど…」
「あぁもう大丈夫よ。何回起こしても寝るから10回までって決めてるのよ。そうでもしないとキリ無いからね」
「よくクビになりませんね…」
「お嬢様がいくら寝坊助で仕事ができなくて役立たずでおっちょこちょいで侵入者を安易に入れてしまっても家族だから切り離せないんですって」
「その優しさでいつか滅びますよ!」
レミリアさん優しいんだろうけれど、きっちり美鈴さんをディすってるんだね…。本当は頭抱えてるんだね…。
「はぁ…。んで、貴女がここに来たのには何かしらの様があるんでしょう?」
「あ、そうなんですよ!実は…」
─少女カクカクシカジカDAIHATSUムーヴ中…─
「…と言うわけで、雇ってください!」
「いや…そんな頭下げられてもねぇ…。実を言うと今の紅魔館やること無くて人手足りてるんだけど…」
「雑用でも何でも良いので!」
「うーん…こればかりは私には判断出来かねるわ。お嬢様に通してあげるから、お嬢様に頼んでみなさい」
「ありがとうございます!」
良かった。1発目から脈ありだ。最悪転々とすることになると覚悟してたんだけど、良かった…。
───紅魔館、客間───
「話は聞いているわ。妖夢…だったわね。こうして会うのは初めてだったかしら?」
「そうですね。そういえば会ったことありませんでしたね。初対面で厚かましいお願いではございますけど、よろしくお願い致したいんですが…」
「とは言ってもね…。ウチの仕事って言ったら、咲夜の助手とか、門番と交代交代でやるとか、フランの遊び相手とか…そんな事しかないわよ?」
「どんなことでも良いんですよ!でないと白玉楼が本格的に冥界から切り離されてしまうんです!」
そう。事は思ったより重大なことなのだ。
白玉楼は本来、輪廻を待つ霊の溜まり場で、幽々子様は閻魔様から直々に霊の管理を頼まれて、当然、生活出来る場としても今の白玉楼がある。
…でも、その白玉楼が財政難によって困窮化してしまったら、霊の管理などもっての他。そうなれば閻魔様も白玉楼の存在の意味は無いと踏んで冥界から切り離されてしまう。さすれば幽々子様は正真正銘、成仏させられるだろう。私も半人半霊という中途半端な種族で浪人と化してしまう。…それは絶対にごめんですよ!
「分かった!分かったから勝ちを確信して競馬に大金一気に賭けてボロ負けした時の顔で泣かないで!」
「それ一体どんな顔なんですか…」
「まぁとにかく、1日20000円で雇ってあげる」
「ぇ、結構羽振りが良いんですね」
1日で20000円と言うのはかなり美味しい仕事だけど、それに見合ったキツい仕事内容なんだろう…。
「副業始めたら思ったより捗ってね。かなり経済的に潤いがあるし、困ったときは協力してあげるのがスカーレット家のポリシーだからね」
「副業…ですか。何を始めたんです?」
「うーん…あまり口外出来ないんだけど…これは他に漏らしちゃダメよ?」
「は…はい」
うわ…なんか触れちゃいけない地雷に触れちゃったみたい…この言い種じゃ、表の仕事では無いんだろうな…。
「実はね…仕事人って言うのを始めたの」
「仕事人…ですか。どこかで聞いたことがあるような…」
「本来は外の世界の時代劇みたいなんだけど、この幻想郷にだって殺してやりたいほど恨んでるけど、相手の権力のせいで殺せなかったり、殺すだけでは…と心に仕舞い込む人もいる。そんな人の代わりに恨みを晴らそう。って仕事よ」
「え…それって、ヤバイ系じゃないんですか?」
「大丈夫よ。殺してはいないから。頭を使える限り使って、出来る限り殺さない程度で鉄槌を下す。それがウチのやり方よ」
「は…はぁ…」
あれ…紅魔館ってやぁさんの集まりだったっけ?いくら殺さないとしてもやり口によっては…。
想像するのはやめよう。あまり深入りしてしまうと抜け出せなくなりそうだ。
「まぁそんなことはどうでも良いわ。とにかくウチは貴方を雇います。よろしくね、妖夢」
…そんなこんなで私は紅魔館で働くことになり、幸いなことに1発で雇ってもらえたってのは、やはり普段の行動からなんだろうか。それは自惚れすぎか…白玉楼の事情を理解してくださったんだから雇ってくれたんでしょう。なら、頑張って働かないといけませんね!
続く
今回はかなりお待たせしたうえに、少しは短めになってしまいましたがご了承ください。
次回は妖夢が頑張って頑張って紅魔館のあーんなことやこーんなことをしますので、ご期待ください!(震え声)